ママ!ママー
お願いだからー
聞こえる水の音だね
ママは今 何を作っているの
そうだ きっとパパの好きなもの
ママ ママは素敵な人
でも 何も気づいちゃいないんだね
ほら またまた僕の名前を考えてる
マーガレット キャサリン…
ちがう ちがうんだ
僕は男の子 そしてあんなにママが愛してくれた
トムスなんだよ
もうじきパパが仕事から帰って
いつもみたいにママのひたいにキスをする
ママ ママはしあわせそうにパパをみつめて
最初はなにも云わないんだ
そして 食卓が色とりどりの食器で飾られた頃
そっとパパにうちあける
「あなた?」
考えていたとおり 今ママは僕のことをパパに告げようとしている
「今度は女の子よきっと」
ママ ママは胸の中が少し熱くなっているのね
どうしてそんなにやさしいの?
僕がどれだけ頑張っても 手足を動かせるような力は
出やしない
もし僕がママのおなかを蹴れたとしても
僕がここにいることを嬉しく思うだけにちがいないんだ
神様 僕はみんなと同じ身体?
みんなと遊べる?
昔のように右手の指がないんじゃない?
もしそうじゃないとしても 僕はどうしたらいいの?
僕は忘れていないよ
僕が最後に見たあの恐ろしい顔を
僕を水の中に押し込んだあの太い両腕を
これからも決して忘れることなんかない
ママ!お願いだから僕を産まないで!
ママの笑顔が僕にも見えた
可愛そうなママ
ママはパパを誰よりも愛しているんだね
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