シリンクス音楽フォーラム 22
Review/Performance

マリンバ・コンサートを終えて


戸田 文代


 その日は朝から少々の雨が降ったけれど、まもなくやんで、梅雨の最中としてはまだましの天気でした。稲妻が走り雷が鳴って、『夏・ひまわり』の嵐の場面では、まるで外にいる様と思うかしらんと想像していましたが。

 ここ3年間は、戸田茂・戸田文代フルート・マリンバ名曲コンサートとして、アルティで催していましたが、今回は、実は自分の50歳の記念コンサートということで、日程的にこだわってバロックザールになりました。遠くて行きにくいからお客様には悪いと思っていましたが、私とバロックザールの相性はとても良く、過去何回かの演奏では、いつもいい結果でありましたので、いい演奏ができるはずだから許してもらえるかな、と思ったりしました。

 今回のプログラムは、マリンバのオリジナル曲と聞き慣れた名曲と、そして長女雅子のフルート演奏もあります。是非聞いてもらいたかった曲の一つは、シリンクスの4月例会で演奏した『夏・ひまわり』でありました。この曲は、2年前に改作・完成した京都・宇治にお住まいの林保雄氏の作品で、どんな風に聞こえるか、心配でしたが、よかったとか、心に残っているとか言ってくれる人がいたので、ようやくレパートリーに入ったと喜んでいる次第です。

 もう一つの気がかりの曲は吉岡孝悦作曲の『マリンバ、フルート、クラリネット、コントラバスとドラムのためのラプソディ』でした。三女の敦子のクラリネットもちゃんとできるか心配でしたが、とてもむつかしい曲だったので、無事に終わった時には、よし!という感じでした。

 ピアノはバロックザールには、スタインウェイとベーゼンドルファーとがあって(もちろんヤマハもある)、もの珍しさからベーゼンドルファーを借りたら、低音に5度分も余分の鍵盤があって、これは余分ですよと黒く塗ってくれてあるのですが、それでも目障りで慣れるまでそこのところにタオルを置いて目かくししてリハーサルをしました。

 しかし、はじめから終わりまで全部自分で一つのコンサートをするのは、本当に大変なことでした。ああすればよかったと思うことがいっぱいですが、きちんと演奏できたことだけが救いです。また、これからも自分の可能性とマリンバのおもしろさ、そして音楽の楽しさをもっともっと追求していきたいと思っております。

(1996.7.25記)


※戸田文代マリンバコンサートは1996年7月7日(日)、バロックザールで行われました。

  プログラム
    林 保雄   夏・ひまわり
    M.ポンセ  エストレリータ
    M.ファリャ 火祭りの踊り
    滝 廉太郎  荒城の月変奏曲
    G.ディニク ホラ・スタッカート
    J.カンター ソナタ
    A.ピアソラ 「タンゴの歴史」より
    吉岡 孝悦  マリンバ、フルート、クラリネット、コントラバス、打楽器のためのラプソディ
    G.ユー   フルートとピアノのためのファンタジー

  共演
    ピアノ    戸田 茂
    フルート   戸田 雅子
    クラリネット 戸田 敦子
    コントラバス 関 一平
    打楽器    山内 りいち