シリンクス音楽フォーラム 22
Magazines and Bulletins [1]

雑誌冊子(1)

季刊「メセナ」

井上 建夫


 社団法人企業メセナ協議会は、メセナ活動を積極的に行っている企業の連合体で、1990年2月に設立され、メセナ大賞の授賞、参加企業と協力した芸術文化活動への助成事業などを行っています。季刊「メセナ」は、企業メセナ協議会の機関誌で約40ページの小冊子ですが、幅広く現代芸術を見渡すのに好都合な雑誌ともなっています。芸術に関心の深い企業の集まりだけあって、装丁や編集もなかなかしゃれたものです。

 特定の芸術分野でなく、美術、音楽、演劇、舞踏、映画などあらゆる分野が対象となっているのですが、考えてみるとこうした幅広い関心を示す雑誌は案外ありません。また、芸術関係の雑誌は大概、供給する側(芸術家側)の視点で編集されていて、けっこう押しつけがましさを感じる場合も多いのですが、「季刊メセナ」は、優れた芸術に対してはそれを適正に評価したうえでスポンサーしていこうとする企業団体の機関誌であることから、芸術を享受する消費者側の視点が貫かれているところも好ましいところです。

 毎号タイムリーな特集がありますが、過去1年間のものを簡単に紹介してみましょう。

第22号(95年秋)「映画100年と日本映画の現在」
●「眠る男」で話題の小栗康平監督と高野悦子らの座談会のほか、映画を発明したリュミエール兄弟が日本に派遣した2人のフランス人カメラマンについてのリポートなど。

第23号(96年冬)「創造体験としてのワークショップ − 啓蒙の時代から創造の時代へ」
●作り手が直接受け手と対話しつつ作品の創造を「分かち合う」ワークショップについて、東京で上演され話題になった『ガイジン』の演出家ピン・チョンへのインタビューや日本各地での事例報告など

第24号(96年春)「NPOって何? − アート界への影響を考える」
●阪神・淡路大震災におけるボランティアの活動をきっかけに注目されている非営利団体(NPO=Non-Profit Organization)の法人格の付与や税制の優遇などの問題について、特に芸術文化団体との関わりを中心に、Q&Aのかたちで大変分かりやすくまとめたもの。

第25号(96年夏)「アート界を揺さぶるインターネット」
●日本版シリコンバレーと言われる東京・渋谷区富ヶ谷の中心的存在という伊藤穣一へのインタビューやアート関係のサイトの紹介など

 企業メセナ協議会のホームページも開設されていて、ここから紹介されているアート関係のサイトへもリンクしています。例えば、あらゆるジャンルのCDを購入でき、データの検索も可能な“CD NOW”やオペラ関係の情報を満載している“Opera Glass”などへ飛ぶことができます。

  [URL]http://www.mediagalaxy.co.jp/mecenat/INDEX.HTM (注)

 こうした特集のほか、活躍中の芸術家を紹介する「仕事場拝見」のコーナー、最近注目されるアートシーンを解説する「現在アート必勝ミニ講座」、日本各地の動きを紹介する「北から南から」などのページも興味深く読むことができます。

 上記4号の中で音楽関係としては、美術作品を楽器として使ったライヴショーを行っている明和電機、笙奏者の宮田まゆみ、作曲家ルイジ・ノーノの記事があります。

 「季刊メセナ」は750円(消費税込み)で市販されていますが、大都市の特定の書店にしか置いていないようです。定期購読は1年間3000円(郵送料を含む)。企業メセナ協議会は Tel:03-3213-3397、Fax:03-3215-6222 です。

注:2003年1月現在のホームページアドレスは下記になっています。
http://www.mecenat.or.jp/