Orange's BOX絵箱| ゲーム箱( TLS. 続初)| 写真箱| リンゴ箱| ごみ箱| 伝言箱| リンク箱
ゲーム箱ソフト| ハード| 分類| リネ2

『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第五話・アデン大陸』

「武器も手に入ったことだし、行くか」

「どこへ?」

「本土」

本土!?

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

お兄さんは事もなげに言う。本土って、あの、本土・・・アデン大陸のこと?

「さ、行くよ」

走り出すお兄さん。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい」

「大丈夫、大丈夫。オレもついてるし、心配することなんて何もないよ」

いえ、そういう事ではなく。心の準備が。だって、まだ、本土なんて、考えたこともなかったのに。この島だってまだ、行ったことのないところもあるし、倒せない怪物だっていっぱいいる。いきなり本土だなんて言われても・・・・・。

「ちょっと、買い物を・・・」

「ほら、行くよ〜〜」

「えーー」

わたしは、何かを買おうとしていた。お店に向かって走る。でも、あわててしまって、何を買うのかすっかりわからなくなっていた。わたしの頭の中では、様々な思いが駆け巡っていた。

本土なんて、まだわたしが行ける場所じゃない。でも、こんな機会を逃したら、次、いつ行けることになるのかわかったもんじゃない。機会があるなら、本土がどんなところなのか、見てみたい。見てみるだけでもいいじゃない。でも、本土って、怖いところ。生きて帰れるかわからない。今ならお兄さんがいるなら大丈夫じゃない?

「えーと、えーと・・・」

「ほら、出発するよ。着いておいで」

「わーーん」

泣き出したい気持ちだった。嬉しいのか、辛いのか。わからないけれど、お兄さんに着いて行きたい気持ちと、行きたくない気持ち。でも、体は「着いて行こう」と必死。

「今どこ?」お兄さんの姿は近くにない。

「もう、海に潜ったよ」

えええ!?

「船に乗るんじゃないんですか!?」

本土への定期船が出ているのは、港の案内が聞こえてくるので知っていた。本土へ渡るならばもちろんその船を使うものだと思っていた。

「歩いて行けるんだよ。海の中を。まあ、着いておいで」

「ええっと、ええっと、はい」

海。村の東側・・大陸に向かうならそっちだろう。あわててそちらへ向かおう、と店を出て、わたしはお兄さんの行方を探った。お兄さんはどこ?

「何やってんの?」

お兄さんを探しているんです!もう、どうしたらいいのよ!

わたしの頭の中は真っ白になり、視界が暗転した。

みごとに処理しきれなくなって、回路が飛んじゃったって感じ。一瞬、気絶したみたい。それでも、身体は勝手に動いてたのかしら。次に気付いたら、わたしは・・・・

「どうした? どこだ?」

「・・・海の底・・・・みたいです」

「え?」

いつの間にか、海の底に横たわっていました。何が起きたのかさっぱりわかりません。

「・・・溺れちゃったみたいです」

「・・・すまん。もう引き返せない」

「うう・・・仕方ないですね。先に行って下さい」

「ごめん」

「いえ・・・・」

最寄りの村へ。

・・・・・

お兄さんとパーティを組んでいたので、姿は見えなくても、会話はできた。テレパシー・・・ってやつ?わからないけど、そういうことみたい。それと、余談だけどパーティに入っていない他の人にはその会話の内容は聞こえないそうだ。

「今日はありがとうございました」

「いや、すまないね・・・」

「いえいえ、やっぱり、まだ、心の準備もできてなかったし、これでよかったんだと思います」

「そうかい・・・」

「ええ、それじゃ、今日はこのへんで」

「おお、またな」

「はい、またです」

村の片隅にたたずんで、わたしはそう告げるとその場を立ち去ることにした。

翌日。

村に戻ったわたしは、考えていた。

本土。アデン大陸。

昨日は行きそこなったけど、いつかは行ってみたい土地。そしていつかは行かねばならないところ。

昨日、ウィザードのお兄さんは海を横断して大陸に渡ると言っていた。そんなことができるのだろうか? 水の中に入ると呼吸ができなくなる。しばらくは息を止めていられるけど、すぐに息が続かなくなって溺れてしまう。結果的に体力が無くなって行動できなくなって、昨日のわたしのように最寄りの村に戻ることになってしまうだろう。

では、お兄さんはどうやって海を渡り切ったのだろうか?

わたしはひとつの答えを見つけていた。

「セルフヒール」

自分自身をヒールすれば、失った体力を回復することができる。それを使えば、もしかしたら、海を渡り切ることもできるのではないか?お兄さんは、そうやって行ったのではないか? しまった。聞いておけばよかったかな。でも、お兄さんはもはや大陸へと行ってしまった。しばらくは会えないだろう。

大陸に渡る、と言う目的よりも、思いついたことが正しいかどうか、試してみたくなった。その思いはわーっと沸き上がり、わたしを突き動かしていた。

灯台

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

灯台の手前の海岸に立ち、地図を広げ、目指すべき方角を定める。地図でみると、大陸の南、この島から見てちょうど東あたりに少し突き出した半島のような地形がある。島からの最短距離を測ってみるとそこが一番近いようだ。

「ふう」

わたしは深呼吸して、少しだけ水の中へ足を進めた。打ち寄せる静かな波がわたしの足元を洗う。そして、少しずつ海の中へと入ってゆく。ひざ、腰、おなか、胸。一歩づつ、確実に。首までつかったところで一度歩みを止め、せいいっぱい、空気を吸いこんで、息を止め、いざ!

ぶくぶく・・・

ぶくぶく・・・

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

わたしは完全に水の中へと入った。まわりすべてが水。もちろん息はできない。少しづつ、苦しくなってくる。それに、水圧で歩く速度が極端に遅くなっているようだ。でも、わたしは歩みを止めるわけにはいかない。目指す方角に向けてただひたすら海底を歩く。

やがて息が途切れてしまい、水を飲み込んでしまった。そのため、体力が少しづつ失われて行くのがわかる。タイミングをみはからってセルフヒールを唱える。

しまった!

魔法を詠唱するときは、立ち止まらなければならないのか!

これは計算外だった。回復するたびに立ち止まらねばならない。と、言うことは水の中にいる時間が増えることになって、さらに体力が減る。でも、回復しないと、確実に溺れてしまうだろう。

一瞬、引き返すことも考えたけれど、わたしは進むことにした。こうなったら、たどり着けなくてもいい。どこまで行けるのか、確かめるだけでもいいだろう。

「自分の目で見て、自分自身で確かめる」

そして、自分自身の力とか、限界を見極めてみたい!そんなのは、多分、後から考えたリクツ。わたしは、とにかく、今この「クエスト」をこなすことだけを考えていた。

しかし、しばらくすると、それもかなり大変だと言うことがわかった。なにせ、数歩進んでは立ち止まってセルフヒール。その繰り返し。ちっとも進まない。さらに魔法を使うためのマナが足りなくなる可能性が出てきた。マナもHPも少しづつではあるけど回復する。しかし、もちろん減る分より増える方が少ないので、進めば進むほど減って行く。時間との戦いではあるのだけれど、歩みは遅々として進まない。

もちろん、海底に人などいる訳も無く、孤独な行軍で、わたしは泣きたくなってきた。まだ行程の半分も進んでいない。果たしてどこまでいけるのか?たどり着けるのか?

ともかく、進むことだけを考えよう。

歩き、歩き、歩き、セルフヒール。歩き、歩き・・・・ぶくぶくぶく。

海でヒール

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

まわりの景色は水のせいであまり遠くまでは見えないし、だいたい、岩場か砂地ばかりで美しくもなんともない。ちょっとはすてきな光景にでも出会えれば、まだ気分も晴れるだろうに。海底はでこぼこしていて、多少の変化があるのがせめてもの救いか。もっとも、今の状況ではまわりの景色を楽しむ余裕なんてこれっぽっちもないのだけど。それと、海の中には人はおろか、動物の姿も全く無かった。怪物がいないのは助かるんですけどね。

うっかりすると体力が無くなってしまう。そうなったらもとも子もないので、そのことに集中せざるを得ない。でも、気の遠くなるような「作業」の繰り返しは、わたしから注意力を奪う。ふと気が付くと、魔法を唱える事を忘れ、体力がぐんと減っている。あわててヒールを連続で唱えるんだけど、その分、歩みが止まってしまう。

いけない、いけない。集中しなければ・・・・・

孤独との戦い。自分との戦い。

あのお兄さんは。なんかとっても簡単なことのように言っていたけど、こんなにも大変だったなんて。これも、歳の差なんだろうか?

・・・・・・

ようやく行程の3分の2ほどを来た。

マナの残りも3分の1ほど。このペースならどうにか大陸までたどり着くことができるだろうか? 果てしがないと思われた行軍の先に希望の光が見えたような気がした。

でも油断は禁物。慎重に、慎重に。

ひたすら進み続けると、遠くに見える海底の地平線(?)に変化があらわれてきた。壁のように迫り上がって見える、あれは・・・・

アデン大陸!

地図で見ると、もう目の前までに迫って来ている大陸。もう少しだ。わたしは、自分自身をはげましつつ、先を急いだ。急ぐと言っても、歩く速度を早くできる訳ではないんだけれど。気持ちの問題。しかし体力とマナは確実に少なくなってゆく。大陸への距離も。

歩き、歩き、歩き、セルフヒール。

歩き、歩き、歩き、セルフヒール。

歩き、歩き、歩き、歩き、歩き、歩き、おおっと、セルフヒール、歩き、セルフヒール。あぶないあぶない。

歩き、歩き、歩き、セルフヒール。

歩き、歩き、歩き、セルフヒール。

もう少しっ!

目の前に高くそびえる壁。

やがて、そこにたどり着いた。

やったー!

・・・・

で、どうやって登るの? これ?

ぶくぶくぶく。

うぎゃ。セルフヒール。セルフヒール。セルフヒール。あああ、もうマナがなくなる!

地図で見ると、半島の少し北側に来てしまっているらしい。あわてて岸壁伝いに南へ移動する。

砂浜が見えて来た。あとちょっと!

ざばっ。じゃぶじゃぶ。

「はぁ、はぁ」

本当に、ぎりぎり。わたしはついに・・・どうにかこうにか・・・・・上陸を果たした!

感激よりも疲れがどっと押し寄せてきて、わたしは波打ち際に座り込んでしまった。ああ、空気ってすばらしい。実際、体力もマナもぎりぎり限界に近い状態。あとほんのわずか、進路を過っていたらどうなっていたことやら。自分自身のこととはいえ、よくやった!とほめてあげたい気分だ。やればできるもんだ。

しばらく休息をとり、疲れを癒す。そうしながらたどり着いた海岸を眺めて見る。

やっと本土

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

まわりには幸い、怪物の気配はない。打ち寄せる波の音と吹き抜ける風の音が聞こえるだけだ。姿は見えないけど、海鳥だろうか? 鳥の鳴声も聞こえて来る。地図で確認すると、当初の予定通り、大陸の南西にある双子半島に到着できたらしい。さらに地図で見るとここから少し内陸側に街道があり、それを北上すれば村にたどり着けるようだ。

「よし」

体力が回復したのを確認すると、地図を閉じ、わたしは立ち上がった。

双子半島の真ん中。入り江になった部分へと侵入して行く。何があるかわからないので、波打ち際を慎重に進む。怪物もいなければ人もいない。いろんな意味でもっと賑やかなものと考えていたけれど、そうでもないらしい。恐る恐る、入り江の深部まで進み、そこから本格的に内陸へと進んで行く。

街道はすぐにわかった。

難無く街道に出たわたしは、地図に従って一番近い村を目指すことにした。街道は海岸沿いに北々西にほぼ真っすぐ。この道を進んで行けば「グルーディン港の村」にたどり着けるらしい。わたしは、道の左右を警戒しながらできるだけ道の真ん中を進んで行くことにした。

しばらく歩いて行くと、街道の左右の平原に、ぽつぽつ、と怪物の姿が見えてきた。遠くから見るそれらは、わたしにとっては明らかな脅威だ。できれば近寄りたくない。というか、近寄ったらどうなるのかわからない。多分、大変なことになるだろう。しかし、また少し進むと、怪物達が街道のすぐそばまで来ているところがあった。仕方がないので、街道を離れて反対側の平原に入り、少しだけ迂回。どうか、見つかりませんように・・・・

港村への道

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

願いが通じたのか、その後も何カ所か道の近くに居た怪物をそーーっとやり過ごして、やっとこさグルーディン村が見えて来た。

しかしそれはわたしが想像していたような華やかな村ではなかった。

村の入り口・・・これを入り口、と呼ぶならば、だけれど、そこは「朽ち果てた廃墟」のように見えた。

港村入り口?

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

村を取り巻く壁はあちこち崩れ落ちており、とても人が住んで居るようには見えなかった。辛うじて門番らしき人が二人いるのと、たいまつの火が灯っていることで人の気配は感じられる。そういえば、ここまでの道程の中でも、わたしは誰ともまだ出会っていなかった・・・。

本土って、こんなとこ? ちょっとがっかり。それに、海底をずっと歩き、上陸してからここまでも緊張のしっぱなしだったこともあって、すごく疲れていた。けれど、せっかくここまで来たのだから、と、村の中に入ってみることにした。

崩れ落ちていたのは外壁だけで、中に入ってみると、そこは明らかに島の村とは違った立派なものであることがわかった。内部は地面も石材が敷き詰められており、建物も島の村とは違って立派な石造りだ。

それに、なんと言っても広い! 島の村の何倍もの広さだ。歩いて見てまわるだけでも一苦労しそう。しかし、さすがに今日はもはや気力が尽き果てているので、ここで休むことにしよう。明日、またゆっくりと村の中を見て回ることにするか。島では買えないものが売っているかもしれない。少しわくわくしながら、わたしは休息をとることにした。

そして翌日。

港村

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

村に戻ったわたしは、とりあえずあたりを散策してみることにした。村の内部は高い石の塀でいくつかの区画に仕切られているようで、ところどころ交差した通路がある。わたしはその通路の左右にある塀伝いに歩いてみた。

少し歩くと、お店をみつけた。早速中に入って並んでいる商品を見てみた。道具屋さんだった。意外なことに、品揃えは島とはさほど変わりはなかった。な〜んだ、と思いながらその店を出て、また少し歩いた。近くにもう一件、店があった。看板は、武器と防具の店。そうそう、ここ、ここ。

こちらは道具屋さんと違い、島では売っていない装備が置いてあった。ああ、これって、みづほさんが着てた服だ。マジックパワーチューニックとホースって言うのか。もちろん、値段は目玉が飛び出しちゃうほど。こりゃだめだ・・・やっぱり、わたしにはまだまだ早すぎたのだろう。武器もしかり。というか、武器は輪をかけてお高いです。無理無理。はぁ・・・とりあえずは眺めてあれこれ想像して楽しむしかありませんね。

「よう、姉ちゃん。らっしゃい」

「あ」

「ここはアデン大陸のいわば入り口。これから大陸に出て行こうってぇんなら、それなりの装備をそろえていかなくちゃな。どうでい?気に入ったのがあったかい?」

「あー、ええっと・・・あっははー」

笑ってごまかしつつ後ずさり。

「けっ、なんでぇ、冷やかしなら帰っとくれ」

とぼとぼ、と店を出てしばらく歩いていると、また一軒の店を見つけた。鍛冶屋さん。なんかモノを作ってくれるらしいけど・・・今のわたしには無縁ね。そういえば、島にも一人、鍛冶屋さんがいたっけか?

それからまた少し歩くと、またお店があった。入ってみると、あれ?これって、さっきの道具屋さん?

また歩く。店。武器と防具の店。

「なんだぃ、また来やがったのか」

うわ。失礼しました〜。

なんだか、同じところをぐるぐる回っているらしい。同じような壁が並んでいるので、方角が解らなくなったみたい。あちこち歩き回ってようやく広場をみつけた。

階段を登ったところが広場になっていた。ここも島の広場とは違ってとてつもなく広い。人々が行き交い、露店を広げるひともたくさんいる。売られている物もどことなく島とは異なるし、人々の格好もずいぶんと違っている。なんとなく、活気にも差があるような来がする。それに、ヒューマンだけでなく、さまざまな種族がいる。

「神殿行きパーティ、28歳前後の前衛さん募集!」

「血盟XXXでは新規メンバー募集中です!」

「グラディウス売りありませんか〜〜」

聞こえてくる言葉もまた、新しいものばかりだ。初めて島の村に入ったときと同じように、軽い目眩に襲われる。それでも、なんとか気力と好奇心で広場も少し散策してみた。広場の周囲にもいくつかの建物があり、お店や剣士さんの学校なんかがあった。なんのことだかわからない建物もいくつかあったし、一番目立つ大きな神殿はなんとなく気圧されて入りずらかった。

港村の神殿

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

一通り見てまわったわたしは、元の「壊れた門」のある場所に戻ってきていた。

結論。まだわたしには早い。本当の意味でここに来るのはずっと先のことだ。今のわたしでは、ここで生活することはできない。何も買えないし、おそらくそのままで戦えるほど、ここは甘いものではないだろう。そう、エルフの遺跡でさえまだまともに足を踏み入れることさえできないというのに。

実際、何をしに来たのだろう・・・何も買えず、戦いも何もできず。

仕方がない。「観光」できたということにするしかないか。あるいは将来、来る時のための下見。それにあの海をわたり切った達成感。なにもできはしなかったけれど、本土に足を踏み入れたという興奮。これはこれで実りはあった・・・・ということにしておきたい。

さぁ、現実に戻ろう。わたしにはわたしに合った場所。そう、島へ・・・・・

そしてもう一つの現実に直面する。

「・・・あの海、また渡らないといけないのね」

思い出して、へなへな、としゃがみこむ。膝と手を地面につけて、がっくりうなだれる。

さて、実際、どうやって戻ろう? 村のすぐ西には海岸・・・港があり、そこから海に入るのが最も安全そうだけど、これだと島までかなりの距離を歩かなくてはならなくなりそうだ。行きがギリギリだったことを考えると、同じルートを通るのが最適なような気がする。

わたしは、村に別れを告げ、海岸沿いの街道を南東へと戻ることにした。

ここへ来る道中。緊張していたこともあって、まわりの景色とかはほとんど見ていなかった。街道沿いにまで来ている怪物がいないかだけに注意し、いれば慎重に迂回する。帰りもそれは同じだけれど、少しだけ余裕が出て来たのか、海岸の向こうに広がる海を眺めることもできた。しかし、美しい水平線だけではなく、海岸近くにいる怪物たちも目に付いてしまった。

やはり、気をゆるめる訳にはいかないか・・・

今回、少しだけ余裕があったのは一人きりではなかったこと。もちろん、知り合いとかではない。ただ同じ方向に走っている人が何人かいたので、その後を着いて行くことにしたのだ。しばらくはその人たちの後ろ姿を追いかけていたのだけれど、走るスピードがまるっきり違うらしく、わたしはまた独りぼっちになってしまった。ときおり、後ろから追いついてくる人達も、すぐにわたしを追い越して走り去ってしまう。

寂しさと恐怖で泣きそうになりながらも、どうにか目的の双子半島の付け根まで来ることができた。ここから半島へと進み、海に入ろう。幸い、来た時と同じく、何事もなく半島の突端までたどり着くことができた。さて、さらなる問題はここからだ。

行きと同じよう、長い長い、孤独な行軍が始まった。そして、同じく、体力もマナも同じようにギリギリのところで島へと戻ることができた。いや、実はまたちょっとだけ方角を間違えて、微妙にヤバかったのは内緒にしておこう。はぁはぁ。

疲れを癒し、また翌日。

いずれは本土へ、と言う気持ちもあった。実際に見る前は本当に漠然としたイメージしかなかったけれど、今はより具体的にそれをイメージすることができる。そして、今、何をするべきか、も。

わたしは、わたしのなすべき事を、今、再開した。

そう、オークやウェアウルフたちと戦うことだ。村の警備隊長さんから直接、公の討伐作戦に参加できるようにとりはからってもらっていたので、多少なりとも報酬も期待できそうだ。戦いにも熱が入る。熱が入り過ぎてマナがなくなっているのに気付かず突っ込んでしまい、「最寄りの村へ」行ってしまうのはまあ、ご愛嬌として。

アミノ式にも久しぶりに再会し、他の人たちとも一緒に暴れてみたりもする。

パーティプレイ

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

「そうそう、本土に行ってきたよ」

「うそっ? マジ?」

「まじまじ」

「どないして? やっぱし、船?」

「ううん。歩いて」

「え?歩いていけるんかいな?」

「それがねー、いけるのよ」

「へえ〜〜。オレも行ってみたいな〜〜」

「無理」

「なんで?」

アミノ式に、数歩あるいてヒールの連続って話をしてあげた。

「片道、40分ちょっとかかるよ」

「・・・・地道に船代貯めなしゃぁないか・・・・」

「それに、まだわたしたちの歳じゃ、行っても何もできないしね」

「せやなぁ」

など、やっぱり、話をできる人がいるっていうのはうれしい。わたしにいろいろと教えてくれたお兄さんとも再会できたし、その妹さんにも出会った。もちろん、みづほさんとも。

そんな、広がったわたしの世界の中で、穏やかに、そして激しく時間は過ぎて行き、わたしは16歳になった。

オーク隊長やウェアウルフチーフとも互角に戦えるようになったし、二体同時に相手をするコツなども覚え、新しい魔法や威力を増した魔法のおかげもあって、飛躍的に戦いやすくなった。今わたしは「カースポイズン」と言う、敵に毒をかける魔法を覚え、それを使ってストーンゴーレムの相手をしている。村の人からゴーレム退治の依頼もあったので、一石二鳥。

ゴーレムはその力強さとはうらはらに足が遅く、わたしでも簡単に逃げることができる。遠くからカースポイズンをかけてじりじりと後退すれば直接対峙することなく、向こうの体力を削ることができる。もっとも、ゴーレムの方もウィンドストライクの魔法を放って来るので、多少のダメージを受けることもあるんだけど。

魔法は身につけた指輪、首飾り、耳飾りなどのアクセサリでその力を逸らしたりすることができる。魔法道具屋さんでも売っているのだけど、時々、ウェアウルフなどが落としてくれることがあったので、そういったもので間に合わせていた。オークやウルフなどは魔法を一切使ってこなかったので必要なかったのだけど、ゴーレムが使って来た時はおどろいた。あわててアクセサリを買いに走ることになって、手痛い出費。これも必要経費、とあきらめてちょっといいのを買ってきた。

そうそう、もう一つ変わったことがあった。これまでは、「ヒール」の魔法や「マイト」「シールド」と言った魔法を自分にかけることができなかった・・・・できないと思っていたんだけど、偶然に「自分にも使える」ということに気が付いたのだ。アミノ式と二人で狩りをしている時に、数匹に取り囲まれ、パニックになっている最中、自分にヒールがかけられたのだ。詠唱する前に誰にかけるかを念じるんだけど、セルフヒールが自分用だと思い込んでたので、自分で回復するときはそっちしか使ってなかったのだれど、これで少しは楽になるかな?

他にも、例のお兄さんやみづほさんからいろんな事を教えてもらっていた。「友達」として絆を交わし合うことで、その存在を感知することのできる感応魔法。それにもう一つ、遠く離れていてもお互いに会話をするための交感魔法などだ。その交感魔法を使って、わたしに語りかける声があった。

「やあ、がんばってるようだね」

この交感魔法は、語りかけられた時、それが誰からなのか、あるいは誰宛なのかを名前を使ってイメージするのだけど・・・声の主はハックスといった。最初、誰なのかわからなかった。こんな知り合い、いたっけ?

「ふふふ、わたしだよ、わたし」

たったひとりだけ、思い当たる人がいた。この世界でわたしを知っていて、わたしが知らない人。そう、わたしをこの世界に導いた張本人だ!

「今、どこにいるの?」

「ダークエルフの村だよ」

「ダークエルフの村? どこよ、それ」

「そっちは? 島かい?」

「そうよ」

と、言いながら地図を広げてダークエルフの村とやらがどこらへんにあるのか探してみる。地図をずるずると端の方まで広げて、やっとみつけた。

「・・・遠いね」

「遠いねぇ・・・」

・・・・・

地図には先だってわたしが訪れたグルーディン港の村からもっとずっとはるか北東のはずれ。そこにその村が描かれていた。

「いずれ、そっちの方にも行けるようになったら、会いに行くね」

「おー。気長に待ってるよ」

ダークエルフって、エルフ族とよく似ているけど、肌の色が全く違う。アデン大陸でも見かけたし、島でもごくまれにその姿を見ることがある。ちょっと怖い感じがするんだけど・・・・そうか、彼はダークエルフなのか。

交信を終え、ぼんやりとそんなことを考えていたわたしの耳に、誰かの叫び声が聞こえて来た。

「遺跡メンバー募集!メイジさんファイターさん!一緒に遺跡に行きませんか!?」

そうだな・・・もう、そろそろ遺跡に行ってみるのもいいかもしれない。わたしも少しは成長したし、それに「独りじゃない」のなら、どうにかなるかもしれない。普段は気にも止めないそんな叫び声に、応じてみることにした。ゴーレムの居る場所から遺跡まではそんなに遠くはない。オーク隊長たちがいる森を突っ切って走った。

エルフの遺跡へ。

戻る前へ次へ


LineageII (C)NC Soft

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.


ゲーム箱ソフト| ハード| 分類| リネ2
Orange's BOX絵箱| ゲーム箱( TLS. 続初)| 写真箱| リンゴ箱| ごみ箱| 伝言箱| リンク箱