シリンクス音楽フォーラム 22
Internet

インターネット・レポート


三露 常男


 昨今のインターネットブームは、異常なまでの過熱ぶりを見せています。これが、パソコン産業やマスコミが一体となって作りあげたものであることは明らかで、一般人にとって本当に役立つメディアになるかどうか、大いに疑問があると言えるでしょう。当シリンクス音楽フォーラムの読者でパソコンを使っておられる方は、まだ少ないと思いますし、ましてやインターネットなど自分には関係ない、あるいはインターネットがどれほどのものか、と懐疑的に見ておられる方が多いことと思います。こう書いている筆者も自宅にパソコンを置いてインターネットを覗きだしたのはごく最近のことです。この記事では、音楽関係の情報源としてインターネットがどれほどのものであるか、ということを初心者の体験記としてレポートしてみたいと思います。

 まず初めにインターネットの一般的な特徴を挙げてみましょう。世界中のコンピュータから、最新の情報を即座に取り出すことができる。画像や音声も取り扱える。情報の受け取りだけでなく、発信も容易にできる。といったところがよく言われる特徴です。これらに嘘はないのですが、それぞれ但し書きが必要なことも事実です。すなわち、世界中といっても主な発信源は米欧日などいわゆる先進国に限られる、最新の情報といってもちゃんとメンテナンスされていなければどんどん古くなる、即座といっても特に通信路の狭い日本では結構時間(とお金)がかかる、画像や音声も質的には既存メディアにとてもかなわない、発信といっても見る人が居なければ単なる自己満足…などなど、否定的なことを言い出せばきりがありません。しかし、それでもなおインターネットならではの魅力や利用の仕方があり、従来のメディアとは異なった可能性を秘めていることは、しばらく遊んでみると実感できるところです。

 さて、コンピュータをインターネットに接続したとして(ここまでに初心者にとっては技術的な関門がありますが、最近はかなり易しくなっており、解説書もたくさん出ていますので、大したことはありません。)、自分の興味のあるサイト(いわゆるホームページ)をどのようにして見つけるかが問題です。一般的には、YahooやInfoseekなどのサーチエンジン(一種のイエローページ)に接続してキーワードなどで検索するのですが、思った通りの結果はなかなか出てこなくてストレスがたまります。もっと手っ取り早いのは、特定の分野に絞ったリンクサイト(アドレス帳のようなものです)に行って、そこから芋ずる式に面白いサイトを探すやり方です。雑誌に色々と紹介されていますが、クラッシック音楽関係で取りあえずおすすめできるのは、
 Classica(http://www.st.rim.or.jp/~iio/)

という日本のサイトです。ここは、オリジナルの内容もあるホームページで、その内容自体は「これから出る注目盤、話題の演奏会」、「今週の音楽家はこの人だっ」、「オペラに乗っ取られた作家たち」、「映画、そして音楽」など、比較的軽い読み物が中心です。このようなオリジナル記事の他に、充実したリンク集があり、簡単な内容紹介も付いていて便利です。ここを起点に内外の音楽関係サイトに飛んで行くことができます。そして、行った先ではまた関連するサイトが紹介されており、果てしなくインターネットの海を泳ぎ回る(俗にこれをネットサーフィンと称しています)ことになります。
 それでは、以下このリンク集の概要を紹介して、インターネット上にどんな情報がありそうか、を推測していただくことにします。このリンク集は、内容別に8つに分類されていますので、順番に紹介します。

●「ORCHESTRA:プロ・オーケストラをセレクト。オーケストラの歴史、チケット購入方法、シーズン・プログラム、ディスコグラフィなどが定番」
 紹介されているサイトは20あまり。アメリカ中心ですが、ベルリン、バーミンガム、アダムフィッシャー&ハイドン・オーケストラなどのヨーロッパや、シンガポール、ニュージーランド、そして日本フィルや群馬交響楽団など日本のサイトもあって、幅広く集められています。

●「OPERA HOUSE:ウイーン、ミラノをはじめとする世界のオペラハウス。劇場史、チケットの購入法、プログラムなど。」
 全約30サイト。欧米の主要オペラハウスがほぼ網羅されており、アメリカについてはかなりマイナーな劇場の情報もあるほか、各地の公演スケジュールのデーターベースなども紹介されています。

●「FESTIVALS and ORGANIZATIONS:世界の音楽祭、および各種の音楽関係機関へのリンク。」
 約15サイト。音楽祭関係では、ザルツブルク、ウイーン芸術週間、「プラハの春」、ショパンコンクールなど。その他、IRCAM(フランスの現代音楽組織)のホームページや20世紀音楽関連サイトへの豊富なリンク集も紹介されています。現代音楽、それも本当にcontemporaryな音楽の状況について調べるには、インターネットは必須の情報源と言えそうです。ロンドンの楽譜出版社、レコード店などのリソース集もあり、役立ちそうです。Vatican Exibit Main Hall は、古楽のオリジナル楽譜の写真などが豊富で眺めて楽しいページです。

●「COMPOSERS & MUSICIANS:ウエッブの大海に無数に存在する作曲家&演奏家ページから、ナイスなページをピックアップ。」
 シリンクスのメンバーの方々には、このあたりが一番重要な情報源になるかもしれません。約30のサイトが選ばれています。作曲家としては、スカルラッティ、バッハ、ヘンデル、モーツアルト、ショパン、ワーグナー、ブリテン、ヴォーン・ウイリアムズ、ヴァレーズ、ケージ、シュトニケ、など。現代音楽はここでも充実しており、作曲家自身ページや、総合的な内容のサイトがいくつか紹介されています。Music under Soviet rule(旧ソ連の作曲家たち)、Unknown Composers、Picture Gallery of Classical Composers、といったサイトもあります。War and Romance というサイトは、音楽のみならず、詩や美術も視野に入れた面白いページです。このあたりは、オンラインで英語を読むのはかなり辛いので、プリントアウトしてじっくり読むことになります。演奏家については、意外にサイトが少ないようで(ディスコグラフィのサイトでカバーされている?)、グレン・グールドのページが2つ紹介されている程度です。なお、これらのサイトでは、別稿「インターネットに鳴り響く音楽」に紹介されているMIDIデータファイルがあちこちにはめ込まれていたり、MIDIデータ専門のサイトへのリンクがあったりして、音のサンプルを聴くことが出来ます。

●「INSTRUMENTS:楽器のページはここ。楽器製作、メンテナンス、演奏法などアプローチはさまざま。」
 ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ギターなど楽器別に約10サイト。The Piano Pageは他のピアノ関連サイトへのリンクも充実しています。

●「NETIZENS:サイバースペースを支える個人ウエッブマスターたち。」
 個人が作っているホームページが20程紹介されており内容は様々。インターネットを情報発信の場として利用する一つの方法がこうした個人ホームページで、良くも悪くもお手本になります。我らが「Syrinx Home Page」も、このあたりに紹介してもらうよう働き掛けようと思っています。

●「SHOPS:デジタルなあなたにサイバーショッピング。」
 CDnow と World Wide Music の2つが取り上げられています。前者は16万タイトル以上を扱うというインターネット最大のCDショップで、検索だけでも利用価値がありそうです。

●「LABELS and other COMMERCIAL SITE:レーベルおよびレコード会社、音楽マネージメント、およびその他の商業サイト。」
 まだ実際のサイトは見ていませんが、データベースとしての利用価値は目的次第では大いにありそうです。その他、Internet Underground Music Archive というサイトが紹介されており、「無名の音楽家たちが自分の作品を世界に向けてプロモーションする場」として有名なようです。クラシック系統の音楽があるのかどうか、まだ調べていませんが…。

 以上、表面的な紹介に終わってしまいましたが、次回はもう少し内容に触れた「こんな面白いページがあった」という記事にしたいと思っています。
 なお、今回はいわゆる「ホームページ」の紹介に限りましたが、インターネット上には、この他、「ニュースグループ」や電子メールの機能を利用した「メーリングリスト」という意見交換の場があります。情報発信の方法としては、この方が直接的な手応えがあると言えるかも知れません。国内のパソコン通信でも同じ様な場がありますが、これらの状況についても、面白そうであればレポートしたいと思います。

 ともあれ、「Syrinx Home Page」も発足したことですし、これを機会に少しでもインターネット族が増えることを期待しています。