=====   自治体にはたらくパートの権利手帳   =====
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 [第5章]不安定雇用の解消をめざして

    §     まずは元気の出る実例から法律知識を身につけていこう
    §1 とっさのチェックポイント
    §2 首切りの口実をくずす『ワンポイントアドバイス』
    §3 打ち切りをこうしてはねかえした
    §4 解雇権の濫用(らんよう)を禁じた法理
    §5 他人名義で契約させられている問題
    §6 真の雇用保障・均等待遇の制度確立を  
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「ここをあてに何年も働いてきたのに」
「いまさら就職するあてはありません」
 契約期限だから当然、といわれたあな
たは、どうしますか?
永年あなたを雇用してきた使用者の社会
的責任は大きいのです。                         挿絵 30                 
公務パートにとって、雇用の安定こそも             <来なくていいよ>                
っとも強い要求です。いったい使用者が
雇用を打切ることとは、どんな場合に許
されないのか、どんな場合に本当にやむ
を得ないのか。
 雇用の保障とはいったいどんな社会的
責任や法制度上によって守られているの
でしょうか。
 これから必要なことについて理解を深め、いざというときに泣き寝入りしないように、備えましょう。

§  まずは元気の出る実例から法律知識を身につけていこう

 5年勤務の安条鳩代さんは今回限りで辞めてもらうといわれました。当局からは地公法で決められたことだ、
はじめから契約でそうなっていたはず、といわれました。
 ずっと働き続けて下さいといわれて長年働いてきた鳩代さんは、どう考えても納得がいきません。そこでひと
に相談したところ、民間のパートだと裁判でけっこう勝っているけれど、あなたの場合はどうも形勢が悪いようだ、
と聞かされ、ますます不安になってしまいました。

 さあここで、法律的に勝ち目が無いと思い込んであきらめたのでは、鳩代さんのあしたからの雇用や生活は
守れません。それに今後の生活はここで働くことが前提に組まれている点でも引き下がれないところです。悪
いことに「この就職難では」「女のわたしの年では」とあっては、ここはひとつ「ふんばるぞ」いや「ふんばろうか
な〜」と思う鳩代さんです。

 いま鳩代さんにとって一番必要なことは、ちゃんとクビをつなげた元気の出るはなしをいっぱい知ることでした。
 そうです。これから『法律や制度』を学ぶにあたっては、鳩代さんのように、「生活がかかっているんだ。どうやれ
ば雇用切らせないか」という執念=本音の気持ちを大事にしながら学ぶようにしてください。そうすれば、まずはあ
なたにとって元気の出る、(むずかしい、ややこしい話は少々後回しにしてでも)、必要な部分から、法制度の知識
がわかりやすく頭に整理されていくこととおもいます。
 これからやろうと思うことに元気や確信がわくような知識でなければ、なかなか身につくものではない、と逆に考
えればおわかりでしょう。
 たとえばこうです。
「ここまで働いてきたことの重み」も、「仕事があるのに自分は働けなくなることの不合理なはなし」も、実は法律的
にふんばれる意味のあることを知ることです。

 あるいは、労働者を擁護する法律を使用者が犯している(解雇予告もしないで突然切る)とか、適用されるはずの
保障制度(雇用保険、年休不支給、など)を怠っている。そのなかでの雇用打ち切りに対して、まずはそのことをちゃ
んとしてくれないと辞めるわけにはいかない、とはねつけて、雇用を守ったたくさんの経験も、法制度を立派に武器と
して勝ったはなしです。

まずは、あなたにとって元気がでる実例から、法律知識を身につけていくこと、ここでがポイントといえるでしょう。

 

§1 とっさのチェックポイント

 打ち切りをいわれたとき、その場で了解をしないことがまず大切です。
 そこで、次のような点などについてチェックしましょう。
もし問題があれば説明を求めます。大切なことは、このままでは納得いかない、生活が困ることなども含め、
打ち切られるのは困ると、はっきりつたえることです。
 そして自治労連や地域労連などの労働組合があれば、まずはそこに相談しましょう。以下のような点でもし
問題があれば、こんなことでは打ち切りは認められない、ということをまず主張します。そして支援の仲間とす
ぐにも相談をすすめます。
 @雇い入れ通知書や最初の口頭の約束とちがっている
 A身分がはっきりしないで雇われてきた
 B更新していたのに解雇予告もなく突然切るといわれた
 C社会保険、雇用保険、年休など脱法扱いされてきた
 D各人によって、扱いが異なっている。(選別的なふるい落し)
 E仕事が減ったからといいながら、別な人を入れようとする。


§2 首切りの口実をくずす『ワンポイントアドバイス』

 「公務パートの雇用を守るための法律・制度」を知るうえで、心構えとともに、次の事がポイントです。
 自治体にはたらく臨職・非常勤が現在おかれている状況は、よくいわれるように、地公法の厳格な適用を
根拠にした本来の任用制度とは、かけはなれた存在となっているのです。
つまり使用者みずから法制度を逸脱した雇用実態をひろげてきたのです。にもかかわらず、使用者側は雇用
の打ち切りや、労働条件改善をこばむ際には、あたかも地公法を厳格に踏まえた「法制度上からの要請」だと
言わんばかりに、都合の良い時だけ「法制度」を振り回してきます。したがって、雇用打ち切りに際しては、雇
い主の首尾一貫しない、使い勝手の良いやり方は許さないという、反撃のかまえこそ、あなたの雇用を守る第
一の関門です。

@臨時雇用は6ヵ月期限だと、5年経った今ごろいわれた。

(反撃) 当局はあなたを疑似的な臨職として扱ってきたので、 法律でいう「臨職として打ち切る」だけの正当
な根拠をもはや失っていると反撃し、継続保障するよう要求しましょう。
 臨職の長期雇用の実態は、地公法のどの類型でも説明できません。だからその地公法をタテに雇用を打ち
切ることは認められないという主張がまず大切です。
 そもそも臨時職員の任用根拠である地公法22条では、恒常的な業務につかせてはいけないとされています。
しかしあなたは恒常的業務に何年もついています。臨職とは、臨時的な仕事だから仕事が消滅するので雇用
も消滅する、というものです。しかしあなたの場合、仕事は残し人だけ入れ替えるという、まさに地公法で禁じた
やり方となっています。あなたはもはや半年期限の臨職ではないのですから、責任持って継続雇用するよう要
求しましょう。

A臨時の調理員は半年で切るといいながら、臨時の保母は20年もいる。これってなに?  

(反撃)当局は地公法上、臨職のあなたは半年以上おけないといいながら、短時間パート(おなじ臨職)の継続
には何らの説明もしないというのは、当局が法律通りのことを行っていない証拠です。当局の「言っていること
(法制度)」と、「やっていること(雇用・就労の実態)」では、理屈の合わない点がいろいろあるものです。御都合
主義を見破って反撃し、差別なく継続させるように要求しましょう。

B4年契約の非常勤雇用。「契約の際、あなたも承知したはず」 と打切りを通告されました。やむを得ないの
  でしょうか? 

(反撃) 4年間だけ雇うような任用制度は、もともと地公法には予定されていません。非常勤には臨職のように
6ヵ月(ながくても1年)という、法的な任用期限もありません。そもそも労基法では1年以上の有期契約は無効
としているため、しかたなく非常勤には一年更新でしかし雇用は継続的に、という今日の形態が定着したといわ
れます。このように4年契約というのは、明らかに労基法の趣旨に違反するものです。
 またなぜ4年で切ってよいのか、合理的な説明があるのでしょうか。1年で入れ替えるのでなく明らかに勤続の
キャリアをあてにしているのでしたら、4年の意味はまったく不合理なものです。
 非常勤としてのあなたの仕事そのものがなくならないで、あなたを入れ替えるだけでしたら、納得のいく合理的
な説明がなければなりません。
 あの日経連でさえ、現行法では何年かの契約型は許されないからこそ労基法改悪を主張しているのです。もし
本当に行政当局のいう「1年更新型なら契約年数は何年型でもよい」という考えが通用するのなら、日経連はとっ
くにやっているでしょう。1年更新で継続性を否定しながら中期的勤続による成果を確保しようとする自治体当局の
脱法的やりかたは突出して不当なものといえます。
 あなたをくり返し更新してきた使用者の雇用責任はまぬがれないことをきっぱり主張しましょう。そして継続雇用
の保障を、例えば最低でも65歳定年などとして、対抗要求することも重要です。
 

§3 打ち切りをこうしてはねかえした

●年数制限をはねかした例

 ★今治市の学校給食調理員(臨職)は、3年期限を5年の雇用期間に延長させ、20人の組合員を新たに迎え、
   一時金実現に向けて頑張っています。

 ★東京都文京区の学校警備員(非常勤)は、従来定年制がなかったのに3年の有期雇用が導入された後に分
   会を結成。2年の闘いでついに、非常勤の65歳までの継続雇用制度をかちとりました。

●雇用責任をトコトンとらせた例

 ★静岡県蒲原総合病院給食パート(臨職)は、給食の民間委託化の際に、契約打ち切りを口実に全員解雇を言い渡されましたが、委託先の企業に雇用する事を保障させました。市当局には、引き続き団体交渉当事者として対応することまで確認し、今後の労働条件を引き下げない条件を切り開いたことは重要な教訓を残したといえます。

 ★東京都養育院の夜間救急事務員(非常勤)は、やはり民間委託化の際に、1年更新契約を理由に、長年働いていたのに切られました。組合に加入し、闘いによって、委託先を民主的な労働者協同組合に指定変更させ、依託化されましたが、これまで通りの条件で同じ職場に全員雇用保障させました。

●ずさんな処遇回復せよ、と解雇をあきらめさせた例

 ★東京都立墨東病院の夜間救急事務員(非常勤)は、民間委託によって全員解雇を言われましたが、組合に加入して反対に立ち上がりました。長年社会保険も雇用保険にも加入させてくれず、首切られたら何一つ保障がないと、違法な当局をおいつめ、依託計画も解雇も全面撤回させました。

 ★同じく東京都台東区保健所の検査員パートも、長年身分さえはっきりしない中で、依託による打ち切りをいわれました。任用も明確でないのに任用を切られる理由はないと反対し、撤回させました。

 全国にはこうした成果が多くあります。このように、当局が日頃よりズサンで不当な処遇をおしつけ、社保などの脱法行為を犯している状況は、雇用打ち切りをはねかえす際の有力な反撃要素になるという、好例です。


●より安定した雇用保障に前進させた例

 ★東京の都区関連一般労組では、いま特例・延長保育をはじめとする短時間パート臨時職員を、雇用期限のない非常勤職員化させるよう運動し、いくつかの区で実現が進められています。

 ★松山市道後温泉の市非常勤職員をはじめ、長年働いてきた多くの非常勤を、ねばり強い運動によって、正規の市職員にすることをかちとりました。

 ★福島県二本松市の社会福祉協議会では、24人中正職員は3人でしたが、組合を作って10ヵ月後に、全員の正規化をかちとり、いっきに市職員並みの労働条件に改善させました。
 
 

    写真  <自治労連ビラ  介護風景>
 

§4 解雇権の濫用(らんよう)を禁じた法理

 有期契約(期間の定めがある契約)の公務パートが、期間満了に際して更新拒絶(雇い止め)される場合、一般的には法律上どのような対処の仕方が考えられるでしょうか。具体的な反撃の運動こそが最も重要だとこれまで説明してきましたが、そのためにも、法律・制度をたてにしてくる当局に負けないために、こうした問題も常に学んでおくことが大切でしょう。

●期間の定めのない、または反復更新合意の契約実態

 特に仕事が一時的・季節的ではなく、特別の事情のない限り更新するのが普通とされていた場合、当事者間に実質的に期間の定めのないものと同様の認識と双方の合意が存在しているものといえます。公務パートの場合たいへん多いケースです。
このような継続勤務実態は、『期限のない雇用に転化』しているといい、実質的な継続雇用とみなされます。また過去に契約が反復更新されていなくても、将来の更新を期待させていると認められる場合もよくあります。
 裁判では、期間を定めた労働契約であっても、上記の様な一定の場合に雇い止めに対する制限が認められ、解雇権濫用法理を類推する(同様にあてはめる)べき場合があるとされます。
 契約更新手続がズサンで事実上期間の定めのない契約と認められるケースでは解雇権濫用法理が、類推でなく直接適用されるとして、東芝柳町工場の臨時工の解雇は無効とする判断を最高裁は示しました。同様の判断として大阪地裁は三洋電機のパートタイマー(2ヵ月更新)の整理解雇を無効とした有名な判例があります。反復更新してきたという実態が重視されるのは、それだけ働く権利や生活権の中断は軽々しく考えてはならない、使用者に社会的責任や公序良俗に違反しないことを求めたものに他なりません。

●解雇権濫用の法理とは

 長年継続勤務してきた公務パートに対し、慣行の一方的な変更ともいえる突然の打ち切りは、このように単純に『雇い止め』だから自由に切れるということではありません。この様な場合、『解雇』もしくは『解雇と同様』にみなされるわけですから、正当な理由がない限り使用者側はみだりに解雇権を濫用してはならないという制限が付けられることになります。
 この制限とは、次の4つの要件を満たさなければ法的に無効とされています。

@人員削減の必要性が存在すること
  人員削減措置が経営上の十分な必要に基づいていなければならないとされます。パートを入れ替える、そのために雇用年限制を導入する、といったことでは、とうてい経営危機からくる必要性とはみなされません。
A解雇を回避するための努力義務がつくされていること
  労働時間短縮、配置転換、新規採用の停止、などの努力をせず解雇したり、希望退職募集をせずいきなり指名解雇した場合は、回避努力義務を尽くしていないとみなされます。
 自治体リストラによる業務委託や職場統廃合では、真っ先にパートが切られる場合があります。正規労働者同様に、配置転換や他の関連事業所などへの雇用保障の努力が使用者側には当然求められます。

B解雇される者の選定基準が合理的であること
  労働者の責めに帰する事由による解雇ではないので、被解雇者の選定は、客観的に合理的な選定基準を公正に適用することにより行われる必要があります。何才以上のパートから切るとか、特定の職種は継続雇用させない、といった不合理なやり方は認められません。また、民間委託や事業の統廃合の際には、非正規労働者から優先的に解雇されることが起きますが、当然といった考え方をやめさせ、継続雇用の実態などや、採用時の約束、配置転換の可能性、雇用保障先の追究努力、など全体的にみていくことが求められます。

C解雇手続が妥当であること
  使用者は労働組合または労働者に対して、必要性と内容について納得を得るために説明を行い、誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うとされています。一方的な解雇通告、協議の打ち切りなどは許されません。

§5 他人名義で契約させられている問題

 はじめに、この問題は労働組合に相談して、じっくりと取り組むぐらいにしないと、個人的には解決が困難な問題だと考えて下さい。しかしいまから改善の検討を労使で進めておかねばなりません。さて、こうした脱法的な雇用実態は、残念ながら今も少なからず存在しています。パートにとっても、他人名義では労災補償もされない、社会保険、雇用保険も加入できない、年休はゼロ、所得税は払っていない、などのさまざまな問題を考えれば、早く解消すべきでしょう。
 しかし当局がこうした際に、雇用を切って労働者の犠牲のみで「解決」をはかろうとすることは絶対に許してはなりません。負い目は労働者にあると考えがちですが、全く逆なのです。
 最近もこのことが新聞でとりあげられたある自治体の学校長は「事務の仕事は多岐にわたり6ヵ月だけのアルバイトでは対応できない。臨時職員はほとんどの児童の名前も知っており学校を支える一人」「他人名義でもしなければ増員してくれない。通年雇用を可能にしてほしい」と語っています。
おそらく常勤的な継続雇用であったのですから、永年にわたり制度保障面ではかりしれない損失を強要してきた自治体側の賠償責任は多大なものになるはず。脱法的な運用で使い勝ってよく臨時職員を働かせてきた当局の責任として、労働者の雇用確保を行うのは当然だという立場をはっきりさせておくことがだいじです。常勤的な実態を引き続き保障できるのであれば、正規化か、何年でも継続可能な非常勤職に移行させて適法的に雇用継続をはからせることも検討します。人員配置や労働時間の割り振りなど、労使間で充分に検討をすすめましょう。
 そっとフタをしておいた方が良い、というのはかえって労働者の犠牲を拡大させます。早めに取り組むことが必要です。  

§6 真の雇用保障・均等待遇の制度確立をめざしましょう

 いま日本はリストラによる解雇や不安定雇用の増大が無規制的に拡大されています。にもかかわらず国・自治体や労働行政が労働者を守る役割を果たそうとしないことは重大な問題です。逆に政府や経営者団体は、雇用や権利破壊をさらに進めようとしています。短期的な有期雇用契約を合法化する労基法改悪や、さまざまな社会保障制度の改悪、都合のいいような規制緩和などをはかっています。
 私たちは、当局の雇用攻撃をはねかえす闘いをすすめながら、こうした法制度の改悪とも闘わねばなりません。また労基法やパート労働法、男女雇用機会均等法などの、労働者の雇用や権利面を十分擁護できない点の抜本改正を求め、違反する経営者を厳しく罰する実効性ある法改正が必要です。
 解雇規制法の制定、ILOパート労働条約批准の実現も、公務パートにとって切実な要求となっています。
 
 

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