=====   自治体にはたらくパートの権利手帳   =====
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[第3章]これだけある公務パートの権利と制度保障
§1  公務パートに権利や制度保障はない?
§2  パートも均等待遇に扱われるのが世界の流れ
§3  公務パートにも労働基準法が適用
§4  一番素敵で強力な権利 それはパートが団結すること、たたかうこと
           労働三権      ●不当労働行為の禁止       ●委託契約でも労働組合に入れる
§5  さまざまにある制度の適用
     @社会保険(厚生年金、政管健康保険)のあらまし
     A雇用保険のあらまし
     B労働災害補償のあらまし
     C年次有給休暇
     D勤務についての決まり
     E生理休暇は請求権です
     F産前産後休暇や妊産婦の権利
     G育児時間
     H育児・介護休業
     I労働安全衛生
     Jパートの税金問題
     K最低賃金法の適用
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§1 公務パートに権利や制度保障はない?

 自治体に働く臨時職員・非常勤職員・など、正規公務員に比べて、短時間労働か短期間雇用されているさまざまな雇用形態にある労働者の総称です。公務員の一種に位置付けられている様に言われると、民間の一般の労働者に適用される法律や制度から外されているように思えたりします。しかしその反面で、正規公務員ではない、パートだからと言われると、公務員に適用される制度や処遇からも外されているように思えたりもします。もちろんそんなことを宣伝するのは誤ちです。
 さまざまな点で正規公務員並みの扱いをしなければならない制度がたくさんあり、同時に民間労働者と同じ権利や制度保障が与えられているのです。このことをこれからしっかり身につけていきましょう。
 たとえば、労働基準法や労災補償制度などは、あなたの勤務条件にかかわらず原則的に適用されます。また社会保険、雇用保険などは、あなたの勤務条件によって資格が備わり、適用されます。(詳しい解説はその項目を読んで下さい)
 そして、ボーナス・退職金・諸手当などは、法律や制度で支給することを定めていないからといって、出せないとか要求できない、というものではありません。実現させるように要求し、制度や規程を変えていけばよいのです。
 よく当局側は「非常勤には報酬以外には手当(一時金や退職手当など)を出すことは地方自治法で禁じられている」からと、認めようとしないことがあります。しかし、労働組合の運動によって一時金や退職金制度を実現させている例は全国に沢山あります。さてここでは次の3つのことを学びましょう。

@労働者の権利や利益を保障した法律や制度を知ること。

A労働条件や雇用継続を運動の力で獲得して来た仲間の実績を 学び、いままで「なかった」権利や制度保障を実現していく ことに確信が持てるようになること。

B労働組合の基礎知識を身につけること。
 労働者に取って最も大切な権利ですが、実際に「入る」「作 る」ことにしないと、要求実現にとって決定的なパワーを手 にしたことになりません。
 
 といったわけですから、以上の基本的な3つのポイントについて、この第3章で学びましょう。

§2 パートも均等待遇に扱われるのが世界の流れ

パートタイマーは、同一事業所に雇用されている通常の労働者とほとんど同じ仕事をしたり、同じくらいの労働時間であっても、正規よりはるかに低い待遇におかれているのが日本のパートの実態であり、公務パートも同じ状況にあります。
 労働時間が正規職員並みであったとしても、賃金はおそらく数分の一という劣悪さです。加えて一時金や退職金もない、そして逆に労働時間は(年休・特別休暇・諸権利休暇なども考慮に入れると)正規に限りなく近く、労働時間ではじいた賃金格差は驚くほど大きいのです。「名のみのパート」「疑似パート」といわれるゆえんです。
 国連人権規約では賃金上の差別は人権差別であるとしています。また国際的な労働基準を定めているILO(国際労働機構)は、94年に『通常の労働者と均等的な待遇を図る』よう指示したパート労働条約を国際的に締結し、日本政府に批准(国内法に定めるよう)勧告しました。日本政府はこれを今日まで見送っており、先進国では日本だけとなっています。国内法には『パート労働法』や法律ではありませんが『パート労働指針』などがあります。いずれも一般労働者との均衡を考慮するよう使用者側の努力をうながしていますが、強制力がないため実効性が事実上失われています。そんな中でも、契約スチュワーデス問題や長野県の丸子警報器事件のように、不安定雇用の解消や均等待遇の実現を求める闘いで経営者団体が大衝撃を受けるほどの勝利をつぎつぎおさめています。パート労働者の不安定で差別的低賃金が日本ではいかに重大なことがらであるかをしめしています。不安定雇用労働者のたたかいは今日大きく前進をみせており、自治体の仲間にも運動が力強くひろがっています。『処遇や地位の向上と、自治体職場で良い仕事がしたい』 そんな公務パートの誇りを胸に、これから全労連・自治労連の仲間といっしょにがんばりましょう。

§3 公務パートにも労働基準法(労基法)が適用されます

 憲法第25条では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、すべての国民の生存権を保障しています。
そして憲法第27条では「全て国民は勤労の権利を有し、義務を負う。賃金、就業時間、休息その他の労働条件に関する基準は、法律でこれを定める」と、勤労権を明記し、「労働基準法」を定めました。すべての労働者を前提にした法律ですから、公務のパートも基本的に適用されることは当然です。 そもそもパートとは、身分的区分をいうのではなく、短時間労働という勤務形態にある人のことをいうのですから、この点を除けば通常の労働者と同じです。自治体職場におきかえれば、非常勤や臨時の公務員という名がついてはいても、特に労働条件にかかわる大部分は基本的に労基法適用とされる労働者なのです。

   ◆労基法に違反すると使用者は処罰されます

 そこで、これから説明する権利や労働条件をきちんと身につけ、行使していくことが大切です。
 他の労働法規もそうですが、労基法も自然に労働者を守ってくれるものではありません。きちんと請求し、守らない相手には労働者もキゼンとした姿勢をとることが必要です。
 その際、権利を請求・行使したからといっても、使用者はクビにしたり、不利益な扱いをすることを法律で禁じています。
もし使用者が労基法の定めに違反し、是正の勧告を監督署からうけてなお正さないような悪質な使用者は刑事処罰されます。

§4 一番素敵で強力な権利
  それはパートが団結すること、たたかうこと

 日本国憲法では基本的人権の一つとして、労働者の働く労働条件の最低基準をきめ、その向上をめざして団結して行動する権利を保障しています。憲法第28条では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する」と、労働者の労働三権を保障しています。
 労働組合をみずからつくれる、労使対等に交渉できる、団体行動も、いざとなれば実力行使もできます。
これはパートの権利として、きっと一番素敵で、もっとも力強い権利ではないでしょうか。
どのような権利も(憲法も、平和も、幸せを守ることも)
闘ってこそ守られるのだ、とよく言われますね。
これから説明するパートの数々の権利・制度保障も、はたしてどれだけ現実に守られているでしょうか?
不合理な実態にきっとあなたは気付き、これではいけないと思うでしょう。
さあ、あなたはどうやってそれを変えていこうか、と考えることでしょう。
 そのガンバルあなたを応援す
る頼もしい味方、それが労働組
合です。              挿絵8
 その権利をあなたが持ってい
ることを堂々と表明し、勇気を
ふるって行動に表わしたとき、
パートの権利と制度保障はもっ
と実現し、さらに向上すること
でしょう。
 

●労働三権

@団結権とは
1、労働者が労働組合をつくり、自分のはいる労働組合をえら び、それに加入する権利
2、労働組合が自分で規約を作り、運営と活動などのいろいろ な計画をたてる権利
3、労働者が組合の各種の役員や委員につき、または選ぶ権利
4、労働組合が行政機関や資本家の干渉や支配介入を受けず、 解散その他、活動を妨げる処分を受けない権利

A団体交渉権とは
1、使用者が労働組合の存在を認めること。
 (労働組合の通告で充分)
2、労働組合があるとき、その組合を通じないで、直接一人ひ とりの労働者と交渉してはならない。
3、労働条件を一方的に決定したり、変更してはならない。
4、使用者は誠意を持って団体交渉に応じる義務があり、正当  な理由がないのにこれを拒否することはできない。
  (労組法第7条2号)

B団体行動権とは
  使用者が団体交渉に応じる義務があっても、要求をのむと は限りません。また逆にさまざまな合理化攻撃や雇用打ち切りを行ったりもします。交渉だけでは解決しないようなときに、労働者は団結の力を示すために、また利用者や市民の理解や支援を求めて、集会やデモや、ときにはストなどの実力行使を行うこともあります。もしストが行われるとそこでの業務は停止します。しかし使用者は正当なストによる損害賠償を労働者に請求したり、処分をすることはできません(労組法第8条)。

 1、争議行為をおこなっても刑事責任が追究されない。
 2、争議行為に対する国家機関の権力的介入は禁止されている。
 3、争議行為によって、資本家(使用者)に損害を与えても損  害賠償は請求されない。
  4、争議行為に対する資本家(使用者)の干渉や介入あるいは  報復手段、懲戒処分することなどは禁止されている。
 

●不当労働行為の禁止

 労働者がこうした労働基本権に守られ、みずからの労働条件と地位の向上をはかろうとすることに対して、資本家(使用者)側が、対抗的に弾圧をしたり分裂攻撃をかけたりすることを、『不当労働行為』といい、法律で禁止されています。

 1、労働組合を結成すること、もしくは加入すること、正当な活動をしたことをもって不利益な扱いをすること。
労働者が組合に加入しないことや脱退することを雇用条件とすること。(よく、雇用を打ち切ったのは、たまたまその人だっただけで、本人の組合活動とは関係ないとか、組合員とは知らなかった、などと不当労働行為意思を隠すことがあります。こういう場合でもあくまで、本人や労働組合の損害が予想されることや、ふだんから使用者側が組合敵視政策をとっていたなど、客観的な実態で不当労働行為性を追及することが大切です)
 2、正当な理由なく団体交渉を拒否すること。
 よくあるのは、団体交渉に形式的に応じて、のらりくらりと不誠実な態度に終始するような交渉です。これは団体交渉権を実質的に侵害したことになります。これを不誠実団交といって、団交拒否と同様に禁じられている行為です。
 3、支配介入、労働組合への経費の援助(抱込んで御用組合化  をはかるおそれを防止するため)
 4、労働委員会に申立てをしたことなどをもって、不利益扱い  をすること。

●委託契約でも労働組合に入れる

 通常の労働契約とみなさない契約形態が、ホームヘルパー、訪問看護婦、手話通訳など、社会福祉の分野を中心にいま急増しています。またシルバー人材から派遣されている労働者も、労働契約とみなそうとしていません。「業務委託契約」や「有償ボランテイア」といった請負・委託形式をとっているようにみえても、実質は自治体などが仕事の指揮命令を一切行い、業務管理も労働時間も拘束された「賃金労働契約」そのものとなっています。(委託とは、本来、仕事を受けた側の裁量で業務管理するのであって、直接労働契約にせず、しかも請負いの実態にもない、こうした働かせ方自体に問題があります)
厚生省・労働省や自治体のこうした動きのなかで、雇用契約とされないために、社会保険も雇用保険も、労働災害すら適用されない労働者が増えていることは重大な問題です。
 同じ自治体の労働者だから共通の要求がたくさんあります。
労働者は要求で団結する組織です。入れないのでは? と悩んでいるのでしたら、すぐにも相談してください。
たとえあなたが『労働契約』でないとされていても、労働組合に誰をいれるかは労働者が決めることです。
 自治労連は、登録ヘルパーや訪問看護婦、手話通訳の方々も組合にどんどん入ってもらい、「安心して働きたい」「障害者、おとしよりのために良い仕事がしたい」 と願っている福祉の第一線で働らく仲間のために、全力挙げてたたかい、契約の打ち切りをやめさせたり、労働条件の改善に多くの実績をあげている労働組合です。

 ★堺市のヘルパーは、登録ヘルパーとして永いあいだ勤めてきましたが、労働組合をつくってたたかい、市の非常勤ヘルパーにさせ、労働条件を大幅に向上させてきました。

§勤務条件で制度適用が異なります

 これから説明する法律や制度は、しばしばパート労働者の勤務条件(勤務時間や日数、雇用期間など)を基準にして、適用対象となるかどうか判断されます。この点を意識しながら読んでいけば理解しやすいでしょう。

【チェックポイント】  ◆継続勤務◆
 ところでこの際に、最もかんじんなチェックポイントがあります。よく出てくる「雇用がどれだけ継続しているか」の判断です。パート労働者はたいていの場合が1年以内の雇用契約ですね。しかし契約をくり返して、実質は「継続勤務」となっている人も少なくありません。ところが雇い主(当局)はそれを「いったん区切ったのだから継続にならない」として、制度適用を認めようとしないことがあります。もちろんそれは正しくありません。
 また、契約期間の終期と始期との間に短時日の間隔がある場合でも、継続勤務の中断にはならないと解されています(平成1・6・23基発342号など)[この基発という意味は、労働省基準局からいつ発令されたという意味で、運用の基準や解釈として行政機関に権威をもつものです] 人事院でも「継続勤務とは、その雇用形態が社会通念上中断されていないと認められる場合の勤務」だとしています。ですから、使用者側のごまかしをはねかえし、権利として堂々と要求をしていきましょう。
 
 
 
 

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