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橋本質店
「質屋の風景」

H28.08.17 記     目つきが悪い

近くの道で、私の側を曲がって行くバイクがありました。乗っている人のヘルメットの下の顔が、もう何十年も会わない同級生に似ているような気がして、一瞬眼を凝らして見ました。

この私の目つきが、バイクに乗っている人には、何か走り方を咎め立てされているように見えたのでしょう。曲がって行った人が、急にバイクを止めヘルメットをぬいで、私を追っかけて来ました。思った人と違い、もっともっと若い人でした。
「なんじゃお前!何がいかんのじゃ!」
不意にグーッと近づかれて、理由が分からず身の危険を感じました。しかしただ見ただけのことで、どうしてそこまで怒るのか。

これは一つには、普段から私の人を見る目つきが良くない時があり、相手を苛つかすことがあるからでしょう。何か訝るような、咎めるような、人を不愉快にさす目つきをする時があるようです。

店でも質のお客さんの顔を見て、この人は前に取引のあった人のようだけど、思い出せないで眼を凝らして見る時に、人を疑うような、詮索するような、そんな悪い目つきをしていることがあるようです。急に嫌な顔をされるお客様がありますから。

昔はこんなんでなかったのです。もっと優しく、微笑みかけるような、そんな目をしてお客様に対していたのです。橋本質店て、感じいいわぁー!。それで枚方市、寝屋川市のご婦人のお客様が増えたのでした。しかしもうそんな目は出来ませんね。
 君からはいつも笑顔ねと言われたが車窓に映る今暗き顔

H28.08.07 記     小説、「白夜行」に悪人の質屋が登場する訳

小説に出てくる人の名前は架空のものですから、作中の悪い人物の名前が自分と同じでも特に気になりませんが、この小説のように職業まで同じですとやはり気になります。

「白夜行」、に登場する悪人の質屋の名前が、私と同じ「洋介」で、前にこの小説を読んだときにとても嫌な気がしました。それで作者は小説を書くのに、なぜ悪い人物の職業を質屋にして、その名前を洋介にしたのかを考えました。それで次のような寓話を作りました。

むかしむかし、大阪の質屋にそれは美しい娘がいました。子供のころから美しく評判の子で、中学に上がる頃には近郷の者が一目見ようと校門の前に集まって人垣ができたほどでした。
それほど美しい女の子ですから、同じ中学の男子生徒はこの子に見られるだけで、もう胸がキュンとなって、中には放課後にこの女生徒の家の質店の前を、うろうろする男の子が何人もいました。

この女生徒の実家の質屋は、お客様が少なくていつも暇なのですが、ご主人は店の前をうろつく男の子を見つけては出て行って、イジメルのを楽しみにしていました。
「君はさっきから店の前を行ったり来たりしているが、娘になにか用か。君の名前は。クラスは何組や。担任の先生の名前は。家の電話番号は。親はこれを知ってるのか。」と、たたみかけて問い詰めるのです。

そうすると男子生徒は、「もう堪忍してください」と、言って逃げて帰ります。奥さんは可哀想なことしたらんときいなと、たしなめるのですが、ご主人はこれが唯一の楽しみで長年続けていました。

こうしてイジメられた男子生徒の中に、実は大人になって小説家になった者がいたのです。それがこの「白夜行」の作者です。この作家は中学の時のあの屈辱感を、あのイジメられた恨みを、悪い質屋の主人を小説に登場さすことで晴らそうとしたのでした。いやそもそも、その恨みを晴らすために作家になったのかも知れません。

またその質屋の名前を洋介にしたのは、小説を書くにあたってネットで質屋を調べると、当時ホームページを作っている質店が少なくて、当店が当たり、店主 橋本洋介とあったから、この洋介にしようと。こうなった次第ではないかと、私は思います。
この仮説が当たっていたら、いい迷惑ですけど。

H28.07.16 記     質蔵文庫 その5

このところ雨の日が多く、質蔵文庫はほとんで一日中前面を透明のナイロンシートで覆っています。それでも本を借りる人は透明なシート越しに欲しい本を探し、自分でナイロンシートの紐を外して棚から本を抜いて借りていかれます。

ご寄贈いただく本はありますが古い本や、大きくて重い本、内容の難しい本は、並べてもあまり借りる人がありませんので、一部しか並べていません。
いま一番よく借りられる本は児童書です。絵本や童話集、こうした本がよく出ます。平均して軽くてやさしい本がよく借りられます。

こうして質蔵文庫で本の貸し出しをしていると、詰まっていた棚がそこだけ抜けて隙ができ、借りられたことが分かると楽しくなります。また並べても出ていかないと面白くなく、そうした傾向の本は自然と敬遠します。新しくて、軽くて、上品で、やさしくて、面白い本、歓迎です。一部の漫画でも結構です。 店主

H28.07.09 記     出会い頭の事故

前の文章の金色の宝石箱の件です。
宝石箱を持って帰って検査をした地金屋さんは、いつも来る人がその日は忙しくて来られないので変わりに来た人です。しかしこの人も以前は他の地金屋さんで働いていて、地金取引のベテランです。そのベテランの人が宝石箱を持って帰って調べて、
  Ag 41  Au 28  Ni 29
  Ag 9   Au 9    Ni 80
と数値を書いて、正確には溶かさないと解らないと言うから、後はもう私の度胸しだいなのだと受け取って質で値をつけました。しかし最初からそんな話しではなかったのです。

後日、宝石箱は流質して別の地金屋さんにX線分析してもらったところ完全にメッキでした。その後しばらくして、この問題の地金屋が店へ入ってきましたので、あれはメッキではないか。君が前に検査して報告したAu 9 や Au 28 の数字は何だったのかと問うと、数字はそう出ますから金成分は、・・あるから・・と答えます。
もう頭にきて。もちろんメッキでも金メッキなら金成分は検出されるやろうけど、君とこは科捜研か。沢口靖子の。金成分が検出されても・・。俺は科学捜査研究所に出しているんやない、質屋が地金屋に出してるねんやないかと言うと、頭をかしげて出て行きました。
しかしこの事故は、地金屋は検査報告に来た時に、金メッキバリとしてお返しさせていただくことになります、とも言っているのです。しかしまた同時に、検査数値を書いた紙を出してもいます。その数値の方を私が宝石箱に目が眩み、欲でいいように受け取ったとも言えます。

それで昔の、若い時のこんなことを思い出します。古物市場へ行くと、年配の質屋が流れ品を持って売りに来ていて、思うような値が付かないから怒るのです。安い、アカン。
しかし見ていて思うのは、もうその質屋は目利きできていないのです。それを買い手が安い値を付けると怒るのですが、完全に自分がくさんでいるのです。
市場は口の悪いところですから、目利きも歳いくとそうなるか、自分の物となるとそれほど目が曇るか、と言って楽しむのです。そうすると一層怒って、もうよろしい! もう結構です!、とますます怒って持って帰ります。
目が利かんようになって、質でくさんで、市場で怒って、歳を取ってこうなったら質屋も終わりだと思いました。

それで今回宝石箱でくさんで、あの地金屋に腹を立ててもなぁー、と思うのです。
また上司の地金屋にX線検査のことを問うても、パカーンと蓋が開いて、横のモニターにペッペッと数字が出てと答える。どこまで問うてもパカーンとペッペッだけしか答えんとバカにしよって、と腹を立ててもなぁー、とも思うのです。この上司は宝石箱を眼の前にして、もう既に事故は起こってしまっているからまともに答えられないのです。部下は検査数値を書いた用紙を出していて逃れようがない。
しかしもう、起こってしまったことですから。怒っても、腹立てても。今回の間違いが起こった原因の一つは私が胸のレントゲンのようなX線検査と、貴金属の成分を測る場合のX線分析とをごっちゃにしていたことにありますが、結局は全般に目利き能力が落ちているからでもあるのでしょうから。

昔に古物市場で、自分がくさんで怒る年配の質屋をみっともないと思いました。ああはなりたくないと思ったものです。だから今回の失敗には腹を立てないで、歳を取って目の曇った質屋と、少しズレた地金屋とが、出会い頭にぶつかって事故になった。そう思って気を静めることにしています。

H28.06.24 記     特集のネタ

若いとき(昭和47年頃)に京都の質屋組合の広報部に入ると、一回りほど上の先輩は、次号の業報の特集をどうするか、それでよく頭を悩ましていました。
質屋業報の紙面は理事長の挨拶とか、役員の紹介とか、総会の報告とか、そうした記事ですが、時期によって記事が少なくページが埋まらないときがあります。それでも一応は業報の格好をつけなくてはいけませんので、何か特集を組んでページを稼ごうとしました。しかしその特集のネタがなくて決まらないことが多く苦労していました。

その後、自分も編集をするようになって実際に特集のネタさがしをしましたが、特集が決まったら、後は座談会を開いてテープ起こしをするなど、何とかなりました。
そうした経験から、実際に毎日店で質屋の商売をしていて、これは質屋業報の特集のネタになるなと思うことがあります。それで5年ほど前に、現実に自分の店で起こったことを、当時はまだ入っていた京都の質屋組合の広報部の人に、ネタを渡す意味もあって、京都の質屋20軒ほどに、下記のような質問のメールを打ちました。

『 枚方駅前の橋本洋介です。教えてください。
金色の宝石箱の持ち込みがありました。
金しょうの刻印はなく重さは1200グラム。W-15cm H-12cm D-11cm 。
全体に20〜22金のような色をしています。磁石が反応するところと反応しないところがあります。お客様は12金と説明を受けて購入したとのことです。
品物を預かって地金屋さんにX線検査してもらったところ、
例えば、    Ag 41  Au 28  Ni 29
       Ag 9    Au 9     Ni 80  と出ます。
他にも部所によって値はまちまちで、試しに脚部の底を少し擦ると白い地肌が出てきてニッケルとのことです。そして地金屋としてはこの時点で金メッキバリであるとして品物をお返しさせていただくことになりますが、正確には溶かさないと分かりませんとのことでした。
それでこの場合は金がどれぐらいあると普通考えたらいいのか教えていただけませんか。宜しくお願いします。』

私はこのメールを打つ前に、既に箱の側板と角部のAu 28 と Au 9の検査数値から、一か八かで値を付けて質で預かっています。そして検査をした地金屋と同じ会社の上司で、以前から買いに来る人が後日店に来た時に、宝石箱を見せてX線検査の説明を聞きました。しかし何度聞いてもX線検査は蓋がパカーンと開いて、横のモニターにペッペッと数字が出る。それだけです。また次に来たときに同じことを聞いても、蓋がパカーンと開いて、つまり炊飯器の蓋のように上部がパカーンと開いて、数字がペッペッと出る。また次に聞いてもパカーンでペッペッです。いくら聞いてもそれ以上の説明をしません。

この上司の返答の様子から、すでに間違いは起こってしまったのだと思っていました。ですから京都の質屋の人にメールを打つ時点で8割方は駄目だと分かっていました。
しかしこの間違いが起こった原因の一つの、(この時点で正確に分かっていたのではないのですが)、X線検査という言葉から、胸のレントゲンのように表から裏へ透過して成分を計るイメージ、こうした私の間違いは私だけでないかも知れず、この質問のメールに対する返答のやり取りを組合員が共有すれば、紙の業報誌はなくなっても、貴金属取引についての良い特集になる。そう考えてメールを打ちました。
しかしその後、何の返答も質問もありませんでした。残念ながらメールを受け取った広報部の人達は、それが自分達に対して打たれた特集のネタだとは思わなかったようです。

                                     
                                          文責  橋本洋介

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