風まかせ 月影蘭(WOWOW 水曜19:00〜19:30)[放映終了]

 放映が始まる前から結構番宣が流れていましたし、何よりこの作品の前に同じWOWOWで「今、そこにいる僕」という『とても痛い』作品を見せてくれた大地監督の作品ということもあって、非常に興味をもったというか、期待していました。アニメで時代劇というと『獣兵衛忍風帖』を真っ先に思い出すんですが、アレが山田風太郎へのオマージュだとすれば、コチラは池波正太郎といったところを目指すんでしょうか?

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第1話「女だてらに強かった」
 ミャオ姐さん、無茶苦茶可愛いっす(^_^) 表情だけでなく仕草までコロコロとよく変わる様は本当に“猫の目”のようで目が離せないです。見たまんまのわかりやすい性格といい、『動』のキャラとしての掴みはオッケーですね。対称的な『静』のキャラかと思った、一筋縄ではいかないキャラで、まるでのようにつかみ所がないかと思いきや、割と己の領域を確固として持っている御仁のようでもあります。ちょいと“流浪雲の旦那”に似たところがあるかな?と思ってみたりもしましたが、まだまだこれから見せてくれそうな気配があります。とりあえず肩の凝らない『痛快娯楽時代劇』として楽しめそうな作品ですね。

第2話「酒が涙にしみていた。」

 の“無類の酒好き”というポイントをおさえたお話。如何にもという悪徳商人とか、典型的な頑固者師匠とドジな弟子とか、ありふれたキャラですが、見せ方一つでどうにでもなるという良い例ですな。ここまで書いていて、ふと思ったのが、設定も雰囲気も全く異なりますが、手法というか『手口』は『THEビッグオー』に通じるモノがあるんじゃないでしょうか? 一歩間違えば陳腐な駒も使う人次第で本来の持ち味以上のモノを見せてくれるというところ。

 まぁ実写では出来ない部分(地面に流れた酒をが啜るところとか、ミャオのゲロゲロとか(^^;)もあるので、一概に『手口』だけをもって『アニメで時代劇』を選んだ理由にはならないでしょうけど。


第3話「いきなり母になっていた。」

 捨て子&お世継ぎ騒動とこれまた時代劇の定番。でも実写のように湿っぽくなりすぎないのはいいかも。人の死に方(というか、その描き方)もあっさりしているのも同じなんだけど、こちらはもうちょい“重さ”があった方がいいような気もします。ただどうしても一人or二人vs多数の殺陣になる場合が多いですから、食事と同じでなるべく“軽く”しておかないと(見る側が)数をこなせない可能性もあるかな?。珍しいところでは豆太郎の母親が斬られたところでが少しばかり感情を顕わにして、二太刀あびせていましたね。些細なことですが、案外この辺に生い立ちとかが関わってきたりすると面白いですね(^_^)

 そういえば、某TV情報誌に大地監督のショートインタビューが載っていました。それによるとこの作品は「大人版・おじゃる丸」だそうで...つまり、プリンがお酒で...電ボがミャオで...ヾ(^o^;ぉぃぉぃ 


第4話「知らない間に狙われた。」

 山賊を足抜けしたい若者が持ち出した宝の地図が巻き起こす一騒動。若者と将来を誓い合った大店の娘、一山当てるために山賊の一味になるはずが結局改心する憎めないキャラの兄弟、とお膳立ては相も変わらずカチッと型にはまる音さえも聞こえそうなぐらいです(^_^; でもミャオの二人組のパワーが加わると白々しさに寒くなることなんてないです。目を離せないぐらい表情豊かなミャオは、その表情と同じくらい騒動に巻き込まれる(あるいは巻き起こす(^^;)し、対照的に喋りも物静かなが垣間見せる意外性というか動きがメリハリとなってgoodです。特に今回は女中姿から襖一枚切りの絶技まで披露したのバラエティさが楽しかったです。


第5話「脱いだら結構すごかった。」

 ちょっとタイトルに期待したんだけどなぁ・・・ヾ(^o^;ぉぃぉぃ

 結局は食わせもんの絵師の爺さんにミャオだけならずまでもが口車に乗せられ(かけ)たという顛末でした(^^; ラストに珍しく怒っていたが新鮮でしたが、案外正面切って美人と言われたことは少なかったので、つい本気になりかけていたのでしょうか? ミャオの方はたぶんおそらくきっと言われたのは初めての経験でしょうけどヾ(^_^;これこれ う〜ん、それにしても今までは大なり小なりタイトルが内容を指していたのになぁ・・・やっぱ「結構」ってことだから普段ありそうにないの方だろうなぁ・・・こうなったら時代劇のちょ〜お約束、『温泉宿』を期待するしかない!! そういえば『山吹色のお菓子』とか『天井裏のでっかいネズミ』とか『帯をクルクル\(@o@)/あ〜れ〜』とかもまだですねぇ(^_^; 


第6話「ホクロの位置が違ってた。」

 いや、だから、あのね...ホクロは見せてくれないんですか(;_;)?泣くなって>をれ

 女剣士女拳法家という組み合わせは確かに珍しいから疑われても仕方ないにしても、人相書き&実物見て怒りたくなるミャオちゃんの気持ちはよくわかりますね(というか、そ〜ゆ〜風にうまくミャオが描かれている)。珍しく一対一での闘いとなったんですが、そこはそれ、キャラの持ち味ってものがありますから(^^; が壮絶な斬り合いでになっていたのに対して、ミャオの方は壮絶な殴り合いで笑いになっていました。ちょっとしたところではの裸を覗きに来た子が女の子であるとは見破っていたのに、ミャオ男の子だと思っていたのが二人の『らしさ』が出ていてGoodだったと思います。う〜ん、やっぱ素直に面白い作品ですね。


第7話「エレキでビリビリしびれてた。」

 見事なまでに“つっこまれキャラ”と化しているミャオがいと哀れだけど面白いからいいかヾ(^o^;ぉぃぉぃ 毎度お馴染みの設定&キャラで手堅く話をまとめつつも、酒屋で博士に自らの信条を語ることで何気ないアドバイスをした結果になったあたりのようなちょっと毛色の違うワンポイントが入れられているあたりにおもしろさが続いている理由があるのかも。


第8話「この世にゃ神などいなかった。」

 まぁ時代劇に出てくる宗教といえば、金銭巻き上げる詐欺集団か、妖しい邪教の秘密結社か、どちらかに決まっているので、今回のお話も王道といえば王道ヾ(^o^;ぉぃぉぃ それにしても今回はミャオちゃんの猫鉄拳が見事に炸裂していましたね。いかにも猫鉄拳らしい猫鉄拳という描かれ方もされていましたし、何より下っ端だけでなく親玉とも対決していましたし。それに引き替え毎度の如くマイペースなのが(^^; 「自分の人生は自分の力で」って、うっかり酒代無くてミャオちゃんに集ろうといていたのは誰でしたっけ(^_^;? もしかして「やらなくてよかった」ってのは飲み逃げってこと? うん、確かにそれは自力での解決だなヾ(^o^;これこれ 


第9話「当てにしてたら敵だった。」

 吐きそうになるほど食っていてもなお勿体ないと手にしたおにぎりを食おうと悪戦苦闘するミャオ、十日間も飲まず食わずだったので道の真ん中で休憩していたと主張するも誰が見ても行き倒れていたミャオのおにぎりがを救うかに思えたがさにあらず(^^; 何にも考えてないミャオはおにぎりを一口で頬張って、哀れの目から希望の光が消え失せましたとさ。が、妙に気前がよかったミャオのおかげでは茶屋で飯と酒にありつくことができたんですが、その訳を話そうとするミャオを適当にあしらって聞く耳持たんという感じ・・・かと思いきや、しっかり聞いていたようです(^_^; とまぁ、ここまではいつものほのぼのコメディ路線だったんですが、ミャオの機嫌がいい理由、久しぶりに会うという幼なじみメイの登場で事態は一変します。

 後から思えば「昔別れたor久しぶりに会った親兄弟親友が敵味方だった」というのはこれまた時代劇のパターンで、タイトルからも十分推測できたはずなんですが、前半のミャオの嬉しそうな顔をはじめとする角のない暖かみのある情景が、後半のミャオvsメイという見る側にも痛い状況、そして何より「哀しいよ、メイ」というミャオの台詞を際立たせていました。

 最初不利に見えたミャオでしたが時が経つにつれ両者の力が拮抗するようになってきました。たぶん幼なじみ相手に全力を出せなかったミャオが次第に覚悟を決めだしたのと、割り切って戦い始めたメイが次第にミャオとの想い出を甦らせたために無意識に手加減しだしたんじゃないかというのが、私の好意的な見方です。で、双方ボロボロになりながら、どちらか一方が死ぬしかないという膠着状態に陥るかと思われた状況を打破したのは、ミャオメイ、どちらでもなくメイを背後から襲ったというあっけないものでした。でも、「幼なじみを殺した」というトラウマを残さないためにミャオに直接手を下させずに、メイの死に際に立ち会わせるにはこれしかないのかもしれません。

 翌朝いつもと変わりないように明るく振る舞いながらも恐らく一晩中泣き明かしたのか目を腫らしたミャオ、これまたいつもと変わりないように行く先を酒樽の荷車と同じ方向に決めた、二人のさり気ない感じが見ている側にもホッとした気持ちを与えてくれてとてもGoodでした。


第10話「南蛮娘はデカかった。」

 ちょっといつもと違った雰囲気の回でした。タイトル通りデカい南蛮娘のステファニーことスーさん(^^;の「ニッポンはブシニンジャゲイシャの国」で「すばらしいブシドウを実践しているブシ」になりたいという凄まじい勘違いが巻き起こした一騒動でした。ともかく洒落にならんパワー相手にはさすがのも手を焼いてあわやというところまで追いつめられたのですが、だてに『ただの美人な素浪人』じゃないというか、生き残るためのしぶとさというか、「ブシ」ではない面で切り抜けたといったところでしょう。まぁ面白いといえば面白いんですけど、前回までのに比べるとちょっとダウンしたかなぁ〜って感じですね。

 何より最初のゾウがその後に絡んだのは饅頭のみというのは(の崩れっぷりも面白いけど)少し残念です。スーさんとの重量級激突(^^;を期待していたので、との戦いの場に乱入→スー(うっ、今気付いたけどまさかミキは今回いなかったよな(^_^;?)は一次休戦→真正面からぶつかっていったスーは善戦するも敗退→その間隙をついてがゾウを仕留める→スー、力ばかりの自分を反省して帰国・・・という形にすればラストは同じですけれど直接スーが対決(両者を比較)するシーンを見せずにすむ(ちょっとがやられ過ぎかな?という気持ちがした)ので、すっきりすると思ったんですが。

 それにしても妙に下手だけど妙に滑らかな日本語(でも内容は滅茶苦茶(^^;)を見事にしゃべくりまくっていたスーさん役の声優って誰?


第11話「仇が敵になっていた。」
 『路銀に困った親子による詐欺』と『御前試合の遺恨による敵討ち』というパターンをうまく重ねて、説教が全く似合わない(^^;に、親子には親子のを失わせないために、追っ手には下らない因果応報のを断ち切らせるために、『敵討ち』をやめさせました。相変わらず一人ボケ突っ込みな喋りが快調のミャオちゃんや、こと酒が関わると人が変わるなどポイントも外していないんですが...個人的にどうにも気になって仕方がない点があってすっきりしませんでした。それは『敵討ち』。まぁこの作品の時代設定というか舞台がはっきりしていなかったのでアレなんですが、日本の江戸時代は敵討ちって確かちゃんと届けを出さないと単なる『刃傷沙汰』だったような気がするんです。あんまり時代劇なんか見ない私でも、その辺の話を何回か目にした憶えがあります。だから詐欺のネタに使おうとしても、すぐに役人がとんでくるので使えないんじゃないかなぁ〜っという気がして仕方がなかったです。細かいことだけど。

第12話「磔られて困ってた。」

 これぞ定番中の定番、悪代官の悪巧みに巻き込まれた末に逆にそれを成敗するというパターンなんですが...前回同様個人的にはしっくりこないんですね。この手のお約束では「代官達をその屋敷内で隠密裏に成敗」か「より上の者に手を回して抑え込む」というのがよくある対処法なんですが、今回はにしてもミャオにしてもただの旅の拳法家ただの美人の素浪人(^^;ですし、にされる時点で事件が公になっているので、はてさてどうするのかな?と思っていたら、事件の結末はの説明だけで終わっちゃいました。私としてはここをもうちょい描いて欲しかったです。例えば...

代官を縛り上げたところに殿様の駕籠が到着。
代官ミャオを悪者に仕立てようと殿様に芝居で泣きつく。
殿様代官を一喝し、数人の申し立てにより今回の事件を含めた代官の取り調べをする旨を伝える。
殿様の駕籠の陰に平伏していたのはが酒場で出会った例の目撃者たち。
・喜ぶミャオに一言叱りながらも、達にはきちんと礼を通して殿様退場。
・翌日の道すがら、目撃者達が申し立ててくれたことに感謝しつつも不思議がるミャオに、その点には触れまいとする。それをネタにまた仲良く口喧嘩する二人。

という方が事件の顛末もすっきりするんじゃないかと思うんですが。

 ただ逆の見方をすればややこしい展開は省いて、ミャオキャラを前面に押し立てた演出と見れば、今回も非常に楽しいつくりに仕上がっていたと見ることも出来るんですね。やっぱり、そ〜ゆ〜方が正しいこの作品の見方なのかも(^^;

さて、次回は最終回。それも今までほとんどというか全く触れられていなかったの過去話のようですね。


第13話「過去にロマンス隠してた。」

 いつもながらの顛末のようで、しかし最終回というか、けじめの1本として仕上がっていた回でした。
 順三郎の間に何やらただならぬ関係があったことを匂わせつつもハッキリとした表現を避けて、シーンの端々で少しずつベールを剥ぐように見せながらも。結局真相は明かさず終いというのがGoodな味でした(まぁだいたい想像がつきますけど(^^;)。

 過去に失敗した男と女、今二の轍を踏もうとしている男と女、これを重ねることで今の男女にを拓くとともに、昔の男女に過去との決別をつけさせているのが今回のポイントなんですけれど、寡黙ながキーマンとしての役割を見事に果たしていたと思います。安酒場での順三郎との再会、料亭でのおつたとの会話、最初にも書いたんですが説明調な台詞を減らして『雰囲気』で話に流れを作っているので無理なく最後まで見せられるつくりだったと思います。

 ただ突っ込み屋(^^;としてはラストの道場での展開がちょい甘いと言いたいのも事実でして...

蘭「じゃ、看板もらってくわ」
主「ま、待ってくれ、それだけは...他のものなら」(小判を出そうとする)
蘭「あら、そう? じゃあこれもらうわね」(おつたの身請けの証文を取り上げる)
主「あ、それは」
蘭「いい、よく考えて。『道場』と『女』とこれから先どっちが大事か」
主「・・・」
蘭「じゃ、文句ないわね」(証文を引き裂き、二人の方に目線を)
順三郎とおつた、ほっとした顔で頭を下げて立ち去る。

...とまぁこうすれば証文がきれいに片づくと思うんですよ。証文一枚で意に添わぬ身請けをされそうになったばかりなのに、それをそのままにしておくのはちょっと気になったので(^^;(最悪の場合、主が身請け元に証文を戻せば有効になるわけですから)

 でも、その辺は些細な事で、ミャオのなりゆき成金に酒のためなら魂まで売りそうなといういつもの凸凹コンビはいつも通りに楽しげに旅を続けていくって感じが毎度の事ながら心地よい余韻を残しつつも、やっぱり最終回だなぁ〜と思わせてくれたあたりがやはりお見事でした。


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