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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第二話・最寄りの村へ・・・・』

何故かこの世界では怪物はもとより、人々の名前を知ることが出来る。何故なのかはわからないが、人々や怪物の姿をみ見るだけでその名を思い浮かべることができるのだ。

ネフィテルやケルティルは怪物と言うよりは、村近くに住む野犬と言った感じだが、さほどどう猛でも無く、向こうから襲ってくることはなかった。ほかにもウサギのような「エルピー」という可愛らしい動物も居たけど・・・さすがに倒そうとは思えなかった。

エルピー

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浜辺を少し北に行くと、ケルティルにまざってウルフがいた。ケルティルよりも一回り小さい身体だけど、それはケルティルよりも引き締まった筋肉を持っているからかもしれない。灰色のその姿はいかにも強そうだ。恐る恐る、わたしは遠くからウィンドウストライクを放ってみた。

ネフィテルやケルティルは一発で仕留めることができたけど、ウルフには通用しなかったらしい。ひと吠えすると、猛然とわたしに向かって来た。

この世界ではもう一つ。攻撃を仕掛けるために怪物に意識を集中すると、その怪物の体力を知ることができる。どういう魔法なのかはわからないけれど、これもまた名前と同じく、そういうことらしい。ウィンドストライクで体力のほとんどを奪うことはできたけれど、わずかに残った体力でわたしに向かって反撃を加えて来たのだ。

わたしは少し混乱していた。

魔法を唱えようにも、もう一度唱えられるようになるまでに少し時間がかかるのだ。待っている間にウルフが襲いかかって来る。わたしの体力も少しずつ減らされてゆく。

再度魔法を使えるようになったので詠唱する。呪文を唱え終えるまでに時間を要するのだけど、その間にもウルフに噛まれる。噛まれていると、詠唱を中断させられてしまった。

さらに混乱。

わたしは、魔法の再使用を待つ間に、ウルフに殴りかかった。手に持った魔法の杖、見習いのワンドで。

剣と違い、先端に飾りの付いたただの棒。魔法の威力を増幅させる道具としては有効だけど、直接これで殴ってもたかが知れている。わたしは、魔法を使うことを忘れて、ひたすらウルフを殴り続けた。地味に減るウルフの体力。派手に減るわたしの体力。どちらが先に倒れるか?

悲鳴と共に倒れたのは、そう、わたしだった。

わたしが地面に崩れ落ちると、ウルフは何事もなかったかのようにそこいらをうろうろしはじめた。死体・・・わたしに食いつくことはしなかったのは不幸中の幸いか。と、言うのは、わたしは死んだ訳ではなかった。意識はある。あたりを認識することもできるし、言葉を発する事さえできた。ただ、身体が動かせないのだ。体力の全てを奪われたためだろう。行動不能な状態だ。

わたしの意識の底に語りかけて来る声がある。

「生まれたばかりの君にはまだ神の加護がある。本来ならば戦いに敗れ、力尽きたものはその経験の一部を失い、持ち物を落とす可能性がある。しかし、今の君はまだ幼く、加護によりその債を負わない。しかし君が成長し、独り立ちができるようになればその債を負うようになることを忘れないように」

他にも、今のわたしのように力尽きたものをその場で「復活」させる呪文の巻物や魔法があるらしい。でもそれはわたし自身が使えるものではなく、第三者に頼まなければならない。第三者。つまり別の誰か、だ。今のわたしにはまだそれを頼める友人も知り合いもいない。近くを走り過ぎる人や遠くで狩りをしているひともいるが、わたしのようなちっぽけな存在には興味がないようだ。

声はさらに続ける。「復活」ができないものは、この世界の習わしにより、「一番近くの村」に無条件で連れ戻される、と。わたしは念じた。

最寄りの村へ

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「最寄りの村へ」

意識が一瞬暗転し、闇へと落ちたかと思うと、次の瞬間には賑やかな声や音が聞こえて来た。

最寄りの村。最初に訪れた村に戻ったのだ。

村から出てすぐの海岸だったので、どう考えてもここに戻るのが当然だろう。わたしは苦笑しつつも、また走り出していた。

先程の海岸へと戻り、わたしを倒したウルフを探す。いたいた。彼はわたしが与えたダメージでフラフラだった。少し時間を置いたため、多少回復はしているが・・・わたしはそのウルフにウィンドストライクを撃ち込んだ。もちろん、今度は一撃で倒すことができた。そして当初の目的であった「ウルフの皮」を入手することにも成功した。

あと39枚。ちょっと気が遠くなりそうになったけども、仕方がない。近くにいた別のウルフに狙いを定める。そして、ちょっと考えてみる。さっきは、魔法を撃った後、次にもう一度撃つまでに時間がかかり、その間に噛み付かれてしまった。それならば・・・

わたしはウルフに魔法を撃ち込むと、すかさず振り向き、後ろに向けて走りだした。魔法を食らったウルフはもちろん追いかけて来る。しかし、今度はわたしも走って逃げているのでその距離はまだ広い。再度詠唱できるようになったところで、振り向き様にもう一度呪文を唱える。唱えている間にウルフが突進してくるが、まだ距離はある。

間に合うか?!

わたしが二度めの魔法を放つのとウルフが飛びかかって来るのがほぼ同時だった。瞬間、わたしの魔法の方が早かった。飛びかかろうとするウルフは空中で空気の塊を受け、そのまま弾き飛ばされて地面に叩きつけられた。

ふぅ・・・作戦成功。これならば一撃で倒せなくても、どうにか攻撃を受けずに倒すことが出来そうだ。わたしは次の獲物を探した。そうして次々とウルフ、それにエルダーウルフを倒して行った。エルダーウルフは見かけはウルフそのものだけど、少しづばかりウルフよりも強いらしい。でも、同じように倒すことはできた。

二度魔法を放つのでマナがすぐ尽きてしまう。海岸にしゃがんで回復するのを待たなければならない。

砂浜から見える大海原。この海の向こうにはどんな世界が待っているのだろう?地図で見ると、今わたしが居るところは小さな島。「話せる島」と書いてある。そこから東・・・わたしが今見ている海の向こうには『アデン』と言う名の大陸がある。残念ながら、水平線の向こうにはそれらしき影は見えない。相当に遠いのだろう・・・

浜辺でマッタリ

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そんなまだ見ぬ大地に思いを馳せながら、視線を海岸に転じて見ると、わたしと同じようにウルフと戦っている人の姿も見える。その向こうを行き交う人々。時々、話し声や叫び声が聞こえて来る。

「定期船が話せる島に到着しました。10分間停泊後、グルーディン港に出航します」

「遺跡PTヒーラー募集!wispls」

「どなたかWWお願いしまーす」

「遺品拾いました〜。場所と品名沿えてwispls」

・・・

船が大陸とこの島を航行してるのは分かったけれど、それ以外はチンプンカンプン。あ、ヒーラーって言うのもなんとなくわかるか・・・ヒーラー、回復魔法で誰かを癒す・・そういう職業になんとなく憧れがある。

でも、遺跡?PT?WW?遺品・・・はなんとなく分かる。でも、まだまだ知らなければならない事は沢山ありそうだ。

マナを回復し、ウルフ退治に戻る。さらにウルフを求めて少しづつ海岸線を北上していくと、何やら違う雰囲気になってきた。ウルフにまざってずんぐりとした二本足で立つ、人間とも怪物ともつかない緑色のモノがうじゃうじゃと居たのだ。

オークたち

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剣士さんがその緑色の一体と戦っているのを見ると、怪物なのだろう。名前は「オーク」、「オークグラント」、それに「ウザンカの海賊」さらに少し大きい体格の「海賊王ウザンカ」なども居る。

どう考えても今のわたしには太刀打ち出来ないだろう。近寄るのも怖い。ぼーっと眺めて居たら、ふ、と視界の隅に緑色の物体が現われた。

「!」

倒された怪物はある程度の時間が経つとまた復活してくる。それが突然目の前と言うか、視界の隅にぬおっと現われたものだから、わたしは驚いてしまった。飛んで逃げた先、足元を見ると、緑色の足。ふと顔を上げるとそこには・・・

「!!」

海賊王ウザンカ。それが迫って来ていたのだ。後ろからはウザンカの海賊・・・多分海賊王の部下だろう・・・も何体か一緒にやって来る。

とにかく逃げなきゃ!

わたしは無意識に村を目指して走り出していた。

ドスドスドス

後ろから足音が迫って来る。前方にもオークが居たのでそれを避けるために少し脇にそれた。それがかえって命取りだった。追いつかれたわたしは、海賊たちにいいように殴られてしまった。みるみる減って行く体力。わたしは無駄だと知りつつも抵抗しようと試みた。しかし、魔法を詠唱し終える前に、崩れ落ちることとなった。

「最寄りの村へ」

わたしはそう念じるしか術がなかった。

村に戻って、考える。どうして襲われたんだろう?こっちから攻撃をしかけた訳じゃないのに。飛び退いた時に足でも踏み付けちゃったのかしらん?そんな事を考えながら、もう一度浜辺に戻って来た。あまり北には行かず、近くでウルフだけを狩ることにしよう。

そうしてしばらくはウルフと戦い続けた。もちろんマナが切れたらお気に入りの海岸に座って、ぼーっと海を眺める。それを何度か繰り返し、ウルフの皮を40枚集める事ができた。いや、実はとっくに集まっていたのだ。本末転倒。倒す事に夢中になり、40匹を越えるウルフを倒していたのだ。

早速それを持って村へ戻り、商人のところへ。

「皮40枚、取ってきましたよ」

「おお、御苦労さん、意外と早かったな。お嬢ちゃん、なかなかやるね。これでどうにか納期に間に合いそうだ。こいつはお礼だ、取っときな。ありがとよ。またなんかあったら頼むぜ」

そう言ってわたしにくれたのは「ショートグローブ」。手袋だ。買おうと思っていたので丁度よかった。そういえば、ウルフを倒して少しばかりアデナも溜まったし、何か買おう。グローブはもらったので、手頃な「チューニック」「ホース」「サンダル」を買うことにした。

店を後にして、村の中央へ戻ってみる。

そういえば、村の中心から四方に伸びた道の先、四箇所に村の門があるが、一カ所だけまだ訪れてなかった場所があった。村の東北にある門だ。神殿のすぐ前のその門へ近づいてみる。

滝へと続く門

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門番に声をかけてみた。

「こんばんわ」

えっと、この世界にも昼と夜がある。今は夜。眠くなったり、眠ったりすることはないんだけど。夜の方が怪物が活発に動き回るとかあるのかしらん? わからないけど。それはさておき、暇そうにしている門番に声をかけてみた。

「この道は、どんなところにつながっているんですか?」

門の正面は小山で、道はすぐに北へと曲がっている。ここからはその先の景色は見えない。見えたとしても、今は夜なので、先の方までは見えなかっただろう。

「やぁ、こんばんわ。この道を川沿いに進むと、滝があるよ」

「へぇ、滝ですか・・」

「ああ、それは美しい滝でね。一見の価値はあるよ」

ふむふむ。奇麗な滝かぁ・・・昼間見た海もキレイだったけど、夜の滝もまたキレイだろうなぁ・・・わたしは一瞬で、その見たこともない滝に憧れを抱き、ぜひとも見てみたいと思った。

「・・・ただ・・・そこらあたりは凶暴な怪物が巣くっていてなぁ、村人が簡単に近寄れる場所じゃぁないんだ。もちろんオレ様は・・・」

「ありがとうございます。行ってみます」

わたしは、門番の話もそこそこに、その滝へと向かった。

うしろで「あぁ、ちょっと待ちなさい、君!」とか言ってるのが聞こえたような気もするけど、わたしはもう走り出していた。

門を離れ、道なりに少し歩くと川が見えてきた。同時に川のほとりをのそのそと歩きまわる巨大なカエルも。いそいそと走っていたわたしの足は「ピタ」っと止まった。

「んゲコッ」

落ち着け、落ち着け。わたしは自分に言い聞かせて、その場に留まった。さっきみたいなことになるのはごめんだ。わたしは落ち着いて辺りを見渡した。右手は小さな丘。左手には川。暗くてよく見えないけど、川の向こうは林のようだ。お化けガエルがいる向こうには橋がかかっていて川を渡れるようになっているらしい。

カエルに近付くのはいろんな意味でちょっと怖い。丘の方にはオークたちが居る。そちらもちょっと避けたい。あきらめて引き返すか・・・いや、もうひとつの選択肢。左手の川。一瞬ためらったけども、川の向こうを人が走り過ぎるのが見えた。わたしは意を決して、川に飛び込んだ。

小さい川だけども、水深はけっこうあって、わたしの背丈よりも深かった。また、わたしには水の中を『泳ぐ』ことができないらしい。結局、息を止めて川底をのろのろ歩くことになった。水圧で歩く速度もかなり遅くなっている。しかし、川幅はそんなになかったのですぐに向こう岸に渡り着くことができた。

岸に登って、ふ、と顔を上げると・・・

「んゲコっ」

カエルとにらめっこ。と言うか、こっちの岸にはもっと沢山のカエルが居たらしい。取り囲まれて居る。わたしはそろりそろりと後ずさり、川へ入って、反対側の岸へと戻った。

こちら側には川沿いの道にカエルが2匹。その向こうにも数匹いるようだけど、とりあえずは目の前の2匹。しばらく考えた結果、強行突破することにした。手前に居る一匹に狙いを定めてウィンドストライクを放った。

「ゲコーーっ!」

案の定と言うか、一撃で倒すことはできなかった。体力の半分さえ奪えてはいない。これはちょっとマズかったか?と反転して後方へステップしながら考えた。振り返って再度ウィンドストライクを放とうとして、わたしはさらにマズい状態になっていることに気が付いた。

「うそーーー」

カエルたち

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奥に居たもう一匹もわたしめがけて走ってくるではないか!放たれた二度目の魔法は最初のカエルの体力をほとんど奪った。しかし、まだ生きながらえているカエルと、さらに、体力の有り余ったもう一匹がわたしに追いつき、噛み付いてくる。わたしは再度反転し全力で逃げる。逃げながら考える。ウルフは、たとえ近くに他のウルフがいたとしても、同時に襲ってくることはなかった。カエルも同じだろうと思っていたのに・・・

逃げながらも、後ろからカエルに噛み付かれる。魔法を撃とうとしても、詠唱を中断させられてできない。体力もどんどん削られて行く。でも、がんばって走る。走っていると、門が見えてきた!もう少しだ。もう少し走れば村にたどり着ける。門には門番・・・警備兵が居た。彼らに助けを求めよう。

はぁはぁ。

体力ぎりぎりのところで、どうにか村にたどり着くことができた。途中、どうにか一発撃つことができたので一匹は倒せた。あと一匹。

「助けて下さい!」

村へ駆け込みながらそう訴える。もう大丈夫だろう、と振り返ると・・・そこには、鼻歌まじりにのんきに立っている門番と、わたしに飛びかかって来るカエルの姿があった・・・

「・・・」

どうして助けてくれないの?わたしは門番を恨んだ。二匹がかりで追いかけてきたカエル達も恨んだ。もうっ!どうして!?

ウルフの皮を集めている間に、わたしの経験はどんどんと進み、すでに7段階目を越えていた。戦いに敗れると経験の一部を失うのだ。幸いな事に、持ち物を落とすことはなかったけれど。

最寄りの村へ。

というか、村の中なんですけど・・・

倒れた場所からほど遠くない場所へと移動し、立ち上がったわたしは、目の前にある神殿を見て、ふと思い出したことがあった。初めにキャンスロットさんから教えてもらった事柄の中にあった『特殊能力』のことだ。今使っているウィンドストライクやその他いくつかの魔法を含む特殊な能力。職業によって異なるらしいけど、経験を積めばそれだけ多くの能力を持つことができるとか。

確か神殿の神官様から教えてもらえるんだったかしら?何はともあれ、一度訪れてみることにしよう。

神殿に入り、すでに顔見知りだった人・・・そう、『勇気の出る薬、実は裏の井戸の水』を作って(汲んで?)くれた神官様に聞いてみることにした。

「やあ、君か。どうだね?調子は?」

スキルを覚えよう

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「それが・・・」

わたしはここに来た経緯を説明した。

「なるほど、それで新しい能力が欲しいと言う訳か」

「はい、そうなんです」

「ん・・・幸い君は新しい能力を受けるのにふさわしい経験を積んでいるようだね。いいだろう、新しい力を与えてあげよう。ただし、タダであげるわけにはいかないけどね」

「アデナが必要なんですか?」

「いや・・・一部の魔法は、それを覚えるために教本となる魔法書を買い求める必要がある。魔法書は向こうの魔法屋に売っているよ」

「魔法じゃない能力とかもあるんですか?」

「そうだな、君に与えられる新しい能力は、これと、これと・・・それからこれだな」

神官様は持っていた分厚い本・・・能力の子細について記述された書物らしい・・・の中からわたしに見合った部分を指し示してくれた。

「あれ? ウィンドストライクはもう持っていますよ?」

「うむ。よく見てごらん。これは第二段階のウィンドストライクだ。今持っている能力をさらに向上させることもできるんだよ」

「へえ、そうなんですか・・・こっちのウエポンマスタリーとかって言うのは?」

「そのあたりが魔法ではない特殊能力だ。いわば潜在能力と言ったところか。ウエポンマスタリーはその名の通り、武器、つまり攻撃に関する能力が向上する」

「うわ、それは嬉しいですね!わかりました、じゃあ、全部覚えたいです」

しかし、神官様は少しあきれたように手を広げ、首を横に振った。

「そうはいかない、最初にも言ったように、タダでは教えられない」

「魔法書は買って来ますけど・・・っていくらなんだろ?・・・他にまだ何か必要なんですか?」

「うむ。君の経験の度合いだ。確かにこれらの能力を取得する権利は得た。しかし、それらをすべて取得できるほどの経験はまだ積んでいないと言うことだよ」

がーん。なるほど、世の中、そう甘くはないってことか・・・

「わかりました」

仕方がないので、神官様が見せてくれた特殊能力の明細表をじっくりと読んでみる。全部で七つほどの能力が選べるのだけど・・・

「どれくらい覚えることができそうですか?」

「そうだな・・・組み合わせにもよるが、三〜四種類ぐらいかな?」

むむむ。これは悩みどころかもしれない。さて、どれを選んだものか。攻撃に関する能力と、防御に関する能力。それに双方に影響するものがある。取り急ぎは両方に効果のあるものは選んでおくべきだろう。残りは攻撃力か防御か。しばらく迷っていたけれども、経験を積めばいずれは全部覚えられるだろう、と考え、わたしは、決断した。

「じゃぁ、これと、これと、これ、お願いします・・・ああっ、魔法書が必要なんですよね。ちょっと買ってきます」

神殿を飛び出してお店に行く。

「すみませーん、魔法書下さい」

「お嬢ちゃん・・・ここは武器と防具の店だぜ?魔法書なら魔法屋へ行ってくれ」

「失礼しましたー」

そそくさ。はて、魔法屋さんってどこだっけ?

てとてと、捜し回り、なんとか魔法屋さんをみつけた。

「すみませーん、魔法書下さい」

魔法屋さん

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「ん? なに? どれが要るの?」

「えっと、アイスボルトとヒールをお願いします」

「・・・」

ぬ・・・なんか愛想の悪いおねえさん・・・。黙って指さした本棚には、ずらりと魔法の本が並んでいる。この中から探せってこと?

うう・・・いっぱいある本の背表紙を一個づつ見て行く。表紙の色、装丁・・・いろんな種類の本が沢山あるんだなぁ・・・へぇ・・・これってどんな魔法だろう? ああ、これは復活の魔法かな?っと、関心してる場合じゃない。ヒール、アイスボルト・・・ヒール・・・あ、アイスボルト発見。これとあとはヒール・・・ヒール・・・これも発見。本を手に取り、値札を見る。よかった。なんとか買える値段だ。ちなみにさっきの復活魔法・・・リザレクションも手に取って値札を見てみる・・・んげっ。高っ。ささっと棚に戻して、二冊だけ。

本とアデナをおねえさんに渡す。渡すと言うか、前に置いただけだけど。おねえさんはほお杖をついたまま、面倒くさそうにアデナだけを取ると、「ん」とだけ言った。包んでくれるなり、袋に入れてくれたりは・・・してくれそうにないな。それどころか、「何よ?まだ何か用?用が済んだんならさっさと帰えってよ」って目をしている。本を自分の袋に詰めて早々に立ち去る。長居は無用っぽい。

店を出て村に向かう途中、本の中を読んでみようと思った。これを読めば魔法が覚えられるんだろう。表紙をめくってみると・・・めくって・・・あれ? 開かない。力いっぱい開こうとしても、ビクともしない。もう一冊はご丁寧に留め金が付いていて、それががっちり閉じられている。これ、どうやって開くんだろう?カギとかあるのかな?

「本買ってきました・・けど」

神殿に戻り、神官様のところへ。さっきのおねえさんとは違い、にこにこ。愛想のいいお兄さんだ。

「けど? どうかしましたか?」

「この本、中見られないんですけど・・・買ってから気付いたんですけど、不良品?」

「あはは。そうじゃないよ。その本を理解し、その内容を身につけるためにはわたし達の援助が必要なんだよ。一冊、手に持ってこちらにかざしてごらん」

わたしは半信半疑でアイスボルトの本を両手で差し出す格好をした。神官様は何か短く小さな呪文を唱えたかと思うと、本の上でさっと指を振った。

すると、どうしたことだろう。指を触れた訳ではないのに、その指に引っ張られるような形で、あれほど開こうとしなかった表紙がぱたりと開いた。開いた頁が風に・・・風などないのに・・・ひらひらとめくられる。

そこには、何も書かれてはいなかった・・・やっぱり不良品だ。

そう思った瞬間。すべての頁が反対側へ送られ、裏表紙がぱたんと表紙の側へ閉じた。その刹那、本は光り出し、そしてその光は

わたしの胸元へと近付き、ふ、っと輝いたかと思うと・・・

「消えた・・・」

そうしてわたしは、アイスボルトの魔法を習得したのだ。まだ半信半疑ではあるのだけれど。わたしの頭の中にはきっちりとその使い方が刻み込まれた。もう、いつでも使える。ヒールも同じようにして習得させてもらう。

他の、魔法書を必要としない能力は、神官様の呪文によってわたしに直接与えられたらしい。らしい、って言うのは実感としてまだ全然感じられないから・・・。

「ありがとうございました」

「うむ、がんばりたまえ」

ぺこり。お礼を言って神殿を後にした。

さて、すぐ目の前の門。門番に「いってきます」とだけ言って、ずかずかと歩きだした。ほどなく、先のカエルが居た場所。いや、居る場所。いっぱい居ますね・・・。でも、新しい魔法も覚えたし、ちょっとは強くなっているはずなので、二匹相手でもなんとかできるかもしれない。

早速、覚えたてのアイスボルトを唱えてみた。

「ユニクッ!」

アイスボルトの魔法

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空気中の水分が目標・・・カエルの回りで瞬間に凍りつく。凍りついた空気は次の瞬間にはパキンと割れてまた空気へと戻って行く。凍りついたカエルは、それでもわたしに向かって来る。幸いなことに向かって来るのは一匹だけだ。完全に凍りつかせることはできなかったけれども、その肉体の一部を凍らせることに成功したようで、こちらに向かって来る動きがどことなくぎこちない。すぐさまウィンドストライクを放ってカエルの体力の大半を奪ったところで反転。走ると、カエルとの距離がぐっと広がる。アイスボルトの効果でカエルの動きが鈍くなっているお陰だ。

間合いを取ったところでウィンドストライクをもう一発。もちろん勝利。

ふむふむ。アイスボルト。なかなか便利かも。奪える体力はウィンドストライクの半分ぐらいなんだけど、相手の動きを遅くできるのならば二匹同時に襲われた時とかに使うといいかもしれない。走りながらそんな事を考えていたら、走り過ぎてしまった。

カエルのど真ん中・・・

止まっても、もう遅い。冷や汗が背中を伝う。四〜五匹はいるだろうか? いっせいに飛びつかれたら、いくらアイスボルトがあってもどうにもならないだろう。

じり、じりっとその場を離れるように動いてみるけれど、カエル達はわたしのことなどお構いなし、といった風体で歩きまわったり、げこっと鳴いてたりしている。どうやら、こちらから攻撃をしかけなければ、向こうからは襲って来ないようだ。その点はウルフ達と同じなのか。違うのは攻撃した時に近くにいる仲間も一緒に襲って来る、ってことのようね。

なるるん、と納得したわたしは、意気揚々と川沿いの道を進んで行った。

あ。

それで思い出したのだけど、わたし自身の名前。自分で自分を呼ぶことはないし、誰かに呼ばれたこともなかったのですっかり忘れていたけれど、「Narurun」と言うのがわたしの名前。

それはさておき、進んで行くと、川の上流に・・・

「わぁ・・・きれい・・・」

滝

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もっと近付いてみると、ごぉおっ、と水の流れ落ちる音が聞こえて来た。月光に輝き流れ落ちる滝に見ほれてしまう。さらに近寄り、滝壺の手前ぎりぎまで行って、見上げると・・・

滝

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「・・・」

声も出ない、と言うのはまさにこういう事なのかしらん?わたしはしばらくそのばに佇み、その荘厳な光景に心を奪われてしまっていた。

ふ、とあたりを見渡すと、滝壺から流れ出した川に橋がかかっているのが見えた。まわりにカエルがいるけど、問題ないと判断して、少し川を戻り、橋を渡って・・・橋の真ん中から見上げる滝の姿もまたよし!・・・そのまままた川沿いに滝壺へ戻る。滝壺沿いに斜面を登ってゆくと・・・

「うわあ・・・」

滝の上まで登ることができた。今度は滝を上から見下ろす形。すごい、すごい、すごい。こんなにも素敵な場所があったなんて!

はぁ・・・深呼吸をしようと、顔を上げると、夜空には大きなお月さまが輝いている。その光を受けて瞬きながら流れ落ちる滝。流れはわたしの足元の岩の下側の裂け目からとめどなくあふれ出してきている。

「はお〜〜・・・」

わたしはその場にしゃがんで、滝と月、それに遠くに見える・・・あれは何かの塔だろうか? まだ見たことのないそんな塔を、かわるがわる眺めて過ごした。しばらくそうやって景色を満喫したところで、そろそろ帰ろう、と立ち上がった。名残惜しく、何度も振り返りながら、滝の崖をそろりそろりと降りて行く。

来る時には気付かなかったけれど、川のこちら側は林になっていたらしい。降りて行くその先にちらほらと木が見えた。そして、巨大な蜘蛛の姿も・・・

感動の興奮は別の意味を持つ興奮へと変わり、わたしは別の意味で言葉を無くし、別の意味でその光景に釘付けになってしまった。

「でかっ」

感想は、そう、それだけだ。

とにかくでかい。でっかい蜘蛛だ。こりゃやられる。直感がそう告げていた。滝にみとれていて全く気付いていなかったが、すぐ近くにこんなにも危険そうなものが潜んでいたのだ。

最寄りの村へ

・・・いやいや、違う、違う。そうじゃない。どうやって気付かれずに逃げるかを考えよう。行きは何とも無かったのだから、帰りも問題無いはず。戦ってどうこうできるとはとても思えない。逃げるが勝ちだ。

がさかさ

「ひっ」

蜘蛛が突然動き出した。わたしは足がすくんで動けない。でも、蜘蛛は少し移動しただけで、わたしの方へ向かってくることはなかった。ほっ・・・

どうしたものかと冷や汗を流しながら考えた。蜘蛛のそばに木がある。その向こう側に回って通り過ぎれば、気付かれずにすむかもしれない。一か八か。意を決して、走り出した。

たたたたた。

がさがさがさ。

「ひいいいいいい」

最悪。気付かれちゃった。

くるり。

わたしは、踵を返して一目散に逃げた。逃げる!とにかく逃げる!追いつかれないように、林の間をすり抜けて走る。そうすることで、大きな蜘蛛ならば、木がじゃまで進めないんじゃないかと考えたからだ。しかし、前方に別の蜘蛛が見えた。

でっかいクモに追われて

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くるり。ガシッ。「いてっ」

一瞬立ち止まったわたしに鎌のような蜘蛛の足が振り下ろされた。体力の三分の一程奪われてしまった。でもまだ大丈夫。向かった方向は先程の滝の上。斜面を一気に駆け上がる。追って来る蜘蛛。幸い、後から見かけた蜘蛛には気付かれなかったらしい。振り向いている余裕もないけど、がさがさと聞こえる足音は一匹のようだ。

一度頂上まで登り、また斜面を下る。ここでまた一発殴られた。残り三分の一・・・斜面を降りきったところで、橋を目指す。あの橋さえ越えれば・・・

「あっ!」

そちらに気を取られた瞬間、草に足を取られてつまずいてしまった。あわてて走り出そうとしたわたしに容赦なく襲いかかる蜘蛛。

「キャシャーッ!

「ああぁっ」

えーっと、うーっと、あーーっと。ああ、月がきれいだなぁ・・・。

ああ、月がきれいだな・・・・

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「最寄りの村へ」

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