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墜落・転落防止策 一側足場の要件議論へ
厚労省 手すり先行工法義務化検討

(出典元:日刊建設工業新聞 2018年6月1日記事より)

 厚生労働省は5月31日、建設現場の労働災害で最も多い墜落・転落災害の防止策を話し合う官民実務者会議を立ち上げた。論点は足場の墜落・転落防止機能強化。構造物に沿って一列に並べた支柱で作る「一側足場」の設置要件を定める方向で議論する。足場全般の組み立て・解体時に手すりを常時設置しておく「手すり先行工法」の義務化も検討する。
 初会合であいさつした厚労省の田中誠二労働基準局安全衛生部長は、2017年に発生した建設業の労働災害による死亡者数(計323人)のうち、要因別で墜落・転落が突出して多い4割超の135人だった状況を説明。その上で「対策を充実強化していくことは喫緊の課題だ」と訴えた。
 一側足場は狹い場所での設置に優位性があり、中小規模の民間建築工事で多く採用されている。ただ、構造などの設置要件は定められていない。そこで構造物に沿って二列に並べた支柱で作る本足場」と同程度の設置要件を定める方向で検討する。
 本足場は墜落・転落防止性に優れ、国や地方自治体の多くの工事で採用されている。労働安全衛生法令で作業床幅40cm以上を確保し、手すりを高さ85cm以上、中さん手すりは同35cm〜50cm程度の場所で設置することが定められている。これに対し、一側足場は作業床幅が20cm程度で中さん手すりもないケースが多い。狹い場所で腰をかがんで行う作業がしやすいメリットもあるが、その代わりに墜落・転落しやすくなるリスクがつきまとう。
 足場の対策では、全般的に最も墜落・転落防止に効果があるとされる手すり先行工法の義務化も検討する。厚労省によると、現時点で国工事の約8割、地方自治体工事の約7割で採用されているが、民間工事では約3割にとどまる。さらに足場点検者に対する安全教育の義務化も議論する。
いずれもコストや手間などが今後の論点になりそうだ。
 一戸建て住宅工事を念頭に、屋上や屋根からの墜落・転落を防ぐ対策にも注力する。コストがかさむのを理由に、法令を守らず足場を設置しないケースが多い改修・解体工事でも足場の設置義務化を探る。作業主任者の選任範囲に対象外となっている改修・解体工事を加える対策の可否も話し合う。



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