ABOUT STICK


これは石井が参加している、スティック研究会が
1992年に発行した、スティックニュースレターという
会報に掲載された、野田と石井の書いた文です。

ISHII AND STICK





バンドの中でスティックを弾く

                             石井 孝治

僕はスティックを弾きだして丸二年、その間常にバンドの中で弾いてきた。
スティックを弾くきっかけは大抵の人と同様トニー・レビィンや
バカボン鈴木であったので、最初(今もたまに)はこれらの人が
スティックを弾いている曲に合わせて、ひたすらベーシストしていた。
その頃僕が参加しているバンドで僕はキーボード担当だったが、
みんなにスティックという珍しい楽器を見せたくもあったし、
そのバンドのみんなは山口に在住で僕は大阪で、キーボードを
持っていくのがしんどいこともあったし、一回ステージの前方で
プレイしてライブをしてみたかったので、30分のライブ(5曲)を
すべてスティックだけで演奏に参加することにした。
スティックを買って約三ヶ月であった。

いつものようにライブの前日に練習が2〜3時間あるだけだった。
曲も完全には決まっていなかった。アレンジはもちろん、
それ専用の練習もかなり不完全であった。
おまけに僕のバンドにはベースやギターが一人ずついる。
さあ僕は何を弾くべきか?

まさかベースとユニゾンで弾くわけにもいかず、基本的にはギタリスト
になった。また、バンドのメンバーはかなり親切で、
スティックを入れやすい曲ばかり選んでくれた!
おかげでなんとかみんなと一緒に演奏することができた。

プレイの種類は、

1、8分音符のアルペジオにディレイをかけ16分音符のようにする。

2、メロディー弦とベース弦(9、10弦)のコンビネーションによる
  リズムギター的ミュート奏法、であり和音などは全然聞こえず
  弾いても無駄であった。

そのライブ以降のライブでは、僕はキーボードに戻り、
ときおりスティックを入れるというパターンになた
(時々スティックの弾き語りや、ベース弦のローDの音をドーンとやったりする)。
スティックは片手でも弾けるので、右手でスティックのアルベジオ、
左手でキーボードの和音を弾きながらコーラスを歌うということもよくやる。
しかしここでよく考えたいのは、僕の場合、バンドの中でステイックを使うのは決して
音楽に必要だからでなく、自分がこの楽器でバンドに参加したい、みんなを驚かせたい
という思いからだったことだ。はっきり言って、無理矢理使っている訳である。
これは、あまりいい事ではない。音楽に不必要なものは、できるだけ取り払う必要がある
という美学に憑かれているのでそういうのだが、よく考えると、スティックを無理矢理
いれて弾くという事は、その曲に融通性を持たせることになるのだ。
つまり、できるだけシンプルにするのもいい、通常の編成でその曲を演奏するのも
いいが、そうすると、いつも決まったアレンジになり、面白みがなくなる。
そこへ無理矢理新たな楽器をいれることにより、アレンジは考えなければならなくなるが、曲に新鮮身が増す。
また、見知らぬ人が突然現われて変な楽器を変なアレンジで弾きだしても、
曲をそれによって面白い方向に導くこともできるようになる、という訳だ。

自分の無理矢理行動をいい加減な論理で正当化してしまった気もするが、
これは大事なことだ。僕が最近、どんなジャンルの人にどんなにしょーもなさそうな
セッションにさそわれても必ずついていくのは、いろんな人とあらゆる編成で
演奏することは絶対勉強になる、と思うからだ。
そしてできるだけいろんな音楽を気合いを入れて聴くようにしている。
自分のバンドの練習を通常の編成でやるときも、できるだけアドリブ大会をやる。
そして今流れている音楽(皆がテキトーに楽器を鳴らしている、時には、
Eのワンコード、ときにはAmとD7の繰り返し、という風に)の中で、
自分がどうしたらもっと気持ちよくなるか、を模索しながら、キーボード、
あるいはスティックを弾く。これをやりだしてから、バンドの音が非常によくまとまり、
そしてなにより演奏が楽しくなってきた。この事と声をできるだけ音楽に入れていく
(コーラス)ことは、音楽を楽しく演奏するには欠かせないことと言えるだろう。

というわけでいつの間にか話題がスティックからずれてしまったが、どんな楽器を演奏
するにしても、バンドのなかで奏でるのは楽しい。
みなさんもコンピュータやシーケンサーやテープレコーダー相手に陽の当たらない場所で
一人楽しむより、バンドで思いきり演奏し、歌いましょう。


GRとスティック                              野田 真弘  今回このコーナーの原稿を書かせていただくことになりましたGR研究会の 野田真弘と申します。どうぞよろしくお願いします。 さて読者の皆様でGRという物について、知らない人も多いと思いますので、 まずGRについて紹介させて頂きます。GRというのはローランドが ギタリストのために創ったギターシンセサイザーの商品名です。 現行モデルとしては、GR−1 GR−09という物がありますが これはよく考えて使用しないと、単にキーボードの音をギターでコントロール しているだけというつまらないものになります。 少し前のモデデルGR−50についても同じことが言えますが、 エイドリアン・ブリューはこれをわりとギタリスト的な使い方をしていて 面白かったです。私が得に興味を持っているのは、GR−300という かなり古いモデルで、アナログ音源でMIDIが出る前のものなので、 10年以上前のモデルということになります。が、これがまたはっきり言って 世界中どこを探してもこれでしか出ませんという音がします。 しかもなおかつ、それほどギターの音とかけはなれた音でもないので、 ギターシンセサイザーというコンセプトからするとかなり良い物ではないかと 思います。このGR−300とスティックのサウンドを同時に楽しめるサンプルは 少ないと思います。おそらくスティックに興味をもつ、大半の人は知っていると 思いますが、1980年代のキングクリムゾンがそのうちの一つです。 当時まだ今ほど知名度のなかったスティック、開発されて間もないGR−300、 そして同じく開発されたばかりのエレクトリックドラムのシモンズ (これが、また単に生ドラムのシュミレーションではなく実にオリジナリティー あふれる音がする)をいち早くサウンドに取り入れたバンドで、 そういった意味だけでも当時としては画期的なグループであったように思えます。 ツインギター(GRギターシンセも演奏)、そしてスティック及びベース奏者が一人、 ドラム(シモンズも演奏)奏者が一人の計4人編成のこのバンドは”ディシプリン” ”ビート””スリーオブ・ア・パーフェクトペア”の計3枚のアルバムを残しています。 スティックの使用頻度は、スリーオブ・ア・パーフェクトペアが若干ベースの方が 比重が多いですが、他の2枚については、スティックとベースとだいたい半々ぐらい に思えます。GRの使用に関しては一枚目のディシプリンでは割合少なく ここぞという場面で、うまく使用されています。ビートでは、一つのギターとは、 完全に違ったソロ楽器として頻繁に使用されており、またGRの持つ独特のディストー ションサウンドもよく使われています。そして、スリーオブ ア パーフェクトペア では、使用頻度としては、前作より低いものの、使用法はキングクリムゾンでしか ありえないといった使われ方もみられ、このへんになると、2人のギタリストともに、 GRに関してかなり熟知していたように見受けられます。 ただ実際にスティック、GRがいしょに印象的な使われ方をしているというのは、 それほどありません。ディシプリンに収録されている”シャルターリング スカイ”は、 GRのために創った曲といえますが、ベースパートは、スティックで演奏されており エスニックな曲調にみごとにマッチした音色を出しているように思います。 ただし残念ながら、スティックの高音部に関しては、殆ど使用されていないようです。 スティックの割とユニークなリフに、GRのソロが炸裂するという曲が、”ビート”に  収録されています。”サトリ・インタンジール”がそれですが、楽曲としては、 それほど、面白いものでないのが残念です。 同じようにスティックの印象的なリフを中心とした曲で、エレファント・トークが ありますが、これは楽曲としてもなかなかすぐれものであるように思います。 ギターに関しては、ほとんどクリーントーンで、演奏されてますが、曲の中ごろに 普通では考えもつかないような、GRのソロがあります。このフレーズは、 本当にロバートフリップが、GRを持たないと絶対に生まれなかったものであるように 思います。 その他読者の方々でこれら3枚のアルバム、未聴の方がいればぜひ聴いてもらいたいと 思います。私は、スティック、GR、シモンズという楽器がなかったら キングクリムゾンはあのようなシンプルな構成ながらカラフルなサウンドに 成らなかったように思えます。 次回編成のクリムゾンでは、ツインスティックにフリップがGR−300、 エイドリアンブリューは、おそらく新しいGRを使用しての編成になると思いますが、 どんなサウンドになるのか、楽しみです。 さてそのニュークリムゾンにも参加するトレイ・ガンとロバート・フリップが、 一緒に参加しているようなアルバムがありますが、そのうちの一つ サンデー・オール・オーバーザ・ワールドでは、スティックは割といい感じの 音を出しています。ただ、GRに関しては、ディストーションサウンドの一つ又は、 フリパトロニクス(フリップの使用する特殊なエコーシステム)と併用されて ストリング的バッキングに使用されているのみであります。 とりあえずGRにしてもスティックにしてもキングクリムゾンの例でもわかるように 使いようによっては、たいへん面白く他のアーティストとは、一線を超えた サウンドを創る事ができます。 現在私もGR−300を使用していますが、スティックを導入して、バンド活動を 行っています。できるだけ両者の特徴を生かした曲創りを心がけていますが どうでしょうか。 筆者紹介 野田 真弘 愛機 GR−300を使用し、数々のセッション及びライブ活動をこなす。 現在、バンド・パララックス(ギター・スティック・キーボードの3人編成)を率い 自身の音楽を追求。又彼は、GR研究会の会長でもある。

NODA's GR-300 GUITAR SYNTHESIZER UNIT



NODA's G-303 GUITAR SYNTESIZER CONTROLLER


INTERFACE
PARALLAX

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