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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第七話・アデン大陸へ、ふたたび』

ハックスとの会話は、わたしを再びアデン本土へと導く原動力となった。今度の目的は友達「ハックスに会う」こと。ただそれだけのために、アデン本土へと向かう決意をしたのだ。もちろん、アデン本土に活動の拠点を移そう、と考えた訳ではなかった。彼に会って話をしたら、またすぐに戻ってこよう。

出発前、少しでも装備を整えよう、と、有り金を叩いて盾やアクセサリーを新調しておいた。さすがに武器や服までは手がまわらなかったので、小物だけでも、と思ったからだ。

技能も可能な限り習っておいた。その帰り、教会の出入り口に居たエルフの女性と話をしてみた。彼女は恋人を探しているという。消息を断ったと言う恋人はヒューマンの剣士だそうだ。もし、居所がわかったら教えて欲しいとのこと。どこにいるのかは全くわからないけれど、アデン本土でその人のことを聞いてみるのもいいだろう。行ったついでに、本来の目的とは関係ないけれど、念のため覚えておこう。

そして、出発したわたし。

アデン大陸までのみちのり・・・と言うか、海底強行突破は前回とほぼ同じ。長く辛い道程でした。ちょっと変わったのは、セルフヒールだけじゃなく、ヒールが使えるようになったこと。一度に回復できる量が増えたので、ヒールする回数が少し減ったことかな。セルフヒールだと回復できる量が少なかったので、回数が半端じゃなかったのだ。もっとも、マナの量もそれに比例するので、結果的にしんどいのは同じだけど、回数減るのはかなり気が楽だった。

本土に上陸してからも同じように、まずはグルーディンの港村を目指す。

村では観光もそこそこに地図を広げ、この後の行程についての検討に入る。目指すは「彼」の住むダークエルフの国。地図上でその場所を確認しよう。現在地はここ、グルーディン港の村。地図では、左端・・・大陸の最西端に位置しており、話せる島はそのまた南西にある。島は最果ての僻地といった感じで、自分が「田舎者」であることを痛感させられる。そして、ダークエルフの国・・・・・・。そこもまた、僻地と呼ぶにふさわしい位置、北東の外れにあった。

そこと、ここ。地図上で道をたどって行くと、いくつかのルートがあることが解った。この港の村から北側へ出るルートと、東側からのルートだ。いずれにしても、「悲嘆の廃墟」と書かれた場所をかすめる形になっており、名前からして恐ろしいところであることは明らかだ。ご丁寧にドクロマークまで描かれている。できれば避けて通りたいところ。距離的には北側のルートの方が近道のような気もする。しかし、「急がば回れ」とも言うし、ここはあえて遠回りになるけど、東側からのルートで行ってみようか。そちらのルートには「グルーディオ城の村」があり、おそらく人も多く、通行量も多いのではないか、と考えたからだ。

よし!

地図をたたみ、腰を上げ、東門へと向かった。

港村東門

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村の中の人の流れを追えば、すぐに東門にたどり着くことができた。案の定、こちらの方が「表街道」なのだろう。行き交う人々の多いこと。門の前にしばらく立っていても、出て行く人、入って来る人、様々なひとが出入りを繰り返している。街道沿いに進めば、そんな人々と一緒に旅もできよう。旅は道ずれ、世は情け。見ず知らずで、会話がなくったって、同じ通りに人影があるだけでも心強い。

意気揚々と走りだして、すぐにその考えが甘かったことが解った。というか、思い出した。以前に村の南側の街道を走った時もそうだったが、みんな、走るのがすごく早い。あっと言う間に置いて行かれてしまう上に、道の上なんて走っていない。街道から外れて、丘の上とかを平気で走って行くのだ。きっと近道なのだろう。しかしきっとそこにはおそらく怪物もいるらしく、時折、刃を交える音やおぞましい叫び声が聞こえてくる。

わたしは仕方なく、独り寂しく街道を走る。みんな、「怖いものなんかない」って風だけど、わたしにとっては全てが初めて見るものばかり。道から外れて、怪物に襲われたら・・・街道を走っている分には基本的に問題は無いはずと信じて、わたしは道から外れないように・・・多少遠回りになっても・・・・慎重に進むことにした。

それでも、ところどころでは人とすれ違うし、後ろから来た人が追い抜いて行く。もちろん知り合いなど居るはずもなく、だれもわたしの事など気にする風もなく、素通りしてゆく。寂しいかぎりだけれど、まったく無人ではないことはわたしを勇気付けてくれた。

村を出てしばらく。左手には高い山が連なっており、右手は小高い丘が続いた。人々はその丘の上を通っているらしい。時折丘の上から飛び降りてくるひともいた。登って見たい気もするけど、今はやめておこう。

左手の山が低くなるにつれ、右手の丘も同じように低くなり、やがてそれは坂となり、より低い土地へと連なっていった。左側はあいかわらず丘のような高い土地が連なっている。

地図で確認すると「オル・マフムの露営地」となっている。オル・マフムってなんだろ? その答えはすぐに明らかになった。進む道の先。その右手にある森に怪物がいた。それも一匹や二匹ではない。その名前が「オル・マフム」。わたしはそこで一度足を止めた。

遠くから見ると、そのオル・マフムたちを相手に戦っている人もいるようだ。剣を打ち合う音も聞こえる。ちょっとびっくりしたのは「キャッツアイ バンデット」という人が何やらしゃべっているのが聞こえたのだけど、よくよく聞いていると、どうやら怪物がしゃべっているらしいのだ。島に居た怪物はしゃべることなどなかったけれど、こっちにはより知性を持った高度な・・・しかし野蛮な!・・・怪物たちもいるのか・・・・

そんなことを思いながらわたしは、一歩、また一歩と、慎重に進む、もちろん、道からは外れないようにして。幸い、他の人も結構居たし、オル・マフムたちもその人たちの相手が忙しく、わたしに構う暇などなかったらしい。結果として、わたしはそのエリアを無事に通過することができた。

地図上では街道の左側が「露営地」となっていたので、走りながらちらっと左手を見てみると、入り口のように開かれた門が二カ所ほどあって、そこから内部に入れるようになっているみたいだ。そこへ入って行くひと、出てくるひと、結構たくさんの人達が出入りしている。そういえば、港の村で「露営地パーティ募集」とかって声を聞いたような覚えもあったっけ。いつかわたしもここで戦うことができるようになるんだろうか?

そんなことを思いつつ、街道沿いに走って行くと、さらに緊張してきた。地図を見ながら走っているので、この先に何があるのかわかっているからだ。しかも、進むにつれ視界が少し悪くなってきた。なんか、霧が出て来たようだ。いや、わたしが、霧の中に向かって進んでいるのか・・・・

「悲嘆の廃墟」

そう、そこに近付いてきているのだ。ここまで来るとひと気も途絶え、独りぼっちになってしまったこともあり、なんとも心細いこと。それでも歩を進めて行くと、道の先に人影が見えた。人? 怪物じゃないよね? 一度足を止めて目を凝らして見るけれど、判別ができない。恐る恐る近付いて行くと、どうやらエルフとドワーフらしい。

ほっ。

それでも念のため、周囲を警戒しながら進み、その人達のそばで立ち止まってみた。地図で見るとそこは廃墟の入り口だったらしい。彼らはそこに行こうとしているのだろうか? それともたまたま、この場で世間話をしているだけなのか。パーティなのだろう、会話はわたしには聞こえては来ない。

地図を見ながらふと考えてしまった。やっぱり、どう考えても、東へ向かい、グルーディオ城の村方面を経由して北上するよりもこのまま廃墟を突っ切って北上した方がはるかに近道だ。

むー、と悩んでいたら、東側の道からダークエルフの男性が現れた。もちろん見知らぬ人。彼はさっきのエルフ&ドワーフのところに合流してきたようだ。二言三言、会話をしたかと思うと、三人は廃墟へと向かって走り出していった。それを見送ることになったわたしは、道端に一人取り残された。さてどうしようか。

廃墟への道はゆるやかな下り坂になっていて、坂の下に石でできた門がある。門と壁は大きいのだけれど、入り口そのものは小さいためにここから中をうかがうことはできない。左右は小高い丘の上に林がある。右側の丘のさらに右側・・・東側がグルーディオ城の村へと続く道だ。そこを目指すのが得策なのは分かっているのだけれど・・・・・

悲嘆入り口

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「慎重に」「冒険」「怖いよー」「好奇心」「勇気」「無謀かな?」「でも試してみたいかも」「なるよーになるさー」「うんうん」

心の中の「わたし達」が相談している。結論は?

わたしは、その門へ向かって歩き出していた。そう、「急がば回れ、慎重に」よりも「行ってしまえー」という思いの方が勝ったのだ。戦いを挑むのは無謀だけれど、気付かれないように避けて通ればすり抜けられなくもないかな?、と。

門の前までたどり着き、いったん停止。中を覗き込んで見た。すぐ近くで骸骨を相手に戦っているエルフさんがいた。さっきのエルフさんとはまた違うみたい。骸骨に弓矢を放ち、華麗にバックステップを踏んで迫って来る骸骨との距離を保ちつつ、二本目の矢を撃つ。すぐさま短剣に持ち替えると、目の前まで来た骸骨に向けてその短剣を突き出す。ガラガラと崩れ落ちる骸骨。また弓に持ち替え、次の標的へ。見ていてスカっとするぐらいの優雅な動き。

ほえーー。

みとれている場合じゃないか。

わたしは、その弓エルフさんの邪魔にならないように、こそっと門の中へ入った。幸い、弓エルフさんがそこらにいる骸骨を引き付けてくれている内に進めそうだ。少し進むと今度は大きな鎧を着たカッコいいヒューマンの剣士さんがいた。その人も次から次へと骸骨を倒して行く。すぐ近くには見慣れない怪物も居た。人の形をして、のそのそと歩き回ってはいるのだけれど、どう見てもまともじゃない。「ルーインゾンビ」生きた死体・・・ひいい。

しかし、そのゾンビはすぐ近くにいる剣士さんには見向きもしない。剣士さんもゾンビを気にしていないようだ。なるほど。島でも近寄ると襲って来る怪物と、そうでないのがいたけれど、ここでも怪物によっては近寄っても大丈夫なようだ。しかし、どれがどうだか、さっぱり分からないので、とりあえずは近寄らない方向で。

今居る場所は、ちょっとした広場の周りに小屋が立ち並んでいる。もちろん、人の住んで居る気配などない。住人は骸骨と生死体ばかりだ。その周囲を壁が取り囲んでおり、東側はさらに丘になっている。西側の壁の向こうは何も見えない。広場には点々と井戸のようなものがある。わたしはその井戸から井戸へと隠れるように進んで行った。

悲嘆のファイターさん

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剣士さんが戦っていることもあって、その広場を抜けることができた。周囲の壁がまた広場の先・・・つまり北側まで囲んでいて、ちょうど南側の入り口と同じように門のような出入り口があった。なーんだ、大したことないじゃん。これで通り抜け成功! と、門の向こうを見て見たら・・・・世の中そんなに甘くはなかったらしい。骸骨に交じって、これまた見たことも無い大男がドスドスと歩き回っていた。

大男の名は「トゥムラン バグベアー」。でかい。とにかくでかい。身の丈はわたしの倍ほどはあろうか。それに・・・あんまり直視したくない恥ずかしい格好。もっと布使ってよ、って感じ。筋骨隆々だけど、武器はこん棒。こう言ってはナンだけど頭が良さそうには見えない。でも・・・

「殴られたら痛いだろうな〜〜」

むーー。

じわ、じわ、と進みながら辺りを見渡す。そこはまた開けた場所になっていた。広場の先は下り坂になっていて、坂の下、北側から東側にかけては崩れた小屋や、建築途中で放棄されたような小屋が並んでいる。大男は広場に散在している。迂回してやりすごすには十分な距離があるので、広場の北側の端まで進んでみる。坂の下が見えるようになると、そこから先は厳しい、と言うことがわかった。骸骨や大男が密集していたのだ。広場の外周、坂の上を東側へと移動してみた。こちらは小屋があって見通しが悪く、状況が把握し辛い。小屋の間を慎重に進むしかないかな・・・

意を決し、坂を下ってみる。小屋の角から向こうをうかがってみると、案の定、こちら側にも骸骨と大男。しかし、北側よりは密度が薄い。しめしめ。小屋から小屋へ移動して行く。そして、いくつ目かの小屋から顔を出して辺りを見渡そうと思ったら・・・大男と目が合ってしまった。小屋のかげに隠れていて見えなかったのだけど、すぐ近くに潜んでいたらしい。

にはは・・・愛想笑いが通じる相手な訳もなく、大男はこん棒を振りかざしてわたしに襲いかかって来た。

「キャーーーーーーっ!」

もちろん、逃げる。ふと見ると、北側に門が見える。あれが出入り口だろうか? とりあえず、あそこを目指して走ろう。

どかどかどか。大男が巨体を揺らし、地面をも揺らす勢いで追いかけて来る。ちらりと見ると、3体に増えていた。巨体のわりに足は早いらしく・・・・わたしが遅いのか?・・・すぐに追いつかれてしまった。こん棒でぼこすこ殴られる。幸いだったのは、殴る動きはにぶかったこと。殴られながらもわたしはまだ走り続けることができていた。

悲嘆のバグベアー

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そして、門にたどりついた!

その瞬間、また追いつかれて殴られたわたしは・・・門から首だけ突き出した格好でその場に倒れ込んでしまった。

門の外は道が続いていて、近くには林が見えた。ああ、惜しいなぁ、もうちょっとだったのに。門の外まで逃げ延びたからと言って、大男たちから逃れられたかと言うとこれまた微妙ではあるのだけど・・・結果は同じだったかもしれない。なるほど、確かに「悲嘆」に暮れる場所ではあるのね。しくしく。

なにはともあれ、「最寄りの村へ」・・・・・・・

わたしにとって、最寄りの村と言えば話せる島の村だ。てっきりいつもの調子でそこに戻るのだと思い込んでいたのだけれど、視界が暗転し、いつものように村に戻るかと思いきや。なにやら普段と勝手が違う。

村に降り立ったわたしは愕然とした。

「な、なんじゃこりゃ〜〜〜!?」

城村。ヒトいぱーい

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ヒト、ヒト、ヒト。

正確に言うならば、ヒューマン、エルフ、ダークエルフ、オーク、ドワーフ・・・・その数、いっぱい。数えられません。

村の造りはなんとなく島の村に似ているけど、建物や人の密度がまるっきり違う。ここは一体、ドコ? すぐ近くに門番がいたので、訊ねてみる。

「あのー、ここはどこですか?」

「ここは、グルーディオ城下の村だよ」

「ありがとうございます」

ぺこり、と、お辞儀をして、その場を少し離れ、門の外に出てみる。門の左右はとても長い壁がそそり立っている。門から見える村の内部は、左右にいろいろな建物が立ち並び、その先に広場のような空間があり、そこは様々な人種で埋め尽くされていた。

地図を見るまでもない。ここがグルーディオ城の村。悲嘆の廃墟のさらに東にある村だ。こちらを通らずに北上しようとしていたのだけれど、結果的にこの村にたどり着いてしまったようだ。急がば回れ。いや、無理やり回された?

はぁ、どっこいしょ。

とりあえず、減った体力を回復するためと、今後のことを思索するために、わたしは門の前にある木に寄りかかって座り込んだ。

さてどうするか。

村を見学して行く手もあるが、ここは先を急ごう。ではどのルートで? ここまで来たのだから、当初の予定通り、この村から北上して行くのが正解ではあろう。そのルートは、地図で見る限り、特に危険とは感じない。一旦、グルーディオ城の東側の道へ出て北上し、突き当たりを西へ。少し西へと戻る格好で悲嘆の廃墟の北側へ抜けて、さらに北東へ進めばダークエルフの国だ。おそらく、先程、倒れる寸前に見た道がそうなのだろう。と、言うことは悲嘆の廃墟を通らなくて済む訳だ。

よし。

わたしは立ち上がり、歩きだした。

わたしが選んだ道は村の西側からグルーディンの港村へと続く道。そう、悲嘆の廃墟の南側へとつながる道だ。

なぜ?

決まってる。リベンジだ。

もう少し。あと少しのところで悲嘆の廃墟を通り抜ける事ができたのに、だって悔しいじゃない。このままでは引き下がれません。そういう訳なので、再挑戦。今度こそ。何故そんな無謀なことをするかって? 自分でもよくわからない。安全な道を進むのが正解なのかもしれないし、自分でもその方がいいと思う。でも、もう一人の自分が言う。「このままでいいの?」

臆病な自分。

大胆な自分。

どちらも、自分自身。

頭の中の理屈では安全第一だと解っていても、理屈だけじゃないココロがわたしを突き動かす。

道なりに走りながら、先程の廃墟の中のルートを頭の中でシミュレートしてみる。あー行って、こー行って、ここはこー。うんうん、これならいける。グルーディオ城の村から悲嘆の廃墟まではすぐだった。ゆるやかな起伏のある平原から左右を丘と山に囲まれた谷へと入る。その谷の北側が悲嘆の廃墟だ。何人かの人とすれ違うと霧が出て来た。廃墟の入り口へ近づいているからだ。後ろから来る人も含めて、廃墟へと向かう人は誰もいないようだ。わたしはまた、一人で廃墟へと突入することにした。

入り口から中を覗くと、最初に見かけた弓エルフさんがまだ同じ場所で狩りを続けていた。よくみると、骸骨にもいろいろ種類があるようで、エルフの遺跡に居たのと似た骸骨の他に、緑色に透き通った骸骨もいた。幽霊なのか骸骨なのか・・・まあ、どっちも似たようなものか。

弓エルフさんのエリアを抜けると、剣士さんのエリア。ここもまた同じように剣士さんがバリバリ働いていた。お陰様で第一の門までは楽々たどり着くことができた。なんか、後ろからおいかけられたような気もしたんだけど、振り返ると、剣士さんが骸骨と戦っていただけだった。もしかしたら助けてもらったのかしら? 心の中で「ありがとうございます」とつぶやいて、先を急ぐ。

広場を抜けて坂の上で一呼吸。

前回のように小屋に近づき過ぎると死角ができるので、左右に移動しながら前方の視界を確保し、慎重に状況を確認しながらじわじわと進む。すると、先程は居なかった別の人が何人かいて、大男や骸骨と戦っているではないか。これはラッキーかもしれない。

戦いを横目に、すぐ脇をすり抜けるように通過。すると、北側の出入り口はすぐそこだった。骸骨が数匹いるけれど、あれは近付いても反応しない種類だ。そう判断したわたしは一気に門を駆け抜けた。

ゴール!

悲嘆の出口

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やったー!

他の人が居てくれたお陰、と言うのもあるけど、どうにか通り抜けることに成功した。「ありがとう」心の中で見ず知らずの人達にお礼を言って、森へと歩きだした。

森には熊や蜘蛛がいた。港の南の海岸線で見かけたのと同じやつらだ。種類は違うようだけどエルフの遺跡でみかけたようなラットマンもいた。しかし、その森はすぐに途切れ、岩壁のそそり立つ地帯へと進んでいった。

岩壁の崩れた谷の部分が曲がりくねった街道になっている。怪物の気配は無いのだけれど、慎重に道の真ん中を走って抜ける。岩場を抜けると、また雰囲気の違う森へと出た。

先程の森は比較的木々が生い茂り、整然とした、手入れされたような感じのある森だったけれど、こちら側は朽ちた倒木だろうか?それとも、巨大な木の根なのだろうか。うねるように地面にアーチをかけるオブジェのような木があった。

走りながらそんな光景を観察していたわたしに、少し油断があった。がしっと、背後から何物かに殴られていた。

「何?!」

カサカサカサ「キシャーー!」

いろいろと学んだわたしは、「音」で周りの状況を把握する能力を得ていた。このカサカサって足音、キシャーーと言う泣き声。これは蜘蛛だ。前の森から追われていたのだろうか? だとしたら、ポイズンスパイダーか?

トリムデン

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考えながらも走っていると、背後で爆発音と熱気を感じた。同時に蜘蛛の断末魔の叫びも。とっさに振り返ると、蜘蛛は倒れ、その向こうに人影が見えた。

「だいじょうぶかい?」

大きな杖を両手で抱えたヒューマンの男性。おそらくウィザードなのだろう。しかも、わたしよりもずっとずっと年上の。島で出会ったお兄さんと似た感じだけど、彼ではないみたい。

「ありがとうございます」

「無事でなにより。気をつけてね」

「はい、本当に助かりました」

ていねいにお辞儀をしながら、消え行く蜘蛛をちらっと見ると、トリムデンと言う名前だった。体の色はポイズンスパイダーと同じ薄緑色なのだけれど、種類が違うらしい。ということは、岩場を抜けてこちら側に来たところで、引っかけてしまったってことか。そんなことを考えていると、助けてくれたひとは早々と立ち去っていた。おかげで、名前を覚えられなかった・・・

気を取り直して、先へ進もう。しばらく走ると、道が分岐していた。地図で確認し、進むべき道を確認する。北へと向かう道はゆるやかに東へと向きを変える。あたりは木々が少なくなり、変わりに草原が現れた。草原と言っても、さわやかなイメージではない。悲嘆の廃墟と同じように、うっすらと霧がかかり、昼間なのに、薄暗い。

左手にはなにやら建造物のようなものもあるが、人の気配はまるでない。地図で見ると、「黒魔法研究所」とある。黒魔法。考えただけでもぞっとする。くわばらくばら。

しばらく行くと、左手は少し小高い丘になってきた。丘の向こうは見張らせないけれども、その丘の上を飛び回る怪物の姿は見えた。コウモリだ。ばさばさ、と丘の上を飛んでいる。右手の草原にもおなじようなコウモリがいるようだ。

こっちにこないでね・・・

わたしは祈りながら、震える足をだましだまし走り続けた。

その時。

「やー、調子はどうだい?」

「!☆○△↑!?」

突然話しかけられたわたしはパニックになりそうだった。

「・・・どうしたの?」

「・・は、ハックスか・・・おどかさないでよ」

交感魔法でハックスが語りかけてきたのだ。

「何やってんだか」

「今、そっちに向かってる」

「へ?」

「だから、今、本土。黒魔法研究所ってとこ越えたあたり」

「ほー。なら、お迎えに行かないとな」

「怖そうなのがイッパイ飛んでるんですけど」

コウモリ

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走りながら、受け答えしながらも周囲の警戒を怠らず。すごく緊張する。

「怖くなんかないでしょ。そこらへんのの敵なら、青名のはずだよ」

「青名? 青名ってなによ」

「名前。怪物の名前が青いでしょ?」

何のことだろう? 立ち止まって、飛んでいるコウモリの一匹に狙いを定めてみた。確かに、名前が青い。

「ホントだ青い。けど、それと怖くないってどういう関係があるのよ」

また走りだしながら、前方に意識を集中する。大きなカーブをゆっくりと回ると、右手の草原は山岳地帯へと姿を変えてゆく。

「名前が青い、ってことは、自分よりずっと格下だってことだよ。だから、怖くもなんともない」

「そーなの?」

「自分より少し下なら薄い青、同じぐらいなら白、上ならピンクとか赤になるよ」

「へええええ」

知らなかった・・・時々、名前に色が着いてるのがいたのは知ってたような気もするけど、気にしたことがなかったな。試しに、まわりに見える怪物たちに意識を集中してみると、どれも青い。山岳地帯には島で見かけたのと似たオーク達がいたけれども、そのオーク達も青かった。

「なるほどねえ」

走りながら周りを見ていると、後ろから追い抜いて行くダークエルフたちがいた。前からも何人か走って来てすれ違う。ダークエルフの村はもう、すぐ近くらしい。

山岳地帯はやがてまた鬱蒼(うっそう)とした森へと変わった。左手の丘は相変わらずだったけれど。

「こらこら、どこへ行く」

へ?

交感魔法ではなく、普通の声が聞こえて来た。まさか。

ききーーっとブレーキをかけて立ち止まり、振り向くと、そこにはダークエルフの男性が一人、立っていた。

「やぁ」

「ハックス?」

ようやく、わたしは彼と会うことができた。

ハックス

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彼との会話は、少々プライベートなことも含まれていたので、ここでは語れないのだけれど。いろいろな話で盛り上がったあと、彼はこういった。

「せっかくだから、その辺、案内しようか?」

「うんうん。お願い」

こうしてわたしは、彼の案内でダークエルフの国を観光することになった。

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