相場の格言に学ぶ

「頭としっぽはくれてやれ」

株の売り買いのタイミングに関する格言です。
株価のロウソク足を「魚」に見たてて見てください。
しっぽまで下がりきったら買うとか、天井まで上がりきったら売るというのではなく、「ほどほどのところで売買すれば、おいしい身の部分が十分食べられる」という意味です。
「タイミングを狙いすぎると結局は売り買いのチャンスを逃すぞ」という戒めの言葉として用いられています。
ちなみに「もうはまだなり、まだはもうなり」というのも同義語です。

「うまい話はない」

人間は都合の良い考えをしがちです。ついついおいしい話にのってしまいます。
でも、高度情報化社会で、そんなおいしい話がそうそうあるとは思えませんね。
そういう事を戒めることばです。
でも「プリンストン債」の事件を見ても、一流の企業といえどもまだ甘い考えをしてしまうんですね。「おいしい話はない」との考えに立って怪しいと思うべきだったということでしょう。
  「プリンストン債」・・・某外資系証券会社が高利回りを売りに販売した「仕組債」=一種のデリバティブ。日本の上場企業数社がリベートをもらって購入したが、実際には高利回りは得られず大きな損失をだしたもの。

「一つのかごに全部の卵をいれるな」

これはアメリカの格言で、分散投資の有意義さを訴えています。
かごを落とすリスクを考えると、いくつかのかごに卵を分けて運べば、もしもかごを一つ落としても割れる卵は一部だけで済むいうことです。
尤も、あまりかごを持ちすぎるとかえってかごを落としやすくなりますから、単純に分散すればいいわけでもありませんが。
ちなみにアメリカには「エリサ法」というのがあって、年金基金の運用担当者は分散投資を心がけることが従業員の利益に対して「忠実」であるとされています。法律にまで取り上げられているわけですね。

「人の行く裏に道あり花の山」

みんなが注目している銘柄ではなく注目されていない銘柄を買うことが大きなリターンに通じる、ということを意味しています。誰も見向きもしないうちに安く仕込んでおいてその後注目を集める株になれば大きな値上がり益を得られるわけです。
もっとも、「いつまでも注目されない株」というのも現実にはあります。それじゃあ「花の山」には行けません。将来注目される株になるかどうかを確認するには「その企業の将来性や体力や業界の情報を足で稼ぐ」ことが大切です。
こういうのは「無名の野球選手を発掘するスカウト」と同じで、情報収集の時間と眼力のある人にとってはとても面白いと思います。株式投資の一つの醍醐味ですね。
そういう意味では今のネット関連株はみんな「ドラフト1位」の指名が殺到しているという状態かなと思います。期待どおりに活躍するかどうかはこれからですね。

「遠くのものは避けよ」

株価は、最終的にはその株を発行している企業が稼ぐ収益に連動します。
従って、その企業が将来収益をあげる会社なのかどうかが、株を選択する上で非常に重要なことです。株を買うなら、その企業と結婚するくらいのつもりで企業を知ることが大切だということです。
逆の言い方をすれば、自分が知らない会社の株は買わない方がいいということです。
例えば、自分が気に入っている商品を作っている会社とか、子供がはまっているものとかを基準に株を選ぶということが一番やりやすいです。例えば、前者はソニー(パソコン)、後者は任天堂(ポケモン)です。
ところで、自社株は「かなり身近な株」ということになりますが、次の点だけは注意が必要ですのであしからず。
 ・近すぎる故に「インサイダー情報」による株の売買をする→犯罪です!
 ・もし会社がつぶれると、退職金もないし自己資産の株も紙切れなんてこともありうる
→実際あった話です。リスクは分散しましょう。

「休むも相場」

株式投資を始めると、どうしても株を早く買いたくなります。色々な企業を調べて「これは」という成長企業を見つけた場合など、買わずにいられない気持ちになりがちです。
でも、これでは「高値をつかんで失敗する」可能性があります。
「ダボハゼ」にならないよう、安く買えそうな時を選んで買うべきですね。
こうしたことを教える格言です。
また、株式の売買には手数料や税金がかかりますから、あまり頻繁に売買するのもコストがかさみ、儲けを薄くしてしまいます。こう行った趣旨も含んだ言葉といえます。
かつては手数料を稼ぎたい証券会社の営業マンが頻繁な売買を勧めることもあったようですが、これは投資家の利益にはなりませんね。
ちなみに、投資信託などの運用内容をチェックする際にも、
    「売買回転率(=1年間に何回売買をしたかを示す指標)」
を見ることが必要といわれています。

「山高ければ谷また深し」

大きく高値を付けた株は、安値も大きくなるという「経験則」です。
これを理論的には次のとおりに解釈できます。

 ・株が大きく上がるということは、将来の企業業績への期待が実態以上に高まっている状態といえる。
 ・この状態が過ぎ、実態が認識されると、期待が裏切られ、株価は大きく下落する。
 ・期待と実態のかい離が大きいほど株価は上がり、下がる。
あるいは、次の言い方もできるかもしれません。
 ・株価に「落ち着きのよい値段」があるとすると、その値段からかい離して大きく上げるほど「居心地がわるくなる」。
 ・ならば、何かのきっかけでいずれは「落ち着きのよい値段」まで戻る。

こういう観点から株価の割高・割安を分析することを「テクニカル分析」といいます。
マーケット参加者が「ヒト」である以上、株価は心理的要因に左右されます。
「だから面白いんだ」という人も沢山いますね。

ちなみに、小さい企業(=株式発行量の少ない企業)の株ほど「山高ければ谷また深し」の傾向があります。大企業への評価は比較的安定しているのに対し、小企業は可能性がある分、企業への評価が変動しやすいからです。

「見切り千両」

株を買うときは、「この株は○○だから上がる」という何らかの根拠を持って買うものと思いますが、実際にその見込みどおりにならない場合が少なくありません。
問題は見込みが当らなかった場合の対応です。
この格言は、「見込み違いだったらすっぱり見切ったほうが値千金である」ことを意味しています。
人間は失敗を認めたがらないものですから、確信をもって立てた予想が見込み違いだったことが少しずつわかってきてもそれを否定しがちです。そして、結果的にそのまま株を持ち続け、含み損をかかえたまま塩漬けになってしまうことが非常に多いのです。
バブル崩壊後は専門家でもこうした対応をしてしまったわけです。
こと株式投資においては「朝礼暮改」も必要なことといえます。

「いのち金には手をつけるな」

株価は変動します。その企業の業績だけではなく、売買する人の思惑や心理状況によっても動きます。長い目で見たら上がる株を探すのは可能ですが、短期的に上がる株を探すことは困難です。
また、長い目で上がると思っても、見込み違いになることだってあります。
こういうとき、「多少下がっても生活費には影響しないから、損切りしてもいいや」と思えるお金ならば、早めに損切りできるわけですが、生活費の一部だったら「なんとか取り戻そう」ってことで、そうはいきません。
また、見込み違いではない場合は「今はたまたま下がってるけど、すぐ使う予定はないから、上がるのを待てばいいや」というお金ならば我慢して持ち続ければよいですが、借金して買ったりしていると返済日までに儲けを出さなければならず、きつい状況となります。
「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」という徳川家康の心境になれるかどうかが株式投資では重要ですが、そのためには「いのち金には手を付けない」ことです。

「早耳の耳だおれ」

株価は、その企業に関する情報に反応します。例えば、薬品会社がエイズ治療薬を開発したという情報が出ればその会社の株は上昇し、ベンチャー企業のカリスマ社長が失踪したのではないかとの噂が出ればその会社の株は下がります。
従って、こういう情報を人より早く知ることができれば、値上がり益を多くし値下がり損を抑えることができそうです。
しかし、すべての情報が株価に反応するわけではありません。明らかにデマとわかるものや、世間の人に広がらない情報であれば、株価には影響しないことも多いのです。また、世の中にはもっともらしい情報を流して株価を操作しようとする人もいますので、注意しなければなりません。
つまり、「情報を早く察知した人が相場で成功しているかというと、必ずしもそうでないわけで、ただ情報収集するだけでなく情報をしっかり見極めることが成功の秘訣であること」をこの格言は意味しています。
情報が氾濫し玉石混交となっているインターネット時代にこそ、この言葉を肝に命じたいものです。

「行き過ぎもまた相場なり」

株価は将来の企業業績改善を期待して値上がりします。でも、将来のことは誰にも解りませんから、「企業の業績が改善し、株が上がりそうだ」と言う人が増えれば、他の人もその気になりがちです。この結果、株は上がるときはどんどん上がり、「期待感が更なる期待感を生む」状態になります。
もちろんこの逆もあります。「ろうばい売り」というのは、例えばある企業のスキャンダルが発覚した時に株が下がり、それを見た投資家があせって売りを殺到させる状態をいいます。
市場に参加しているのが人間である以上、相場も行きすぎた動きをしてしまうわけです。
バブルはその最たるものだったわけですね。
市場は人間のおろかしさを写す鏡でもあるわけです。

「買いは慎重に、売りは脱兎の如く」

株式は東証一部だけでも1500銘柄近くありますので、注目を受けて沢山の売買が行なわれるのは一部の銘柄であることが多いです。
今であればネット関連株は活発に売買されて派手な値動きをしていますが、繊維であるとか鉄鋼といった古い産業の株式はあまり値が動きません。これは世の中の注目度に差があるからですね。
従って、一般に、ある特定の銘柄についての過去の値動きをずっと見ていくと、値段が余り動かない「底」の時期が大半であり、大きく値が上がる期間は短いことがわかります。こうしたことを指すのがこの格言です。
現実の株式投資を考えるとき、株式にこういう特性があることを考えると、次のことが言えると思います。

 ・株を買うタイミングはいつでもあるので、じっくりと銘柄をみていくべき
 ・逆に、上がり続ける時期は短いので、上がったらあまり未練を持たずにさ
 っさと売ってしまう方がよい結果につながる
 ・株を買ってもなかなか値が上がらないことも多いが、それをじっくり待つ
  覚悟が必要。従って返済期限の近い借金で株を買うのは問題。

ただ、昨年から2月までのネット株の上がり方はちょっと例外的でした。
こういうのを見てしまうと「ずっと上がりつづけるんじゃないか」といった、甘い期待をもってしまいがちです。いかんいかん・・・。

「買いは慎重に、売りは脱兎の如く」

株がどんどん上がっているのを見ると、「俺も買わなきゃ」と考えて衝動買いをしがちです。
でも、皆が買っているということは既に株価が相応に上がっているということであり、今後の値上がりは差ほど期待できないかもしれません。それよりも、良く調べずに慌てて買った後で株価が下がった場合はつい他人のせいにしてしまいます。投資は自己責任で行う以上、自分の目で納得して銘柄選びをするべきですね。
また、持っている株が上がってくると、「まだまだ上がるんじゃないか」と過大な期待をしてしまうものです。でもそうそううまくは行きませんので、また株価が下がってしまい売れなくなるということもよくあります。
これを避けるには、「30%上がったら売る」といったルールを決めておき、それに従うというのがお勧めです。誘惑に負けないようにということですね。(ここにもまた人間の弱さが見えます・・・)このほうが結果的には運用成績はよくなる場合が多いのです。

「押し目待ちに押し目なし 」

株は安く買って高く売るのにこしたことはありません。株価が上がり始めたところ、つまり「押し目」で買いを入れられれば短期間で大きな値上がり益を受けることができます。
しかし、どこが「押し目」なのかはなかなか判断が難しいのも事実です。
「上がり始めた!」と思って買いを入れたがその後膠着してしまったということもままある話です。
要するに、「いいタイミングで買おうと思っても、市場は期待通りにはならないことが多い」ということを意味しているわけですね。
投資に「期待のしすぎ」は禁物です。「押し目ねらい」が外れても冷静に失敗を認めて適切な対応ができるクールさを持ちたいものです。

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