トップページ > 施工計画
 更新日 2023/06/12

施工計画

□施工計画とは、工事目的物を工期内に完成させるために必要な手順や工法について示した計画であり、工事の品質や工期など契約図書で要求されている事項を保持し、経済性、施工の安全、環境の保全を調和させ工事を遂行するためのものである。施工計画の策定にあたっては、施工方法、労務、機械・設備、材料の生産手段から利用できるすべてを選定し、組み合わせて検討し、最適と考えられる具体的な施工の方法と手順を定めるようにする。
□工事の契約図書には、工事目的物の形状、寸法、品質、工期などは示されているが、施工方法、施エプロセスの詳細は記述されていない。請負契約書では、工事目的物を完成させるための施工方法等は受注者の責任にて定めるとされている。
□工事の契約図書には、工事請負契約書と設計図書がある。設計図書には、一般に次のような書類が該当する。
 @ 設計図:位置図、一般図、詳細図等
 A 数量総括表:工事数量、内訳書等(単価は記載されていない。)
 B 共通仕様書:発注者が契約書及び設計図書の内容について、統一の解釈及び運用を図るとともに、その必要な事項を定めて、契約の適正な履行を図るために、基本的な技術要件(具体的な内容として、使用材料の品質管理基準・規格値、出来形管理基準・規格値、品質検査等の規定)を収録したものである。
 C 特記仕様書:契約に際して、その工事の性質、特徴に応じて、共通仕様書に規定していないことを規定する場合や記載していることを変更するための要件を示した仕様書である。共通仕様書より優先される仕様書で、当該工事のみを対象とする。
 D 現場説明書及び現場説明に対する質問回答書(電子情報によるものを含む。)

施工計画の立案

□施工計画の立案目的は、発注者の要求水準を満たす範囲で、工事をより良く、より安く、より早く、より安全に、環境への影響がより少なくなるように工事を施工する方法・手順などを決めることである。すなわち、品質、原価、工程、安全衛生、環境保全の総合調整を図ることと言える。
□施工計画の立案と作成の一般的な手順は、以下のとおりである。

1.施工計画の立案手順

@事前調査
 施工計画立案の前提として、現地踏査による周辺環境の把握、発注者との契約条件及び用地取得状況や地元との協議・調整などの現場の諸条件を十分に調査する。
A基本計画
 事前調査を基に主要な工種についての施工方法の概略及び施工順序、使用機械などの技術的検討を経て、目的物の品質の確保、概略工程、概算工費から評価して最適なものに絞る。
B詳細計画
 基本計画に基づき、詳細計画である本工事計画・仮設工事計画を立てる。その概略の手順は、次のとおりである。
 a.基本計画に従って、機械の選定、労務配置、サイクルタイム、1日の作業量の決定及び各工種の作業順序などを決定する。
 b.仮設備の規模、配置などを決定する。
 c.工事全体を包括した工種別の詳細工程を立案する。
 d.工種別の詳細工程に基づいて機械、資材、労務などの調達と使用計画を立て山積み山崩しを行い最適化する。
C管理計画
 事前調査から基本計画、詳細計画を確実に実施するための現場組織・人員計画、安全衛生及び環境保全計画など工事管理のための諸計画を立案する。

2.施工計画作成上の留意点

□施工計画の作成にあたっては、次の事項に留意する。
 @ 発注者の要求する品質を確保し、同時に安全施工を基本とした計画とする。
 A 過去の施工法に捉われず、新工法・新技術の採用を検討する。
 B 重要な工種や新工法等は、社内の組織やNETIS等を活用して計画する。
 C 一つの計画のみではなく、代案を考えて比較検討して最良の計画を採用する。
 D 施工計画と実行予算の整合性を図る。

施工計画書の作成

□施工計画は、施工計画書としてまとめ、見積り及び工事施工の基準として「施工管理」に使用するほか、以下の資料に活用される。
 @ 発注者に提出する施工計画書、工程表又は各種書類の作成根拠資料。
 A「労働安全衛生法」に則した厚生労働大臣、労働基準監督署への計画届出並びに説明資料。
 B 管轄警察署、海上保安部など関係先に対する届出書類。
 C 会社内の英知を集めて、より良い計画とするための施工検討会等における資料。
 D 電力、ガス、上下水道、電話・通信などの設置、埋設物の管理者に対する照会又は説明のための資料。
 E 地元住民などに対する説明資料。
 F 他の工事に対する同種工事施工計画としての参考資料。
□各発注者で施工計画書に記載する内容は異なっているが、一般的に共通仕様書等で定められている。
 「土木工事共通仕様書」では、計画工程、現場組織、機械・主要機材、施工方法等の15項目が定められている。
□また、公共建築工事標準仕様書では、工事の総合的な計画をまとめた総合施工計画書と工種ごと(地業、躯体各工事、内装各工事、外装各工事、設備各工事等)の一工程の施工の確認を行う段階及び施工の具体的な計画を定めた工種別の施工計画書を作成し提出することとされている。
□施工計画書は、工事の種類、規模などにより、記載する内容の程度は異なるが、施工管理の基本として重要なものである。発注者が求める施工計画の内容を網羅するほか、一般的な施工計画書の構成は、以下のとおりである。

1.工事概要

□工事名、発注者、請負金額、工事場所、工期、工事担当者、発注方法など工事管理上必要最小限の情報をまとめて記述する。このほかに工事の全容を把握できるよう、位置図、全体平面図、主要構造図、地質柱状図、工事数量、設計条件などを添付する。
□なお、現場運営上で重要と考えた問題点等を施工の要素(品質、費用、工程、安全衛生、環境保全)に分類・整理し、問題点の解決策と策定のプロセス、目標達成の解決課題について対応策を記述する。
□ここで、工事に大きく影響を及ぼすと考えられる要因については、問題点を挙げ重要度の高い要因から順次説明し、対応策を含めて検討の経緯を簡潔に記述する。新技術・新工法の採用については、その実効性を確保するために、検討経緯を踏まえて、社内外の指導・支援内容を具体的に記述することが望ましい。
(2)仮設工事計画
□仮設工事には、指定仮設と任意仮設があり、指定仮設は発注者が設計図書で構造や仕様を指定するものである。
 ここで、仮設工事での設計の考え方や計画の留意事項は、以下のとおりである。
1)仮設設計の基本
 仮設設計は、本体構造物設計ではなく、仮設備の設計であり基本的には本体構造物設計と変わらないが、実際の運用には次の事項に留意する。
 @ 一般的な仮設備等は、使用期間が短いので、安全率は仮設時のもの(「仮設基準」など)を使用する。
 A リース材等の経済的な材料を使用することが多いので、その強度計算にあたっては慎重な対応が必要である。
   中古材料を使用する場合は、必要に応じて材料強度を割り引く必要がある。
 B 材料は、汎用品を使用し、特別な場合を除いて特殊資材等を使用しない。
 C 設計荷重は一般に短期の荷重を採用する。
 D 部材の弱点となる継手は、できるだけ現場溶接を少なくし、工場溶接やボルト接合を採用する。

2.仮設工事計画の留意事項

□仮設工事計画立案の留意点は、以下のとおりである。
 @ 本工事の工法・仕様などの変更に適応可能な柔軟性のある計画とする。
 A 材料は汎用品を使用し、可能な限り規格を統一する。また、他の工種にも転用できるような計画とする。
 B 仮設備は使用期間が短いため安全率は仮設時のものとするが、使用期間が長期にわたるものや重要度の大きい場合は、適切に設定する必要がある。
 C 取扱いが容易で、できるだけユニット化や省力化が図れるようにする。
 D 仮設物の運搬、設置、運用、メンテナンス、撤去などの面から総合的に計画する。
 E 現場のイメージアップに配慮したものとする。また、作業員等の宿舎・厚生施設は可能な限り充実させる。
(3)本工事の計画
□主要な工種、方針達成に関わる工種、特に留意する工種の施工方法、主要資機材、施工設備、作業環境、作業者の資格・配置人数などの要点をフローチャートや図表を加えて簡潔に記述する。
 本工事を計画する際の留意事項は、次のとおりである。
 @ 主要工種別に施エフロー、施工方法、施工機械(機種、機械編成、能力など)、使用資材及びその規格などについて図表等を活用して明示する。
 A 施工上の制約条件(部分工期、作業時間帯、稼働日数、資機材の転用、高水時期や潮汐など)を明示する。
 B 施工歩掛りの算定及び機械能力算定表等は各工種の計画に記載することが望ましい。

3.品質計画

□品質計画は、工種・作業ごとの品質特性を決めて、品質特性(又は代用特性)の品質標準を達成するための作業標準(又は作業手順)に従って、検査・試験の具体的な内容や管理実施体制を整理するものである。一般的には、品質計画の具体的なものは、検査・試験一覧表(QC工程表とも呼ばれる)である。この検査・試験一覧表には、購入材料、支給品、工程内・下請負先での検査、及び発注者の検査等から、検査・試験項目と合わせて、基準・規格値、頻度及び統計的手法を採用する場合はその手法を明記する。また、品質上重要な資材、工程(溶接、圧接など)及び発注者の仕様書でトレーサビリティが規定されているものは識別方法及び品質上重要な資材、成果品の取り扱い、保管及び引き渡し方法についても計画する。
 この品質計画では、検査・試験で不合格品が発生した場合の意図されない使用を防ぐために、不適合品の管理を明確にしておく必要がある。

4.工程計画

工程管理の基本は、施工計画を時間軸で管理することであり、工程表は、工事の進捗管理に最適な工程表とする。また、工程表には出来高予定曲線等を記入し、施工中の採算速度の維持を図るための比較分析に用いる。

5.従業員計画

□従業員編成表は、施工管理の責任と権限を明確にするとともに、業務分担、職務分担を明示する。また、原価管理の観点から、従業員編成表は、月別工程表と合わせて計画することが望ましい。

6.調達計画

□本工事計画、仮設工事計画を基にして、機械、資材、支給品等管理及び下請負等外注の調達計画を行う。

7.安全衛生計画

□安全衛生計画は、事故・災害発生が工事の成否と企業の存立に大きな影響を及ぼすことを十分に認識して、検討することが必要である。
□安全衛生計画の作成では、工種工程別に事故・災害を予測し、防止対策の具体的な実施内容、教育内容について計画する。なお、一般に公共工事では、月1回4時間以上の安全訓練を実施することが義務付けられていることから、計画に組み込む必要がある。

8.環境保全対策及び建設公害防止計画

□周辺環境への負荷の増大及び建設公害の発生は、工事の進捗に大きな影響を与えるので、廃棄物及び典型7公害(水質汚濁、騒音、振動、大気汚染、土壌汚染、地盤沈下、悪臭)その他について、予想される具体的な内容とその対策を計画する。
□なお、建設機械の選定に際しては、排出ガス規制に関する「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」(オフロード法)に基づくほか、地球環境保全の観点からC02排出低減に努めることが望ましい。

9.品質記録と工事書類

□施工計画に沿って、施工を行う過程で、発注者へ品質記録等の報告が義務付けられている。これらの品質記録と併せて、必要なデータを的確に残し、同種工事へのフィードバックや管理技術の向上に反映させることが必要である。
□工事現場において、発注者から提出を求められて受注者が作成する書類が多く、書類の様式が統一されていないため、現場技術者の労力の多くが工事書類の作成に費やされるとして、工事書類の簡素化が求められてきた。
□各地方整備局では、「土木工事書類作成マニュアル」が作成されている。また、営繕工事については、地方局ごとに「営繕工事における工事関係図書等に関する効率化実施要領」が定められ、工事関係図書一覧表から工事ごとの必要書類を選定し、効率化を図るようにしている。地方公共団体においても、提出書類一覧表を作成し工事書類の簡素化を図りつつあるので、該当するホームページを参照されたい。


↑ 先頭へ   前のページにもどる