紫斑病性腎炎 番外編
〜専門医からのセカンドオピニオン〜
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(2001/6/15 update)

慢性腎炎から3年目。専門医からメールでアドバイスをいただくことができました。

2001年6月6日(水)、長介の尿所見は少しずつ良くなっているものの、「本当にこのままでいいのか?」という疑問は消えず、インターネットで情報を探していたところ、横井内科医院のサイトに出会いました。ここには、掲示板もあり、患者さんの相談に先生が丁寧に答えられているのを見て、私も日頃の不安を書き込んでみました。以下、その内容です。

紫斑病性腎炎の予後 投稿者:天間  投稿日: 6月 6日(水)15時05分53秒

長男(10才)が紫斑病性腎炎で約3年経過しています。
尿所見は、最近やっと血尿が(−)になり、蛋白も(+−)〜(1+)で疲れていたりすると(2+)です。
治療は当初アンギナールを飲んでいましたが、現在は何もしておりません。
主治医は、もうまったく心配ないとおっしゃいますが、本当に心配ないのでしょうか?
尿所見は少しずつ改善されていると思いますが、いずれ完全に正常になると期待してよろしいのでしょうか?
それとも、軽度の慢性腎炎のまま、一生を過ごすことになるのでしょうか?
#それならそれでいいと思っていますが...。
それとも、一番不安に思うことですが、将来、悪化して治療が必要な事態も可能性としてあるのでしょうか?

この長男の病気をきっかけに「小児科待合室」というHPを運営しており、長男の検査データも公開しています。
http://www.yo.rim.or.jp/~amama/Hospital/CH_Ex_kensa.htm#urine

お忙しいとは存じますが、ご意見をうかがえればと思います。

翌日、この書き込みに対し、副院長の横井先生からメールをいただき、私からの更なる質問にも丁寧に答えて下さいました。以下、メールの内容の抜粋です。
尚、重要と思われる箇所は、天間の判断で太字にしました。

横井先生より  件名:紫斑病性腎炎
横井です。 こんばんは
おこたえします

ホームページ見させていただきました。
詳細に経過が書かれてあって大変よく分かりました。
今までの経過でしだいに尿所見が改善されてきており今後さらによくなってくるであろうと想像されます。 ただし、例えば上気道感染、消化管感染等がきっかけになって再燃する場合はまた話は別でしょうね。

一般的に大人に比べて小児の腎疾患は、腎臓の組織変化が激しくても ちゃんと治療して効いてくれば結構よくなることが多いようです。
小児の腎疾患についてはあまり経験が無いので詳しいことは分かりませんが。 「完全に正常になる」というのが尿所見のことであれば、 正常になることも期待できると思いますが、腎臓が組織学的に治癒するか(腎炎がまったく治癒してしまうか)どうかについてはまだよく分かっていないというのが現状です。
尿所見が正常になった時点で腎臓の組織検査を受けてもいいと思われる患者さんはかなり少ないいため調べようがなく、ほんとうに治ってしまうことがあるのかどうかよく分かっていないのです。

腎臓の専門医としては、腎臓が組織学的に(細胞のレベルでも)正常になっていなければ、尿所見が正常になっても「なおりました」 とはいわないと思いますのでそのへんが難しいところです。
さらに腎疾患は同じ病名であってもその腎臓の組織の変化、症状の程度(蛋白尿、血尿の量、円柱尿の程度など)、発病の時期などによって経過と将来の予測が大きく異なってくるのが特徴です。 したがって、お子さんのことについてもここではっきりと言い切ることができません・・・。

とはいえ、尿所見が軽微なのに腎炎が進行してしまう、ということはほとんど無いですから、例えば今後血尿陰性、蛋白尿も早朝尿は陰性 、運動すると少し出てくる、という程度にまでよくなってそれが続くなら、本気でスポーツをしない限り(スポーツで生計をたてようと思わない限り)腎不全になるかも知れないことを恐れる必要は無い、とは言えると思います。
今後とも主治医の先生によく聞かれて様子を見ることは継続してください。
今後も定期的に尿検査する、ということが今一番重要なことだと思います。
せっかくよくなっている腎臓を、気付かぬうちに悪くしないためにも尿所見の変化があるか、ないかを見てゆくのが非常に大事ですね。
お答えになったでしょうか??。
天間より  件名:Re: 紫斑病性腎炎
横井先生。ご丁寧なお返事ありがとうございました。

> ホームページ見させていただきました。
> 詳細に経過が書かれてあって大変よく分かりました。
> 今までの経過でしだいに尿所見が改善されてきており
> 今後さらによくなってくるであろうと想像されます。
> ただし、例えば上気道感染、消化管感染等がきっかけになって
> 再燃する場合はまた話は別でしょうね。


これは、風邪を引いた時に尿所見が悪化するようだと、問題があるということでしょうか?
長男は、小さい頃から風邪を引きやすく、喘息も持っていて、この 2〜3年の経過の中で、高熱を出すと決まって尿所見は悪くなっていました。 最近は、年齢が上がってきて、風邪そのものをひかなく なってきたので、尿所見も落ち着いているように感じています。
今後、風邪をひいた時にどうなるかがポイントと考えていいですか?

> とはいえ、尿所見が軽微なのに腎炎が進行してしまう、ということ
> ほとんど無いですから、例えば今後血尿陰性、蛋白尿も早朝尿は陰性
> 運動すると少し出てくる、という程度にまでよくなってそれが続くなら、
> 本気でスポーツをしない限り(スポーツで生計をたてようと思わない限り)
> 腎不全になるかも知れないことを恐れる必要は無い、とは言えると思います。


尿所見が軽微なうちは安心していていいということですね。
ありがとうございます。
ところで、スポーツですが、長男は今クラブ活動でサッカーをして います。まだ小4ですので、お遊び程度だと思います。
でも、今後、中学、高校生活での、スポーツの部活動というのは やはりやめた方がいいのでしょうか?
それとも、とりあえずやらせてみて、尿所見が悪くなったら止める という考えでもいいのでしょうか?

> 今後とも主治医の先生によく聞かれて様子を見ることは継続してください。
> 今後も定期的に尿検査する、ということが今一番重要なことだと思います。
> せっかくよくなっている腎臓を、気付かぬうちに悪くしないためにも
> 尿所見の変化があるか、ないかを見てゆくのが非常に大事ですね。
> お答えになったでしょうか??。


今まで疑問に思っていたことが、大変よくわかり、また、基本的に主治医の説明と同じで安心しました。
(以下略)
横井先生より  件名:紫斑病性腎炎追加
今晩は、横井です。

>これは、風邪を引いた時に尿所見が悪化するようだと、問題がある
>ということでしょうか?
>長男は、小さい頃から風邪を引きやすく、喘息も持っていて、この
>2〜3年の経過の中で、高熱を出すと決まって尿所見は悪くなって
>いました。最近は、年齢が上がってきて、風邪そのものをひかなく
>なってきたので、尿所見も落ち着いているように感じています。
>今後、風邪をひいた時にどうなるかがポイントと考えていいですか?


基本的にはそうだと思います。大人の場合、感染をくり返すうちにだんだん蛋白尿が増えてきて腎機能が徐々に低下する、というような経過をとるものがたまにあります。小児ではこういったことはあまりないという印象がありますが、実際の経験がないのでよく分かりません。

それと関連して、いまだに答えが分かっていないことの一つに、これは慢性に経過するすべての腎疾患にあてはまりますが、小児期に発症した腎疾患が大人になるまで続くのかどうか、という疑問があります。もちろん、小児期のうちに腎不全になって透析、という経過をとる病気はありますが、ここでいう「続く」というのは 小児期に見つかってちゃんと治療したにもかかわらず慢性腎炎のまま成人を迎え、 さらに徐々に腎機能低下をきたして40、50歳くらいで透析が必要になることがあるのか、というようなことをさします。
これは「小児から成人へのcarry over」とよくいいますが、実際透析の専門医から言わせると、大人になって透析になる人で「小児期から早期にちゃんと治療を受けたのに腎不全になった」という病歴を持つ人はごく稀である印象です。
もちろん、いまだによくあることですが「学校検尿で毎年異常いわれてたけど放置していて大人になって腎生検を受けた時にはすでに相当の組織変化があって、ステロイド等いろいろ治療したけど腎不全になった」というのは除外されます。
どういうわけかはっきりと分かってはいないものの二十歳前後でターニングポイントがあるのではなかろうか?ということになっています。特にアレルギーが関与する腎疾患では、経過するにつれ(ひょっとしたら自然に??良くなるかもしれない)徐々によくなって、成人後は尿所見正常となることが結構あると聞きます。
例えば、小児喘息なんかでも成人後は知らないうちに?治療不要になってしまうことはよく経験することですね。

>
>ところで、スポーツですが、長男は今クラブ活動でサッカーをして
>います。まだ小4ですので、お遊び程度だと思います。
>でも、今後、中学、高校生活での、スポーツの部活動というのは
>やはりやめた方がいいのでしょうか?
>それとも、とりあえずやらせてみて、尿所見が悪くなったら止める
>という考えでもいいのでしょうか?


それでいいと思います。学校検尿で異常がある場合に渡される「腎疾患指導表」のとおりすると、結構制限が加わることが多いですが、 現実的に最初からスポーツさせないということは、教育、育児?、成長の観点からいえばあまりよい影響をもたらさないような気がします。
スポーツ始めて、持続的に蛋白尿がかなり出てくるようになるなら主治医の先生とも相談の上やめることを考える、ということにして、 ひとまず本人がやりたければそのとおりにさせてあげるのが、精神安定上も大切であろうと個人的には思います。腎臓を大切にし過ぎるあまり、その他子供の時期に必要な大切なことを犠牲にする可能性がある、ということも考えておくべきなのでしょう。
サッカーはお遊びでもかなりの運動量だと思いますから、それをしながらでも尿所見が改善しているということは、より楽観的に考えられる根拠の一つでしょうね。

(以下略)
横井先生より  件名:紫斑病性腎炎さらに追加
横井です。
ホームページまだよく見てなかったので、 腎生検をされていないということを知りませんでした
最初のメールで

>
>尿所見が正常になった時点で腎臓の組織検査を受けてもいいと
>思われる患者さんはかなり少ないいため調べようがなく、ほんとうに
>治ってしまうことがあるのかどうかよく分かっていないのです。


と書きました。以下、
主治医の先生から相談を受けたと仮定して腎専門医の立場で考えますと・・・

相談を受けた時点ですでに、いつ採尿しても正常の尿になっている時期ならもう勧めませんが、 早朝、来院時のどちらか、または両方で蛋白や血尿が出るようであればそれが軽微だとしてもたぶん腎生検をすすめるだろうと思います。
意味は、その時点での腎の変化をはっきりさせて、以後の生活指導に役立てる(組織的にもう問題ないのにもかかわらず生活上「無意味な」制限 をしないため。問題ないかどうかの確認をするという意味)ことです。
だから、積極的治療をするとかいうことでないので急ぎません。
例えば数年先でもかまわないので、いつか長期休暇中に学校を休まなくても いいような形で可能なら、ということです。
確認の腎生検だけが目的なら、おそらく数日から1週間の入院で済むでしょう。
もっとも、今は安全になったとはいえ多少のリスクは伴いますし、 (腎生検を)しなければ今後の予定がまったく立たないわけではありませんので しないでいても非難される??ことはありません。
ただ もしも女の子なら、将来の妊娠出産時の負担を考えて今の時点の組織学的な腎の状態を見るのは大事です(この場合は、今じゃなくても、例えば20才前後になってからでもかまわないでしょう)が。

以上付け足します。
実際には先生とゆっくり御相談ください。
「ゆっくり」考える時間的余裕はありますからあせる必要はないと思います。

このアドバイスのおかげで、ずっと抱えていた不安が解消された思いです。
横井先生には、お忙しい中ボランティア精神で私の質問に丁寧にお答えいただき、また、これらのメールの内容をHPで公開することをご快諾いただき、大変感謝しております。
長介と同じく、血管性紫斑病から紫斑病性腎炎、そして慢性腎炎と経過している方には、大変参考になる内容だと思います。



長介の慢性腎炎については、今まで通り定期的な尿検査を続けて経過を見たいと思います。
本人にはスポーツも勉強も(笑)自由にやらせて、もしも、風邪や激しい運動により尿所見が悪化するようであれば、その時は主治医と相談すればいいでしょう。
そして、高校を卒業する頃には、自分の腎臓のことをよく理解させた上で腎生検を受けることをすすめたいと思います。もう子供ではありませんから、検査のリスクも今より少ないはずです。そして、それから後のことは本人に任せることとして、親の役目を終えたいと思うのです。(2001/6/15 by天間)

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