投資対象の種類

実際に我々が投資できるものについて、大雑把に言うと、次のように分類できると思います。

1)預貯金

銀行預金のことです。基本的に引き出し自由でかつ元本が保証されるため、収益性は最も低いといえます。
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2)不動産

本来は居住したり事務所を構えるのが不動産の目的ですが、不動産を買ってマンションを貸すなどすれば家賃収入が得られますので、投資対象となりえます。

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3)有価証券・・・債券、株式

文字どおり読めば「価値のついている証券」ですが、言いかえれば「お金を借りている証書で、市場で転売できるもの」という感じでしょうか。
債券は国、地方自治体、企業などがお金を借り入れるために発行しているものですから、債券を買うということは、発行者にお金を貸すということです。従って、満期がきたら元金を返済すること、借入中は利息を支払うこと、が証券に記載されています。発行体がつぶれない限りはこの約束が守られる仕組みで、つぶれてもお金が残っていれば返済義務がありますから、投資家にとっては比較的安全な投資先といえます。
株式は企業が資金を出資してもらうために発行しています。債券との違いは「お金が返って来ない可能性があること」です。出資したお金を使って企業が大きな利益を挙げた場合はその配当が投資家に還元されますが、企業が事業に失敗すれば配当がないばかりか出資金も戻らないということです。

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4)派生証券

上のような資産を組み合せたり加工して2次的に作りだされた証券をいいます。
代表的なのは転換社債です。これは「株式に転換できる権利がついた債券」なので、株式と債券の中間的な性質をもっています。
また、最近はデリバティブ技術の発達で色々な派生証券(オプション等)があります。
派生証券の存在意義は「株式」と「債券」にはないさまざまなリスクリターン特性をもつ投資対象を用意できることにあります。例えば「株式よりリスクが2倍になるがリターンも2倍期待できる」投資対象が欲しい人もいますので、幅広いニーズに答えていけるということです。

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5)金融商品・・・投資信託など

世の中にある投資対象を専門の会社が運用して、その収益を投資家に還元する商品のことをいいます。運用会社への報酬がかかるため、直接上記の投資対象を買うよりもコストはかかりますが、専門会社が運用することでより効率的な運用ができると期待できます。
上記のどの投資対象に投資しているかによって、これら金融商品のリスクリターン特性はさまざまです。投資信託でも中期国債ファンドはリスクがほとんどありませんが、外国株式投資信託はハイリスクハイリターンです。


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上記対象別に、もう少し詳しい説明をします。

1)預貯金

法律的には銀行や郵便局の預金を指します。これらは元本が保証され、利息が付くというものです。
ただし、銀行が倒産した場合にはこの「元本保証」がつかない可能性があります。「ペイオフ」という仕組みで、1000万円以下は預金保険によって元本が保証されるものの1000万円超部分はカットされるというものです。加えて異常な低金利ですから、銀行預金が安全確実な投資対象とはいえなくなってきています。
さらに、証券会社のMMFなど引き出し自由で金利は預金より高いという商品も出ていますので、預貯金は主役から脇役になるものと思われます。

2)不動産

「土地神話」なる言葉もあったように、不動産は戦後からバブル期まで一貫して上昇しましたので、買っておけば値上がりする優れた投資対象であると認識されていました。しかしバブル崩壊後は値下がりを続け、こうした認識はなくなりつつあります。
今後は、もっと本源的な価値に戻って不動産をとらえるのがよいと思われます。「値上がり益」ではなく、「家賃収入」を得られるという見方です。2年前位でしょうか、外資系企業が割安になった日本の一等地を買いに走った時期があります。これは、将来得られる家賃等の収入の合計が、現在の地価を上回ると評価したからです。ちなみに、こうした地価の評価方法を「収益還元法」といいます。
また、長い目で見れば、不動産は「インフレヘッジ機能(物価が上がると不動産価値もあがるので、資産の実質的な価値が下がらないこと)」がある数少ない資産ですから、本来は有用な投資対象であるといえます。
なお、不動産の場合はどうしても購入単位が大きいため買う人が少なく、適切な価格形成ができにくいですが、これも「不動産の証券化」という手法で解決されようとしています。アメリカではすでに定着した手法ですが、不動産の価値を小口の証券に分けることで流動性を高めるものです。こうした動きを見ると、今後は(広い意味での)不動産も投資対象に組み入れやすくなると予想されます。

3)債券

もっともポピュラーなのが国債ですが、地方債、金融債、社債などもあります。また、国債と一言でいっても満期等が異なる様々な種類が発行されています。
現状は低金利であるため、代表的な銘柄である10年国債の利回り(満期まで保有した場合の年平均利回り)は1.8%程度です。一般に金利は満期までの期間が長いほど、また発行体の信用度(格付け)が低いほど高くなります。
債券は安全というイメージがありますが、発行体がつぶれる可能性が高い場合はよりハイリスクハイリターンの投資対象になっています。
実際には、国債の大半は金融機関が保有していて、個人投資家が国債そのものを買うことは少ないです。むしろ公社債投信や中期国債ファンドの運用対象として個人投資家とつながっています。
個人投資家に縁があるのは金融債で、長期信用銀行(今や興銀だけですね・・)や農林中金が発行している「ワリコー」「ワリノー」がそうです。これらは税金面でやや優遇されています。ただ金利が低い現在ではあまり利益は期待できませんが。
なお、海外にもおおむね同様の債券が存在します。一般に日本より金利が高いため魅力的ですが、為替変動リスクに注意が必要です。

4)株式

株式は昔から個人投資家に縁の深い投資対象であり、保有シェアも30%程度を占めています。売買ができる市場は「取引所市場」と「店頭市場」に分けられていて、取引所は東京、大阪、名古屋等にあります。東京の場合は更に1部、2部に分かれています。
東証1部には1500近い企業の株が上場されており、日本を代表する市場です。上場には一定の条件があるため、ある程度の成長を遂げた「オトナの企業」がほとんどです。ただ成長期を過ぎてしまった企業も少なくないといえます。発行株が多く、成長率がさほど高くないため、店頭株に比べると株価の変動率は小さいのが一般的です。
東証2部は400前後の企業が上場しています。1部に比べるとやや小さい企業が中心です。
店頭市場への株式公開基準は取引所上場基準よりかなり緩やかであるため、いわゆるベンチャー企業が多いのが特徴です。まだ評価が定まらない企業であり、また取引される株式数が少ないことから、株価の変動が大きくなりがちです。

5)派生証券

市場にある資産を組み合わせたり加工して2次的に作りだされた証券をいいます。デリバティブ技術の進歩で、とにかく沢山の商品がありますが、代表的には次のようなものがあります。

・転換社債

これは「株式に転換できる権利がついた債券」なので、株式と債券の中間的な性質をもっています。
株価の値上がり益を享受できると同時に、満期まで転換せず保有すれば額面が確定しているため、安全性ももっています。(もちろん発行企業が倒産すれば額面が保証されないこともありえますが)
ただし、実際には、証券の流通量が少なく適正な値付けが行われにくいという難点があります。

・オプション取引

これは、「将来の有価証券を買う(売る)権利」を売買するものです。以下、株式オプションを例に説明します。
例えば「ソニー株を30000円で買う権利」というオプションであれば、オプション購入者の損益は将来の株価によって以下のようになります。ただしこの権利(オプション)の値段を1000円とします。

 一ヵ月後の実際のソニー株の値段
  ○3.5万円の場合
     →「3万円で買う権利」を行使して3.5万円の株を3万円で購入。
        ・・・オプション価格1千円を引いて4千円の儲け
  ○3.0万円の場合
     →「3万円で買う権利」を行使して3万円の株を3万円で購入。
        ・・・オプション価格1千円を引いて1千円の損
  ○2.5万円の場合
     →「3万円で買う権利」を放棄
        ・・・オプション価格1千円を引いて1千円の損
つまり、株価が上がれば実際に買ったのと同じ値上がり益が得られる一方、どんなに株が下がっても損は1000円どまりということになります。

さて、なぜこのような「一見おいしそうな」取引が可能なのでしょうか?
実は、確率計算をすれば損益(の期待値)はゼロなのです。オプション理論という複雑な数学計算によって1000円という価格を決めているわけです。従って、こういう取引を沢山用意すれば、全体として損益は生じないというわけです。ここでは「買う権利」のみ説明しましたが、「売る権利」としてのオプションもありますし、それらの組み合わせもあります。
(買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションといいます)

このように一見魅力的に見えるオプション取引ですが、次のように非常にリスクの高い「投機的」な商品です。資金に余裕があってかつ十分な知識がない場合はお勧めできません。
・株価が上がれば大儲けが期待できる
 (上記値上がりケースでは1千円の資金で4千円儲け→収益率400%!!)
・元本がゼロになることもある
 (上記値上りしないケースでは1千円の資金がゼロ→収益率はマイナス無限大!)

派生証券(デリバティブ)は一見魅力的なものが多いわけですが、基本的に「一方的においしい話はない」のです。こうした商品を勧められた場合はまず疑ってかかり、不明な点はよく確認することが大切ですね。

6)投資信託

日本版401Kにおける運用商品の本命と言われていることもあって、ブームといってもよい状況です。

a)投資信託の特徴と意義

投資信託は、多くの人からおカネを集め、合同で運用する「ファンド」です。
集めたおカネは株式や国債など各種の投資対象で運用され、それによって得られた収益を一定のルールで分配します。運用の結果、利益が出ても損失が出ても、それは投資家に帰属する仕組みとなっています。
以下に特徴を箇条書きします。

○合同運用であるため、小口資金でも投資が可能
普通、株式を買おうとすると少なくとも10万円程度以上の資金が必要になりますし、値段の高い株は相当の資金が無いと買えません(YAHOO株を買おうとすると1億円必要です!)が、投資信託ならば小口の資金でも株式の値上がり益を狙うことが可能になります。「皆でおカネを出しあって株を買う」わけです。そして、現物証券を買うよりも分散投資がしやすくなります。

○実際の運用は専門家が行うため、知識や時間のない人でも投資ができる
実際の株式を買うとなると、「上がりそうな株式を探し、できるだけ安く買えるタイミングを狙って買い、値上がりしたところで売る」という段取りになりますが、忙しい人や勉強する時間が無い人がこういうことをきちんと行うのはかなり大変ですので、プロに代行してもらって効率的に資産を増やそうということです。
なお、プロに任せる以上、相応の報酬がかかることになります。

ということで、投資信託という名前は、「プロを信じておカネを託す」ということだと理解してください。

蛇足ですが、投資そのものを楽しみたい人、勉強したい人にとっては、投資信託より現物株のほうが魅力があります。上がりそうな株式を探してくるのは結構楽しいですし、経済にも詳しくなりますしね。

b)大雑把な分類

実際の投資信託は何百種類もありますが、大きく分類すると「株を中心に積極投資する株式投信」、「安全を重視して債券を中心に運用する公社債投信」、「株式と債券をある程度ずつの割合で組み入れるバランス型投信」に分けられます。
これらのどの分類の投資信託を買うかは、投資家自身が決めなければなりません。その意味で、投資信託は「運用をプロに代行してもらう」とはいっても、完全なおまかせではありません。株を中心に積極投資するのか、安全を重視して債券を中心にするのか、といった点は貴方自身が生活設計などを考慮して自分で決めなければならないのです

c)投資信託の選び方

何百もある投資信託。資産運用の仕方も千差万別です。でも、運用に失敗した場合でも損失の補填はないわけですから、大切なおカネの運用を託す以上は「その投信はどんな運用をしようとしているのか」、つまり「運用方針」をあらかじめ知っておくべきです。
一般に、運用方針としては次のような項目を抑えておくべきであり、投信運用会社自身もこうした方針を必ず開示していますので、購入にあたってはよく確認しておく必要があります。

○投資対象は何を中心にするのか
  ・・・「大雑把な分類」を把握するということですね。
     株式を中心に運用するのか、国債中心なのかなどです。
     
○どのような株式を買うのか
  全業種を平均的に買うのか、特定の業種を重点的に買うのか?です。
  最近情報通信銘柄を中心に運用するファンドが非常に多くなっています。
  こうしたファンドを「テーマ別ファンド」といいますが、これの多くは業種別ファンドといえます。
  一般に、特定業種を重点的に買うほうが価格の変動リスクは大きくなります。
  
○どうやって値上がり益を得ようとするか(運用スタイル)
  ・成長しそうな企業を人手をかけて探すことで大きな値上がり益を狙う。
   (ボトムアップアプローチなどといいます)
  ・株価の周期性等を利用し、割安になったら買って割高になったら売る。
   (クオンツ運用などといいます)
  ・特に動かずに、市場平均なみの平均的な値上がり益を狙う。
   (いわゆるインデックスファンドです)
 などなどです。
 ちなみに、上の2つは市場平均を上回ることを目指すものであり、「アクティブ運用」といいます。一方3つ目のは市場平均並を目指すものであり、「パッシブ運用」といいます。

ちょっと専門的になりましたが、より理解を高めていただけるよう、レストラン選びに例えてみましょう。

 ○何のレストランなのか。和食か洋食かイタリアンか?はたまた何でもあるのか?

 ○人並みの味を安く提供するレストランなのか、高いけど他より良い味を目指しているのか?

 ○素材を探し歩いて厳選しおいしい料理を出すのか、普通の素材を料理方法でおいしくするのか?

といったところでしょうかね。

なお、投信を評価する会社というのがあり、こうした視点による評価結果を公開していますので、参考にするとよいと思います。レストランを選ぶときに、全部は味見できないので「ミシュラン」を参考にするというのと同じですね。

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