ノートルダム寺院。 ゴチック芸術。 神秘。中世スコラ哲学(広大な非現実世界の探究)。 Tr`es lent.時間を殆んど無限に、一音が彼方の果てまで達 してから、次の一音が発せられる。 小節区切りが無い。完全和音。一打音の完全性、孤立。音は、 ひとつ、ひとつ、宙の高みへ舞い上がり、拡がり・消えながら、 その消えたところに、壮重な尖がった形象をつくる。 厳しく拡散した空間。完壁なまでに空疎であること。 音は、緊密なままに楽譜に閉じこめられている。それは想像力 によって解き放たれねばならない。 平坦な旋律線。しかし、ひとつひとつは、連らなりながらも、 垂直に天の高みへ突きささろうとする。 内部表出、そうではない、自己を滅し去ること。「あなた自身 は、うつろになりなさい」。 教会の本質は、虚天志向性にあり、それは、そびえたつ尖塔に 具現される。サティは音によって尖塔を、次…次、と虚天へと上 昇する、しようとする、重力へ(=現実)に抗う音の尖塔を打ち がらんどう 建てる。己れを音・空洞と化すことによって。 未可能でなく不可能の領域。このような作品がありえたという こと。 あらゆるモノ・コトの非在。 音だけ、だが音は刻々と消滅して ゆく、 虚天に舞い昇る響きの残骸、かくて無、と無へ回帰しつつ ある虚在。 音、消滅、一切、消滅…… |
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