Orange's BOX絵箱| ゲーム箱( TLS. 続初)| 写真箱| リンゴ箱| ごみ箱| 伝言箱| リンク箱
ゲーム箱ソフト| ハード| 分類| リネ2

『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第四話・広がる世界』

わたしは経験を積み重ね、10歳を少し越えていた。

狩りの合間、村に戻って人々と話をしていると、時々なにがしかの仕事を「お願い」をされることがある。わたしが成長したこともあるのか、お願いの数も増えてきた。

その中のひとつ。剣士さんたちの教官・・・わたしたちメイジで言えば神官様にあたる人なんだけど、その人が変わった武器を集めていて、エルフの遺跡という場所に居るオークの弓使いから、その矢尻を取って来てくれ、と頼まれた。

頼まれてからしばらくは怖くて近寄ることができなかった。だって、その場所へ行くまでの道にはまだ一人では太刀打ちできない怪物がいっぱい居たから・・・一度その近くまで行ってみたんだけど、オーク隊長やウェアウルフチーフに追い回されたこともあったし。

でも、いつまでも怖がっていてはいけない。ちょうど、装備も「レザーチューニックとホース」に買い替えたこともあったので、一度冒険をしてみようかと思ってみたりしたのだ。

戦勝記念の塔から道なりに、おそるおそる北東に進むと、道沿いには「遺跡」らしき建造物の瓦礫が散乱している場所があった。そのずっと先、山腹の谷間の奥にその「遺跡」はあった。今回は幸いにも、怪物に教われることなく、到着することができた。

以前に戦勝記念の塔で出会ったコリン卿の昔話を思い出してみる。それによると、ここはもともとエルフがヒューマンに魔法を教えていた学校だったそうだ。魔法を覚えたわたしたちのご先祖様は、オークとの戦いに勝利したあと、エルフに戦いを挑んだ。その戦いで朽ち果てた魔法学校の成れの果て。とくにここは「決戦場」になったらしく、入り口には木や石のガレキがうず高く積み上げられ、そこから中に入ることは不可能なようだ。おそらく、どちらかが立てこもり、最後まで抵抗した場所・・・・なのだろうか。すきまを探して、そこから中に入れないかとあちこち見て回ったけど、どうも入れないらしい。

あきらめて一度、入り口の前まで戻ってみた。そこには、一人の女性が立っていた。その人なら何か知っているだろう、と声をかけてみた。

エルフ遺跡のゲートキーパーさん

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

「こんにちは。この中に入るには、どうしたらいいんですか?」

「こんにちは。残念ながらその入り口から入ることはできません。代りに私が遺跡内部へと転送してさしあげます」

ほえー。そんなことができるの?

「私は・・・私たちはゲートキーパーと呼ばれる職業のものは、特殊な能力で、あなたがた冒険者を必要な場所へと移動させてあげることができるのです」

「じゃぁ、お願いできますか?」

「中に入りたいのですね? 放棄されたこの施設跡には長い時間の中で恐ろしい怪物が棲み着いています。よほど経験を積んだ冒険者でなければ、生きて帰れる保証はありませんが・・・・それでも、足を踏み入れることを希望されますか?」

・・・・そんな話を聞いて、「ハイ」とは言いたくないような気もするけど。ここまで来たんだし、いっちょ行ってみますか!

「はい、お願いします」

「いいでしょう。それでは目を閉じて下さい。もう一度、目を開いたら、そこがエルフの遺跡内部です」

言われた通りに目を閉じた。世界が真っ暗な闇につつまれる。そして、ふっと回りの空気が変わった。目を開けようとしても、まだ瞳は開かない。体を動かすこともできないようだ。なるほど、まだ移動中なのかしらん。待つしかない。空気が変わり、そして聞こえて来る音も変わった。一瞬、全く違う音も聞こえたような気もするけど・・・世界を移動するためのものかもしれない。

やがて、ぼんやりと辺りが見え始めた。そして、目を見開く。

「ここがエルフの遺跡・・・」

エルフ遺跡内部

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

目の前には下へと降りる階段があり、その先は奥へと続く廊下になっているようだ。その廊下で怪物と戦っている人達も見える。

振り返ると、入り口で見たガレキの山。なるほど、あのガレキを乗り越えて来た訳か。どうやって?それが「ゲートキーパーの能力」なのだろう。「門守(ゲートキーパー)」。ここで言うゲート、門は建物や村の門ではなく、「空間」と言う意味なのだろう。

改めて振り返り、入り口から奥へと続く階段に目をやる。階段を降りた先に一直線に続く通路は、そんなに広くはない。ところどころ、左右に別の通路が交差しているらしい。人々がそこを曲がって行ったり、出て来たりしている。所々には過去の冒険者の亡骸であろうシャレコウベが転がっていたりする。

雰囲気だけで「おどろおどろしい」感じがプンプンする。「生きて帰れる保証はない」ゲートキーパーの言葉を思い出して身震いする。奥では激しい戦いが繰り広げられているようだ。剣の音。魔法を詠唱する声。内部は予想以上に「にぎやか」だった。

武者震いだろうか、本当におびえているのだろうか。今のわたしには全くそれがわからない。おそらくは未知なるものへの好奇心と畏怖。その両方。試してみたいという欲求。死にたくないという思い。

そんな思いがうわーっと沸き出してきて、わたしの思考は飽和状態になる。そんなところに、あとから来たのだろう、別の人が現れて、階段を駆け降りていった。そして一人、もう一人。次々と内部へと走ってゆく姿が見えた。わたしは、その人達につられるように、無意識の内に、ふらふらと階段を降りていった。

前を走っている人に、いきなり横から怪物が襲いかかった。すぐに気付いたその人は応戦を始める。わたしも足を止めて事の成り行きを見守る。彼はあっけないほど簡単にその怪物を倒して先へと進んでいった。わたしもあわててその後を追おうとしたのだけれど、横の通路に興味を持って、そちらをのぞき込んでしまった。そこは小さな部屋になっているらしい。別の誰かが怪物と戦っているのが見えた。すぐにまた通路を進もうとしたけれど、さっきの人はずっと先へ行ってしまっている。すぐ近く、反対側にも通路から横に入る曲がり角があったので、そちらを見てみることにした。

ひょい、と覗いて、わたしは固まってしまった。

いかにも!と言った風体のスケルトン・・・骸骨がわたしを睨んでいたのだ。ただの死体ではない、死者の亡霊。先駆者の亡骸なのだろう、思い半ばで朽ち果てた冒険者の魂がこの狭く薄暗い閉ざされた遺跡で彷徨っているのだろうか・・・・

エルフ遺跡のスケルトンさん

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

そんな殊勝な考えはともかく、冷や汗がどっと流れる。武器を握り締める手にも力が入る。けれども、足はガタガタと震え、身体を動かすことはできない。それに、動いたらやられる。直感がそう告げていた。今、目の前にいる「彼」はわたしにとってはただの恐ろしい怪物でしかない。彼を清め、鎮める術はわたしには無いのだ。そう、文字どおり、そんな魔法は持っていない。WSやアイスボルトで対抗できるのだろうか?

後からやってきた人がわたしの方をいぶかしげに見ている。通路にいるわたしの姿は見えていても、角を曲がった先にいる骸骨は見えないのだろう。一瞬、立ち止まったかと思うと、わたしの前を通り過ぎて進もうとした。その人に向けて骸骨が襲いかかってゆく。

わたしは思った。

「わたしが来る場所じゃない」

別の人が襲われているのを見捨てて、わたしは逃げ出した。ここへ来るには相当の覚悟とそれなりの経験と装備が必要なのだ。わたしはまだ、その経験も装備も、そして覚悟もないんだ。そう悟ったわたしは、目の前で戦うその人には資格があるのだろうと勝手に思い込むことにして、走り出した。

しかし、神様はお許しをくれなかった。

さきほどの一つ目の部屋の前に同じような骸骨が立っていたのだ。勢いあまったわたしはその骸骨の前に踏み出してしまった。

絶体絶命。

滝のように流れる汗。

引くも地獄。進むも地獄。襲い来る骸骨。

「あぁああ〜〜」

あっ、と言う間にわたしは崩れ落ちることになった。当たり前と言えば当たり前ではある。

次々と通り過ぎてゆく人。わたしを倒した骸骨もその人たちの前では赤子同然である。誰かがふとわたしの方を一瞥したかと思ったけど、すぐに奥へと消えて行った。今は誰にすがることもできないわたしの選択肢は、そう。

・・・・最寄りの村へ。

村

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

・・・・・・・・・

ふう。

村に戻った(戻された)わたしは、村の中で一息ついた。村のにぎやかさ、あたたかさ。ここは平和だ。一瞬前まで居た「遺跡」の恐怖はじょじょにわたしの中から消えて行った。

幸い、何も落とさなかったのであわてる必要はない。そういえば、ついこの間。一人でオークグラントと戦っていた時、不注意で数匹に囲まれて力尽きた際に手袋を落としてしまった。辺りには誰もいなくて、すぐに戻ればその手袋を回収できるかと思い、一度村に戻ってダッシュで帰ってきたけど、もはや手袋はなく・・・誰かに拾われてしまったらしい。

逆に、わたしの目の前で誰かが倒れ、装備を落として行った事があった。わたしは、その装備の前でしばらく待ってみた。落とした人が取りに戻ってくるだろう、と思ったからだ。しばらく待ってみたけど、落とした本人は戻って来ず、別の人が近付いてきた。その装備を拾おうとしているのかと思って、わたしが先にそれを拾った。その人はわたしのことを睨んだ(ように見えた)かと思うと、すぐにその場を立ち去った。誰も居なくなったころを見計らって拾った装備を「元の場所」に戻した。やっぱり、落とした人が取り戻しに来るはずだから・・・・

近くに現われた怪物をやっつけながらも視線はその装備に釘付け。何人か知らない人が拾いに来たみたいだけど、その都度わたしが拾って確保しておく。しばらく、待ってみたのだけれど・・・結局、落とした人は戻ってはこなかった。近くにいたわたしに盗まれたのだと思い込んであきらめてしまったのかしら?

ちょっとだけ、悲しい気持ちになった。

わたしは、装備をそのまま地面に放置して、その場を後にした。

・・・・他人との接触が増えた中には、こんな風に「いいことばかりじゃない」ってこともまた、わたしの中の世界を広げる結果にはなったのかもしれない。それが良いことなのか、悪いことなのか、今のわたしに知るすべはなかった。ただ現実をありのままに受け入れること。その中で自分が信じることをするだけ。それが間違っているのかどうかは別にして。わたしは、わたしの思う生き方をしよう、そう思った。

そんなわたしも、13歳になっていた。

ついこの間までアミノ式と二人でなければ倒せなかった「オーク副隊長」や「ウェアウルフハンター」なども一人でどうにか倒せるようになっていた。装備を「レザーチューニックとホース」に変えたのも大きい。アミノ式や海で溺れていた彼なんかとも一緒にパーティを組んでやっていると非常に効率がよくて、アデナのたまり具合も結構よくなっていたからだ。

でも、さすがにまだ武器を買うアデナまでは回らないのだけれど。

そんな訳で、村人たちの「依頼」をできるだけこなそう、と思い、あちこち話を聴いて回った。村だけではなく、村から離れた場所にある剣士さんの学校にも行ってみた。そこでの話は、遺跡に行かねばならないものだったので、丁重にお断りした。また村の倉庫では「密輸」がらみの仕事があったのだけど、悪巧みに加担するのもどうかと思い、これもお断りした。

そして受けたのは久しぶりに戻ってみた魔法学校の校長先生の依頼だった。魔法の実験で生まれた怪物が逃げ出してしまったので、封印して捕まえて来て欲しい、と言う内容。そんなもの、ちゃんと管理してもらわないと、危ないじゃない!って思ったけど、口には出さない。先生から、封印するための「ワンド」を預かることになった。このワンド・・・て言うか、ただのこん棒にしか見えないんだけど・・・でトドメをさせば封印できるらしい。

ワンドは三本。逃げた怪物は三匹か。

怪物は「鏡の聖霊」だそうで、鏡のように、近くにいるものに姿を変えるらしい。村人に聴いて回って、オーク、お化けガエル、それとウェアウルフに姿を変えているらしいことがわかった。

そういえば、戦勝記念の塔の南にちょっと変わったオークがいたのを思い出した。さっそくそこへ行ってみる。いたいた。これこれ。「鏡の聖霊」。姿は近くにいるオークそっくりだけど、戦ってみるとちょっと違う。手ごわい。WS三発でもまだ足りない。最後は・・・

「てりゃっ!」

先生のこん棒で殴り倒すと、オーク・・・いや、鏡の精霊はすうっとそのこん棒に吸い込まれていった。どうやらこれで封印は成功したようだ。残った二本と違って、ほんのりと輝いているようにも見える。

さぁ、次はカエルだ。あちこち探してまわったのだけれど、なかなか見つけることができなかった。カエルがいっぱい居るところにも行ってみたんだけど、精霊は見当たらない。カエルをあきらめてウェアウルフを探すんだけど、これも見つけることができなかった。そもそも「北にある民家の近く」って言われたんだけど、そのあたりって、クモのお化けがいっぱいいて、わたしには近寄る事すら困難。でも勇気を出してと言うか、クモに気付かれないように抜き足差し足で、民家近くまで行ってみたんだけど、精霊を見つけることはできなかった。

まあ、そのうち、と思い、普通に狩りをすることにした。

そんな訳で、戦勝記念の塔の北側にある丘が今のわたしのお気に入りの場所。ここなら、道から近いところで相手を「引いて」くることもできるので便利なのだ。

丘の上で一人、奮闘していた時。下の道を走り過ぎる一団があった。何人かの剣士さんたちが塔の方から北東の方へ向かって走って行ったのだけれども・・・・それだけなら、よくある光景。たくさんいる人達が、あっちへこっちへ走り回っているのは日常のことだ。けれども、わたしが興味を持ったのは彼らのその名前だった。

「業務課1号」「業務課3号」

特にわたしの目を引いたのは、この二人の名前だった。

・・・・やっぱり、「業務課2号」とか「4号」とかも居るのかしらん?そんな事を考えていたらば、

「がうっ!」びしばしっ。

あたた。ウェアウルフハンターにげしげし殴られていた。振り向いて応戦しようとしたら、ウェアウルフハンターはわたしの目の前で突然「炎」に包まれ、その場に崩れ落ちた。わたしは何もしていないのに。一体何が?その答えは、崩れ落ちたウェアウルフハンターのその向こう。熱気にゆらめく空気の先にあった。そこには、炎のように真っ赤な・・そして妙に露出度の高い・・・見たこともない服に大きな杖を持った一人の女性が立っていた。

永遠のTI住人・みづほ登場

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

あ然とするわたしを無視するかのように、その女性はあたりの怪物たちを、文字どおりなぎ倒しはじめた。いや、文字どおり、というなら「焼き払う」が正解だろう。

彼女はわたしのWSと同じような魔法を詠唱する。わたしのWSは風、すなわち空気を凝縮するのだけれど、彼女が詠唱を始めると辺りには熱気が発生し、そしてそれは炎となり、彼女がそれを解き放つと、炎は目標・・・怪物へと飛翔し、大爆発を起こす。驚いたことにその爆発は近くにいる他の怪物たちをも巻き込み、一度に複数の怪物を焼き尽くすのだ。

一体、この人は何物!?

みづほ。

それが彼女の名前だった。見たこともない装備、見たこともない魔法。おそらくわたしよりもずっとずっと経験を積んだ魔法使いさんなのだろう。わたしも経験を重ねれば、彼女のようになれるのかしらん?

しばらく見ていたけれど、彼女は少し離れた所へと移動していった。後を追うのも少々気が引けたため、わたしは狩りに戻ることにした。

わたしは、わたしの魔法を使って狩りを続ける。でも、今見た魔法のすごさからすると、なんと貧弱なことか。一匹づつ、しかも2〜3度唱えないと倒すことができないんだもの。今まではずっとそれが当たり前だったのだけれど、あんなものを見せられたら・・・・ねぇ。

ぶつぶつ、と独り言。もちろん、集中せずにそんなことを考えながら生きられるほど、この世界は甘くない。あっと言う間に取り囲まれてしまった。あわてて逃げ出そうとするわたし。すぐに、後ろで熱気が炸裂する。彼女が助け船を出してくれたらしい。いつの間に近くに戻って来たのやら・・・

「ありがとうございます」

「いやいやー。気をつけてのー」

「は・・・・い??」

「ん?どした?」

みづほさんの後ろ。わたしは見た。大量のオークやウェアウルフを引き連れたお兄さんが、一撃でその一団を倒すところを。

彼はみづほさん同様、炎の魔法を使い、一撃で大量の怪物たちをなぎ倒した。そして、また新たに、怪物たちを集めてまわる。その数は半端ではない。あっちへこっちへ移動しながら、大量の怪物をわざとおびき寄せて一カ所に集める。もちろん、そのお兄さんは怪物たちに取り囲まれる訳なんだけど、しばらくすると、中心近くで大爆発が起こり、一斉に倒れる怪物たちの中からお兄さんの無事な姿があらわれる。

「ほえ〜〜。あそこまでになるとあたしでも無理だなぁ」

みづほさんが言う。

「上には上がいる、ってことですか?」

「だねぇ・・まぁ、なりたてウィザードだしねぇ」

「ウィザード?」

何それ?

「あー。攻撃専門の魔法使いね。あんたもメイジなら、転職してウィザードになれるよ」

「魔法使い・・・」

「ああいう・・・」

後ろではお兄さんがまだ炎の魔法を使ってる・・・あれはどう見ても遊んでいるとしか思えないけど・・・・を指さしてみづほさんは言う。

「・・攻撃魔法の専門家ね。クレリックって回復専門の職も選べるけど」

ふむふむ。転職か・・・・まあ、まだまだずっと先の話だろうし、今はあまりへんな希望を持たない方がいいかもしれない。

やがて、お兄さんは自分でオーク副隊長をひと殴りすると、後は副隊長に殴られるままになっている。わたしがそんなことをしたら、ほんとにすぐ「最寄りの村」状態になるのだろうけど。お兄さんは何発殴られても、痛くもかゆくもない、と言った風情だ。

もちろん、来ている服も全く見たこともない。

「相当高いんだろうな」

みづほもそれを見てぽつり言う。みづほさんから見てもずっと上ってことは、わたしからしたらはるか彼方?

「よーし、それなら・・」

みづほさんは何か魔法を詠唱し、それをオーク副隊長にかけた。

「がんばれ〜〜、副隊長」

わたしにはそれが何か、思い当たることがあった。。補助魔法のひとつだ。わたしもつい最近それを覚えたので、もしかしたらそれじゃないかと思ってみづほさんに聞いてみた。

「マイト?」

「そそ。これでちょっとは攻撃力アップしてる・・・はず」

でも、げしげし殴られているお兄さんは表情ひとつ変えない。しかし、「お、ちょっと減って来た」とのこと。多少効果はあったようだ。痛くはないけど、いい加減、うざくなったのか、お兄さんは振り返ると副隊長を殴った。ほんの2〜3発で副隊長は倒されてしまった。

「すごいなああ」

もう、本当に正直な感想はそれだけ。

「まったく。おたく、いくつよ?」

わたしも聞きたかったことをみづほさんが尋ねてくれた。けれども、「ん?まあ、それなりに」と言葉を濁すお兄さん。「きっと30以上だな・・」みづほさんはあたしに耳打ちする。でもすぐそばにいる彼にも聞こえたようで、「まぁ、そんなとこ」だそうで。

「そうそう、ウィザードになるとこういうこともできるよ」

そう言って、お兄さんは何か詠唱しはじめた。何の魔法だろう? お兄さんが詠唱を終えると、すぐ近くの地面がまぶしく輝きはじめた。そしてその光りは文様を描き、その中心から何かが沸き出して来た。

「みゅーみゅー」

ねこたん!ミューザキャット

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

かっ・・・かっ・・・かっ・・・・

「かわいいいいいいいい!!」

わたしは思わず叫んでしまっていた。

それは「猫」だった。正確には猫の怪物なのだけれども。みゅーみゅー言う泣き声、耳、しっぽ・・・まぎれもない猫だ。名前も「ミュー ザ キャット」。

てってこてってこ、歩く姿も可愛い。その可愛いミュー猫は、近くに居たオーク副隊長のところまで歩いて行って、ぽかぽか、と殴った!

「ええっ!?」

もちろん、猫はオークに殴られる。猫とオークの殴り合いが始まり・・・・猫が勝った。

「ほええええ」

わたしはもう、驚きの連続で言葉も出ない。

「フレイムストライクを使えるってことは、君も猫呼べるんじゃないの?」お兄さんはみづほさんに問いかける。ちょっとばつが悪そうに「いや〜、まだ覚えてません」と答えるみづほさん。

それからしばらく、3人でいろいろとお話したり、そこらの怪物を相手に遊んだりしていたのだけれど、みづほさんが「んじゃ、あたしはそろそろ」と先に立ち去ってしまった。わたしはお兄さんと二人残された。

「君、いくつ?」

「13です」

「その武器は・・まだ見習いか」

「そうですよ。武器を買うアデナがなくて。先に防具を揃えた方がいいかと思って・・・」

「そうか・・・これ、ちょっと使ってみな」

そう言ってお兄さんは自分の持っている武器とはまた違う武器を差し出した。なんだろう?と思いながらもそれを受け取ってみる。

「あそこの副隊長、それで倒してみて」

「はい・・」

なんだかよくわからないけど、言われた通りに、オーク副隊長にWSを撃ってみた。その一撃でわたしは理解した。

「すごーーい」

わたしが持っている武器では一発でまだ半分弱しか体力を削れない。二発と少し。殴りか、アイスボルトでトドメをささないとだめなのに、この武器だと、二発で十分。こんなにも差が出るなんて。

「攻撃を受ける前に倒せば、防御する必要もない」

確かに、その通りだ。わたしはその武器をすぐに返した。代わりに、お兄さんはまた別のものをわたしに差し出した。

「これは?」

「とは言っても、防御もやっぱり必要になる時もあるからね。とりあえず、それ貸してあげるから、着ておきな」

「いいの?」

「いいよ。必要なくなったら返してくれれば」

本当にいいのかな・・・これってデポーションチューニックとホース。今着ているレザー上下よりひとつ上のランクで、すごく高い品物。でも、なんとなく断るのも悪い気がしたので、受け取ることにした。

「ありがとうございます。それじゃ、ちょっとお借りしておきますね」

「おけ。じゃ、着いてきて」お兄さんは走り出した。必死で後を着いて行く。

「精霊クエ、受けてるだろ? ガーリントからワンドをもらったはずだ」走りながら尋ねてくる。ピンときた。鏡の精霊だ。

「ええ、オークは倒しました。あと二匹がまだ・・・」

途中だと言うことを伝える。

「ならまずは、こっちだ」

方向転換。やはり、カエルのいっぱいいるところを目指して居るのかな。方角的にはそんな雰囲気。

「えっと、たしかこの辺に・・・いたいた」

やはり、思った通りの場所だった。彼の示す場所に、確かに、鏡の精霊・カエルバージョンが存在した。

「わたしが探した時には居なかったのに」

どうして?

「さぁ、いってみよー」

「はい」

疑問はともかく、今は目の前のカエルを叩こう。以前と同じ要領で。WS三発。あとは殴り。

「おっけー、次」

「次はウェアウルフですね」

「そそ。あれがなかなか見つけられないんだよね」

「ええ。わたしも。探してはみたんですけど。あのあたり、おっかなくって」

「確かに、君の歳じゃまだきついだろうな」

川沿いに北の方へ。滝が近づいてくる。彼は、滝のすぐ下のトンネルを抜けて進んで行った。わあ。前に来た時はこっち側には来なかったけど、滝の下をくぐり抜けることができたんだ。知らなかった・・・まだまだ冒険しきれてないのね。もっとがんばらなくちゃ。

でも、今はお兄さんに着いて行くので精一杯。どんどん進むお兄さん。行く手を阻む怪物は炎で焼き尽くす。わたしは何もできないんだけど・・・

「ここだ」

お兄さんは民家近くの海岸の崖に立った。どこ?精霊の姿は見えない。お兄さんのそばまで行って、崖の下を覗き込むと・・・

「いた!」

鏡の精霊・ウェアウルフ

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

こんなところに居たのか〜〜。こりゃ気付かないはずだ。道からは完全に死角になっていて、しかもまわりに怪物がいっぱいいるし。これは一人じゃ探し切れなかっただろうな・・・

「いきます!」

わたしは崖を飛び降り、精霊に襲いかかった。

・・・・

「やーー!」

精霊を見事に封印し、雄叫びを上げるわたし。なんかちょっとうれしい。自分の力だけで達成できなかったことは少し悔しい気もするけど、達成できたことそのものは単純にうれしい。

「おめでと。これで三つそろったね。じゃあ、魔法学校へ行こうか」

あ、そうか。まだ「達成」した訳じゃない。先生に報告にいかなければ。お兄さんに着いて魔法学校へ。

「先生、鏡の精霊を封印してきました」

お兄さんに手伝ってもらった、ってことは内緒ね。

預かっていたワンド。今は精霊が封印されてほんのり輝いている。それを三本、まとめて先生に渡す。

「これは間違いなく、確かに封印された精霊ですね。御苦労さまでした。お陰で混乱を未然に防ぐことができました。お礼にこれを授けましょう。」

何かくれた。何だろう?最初にもらった「見習いのワンド」にそっくりだけど。

「精霊を捕らえることのできたあなたは、もう一人前の魔法使いです。そのアデプトのワンドはこの学校を卒業した証。おめでとう。」

もらったアデプトのワンドを装備してみる。心なしか強くなったような気がする。一人前、と言われるのも悪い気はしない。

「ありがとうございます」

「うむ。しかしまだまだ、あなたはこれから様々なことを学ばねばなりません。それはこの学校で教えられるものではなく・・・」

うん。お話を聞くだけじゃ、わからないこと、気付かないこと。実際に見たり、体験しないと解らないこと。いっぱい、いっぱい。それに「誰か」と共に行動すること・・・

「さて、武器も手に入ったみたいだし、行くか」

お兄さんが言う。

「どこへ?」

「本土」

本土!?

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

戻る前へ次へ


LineageII (C)NC Soft

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.


ゲーム箱ソフト| ハード| 分類| リネ2
Orange's BOX絵箱| ゲーム箱( TLS. 続初)| 写真箱| リンゴ箱| ごみ箱| 伝言箱| リンク箱