シリンクス音楽フォーラム 22
Internet

インターネットに鳴り響く音楽


小野山 敬一



 1994年の秋までの日本では、インターネット(注1)という言葉はちらほら咲き。しかし、1995年になると新聞にインターネットという字が出ない日はない有り様。1996年、狂い咲き。このように爆発的に普及した理由はいくつかありますが、個人でも世界に情報発信できることがそのひとつでしょう。
 一方、パソコンを使った音楽づくりも盛んです。作曲、演奏、楽譜づくりが簡単にできるようになっています。自分一人でオーケストラ演奏を楽しむこともできます。そして、パソコンにつないだMIDI楽器とソフトを使って演奏し、少し加工すれば、簡単に自分の演奏を世界に放送できます。ここでは、初心者が自分の演奏をインターネット上に載せるまで手探りした状況を書いてみます。

 インターネット上で音を鳴らすためには、いくつかの方法があります。例えばReal Audioはあたかもラジオ放送を聴いているようなものです。しかし、auやwaveといった音の波形そのものを再現する形式の場合はデータ量が大きく、音質を良くすると途方もないものになってしまいます。例えば、8bit/8KHz/monoでau形式の約11秒の曲は90KBにもなりますが、音質は良くありません。そこで、MIDIデータ(注2)です。この形式の場合は、再生側(自分のパソコン側)で音源を用意しなければなりませんが、その音源に応じて高音質の演奏がきけます。そしてMIDIデータは容量が小さいので、ウェッブサイト(注3)から自分のパソコンへデータを持ってくる時間がすくなくてすみます。

 それで、ウェッブ上にあるMIDIデータによって音楽を聴くためにはMIDI音源が必要です。ハード音源とソフト音源があります。ハード音源はパソコンの外部あるいは内部に物理的なものとしてとりつけるものです。音源モジュールやシンセサイザーがそうです。DOS/Vマシン(ウィンドウズ・マシン)で標準的に装備されるSound Blasterはハード音源です。ソフト音源はパソコン内に置く音源データのファイルです。

 ソフト音源としてはマッキントッシュではQuickTime Musical Instrumentsがあります。マックのシステムフォルダの機能拡張フォルダ内にQuickTime (version2.0以上)とQuickTime Musical Instrumentsを入れます。この音源を使ったNetscape Navigator(標準的なウェッブブラウザ)のプラグイン用ソフトとして、Crescendo!やMIDIPluginなどがあります。Netscape NavigatorのPlug-insフォルダーにCrescendo!を入れてください。

 QuickTime Musical Instrumentsを使わず、独自の音源を使うNetscapeのプラグイン用ソフトがYAMAHAのMIDPLUGです。このほうが音質は良好です。MIDPLUGにはパワーマッキントッシュ用とウィンドウズ用があります。YAMAHAのMIDPLUGを入手するには、 http://www.yamaha.co.jp/xg/S/S.htmlを見てから、http://www.cyber-bp.or.jp/yamaha/でMIDPLUGβ版のダウンロードをしてください(8月末まで無料で使用できる。それまでに改良版が発表される予定とのこと)。なお、これら3者はぶつかり合う可能性が大きいので、どれか一つだけをNetscapeのプラグイン・フォルダーに入れてNetscapeを再起動します。

 パソコン内蔵のスピーカーは音量が小さいので、パソコンのaudio outをアンプつきスピーカーにつなぐと良い音で聞こえます。ソフト音源ではMIDPLUGがおすすめで、この音色は外部音源Roland SC-88VLと聴きくらべてそれほど遜色はありませんでした。なお、MIDPLUGでの再生を外部音源で聴く場合はSoft SynthesizerのところのプルダウンメニューでSoft SynthでなくMIDIManagerを選択します。マッキントッシュ側ではApple MIDI DriverとMIDI Managerをシステムフォルダーに入れて、PatchBay(例えばBallade1.21JのMIDI Manager Folderのなかに収録されている)というソフトを起動して下図のようにMIDPLUGからの音をApple MIDI Driverへとつなぐ必要があります。

 では、自分で演奏した曲をつくってインターネット上に載せるにはどうしたらよいでしょうか? まず、シーケンスソフトが必要です。これはパソコンを録音テープにするようなソフトです。MIDI楽器で演奏しなくても、楽譜的に入力してて演奏させることもできますが、その労力は結構かかります。ピアノが弾ける人はMIDI端子のついたデジタルピアノで演奏すると、そのままMIDIデータができます。これを「***.mid」という名前にして、スタンダードMIDIファイル形式でフォーマット0で保存します(MIDPLUGはまだSMFフォーマット0にしか対応していません(フォーマット1には今後対応予定とのことです))。

 さて、Erik SatieのOgives IをYAMAHA Clavinova CLP-123で演奏しました。音を弾いたと同時にペダルをいっぱいに踏み込み、直後に1/3から1/4まで上げてすぐさま再びいっぱいに踏み込みます。そうすると残響だけが浮かび上がります。これをMacintosh PowerBook 550c、 FreeStyle 1.04Jで録音しました。Crescendo!あるいはMIDPLUGで再生して聴いてみると、ペダルの効果が再現できていません(FreeStyleでClavinovaに演奏させるときちんと再現されます)。MIDPLUGではギターの弦がこすれたような余計な音が再生されました。Roland SC-88VLという外部音源につないで聴いてみると、ペダルの効果(残響)がある程度再現されました。また、ギターの弦がこすれたような余計な音は出ませんでした。しかし、ソフト音源と同様に終わりの音がプツンと切れてしまっています。

 次にWWWページのつくり方です。htmlという言語で書かれたひとつのファイルが1ページとなりますが、そのなかでMIDIファイルを例えば、
<embed src="****.mid" width=196 height=80 autostart=false repeat=false>
といった文で引用します。

 autostart=trueとしておくと自動的に演奏が始まります。repeat=trueにすると自動的に何回も演奏されます。widthとheightは操作パネルを表示する大きさの指定です。

 embedタグはマッキントッシュで見る場合には1ページに2つ以上はりつけても問題はないのですが、Windowsマシンで見る場合にはおかしくなるので、発信側としてはしないほうがよいです(MIDPLUGの問題ではなくOS側の問題だそうです)。

 WWWサーバ側の設定としては、マシンをサーバにするためのソフトのコンフィグレーション・ファイル(例えばMacHTTP.config)内に、
BINARY .MID MIDI * audio/midi or audio/x-midi
の1行を追加します。これだけです。

 世は宣伝の時代。中身がなければ二度と振り向いてくれませんが、宣伝しなければ一度も訪れてくれません。世界に発信といっても、逆に世界中に数多くの発信地があるわけで、埋もれているといった状態になります。みなさん、SYRINXのホームページのURL、
http://ant.obihiro.ac.p/syrinx/index.html
を宣伝してください。(960804記)

 注1.インターネットとはコンピュータどうしが互いに接続されたネットワークがさらに結ばれたネットワーク。
 注2.MIDIとはMusical Instrument Digital Interfaceの略で、一つの規格。演奏情報が伝えられ、コンピュータともやりとりができる。この規格の楽器あるいは音源であれば、メーカーが違っていても同様の音色で同様の曲が演奏される。詞を歌う人の声はMIDIにはできない。
 注3.ウェッブとはWorld Wide WebのことでWWWとかW3とも言う。インターネットを使って世界に張り巡らされた情報網のこと。テキスト、画像(静止画や動画)、音声を使った情報が提供されている。代表的なものはクリックひとつで次々と見ることができるハイパーテキスト的ページ。HyperText Markup Language (HTML) という言語で記述された一つのファイルが、1ページとなる。ふつう多くのページが互いに結びつけられており、それらの入り口となるページがホームページと呼ばれる。これを見るためのソフトをブラウザbrowserあるいはビューアviewerと言う。