「処刑宣告」(ローレンス=ブロック著 田口俊樹訳 二見書房)

 夜の<バニーズ・トップレス>がどんな様子なのかはわからないが、もっと多くの若い女が胸をさらし、もっと多くの男がそれを見ていて、おそらくもっと活気があることだけはまちがいないだろう。が、人間のあまり自慢できない本能の要求を満たす場所には、どこかしら淋しさがつきまとう。それは活気があろうとなかろうと変わらない。カジノにもそれと同じ淋しさがある。その淋しさはけばけばしさに比例して深まり、その場には、さもしい夢と破られた約束が放つオゾンによく似た悪臭が漂っている。 (P154-)
 私はその通過点を通った。償いをし、他人を赦し、自分を赦して、過去の亡霊を過去に追いやってきた。それを慌ててやる人たちもいる。が、私は急ぎはしなかった。時間をかけてゆっくりとやってきた。何回にも及ぶ助言者(スポンサー)との対話、執拗な自己分析、十分な思索、そしてある程度の行動。それらがうまく私には作用したと言えるだろう。長いこと私を苦しめてきたものが、今では私を苦しめなくなっているところを見るかぎりは。
 しかし、ときにそれが息を吹き返すことがあるのだ。そして、それは十一月から十二月にかけて起こりやすい傾向にあった。日がどんどん短くなり、太陽が徐々に光を節約しはじめると、買え(ママ)与えられなかったプレゼントのひとつひとつが、過去の言い争いのひとつひとつが、吐いた卑劣なことばのひとつひとつが、シオセットの自宅には帰らず、なんらかの理由を見つけてマンハッタンに泊まった夜のひとつひとつが、どうしても思い出されてくるのだ。 (P292)
マット=スカダー、もっと