トップページ > このページ

監理技術者制度と施工体制

1.監理技術者制度運用マニュアル

監理技術者制度が円滑かつ的確に運用されるために、監理技術者等の配置に関する事項、監理技術者等の専任に関する事項、監理技術者資格者証・監理技術者講習に関する事項、施工体制台帳に関する事項等、監理技術者制度を運用する上で必要な事項について整理し、運用に当たっての基本的な考え方を示したものとして、国土交通省は、「監理技術者制度運用マニュアル」(平成16年3月1日国総建第315号)を定めている。
 詳しくは、国土交通省ホームページを参照
 建設業者は、本マニュアルを参考に、監理技術者制度についての基本的考え方、運用等について熟知し、「建設業法」に基づき適正に業務を行う必要がある。
 監理技術者制度の趣旨、監理技術者等の職務については、第1章1.2「建設業における技術者の意義」に記したとおりである。
 (編注)本節は「監理技術者制度運用マニュアル」に基づいて記述している。監理技術者制度運用マニュアルにおいては、「技術者の設置」とされているが、本テキストにおいては理解しやすくするため「技術者の配置」と記述している。また、「主任技術者又は監理技術者」は「監理技術者等」と記述している。


2.監理技術者等の配置

(1)監理技術者等の配置義務
建設業者(許可を受けて建設業を営む者)は、建設工事を施工する場合には、請負金額の大小、元請・下請にかかわらず、必ず工事現場に施工の技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者を置かなければならない。(法第26条第1項) また、特定建設業者が、発注者から直接工事を請け負い(元請)、総額4,000万円(建築
一式工事の場合は6,000万円)以上を下請契約して施工する場合は、主任技術者にかえて監理技術者を置かなければならない。(法第26条第2項、令第2条)
一般建設業者が元請の場合は、下請契約の総額4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満の建設工事しか請け負うことができないため、主任技術者の配置で足りる。
下請の場合は、特定建設業、一般建設業にかかわらず、主任技術者の配置で足りる。
許可を受けずに建設業を営む者は、主任技術者の配置義務はないが、工事の完成を約す請負工事であるので、施工の責任者を置いて施工すべきである。
したがって、元請となった特定建設業者は、監理技術者等の配置の要否を判断するため、工事受注前にはおおむねの計画を立て、工事受注後速やかに、工事外注の範囲とその請負代金の額に関する工事外注計画を立案し、下請契約の予定額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となるか否か的確に把握しておくとともに、工事外注計画について、工事の進捗段階に応じて必要な見直しを行う必要がある。
(2)専門技術者の配置義務
土木工事業や建築工事業の業者が、土木一式工事又は建築一式工事を施工する場合で(元請業者)、これらの一式工事の中に含まれている専門工事(軽微な建設工事を除く。)を自ら施工する場合には、それぞれの専門工事について主任技術者の資格を持っている者(専門技術者)を工事現場に置かなければならない。自ら施工しない場合には、その専門工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に下請けさせなければならない。(法第26条の2第1項) また、建設業者は、許可を受けた建設業の建設工事に附帯する他の建設工事(いわゆる附帯工事(軽微な建設工事を除く。))をすることができるが、その場合も、その附帯工事に関する専門技術者を置かなければならない。自ら施工しない場合には、その附帯工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に下請けさせなければならない。(法第26条の2第2項) 下請けさせない場合、請け負った建設工事の主任技術者又は監理技術者が、その専門工事について、主任技術者の資格を持っている場合、その者が専門技術者を兼ねることができる。資格を持っていない場合は、自社の中で、その専門工事について主任技術者の資格を持っている他の者を専門技術者として配置する。
(3)監理技術者等の資格要件
監理技術者等となるためには、一定の国家資格や実務経験を有していることが必要であり、特に指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業及び造園工事業)に係る建設工事の監理技術者は、1級施工管理技士等の国家資格者又は建設業法第15条第2号八の規定に基づき国土交通大臣が認定した者(以下、「国土交通大臣認定者」という。)に限られる。(法第26条第2項バ表2.3-1参照)
表2.3-1 工事現場の技術者制度
許可業種
指定建設業
指定建設業以外

建設工事の種類
土木一式、建築一式、管、鋼構造物、舗装、電気、造園大工、左官、とび・土工・コンクリート、石、屋根、タイル・れんが・ブロック、鉄筋
しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体
許可の区分
特定建設業
一般建設業
特定建設業
一般建設業
元請工事における下請金額合計
4,000万円*1以上
4,000万円*1未満
4,000万円*1以上は契約できない
4,000万円以上
4,000万円未満
4,000万円以上は契約できない

工事現場の技術者制度工事現場に置くべき技術者
監理技術者
主任技術者
監理技術者
主任技術者
技術者の資格要件
1級国家資格者
国土交通大臣
認定者
1級・2級国家資格者
実務経験者
I級国家資格者
実務経験者
1級・2級国家資格者
実務経験者
技術者の現場専任
公共性のある施設もしくは工作物又は多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事*2であって、請負金額が3,500万円*3以上となる工事

監理技術者資格者証及び監理技術者講習
受講の必要性
専任が必要な工事のとき公共工事、民間工事を問わず必要*4

必要なし
専任が必要な工事のとき公共工事、民間工事を問わず必要*4

必要なし
*1:建築一式工事の場合6,000万円
*2:2.3.4 (1)「専任が必要な工事」を参照。
*3:建築一式工事の場合7,000万円
*4:2.3.5「監理技術者資格者証制度及び監理技術者講習制度」を参照。
 なお、監理技術者等の資格要件は、巻末資料2~5を参照されたい。
(5)主任技術者から監理技術者への変更
 当初は主任技術者を配置した工事で、大幅な工事内容の変更等により、工事途中で下請契約の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となったような場合には、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、主任技術者に代えて、所定の資格を有する監理技術者を配置しなければならない。ただし、工事施工当初においてこのような変更があらかじめ予想される場合には、当初から監理技術者になり得る資格を持つ技術者を置かなければならない。
(6)監理技術者等の途中交代施工管理をつかさどっている監理技術者等の工期途中での交代は、建設工事の適正な施工の確保を阻害するおそれがあることから、当該工事における入札・契約手続きの公平性の確保を踏まえたうえで、慎重かつ必要最小限とする必要があり、これが認められる場合としては、監理技術者等の死亡、傷病、退職、出産、育児又は介護等、真にやむを得ない場合のほか、次に掲げる場合等が考えられる。
 ① 受注者の責によらない理由により工事中止又は工事内容の大幅な変更が発生し、工期が延長された場合
 ② 橋梁、ポンプ、ゲート等の工場製作を含む工事であって、工場から現地へ工事の現場が移行する時点
 ③ 工事の規模の大小にかかわらず、一つの契約工期が多年に及ぶ場合
   なお、いずれの場合であっても、発注者と発注者から直接建設工事を請け負った建設業者との協議により、交代の時期は工程上一定の区切りと認められる時点とするほか、交代前後における監理技術者等の技術力が同等以上に確保されるとともに、工事の規模、難易度等に応じ一定期間重複して工事現場に配置するなどの措置をとることにより、工事の継続性、品質確保等に支障がないと認められることが必要である。
 (注)上記は、基本的には公共工事に適用されるものであるが、民間工事においても準用することが望ましい。
(7)営業所の専任技術者と監理技術者等との関係
 営業所における専任の技術者は、営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められている。
 特例として、当該営業所において請負契約が締結された建設工事であって、工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあるものについては、当該工事の監理技術者等を兼務することができる。ただし、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にない者や工事現場の専任が必要となる場合は兼務することができない。
 なお、営業所における専任の技術者として申請のあった技術者が会社の社員の場合は、出向社員であっても、当該技術者の勤務状況、給与の支払状況、当該技術者に対する人事権の状況等により専任制が認められれば、「営業所に常勤して専らその職務に従事」している者として取り扱うこととなっているが、この技術者が工事現場における監理技術者等となる場合は、後述するように、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要である(営業所における専任の技術者の取り扱いについて(平成15年4月21日付、国総建第18号))。
(8)現場代理人と監理技術者等との関係
 現場代理人は、請負契約の的確な履行を確保するため、工事現場の取締りのほか、工事の施工及び契約関係事務に関する一切の事項を処理するものとして工事現場に置かれる請負者の代理人であり、監理技術者等との密接な連携が適正な施工を確保するうえで必要不可欠である。
 現場代理人の選任、常駐義務、資格要件、監理技術者等との兼任などは、請負契約書で取り決められ、「建設業法」においては、現場代理人を選任した場合、その権限に関する事項等について、発注者に通知することとされている。(法第19条の2)
 また、公共工事標準請負契約約款第10条第2項では、現場代理人は工事現場に常駐とされているが、第3項では、発注者は前項の規定にかかわらず、現場代理人の工事現場における運営、取締り及び権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されると認めた場合には、現場代理人について工事現場における常駐を要しないこととすることができるとしている。さらに第5項において、「建設業法」に基づく監理技術者等は、現場代理人を兼務できるとされている。
 「現場代理人の常駐義務緩和に関する適切な運用について」(国土建第161号平成23年11月14日)では、現場代理人の常駐義務緩和の基本的な考え方として、「契約締結後、現場事務所の設置、資機材の搬入または仮設工事等が開始されるまでの期間や、工事の全部の施工を一時中止している期間等」を示している。さらに「安全管理や工程管理などの工事現場の運営・取締り等が困難なものでない(主任技術者や監理技術者の専任が不要な規模・内容など)」と「発注者または監督員と常に携帯電話等で連絡が取れる」のいずれも満たす場合にも常駐義務を緩和することが考えられるとしている。
 常駐義務の緩和に伴い他の現場代理人などを兼任する場合については、
①兼任する工事の件数が少数(2~3件程度)
②現場間の移動距離が一定範囲(同一市町村内など)
③発注者または監督員が求めた場合に現場に速やかに向かえるという3条件をすべて満たすこととされている。なお、これらの条件をクリアしても、建設業法上の主任技術者又は監理技術者の専任義務は緩和されないことに留意する必要がある。


3.施工体制台帳の整備と施工体系図の作成等

(1)施工体制台帳の整備
 施工体制台帳作成の目的は、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が、施工体制台帳の作成等を通じて現場の施工体制を把握することで、
①品質・工程・安全などの施工上のトラブルの発生
②不良・不適格業者の参入・建設業法違反(一括下請負等)
③安易な重層下請による生産効率低下 等の防止を図ることである。
 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者で当該建設工事を施工するために総額4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の下請契約を締結したものは、建設工事の適正な施工を確保するため、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに、建設工事の目的物を引き渡すまで備え置かなければならない。(法第24条の7第1項、規則第14条の2、規則第14条の7)
 公共工事では、発注者から直接建設工事を請負った建設業者(特定・一般にかかわらず)は、下請契約を締結するすべての工事において、施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに、建設工事の目的物を引き渡すまで備え置かなければならない。(入契法第15条第1項バ以下、施工体制台帳作成義務のある建設業者を「作成建設業者」という。)
 施工体制台帳に関しては、さらに以下の規定が定められている。
 ① 当該建設工事に携わるすべての下請負人は、その請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、作成建設業者に対して、再下請負通知書を提出しなければならない。(法第24条の7第2項、規則第14条の4)
 ② 作成建設業者は、発注者から請求があったときは、施工体制台帳をその発注者の閲覧に供しなければならない。(法第24条の7第3項)
   公共工事では、作成建設業者は、施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければならない。(入契法第15条第2項)また、発注者から施工体制が施工体制台帳の記載と合致しているかどうかの点検を求められたときはこれを受けることを拒んではならない。(入契法第15条第3項)
 ③ 作成建設業者は、遅滞なく、下請負人に対し、再下請負を行う場合は施工体制台帳作成工事である旨を通知(作成建設業者の商号又は名称、再下請負通知を行わなければならない旨及び提出場所を記載)するとともに掲示しなければならない。(規則第14条の3)
 ④ 下請負人は、再下請負人に対し、再下請負を行う場合は、施工体制台帳作成工事である旨の通知をしなければならない。(規則第14条の4)
 ⑤ 作成建設業者は、上記施工体制台帳の必要部分を帳簿に添付し、工事完了後、5年間保存しなければなら、ない。(規則第28条第1項)
 施工体制台帳の記載事項及び再下請通知を行うべき事項は、表2.3-3及び表2.3-4のとおりである。平成27年4月1日から、建設分野における外国人材の活用を図るための緊急措置の導入に伴い、外国人建設就労者(注1)の従事の有無及び外国人技能実習生(・2)の従事の有無が追加された。(規則第14条の2、第14条の4)また、施工体制台帳作成の流れは、巻末資料6を参照されたい。
(注D 外国人建設就労者:「特定活動」の在留資格を決定された者で、国土交通大臣が定めるもの(注2)外国人技能実習生:「技能実習」の在留資格を決定された者第1章1.4.3 (2) 2)「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置」参照。
 施工体制台帳作成の詳細 国土交通省ホームページ
 なお、通知において、「施工体制台帳の作成等が必要でない場合であっても、建設工事の適正な施工を確保する観点から、施工体制台帳の作成等を行うことが望ましい。また、より的確な建設工事の施工及び請負契約の履行を確保する観点から、記載することとされていない安全衛生責任者名、雇用管理責任者名、就労予定労働者数、工事代金支払方法、受注者選定理由等の事項についても、できる限り記載することが望ましい。」とされている。
 施工計画とは、工事目的物を工期内に完成させるために必要な手順や工法について示した計画であり、工事の品質や工期など契約図書で要求されている事項を保持し、経済性、施工の安全、環境の保全を調和させ工事を遂行するためのものである。施工計画の策定にあたっては、施工方法、労務、機械・設備、材料の生産手段から利用できるすべてを選定し、組み合わせて検討し、最適と考えられる具体的な施工の方法と手順を定めるようにする。
 工事の契約図書には、工事目的物の形状、寸法、品質、工期などは示されているが、施工方法、施エプロセスの詳細は記述されていない。請負契約書では、工事目的物を完成させるための施工方法等は受注者の責任にて定めるとされている。
 工事の契約図書には、工事請負契約書と設計図書がある。設計図書には、一般に次のような書類が該当する。
 ① 設計図:位置図、一般図、詳細図等
 ② 数量総括表:工事数量、内訳書等(単価は記載されていない。)
 ③ 共通仕様書:発注者が契約書及び設計図書の内容について、統一の解釈及び運用を図るとともに、その必要な事項を定めて、契約の適正な履行を図るために、基本的な技術要件(具体的な内容として、使用材料の品質管理基準・規格値、出来形管理基準・規格値、品質検査等の規定)を収録したものである。
 ④ 特記仕様書:契約に際して、その工事の性質、特徴に応じて、共通仕様書に規定していないことを規定する場合や記載していることを変更するための要件を示した仕様書である。共通仕様書より優先される仕様書で、当該工事のみを対象とする。
 ⑤ 現場説明書及び現場説明に対する質問回答書(電子情報によるものを含む。)


4.施工計画の立案

 施工計画の立案目的は、発注者の要求水準を満たす範囲で、工事をより良く、より安く、より早く、より安全に、環境への影響がより少なくなるように工事を施工する方法・手順などを決めることである。すなわち、品質、原価、工程、安全衛生、環境保全の総合調整を図ることと言える。
 施工計画の立案と作成の一般的な手順は、以下のとおりである。
(1)施工計画の立案手順
 ①事前調査
  施工計画立案の前提として、現地踏査による周辺環境の把握、発注者との契約条件及び用地取得状況や地元との協議・調整などの現場の諸条件を十分に調査する。
② 基本計画
  事前調査を基に主要な工種についての施工方法の概略及び施工順序、使用機械などの技術的検討を経て、目的物の品質の確保、概略工程、概算工費から評価して最適なものに絞る。
③ 詳細計画
  基本計画に基づき、詳細計画である本工事計画・仮設工事計画を立てる。その概略の手順は、次のとおりである。
 ア。基本計画に従って、機械の選定、労務配置、サイクルタイム、1日の作業量の決定及び各工種の作業順序などを決定する。
 イ。仮設備の規模、配置などを決定する。
 ウ。工事全体を包括した工種別の詳細工程を立案する。
 エ。工種別の詳細工程に基づいて機械、資材、労務などの調達と使用計画を立て山積み山崩しを行い最適化する。
④ 管理計画
  事前調査から基本計画、詳細計画を確実に実施するための現場組織・人員計画、安全衛生及び環境保全計画など工事管理のための諸計画を立案する。
(2)施工計画作成上の留意点
 施工計画の作成にあたっては、次の事項に留意する。
 ① 発注者の要求する品質を確保し、同時に安全施工を基本とした計画とする。
 ② 過去の施工法に捉われず、新工法・新技術の採用を検討する。
 ③ 重要な工種や新工法等は、社内の組織やNETIS等を活用して計画する。
 ④ 一つの計画のみではなく、代案を考えて比較検討して最良の計画を採用する。
 ⑤ 施工計画と実行予算の整合性を図る。


5.施工計画書の作成

 施工計画は、施工計画書としてまとめ、見積り及び工事施工の基準として「施工管理」に使用するほか、以下の資料に活用される。
 ① 発注者に提出する施工計画書、工程表又は各種書類の作成根拠資料。
 ②「労働安全衛生法」に則した厚生労働大臣、労働基準監督署への計画届出並びに説明資料。
 ③ 管轄警察署、海上保安部など関係先に対する届出書類。
 ④ 会社内の英知を集めて、より良い計画とするための施工検討会等における資料。
 ⑤ 電力、ガス、上下水道、電話・通信などの設置、埋設物の管理者に対する照会又は説明のための資料。
 ⑥ 地元住民などに対する説明資料。
 ⑦ 他の工事に対する同種工事施工計画としての参考資料。
 各発注者で施工計画書に記載する内容は異なっているが、一般的に共通仕様書等で定められている。
 「土木工事共通仕様書」では、計画工程、現場組織、機械・主要機材、施工方法等の15項目が定められている。
 また、公共建築工事標準仕様書では、工事の総合的な計画をまとめた総合施工計画書と工種ごと(地業、躯体各工事、内装各工事、外装各工事、設備各工事等)の一工程の施工の確認を行う段階及び施工の具体的な計画を定めた工種別の施工計画書を作成し提出することとされている。
 施工計画書は、工事の種類、規模などにより、記載する内容の程度は異なるが、施工管理の基本として重要なものである。発注者が求める施工計画の内容を網羅するほか、一般的な施工計画書の構成は、以下のとおりである。
(1)工事概要
 工事名、発注者、請負金額、工事場所、工期、工事担当者、発注方法など工事管理上必要最小限の情報をまとめて記述する。このほかに工事の全容を把握できるよう、位置図、全体平面図、主要構造図、地質柱状図、工事数量、設計条件などを添付する。
 なお、現場運営上で重要と考えた問題点等を施工の要素(品質、費用、工程、安全衛生、環境保全)に分類・整理し、問題点の解決策と策定のプロセス、目標達成の解決課題について対応策を記述する。
 ここで、工事に大きく影響を及ぼすと考えられる要因については、問題点を挙げ重要度の高い要因から順次説明し、対応策を含めて検討の経緯を簡潔に記述する。新技術・新工法の採用については、その実効性を確保するために、検討経緯を踏まえて、社内外の指導・支援内容を具体的に記述することが望ましい。
(2)仮設工事計画
 仮設工事には、指定仮設と任意仮設があり、指定仮設は発注者が設計図書で構造や仕様を指定するものである。
 ここで、仮設工事での設計の考え方や計画の留意事項は、以下のとおりである。
1)仮設設計の基本
 仮設設計は、本体構造物設計ではなく、仮設備の設計であり基本的には本体構造物設計と変わらないが、実際の運用には次の事項に留意する。
 ① 一般的な仮設備等は、使用期間が短いので、安全率は仮設時のもの(「仮設基準」など)を使用する。
 ② リース材等の経済的な材料を使用することが多いので、その強度計算にあたっては慎重な対応が必要である。
   中古材料を使用する場合は、必要に応じて材料強度を割り引く必要がある。
 ③ 材料は、汎用品を使用し、特別な場合を除いて特殊資材等を使用しない。
 ④ 設計荷重は一般に短期の荷重を採用する。
 ⑤ 部材の弱点となる継手は、できるだけ現場溶接を少なくし、工場溶接やボルト接合を採用する。
2)仮設工事計画の留意事項
 仮設工事計画立案の留意点は、以下のとおりである。
 ① 本工事の工法・仕様などの変更に適応可能な柔軟性のある計画とする。
 ② 材料は汎用品を使用し、可能な限り規格を統一する。また、他の工種にも転用できるような計画とする。
 ③ 仮設備は使用期間が短いため安全率は仮設時のものとするが、使用期間が長期にわたるものや重要度の大きい場合は、適切に設定する必要がある。
 ④ 取扱いが容易で、できるだけユニット化や省力化が図れるようにする。
 ⑤ 仮設物の運搬、設置、運用、メンテナンス、撤去などの面から総合的に計画する。
 ⑥ 現場のイメージアップに配慮したものとする。また、作業員等の宿舎・厚生施設は可能な限り充実させる。
(3)本工事の計画
 主要な工種、方針達成に関わる工種、特に留意する工種の施工方法、主要資機材、施工設備、作業環境、作業者の資格・配置人数などの要点をフローチャートや図表を加えて簡潔に記述する。
 本工事を計画する際の留意事項は、次のとおりである。
 ① 主要工種別に施エフロー、施工方法、施工機械(機種、機械編成、能力など)、使用資材及びその規格などについて図表等を活用して明示する。
 ② 施工上の制約条件(部分工期、作業時間帯、稼働日数、資機材の転用、高水時期や潮汐など)を明示する。
 ③ 施工歩掛りの算定及び機械能力算定表等は各工種の計画に記載することが望ましい。
(4)品質計画
 品質計画は、工種・作業ごとの品質特性を決めて、品質特性(又は代用特性)の品質標準を達成するための作業標準(又は作業手順)に従って、検査・試験の具体的な内容や管理実施体制を整理するものである。一般的には、品質計画の具体的なものは、検査・試験一覧表(QC工程表とも呼ばれる)である。この検査・試験一覧表には、購入材料、支給品、工程内・下請負先での検査、及び発注者の検査等から、検査・試験項目と合わせて、基準・規格値、頻度及び統計的手法を採用する場合はその手法を明記する。また、品質上重要な資材、工程(溶接、圧接など)及び発注者の仕様書でトレーサビリティが規定されているものは識別方法及び品質上重要な資材、成果品の取り扱い、保管及び引き渡し方法についても計画する。
 この品質計画では、検査・試験で不合格品が発生した場合の意図されない使用を防ぐために、不適合品の管理を明確にしておく必要がある。
(5)工程計画
 工程管理の基本は、施工計画を時間軸で管理することであり、工程表は、工事の進捗管理に最適な工程表とする。また、工程表には出来高予定曲線等を記入し、施工中の採算速
度の維持を図るための比較分析に用いる。
(6)従業員計画
 従業員編成表は、施工管理の責任と権限を明確にするとともに、業務分担、職務分担を明示する。また、原価管理の観点から、従業員編成表は、月別工程表と合わせて計画することが望ましい。
(7)調達計画
 本工事計画、仮設工事計画を基にして、機械、資材、支給品等管理及び下請負等外注の調達計画を行う。
(8)安全衛生計画
 安全衛生計画は、事故・災害発生が工事の成否と企業の存立に大きな影響を及ぼすことを十分に認識して、検討することが必要である。
 安全衛生計画の作成では、工種工程別に事故・災害を予測し、防止対策の具体的な実施内容、教育内容について計画する。なお、一般に公共工事では、月1[亘14時間以上の安全訓練を実施することが義務付けられていることから、計画に組み込む必要がある。
(9)環境保全対策及び建設公害防止計画
 周辺環境への負荷の増大及び建設公害の発生は、工事の進捗に大きな影響を与えるので、廃棄物及び典型7公害(水質汚濁、騒音、振動、大気汚染、土壌汚染、地盤沈下、悪臭)その他について、予想される具体的な内容とその対策を計画する。
 なお、建設機械の選定に際しては、排出ガス規制に関する「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」(オフロード法)に基づくほか、地球環境保全の観点からC02排出低減に努めることが望ましい。
(10)品質記録と工事書類
 施工計画に沿って、施工を行う過程で、発注者へ品質記録等の報告が義務付けられている。これらの品質記録と併せて、必要なデータを的確に残し、同種工事へのフィードバックや管理技術の向上に反映させることが必要である。
 工事現場において、発注者から提出を求められて受注者が作成する書類が多く、書類の様式が統一されていないため、現場技術者の労力の多くが工事書類の作成に費やされるとして、工事書類の簡素化が求められてきた。
 各地方整備局では、「土木工事書類作成マニュアル」が作成されている。また、営繕工事については、地方局ごとに「営繕工事における工事関係図書等に関する効率化実施要領」が定められ、工事関係図書一覧表から工事ごとの必要書類を選定し、効率化を図るようにしている。地方公共団体においても、提出書類一覧表を作成し工事書類の簡素化を図りつつあるので、該当するホームページを参照されたい。


    ↑ 先頭へ    トップページにもどる