Q001 新しい会計基準を導入したら退職給付債務が増えるのはなぜですか。

2001年3月期決算から適用される新しい会計基準により、企業は退職金や企業年金の支払に関する債務を開示し、積立不足をオンバランスしなければならなくなりました。と同時に、債務の計算方法も統一的な基準に変更されました。
この新しい債務をPBOといいますが、一般に従来のいくつかの基準よりも債務額は大きくなります。この理由は以下の通りです。

○企業年金については、将来の給付を現時点で評価する際の割引率を引き下げる必要があること

一般に企業年金は5.5%という高い運用益が得られる前提で将来の債務を割引評価していましたが、新しい基準ではより保守的に評価することとされたため、3%程度の運用益しか得られないという前提で債務を評価することとなりました。
例えば10年後に1000万円用意する場合、
  割引率が5.5%であれば現時点では 1000万円÷(1.055)^10=585万円で
  よかったのが、
  割引率が3.0%であれば現時点では 1000万円÷(1.030)^10=744万円も
  必要になります。

○退職金については、現時点でやめる前提で評価するのではなく、もっと勤めてから退職するという計算 になったこと

日本の退職金は勤続年数が長いほど加速度的に金額が増える制度が多いため、今退職してくれたほうが退職金支払が少なくて済むのですが、今回の基準では実際に退職する時期を予測した上で評価を行いますので、より多くの退職金を支払うという評価になったわけです。