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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第八話・ダークエルフの国』

どうにかたどり着いたダークエルフの国でハックスと会うことができた。彼はこのあたりを案内してくれると言う。

「こっち」

はいはい〜。

右も左もわからないとは、このこと。彼に着いて行く以外、選択肢はない。一人でウロウロするのも、それはそれで楽しいのかもしれないけど。それはまた、別の機会にでも。

彼は、わたしが来た道を引き返す形で、街道沿いに少し西へと走った。森を抜け、山岳地帯に出ると、そのまま南の山岳地帯へと曲がって入っていった。彼の行く先には、なにかの建造物があった。石か岩でできた低い塔のようなものが連なって立っている場所で、その石の塔の足元にはオークがいた。

塔

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わたしは、自分に、そして彼に、補助魔法をかけようとするけれど、彼はおかまいなしに進んで行った。案の定、近くを通るとオークが彼を追い始めたので、わたしはオークにウィンドストライクを放った。彼を追いかけていたオークは矛先をわたしに変え、わたしめがけて突進してくる。オークの体力はほとんど削った状態だったので、もう一度ウィンドストライクを放って倒すことができた。なるほど。名前がうっすらと青い。これなら、話せる島にいるオーク隊長と同じぐらいか。

「こっちこっち」

彼はどんどん先に進む。

「待ってよ〜」

彼・・・と言うか、ダークエルフって種族は足が速いのだろうか。どんどん離されてゆく。気を利かせて立ち止まってはくれるけど、追いついたか?と思うとまた先へ行ってしまう。はぁはぁ。

このあたりは、山岳地帯と行っても特に険しくはなく、草原のように背の低い草が生えている。なだらかな起伏のある丘、と言った感じだろうか。ずっと向こうには背の高い山も見えてはいるが、そこまで行くのは大変そうだ。

草原にはぽつりぽつりと、見たことのない巨大なキノコが生えていた。いや、あれはキノコじゃなくて、怪物!?

キノコ

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「これこれ」

「変なのー、何、これ?」

グリーンファングス。そのキノコのような怪物の名前だ。

「これがおいしいんだよ」

「えええ!食べるの?、これ!」

「いや、そうじゃなくて・・・」

あきれた風にハックスは説明してくれた。なるほど。ダークエルフの村に、このキノコ怪物を倒すと手に入る胞子袋を集めてほしいってヒトが居るらしい。そのヒトの依頼を受ければ、いくらかの謝礼をもらえるそうだ。もちろん、まだ村に立ち寄っていないわたしはその話は知らない。彼は何度もその依頼をこなしてアデナを溜めたのだとか。

キノコ以外にもコウモリが飛んでいたので、彼はそれも叩いてまわる。そう、剣で切りつけているのだ。どうやら、彼は剣士さんらしい。同じヒューマンであれば、話せる島でいろんなヒトに会えたので、体格や装備品を見ればだいたいどんな職か見当がつくようになっていた。けれど他種族の、しかも滅多に見かけないダークエルフともなると、さっぱり。

それで、ふと話せる島の剣士、友達のアミノ式を思い出した。彼を例に考えてみると、ヒューマンの剣士は「ワイルド」と言うか、大ざっぱな感じで、力で押し込んでしまうようなタイプ。ダークエルフの剣士、ハックスは力押しと言うよりは鋭角的な動きだ。アミノ式の場合、切る、って言うよりも叩く、もしくは殴る、アミノ式風味なら、「どつく」・・・って言ったほうが的確な感じがする。けどハックスの場合、本当に切ってる感じがする。

「お、帰還スクロールだ」

何匹目かのグリーンファングスを倒すと、ぼとっと巻物を落とした。それが帰還スクロールだった。

「これも結構、落としてくれるから、それもあっておいしいんだよね」

帰還スクロールって、何? と聞くのが少々、恥ずかしい。おいしいって事は、役に立つか高く売れるか。名前からして、なんとなく役立ちそうなものっぽい気はするけれど。

斜面を西の方へと徐々に下って行くと、森へと戻る形になった。霧の立ち込める森だ。ただし、街道からは南に少し外れた場所。わたしが見た光景とは少し異なる。より陰湿な雰囲気が高まったような気配。それまで走り続けていたハックスもその手前で足を止めていた。それもそのはず。木々は腐ったような色で、木の枝から枝へと蔓がくねくねとはい回り、その蔓に泥のような苔がだらりと吊り下がっている。そんなどろどろとした木々の下には、これまたどろどろとしたゾンビや不気味な幽霊が闊歩していたのだ。

DEの沼

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「あれも結構うまいんだよね。幽霊は痛いだけだけど」

さすがにあれを食べるとは考えにくい。というか、食べろと言われても絶対、イヤ。お腹壊すだけじゃ済みそうにない。キノコ同様、何かの依頼があるのだろう。

よく見てみると、足元がぬかるんでおり、森の中には川とも池ともつかない緑色の水たまりが点在している。と言うより、どろどろの水たまりに浮き島が点在していると言った方が正しいか。ハックスが進むのにならい、気持ち悪いけど仕方がないのでわたしも水たまりに足を踏み入れる。池ほどの深さはないらしい。沼、だな、これは。

ハックスはゾンビに攻撃をしかけた。わたしもそのゾンビに集中してウィンドウストライクを詠唱する。見ると、名前は緑色。わたしより少しだけ格が低いってことか。そこに二人掛かりなので、難無く倒すことができた。しかしすぐ近くにいた幽霊がハックスの背後に近づく。こちらは白。少々手ごわいながらも、倒すことはできたが・・・・

「確かに、一人だったらちょっと危ないわね」

「ゾンビの皮も集めるといいんだよ」

ゾンビの皮・・・あんまり気持ちのいいものではないんだけど、アデナになるなら仕事と割切って集めてみるのもいいか。

「村で依頼受けてからね」

はいはい。どのみち一度村に立ち寄る必要はありそうだね。

「こいつも時々、武器を落としてくれるし。すでに3本ほど拾った」

へー。そいつはお買い得・・・じゃなくて、倒し特。そういえば、話せる島では装備品・・・グローブやホースなどは拾ったことあるけど、武器って拾ったことないなぁ。ダークエルフの村に寄って依頼を受けて、また来なくちゃ。

「よし、そろった」

何匹かゾンビを倒すと、ハックスがそう言った。

「へ?何が?」

「皮。10枚集まった」

「ほーほー」

「んじゃ、戻ろうか」

はーい。っていうか、集めてたんかい。わたしを案内してくれるっていうより、普通に狩りしてただけじゃないのか? と、突っ込むのは失礼かと、胸にしまっておくとして・・・・。沼から一度街道へと出て、そこから北東へと走る。ダークエルフの村へ向けて。

最初にハックスと出会った森を抜けた先、巨大な岩山が現れた。この岩山を越すのか?と思ったら、道は下り坂になっていて、その先は・・・洞窟、いや、トンネルだろうか? 岩山にくりぬかれた、さほど大きくはない穴へと入って行くことになった。穴の入り口の両脇には警備兵だろうか?武器を携え、不気味な鎧を着たダークエルフが立っていた。わたしたちは一瞥されただけで、特に咎められるようなこともなく、穴の中へと入ることができた。

穴は薄暗いながらも各所に明かりが設置されていて、歩くぐらいなら問題はなかった。しかし、左へ右へ、曲がりくねった坂道のため、見通しがなく、とても歩きづらい。いくつかカーブを曲がるとそこは・・・・・

「?!」

洞窟の中に突如広大な空間が現れた。てっきりこの岩山を通り抜けるトンネルだと思っていたら、岩山の地下そのものがダークエルフの村だったのだ。いろんな意味で度肝を抜かれた。さらに驚いたのは、村の真ん中・・・話せる島なら小さな塔のある場所に、塔ならぬどでかい「手」がそびえ立っていたのだ。

手!?

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「うわーーー・・・・」

何から何まで驚くことばかりだ。ごていねいに、そびえ立つ「手」は稲光を放ってビリビリと空気を震わせている。なんともはや。

「すごいとこだね」

「ん?そう?」

ここで生まれ育った彼にとっては、これが当たり前なのか。そういえば、わたしが生まれた話せる島も、生まれたてのころは初めて見るものばかりで驚きの連続だった。今や馴染み深い故郷であり、当たり前だと感じている。彼が話せる島へ行ったらやはり驚くのだろうか? なんとなく、衝撃の度合いはかなり小さいような気がするが。

「えーと、こっち来て」

村の中を案内してくれるのだろうか。彼は中心の手の像を逸れて周囲にある建物のひとつに入った。何かの商店のようだが。

「ここでキノコの依頼が受けれるよ」

なるほど。

「それからこっち」

ちょ、ちょっとまてー。

あわてて店員と話をして、依頼を受ける。店員の方はいろんなひとにその依頼をしているらしく、てきぱきと概要だけを教えてくれた。もちろん、店員も皆ダークエルフだ。あわただしくあいさつをして、ハックスを追う。

手の像を挟んで反対側の建物に入って行った。足が早い上に行動も早い早い。

「こっちがゾンビね」

ハックスから概要を聞いているので、そのことを店員に伝えてわたしも仕事をさせてもらうことにした。

「じゃ、行こうか」

見学は? 観光は? てか、休憩は?

元来た道・・・洞窟へと戻り、曲がりくねった坂を上る。

普通、洞窟とか、薄暗い場所から外に出れば、まぶしくて目がくらんだりするんだけど、ここは外も岩山の影になってるし、森のせいで薄暗く、違和感はない。山岳地帯まで進んでようやく陽の光りを感じた。

めまいを感じた。

ハックスと出会ってウキウキしてたのですっかり忘れていたけれど、話せる島からここまでの道程の疲れがどっと出て、へにゃへにゃ、っとその場に崩れ落ちてしまった。気付かず、走って行くハックス。もはや彼を追う元気もない。

「ちょっとー」

「ん?どうした? ・・・って、どこ行った?」

「もーだめ。疲れた」

「む・・・」

「今日はもう、寝る〜」

「そーか。しょうがないな。んじゃ、そゆことで」

「じゃーね、おやすみ」

深い眠りへと、沈没。ぶくぶくぶく。

・・・・・

夢を見た。

雪が積もっていた。

ここはどこだろう?

いつもより、世界がなんとなく大きく感じられる。でも、ここはわたしの知る世界と似て非なるところだった。

坂があった。雪にうずもれた木が、川面に映っていた。

わたしの姿は、波に揺らめいて確認できなかったけど、髪色はわたし自身のものだ。でも、なんとなく髪形が違う?

夢・・・

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じっと眼をこらそうとすると、余計に像はぼんやりとぼやけてゆく。わたしはまた、深い眠りへと誘われた。

・・・・・・

わたしはまだこの世界について詳しく学びきれていない。

ヒューマンについては、自分自身がヒューマンってこともあるので、それなりの歴史について教えられた。大きく関連する形で、オークとエルフについて教わりはしたけれど、ダークエルフやドワーフについては全くと言っていいほど何も知らない。ハックスをはじめ、この国を訪れて見た感じでは、ただ肌の色の異なるエルフではないことは確かだと思える。オークに関しても、エルフと戦った、とだけしか知らない。どんな種族なのか、わたしにはまだ判らない。

エルフとダークエルフ。

エルフに関しても、「ヒューマンに魔法を教え」「オークと戦い」「ヒューマンに裏切られた」「長命な森のひと」としか教わっていない。彼らについても実際には何も知らないのも同然である。

彼らが何を思い、何を信じ、何を目指しているのか。

それよりも、その昔、激しく交戦したと言うオークとエルフ、それにヒューマンが、現代では仲良く・・・かどうかはわからないまでも、実質、戦争状態にあるわけではない。長い歴史の中でその関係は移り変わっているのだろう。

寝ぼけた頭で、なんとはなく、そんな事を考えてみたけれど、もちろん答えが見つかる訳もない。もしかしたら、それらを知ることがわたしに与えられた課題なのかもしれない。

・・・・・・・

眠りから覚め、鋭気を養い、再度世界へと戻ったわたし。ハックスは見当たらなかった。ひとりぼっち。

まーいーか。アミノ式や他の友達とも、そうしょっちゅう一緒、って訳でもなく、むしろ一人で過ごすことの方が多いぐらいだ。昨日のハックスとの狩りで、近くの地理は大体把握できたし。

とりあえず、山岳地帯へと行ってみることにした。

オークたちを相手に軽くウォーミングアップをして、草原へと入り、キノコを探す。

いたいた。ついでに、見知らぬダークエルフさんもいた。数人が、キノコと戦っている。なるほど、「おいしい」ので、人気があるってことか。そりゃそうだよね。昨日はたまたま誰もいなかっただけか。

人目を避け、邪魔にならないようにと奥へ進む。誰もいない地点を見つけられたので、そこでキノコと戦う。キノコはウィンドウストライク2発で倒せる。近寄っても襲ってはこなかったが、ウィンドウストライクの射程から攻撃すると、ぴょんぴょん跳びはねながらこちらに向かってくる。植物らしく(?)足はないので、茎・・・てゆーか、胴体?でもってジャンプして移動するらしい。ユーモラスではあるけれど、手らしき突起で鋭いパンチを繰り出してくる。もっとも、名前が薄い青なので、大した怖さはないのだけれど。

キノコ

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ハックスに教えてもらった名前の色で察知する方法は、非常に便利だ。これで、見知らぬ土地で見知らぬ怪物を見ても、恐るべき存在なのかどうかという判断の指標となるだろう。

キノコを倒すと、その亡骸から胞子袋が採れた。なるほど、この胞子で増殖するってことか。これを集めればいい訳ね。どんどんいきましょー。

次々に倒して行くと、すぐにいなくなってしまう。そこで、近くにいるコウモリも攻撃してみる。こちらも、薄い青。空を飛んでいるわりにはその飛行速度は速くはないこともあって楽勝。コウモリを相手にしていると、キノコが生えてくる(?)ので、次はそっち。てな具合でキノコとコウモリを交互に倒していく。キノコの胞子袋が頼まれていた数にそろった。一度村に戻ってもよかったんだけど、そのまま、ゾンビの居る沼に向かうことにした。

こちらにも人・・・ダークエルフが居るみたいだけど、そんなに多くはない。あまり中に入り込むと、幽霊に襲われそうなので、手近なところでゾンビ退治しますか。

ゾンビは、名前が緑色だけど、ウィンドウストライク2発でも倒し切れない。足が遅く、追いつかれはしないものの、魔法を使ってくるので、遠距離でも魔法を食らうと痛い。ウィンドウストライク3発と自己へのヒールを使うと、マナのが激しく消耗する。うっかり幽霊に見つかってしまい、応戦したりしていると、すぐにマナが尽きてしまった。時々、しゃがんで体を休める必要がある。

さらに、キノコは倒せばほぼ確実に胞子袋を取り出せたけど、ゾンビの皮は、必ず引っぺがせる訳ではなく、時々失敗する。と言うか、成功する方が少ない。しまった、これはちょっと大変かもしれない。ふと気付くと、夢中でゾンビを追って沼の中にかなり入り込んでしまったようだ。仕方がないので、沼の中の島になった土の部分にしゃがみこんでマナの回復を待つ。

ぼーっとすわって居ると、視線はついつい、動くものを追いかけてしまう。わたしは、視界に入ったダークエルフさんを何げなく見ていた。そのダークエルフさんは女性で、おそらくは剣士だろう。ハックスと同じように剣で戦っていて、魔法は全く使っていないようだ。

しかし、剣士さんが頑丈で、多少反撃を受けても少々のことでは倒れない、と解ってはいても、あんなに殴られて大丈夫なのかしらん?と、いつも思ってしまう。メイジである自分があんなに殴られでもしたら、と考えるとゾっとする。基本的にわたしたちメイジは遠距離から魔法で相手にダメージを与えるので、接近戦は苦手だ。防御力が無いに等しいので、殴られると、痛いだけでは済まないこともある。魔法で倒し切れない時で、あとほんのわずかに残った相手の体力を削るために殴る程度だ。

ぼんやり、そんなことを考えていたら、そのエルフさんがこちらに近付いて来て、わたしの目の前に立った。

な、なんだろう?何か用だろうか?

そのダークエルフさんはぼそっと言った。

「hp」

え? なに? hp、HP。体力のこと。省略してそう言う場合があるのは知ってるけど、それが、何か?

「何か御用ですか?」

「hp」

体力を回復してほしい、ってことかしら? でも、どうしてちゃんと話さないんだろう? ハックスとの会話だけでなく、村や街道で他の種族でも同じ言語を使っているのは知ってるのに。このひとはただしゃべるのが苦手なのだろうか?

しょうがないなぁ・・わたしは立ち上がり、体力回復の魔法を彼女にかけてあげることにした。念のため、三回連続で唱えておいた。

「thx」

彼女はそう言うと踵を返し、また沼を走り回って戦いはじめた。

はて・・・・・?

大陸にはまだまだ、わたしの知らないことがいっぱいなのだと痛感した。いろんなヒトがいるんだろうなぁ。話せる島では、ミスをして、大量の怪物に追い回されて「たすけて〜」と悲鳴をあげるヒトが結構多く、みんな助けたり助けられたり、てこともあるけれど。今のダークエルフさんのように、「ヒールをかけてくれ」と、厚かましく言ってくるヒトはいない。もしかしたら、たまたま出会っていなかっただけで、そういうひともいるのかもしれないのね。さすがは本土、と妙な感心をしてみたりしつつ。

キノコ

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さて、自分のマナと体力も回復したし、出動しますか。

補助魔法をかけ、幽霊を避けつつ、近くに居るゾンビを攻撃する。何匹か倒し、ひと息をついて振り返ると・・・

「☆○△×★!!」

あー、びっくりした。さっきのダークエルフの女性剣士さんが、ぬぼーっと立って居たのだ。この暗がりでダークエルフさんは地味に怖いです、はい。素で驚いちゃいました。

「hp」

またですか・・・・。

しょうがないなぁ。自分自身のマナも厳しいのだけど、断って何かされるのも嫌だし、ここは素直に。回復魔法をかけ、そそくさとその場を立ち去るわたし。近くに居るとまた頼まれそうだったので、ちょっと離れた場所まで移動しよう。幽霊と、他の人も避けつつ、沼をうろうろしていると、ずいぶんと奥まで来てしまったようだ。でも、仕方ないので、そこでしばらく休み休みゾンビと戦った。

ようやく、ゾンビの皮を必要数揃えることができたので、村に戻ろう。しかし、ここから村に戻るには沼地を歩き回らなくてはならない。幽霊につかまると大変だし、気分的にもう、疲れた。ここで休んで行くというのもひとつの案ではあったのだけど、あることを思い出した。

カバンの中をごそごそと漁ると、それはすぐに見つかった。。

帰還スクロール。

そう、昨日、ハックスと一緒に、それから、さっきもキノコを倒した時にまた1個拾ったのだ。名前からして、そういうものなのではないか、と思って、その巻物を広げて内容を読んでみた。いや、これは「詠む」んだな。

ズバリ、正解。

巻物に書かれた呪文を詠んでいくと、わたしの足元に魔方陣が輝き出した。長い呪文をひたすら詠み続ける。そして、その呪文を詠み終えた時、まばゆい光りに包まれたかと思うと、視界が暗転した。ちょうど、「最寄りの村へ」と飛ばされる時と同じ感覚。目を開けても薄暗い場所だったけれど、すぐにダークエルフの村だとわかった。なるほど、最寄りの村へと帰還することができる巻物なのか。これは便利、便利。

えっと、ハックスに教えてもらったお店は・・・ありゃ? どこだっけ。着いて歩くのが精一杯で場所まで覚えてないや。話せる島の村も最初そうだったけど、中央の広場から四方に似たような建物があるので、方角を把握していないとどこに何があるのかさっぱりだ。まあ、そんなに広くはないので、ぐるっと一回りすればすぐ見つかるだろう。

とりあえず手の生えた広場のまわりをぐるりと回ってみた。まず、ゾンビの皮を頼まれていたお店。皮と引き換えにいくらかのアデナを受け取った。そのアデナで何か買い物を、と思ったりもしたけれど、欲しいものは高すぎて買えないし、余分なものを買う余裕もない。結局、品揃えが話せる島の村とさほどかわらない、ということを確認しただけで店を後にした。

次にキノコの胞子袋。こちらもまったく同じ。もちろん、報酬と言っても大それた額ではない。はぁ、いつになったら武器とか服とか買えるようになるのかなぁ。

「胞子袋、もっと取って来てもらえます?」

お店のヒトにそう頼まれた。どうしようか? 一瞬考えたけれども、とりあえず「ちょっと用があるので、また今度・・・」とお茶を濁して退散することにした。胞子袋を袋から取り出して渡すとき、袋の中のあるものを見て、話せる島へ戻ろう、と思ったからだ。

オークのアミュレットにウルフの牙。

そういえば、話せる島で警備隊長にオークとウェアウルフの退治を頼まれてたっけ。倒した証拠に死体から剥ぎ取った怪物たちのアクセサリー。袋の底にじゃらじゃらと溜まってました。島でもゴーレム退治やエルフの遺跡へ行ってたこともあって、オーク達の相手はしばらくしていなかったので増えてはいないのだけど。これも精算しないといけないか。それにこのダークエルフの国にわたしの居場所はない、と感じたのもひとつの理由だ。

話せる島同様、この村でもダークエルフだけではなく、他の種族のヒト達もちらほら見かける。そういう意味では、わたしがここに居ても不思議でもないし、違和感もないのだけれど。なにか落ち着かない。バチバチと火花を散らす巨大な手の像もそうだし、高いとは言え、天井があって陽の光りが差し込まないこの場所はなんとなく圧迫感が強い。それは村の中だけではなく、岩山や暗い森の雰囲気もわたしにはあまり馴染まないものだったのだろう。ふと島の滝の光景が脳裏をよぎる。美しい風景。流れる滝。わたしの故郷。話せる島。

ホームシック。

かな?

思い立ったら行動するのは、もはやわたしの能力(スキル)の一部らしい。わたしは村の外へと向かう坂を登り初めていた。

ハックスも現れないし・・・・と言うか、そもそも、彼に会うことが目的だった訳だし、それはもう果たした。もっと一緒に居たい、って思いも、無いわけではないけれど。どうしようかな?

考えながら地上に出ると、何か景色が違うことに違和感を感じた。それでも立ち止まらずに進むと、何かの建物が見えて来た。あれ?何か変。地図を広げて見ると、逆方向の出口を出たらしいことがわかった。その先にある建物は・・・・地図によると、「シーレンの神殿」だって。ふむ。昨日、ハックスは案内してくれなかったな。

せっかくなので、旅立つ前に最後にその建物でも見学して帰ろう。村の近くだし、周りには話せる島にも居たケルティルやネフィテルの亜種らしき似た生物がうろうろしている。名前も青。そんなに怖いところでもないだろう、と判断して近づいてみた。

入り口に誰か立っていたので、入り口から中を覗き込みながら訊ねてみた。

「こんにちは。あのう、ここは?」

「こんにちは。ここは神聖なるシーレンの神殿。私達ダークエルフの生まれる場所・・・」

「入ってもよろしいですか?」

「どうぞご自由に。

かつての種族の隔絶は、現在では一応、取り払われています。たとえそれが上辺だけの見せかけだったとしても。

あなたが例えエルフであろうとも、私は入るなとは申しません」

「は、はあ・・」

聞いた話だけど、エルフそれにダークエルフは非常に長命だそうな。歴史的な過去から今に至るまで生き続けているヒト達も居るとか。このひともそんな一人なんだろうか? しかしわざわざそれを訊ねるのも気が引けたので、「どうも」と会釈だけして中へと入って行った。

急な勾配の坂道を下るまでもなく、入り口からこれまた巨大な像が立っているのが見えた。神殿の名前からして、これがシーレン・・・様?なのかな。なんかダークエルフと言う感じではなく、魚のような下半身に手がいっぱい。村の手といい、このひとたちは巨像崇拝でおまけに手がなにかのポイントなのか。そういえば、島にはこんな像はほとんどなかったっけな。

シーレンさま

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坂を下ると、部屋の中には数人のダークエルフが立っていた。

「なんだ貴様は」

話しかけようとすると、あからさまに嫌な顔をされた。

「えと、あの、ちょっと見学を・・・」

「汚らわしきヒューマンの子よ。ここはシーレン様の神聖なる神殿。そなたの来るべきところではない。早々に立ち去るがよい」

って、入り口にいたひとはいいって言ったのにー。ぷんぷん。

でも、特に武器で威嚇される訳でもなく、数人いるダークエルフさんに取り囲まれる訳でもなかったので、おとなしくしていれば危害を加えられることもないだろう。見るものも大して無いようだし、ここは穏便に立ち去りましょうか。

「お邪魔しました〜〜」

へこへこ、っとお辞儀をして坂道を登る。えっほ、えっほ。入り口のダークエルフさんにもぺこっと会釈だけして、そそくさと退散。そのまま真っすぐ進めばまたダークエルフの村へと洞窟を進むことになるんだけど、ちょいと地図を広げて確認。

どうやら、村のある大きな岩山は北側に迂回して進めそうだ。まわれ右してそっちに進んでみることにした。意外にも海が近かったので、海岸へと足を伸ばしてみた。話せる島のまわりの海や、グルーディン村の海はなんとなく暖かな感じがしたけど、ここは・・・・

「寒っ!」

北の海

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気温が極端に低いと言う訳でもないんだけど、どんよりとした雲、凍りついたような静かな波。この海は冷たい。なんとなく、そう感じた。あまり、眺めていてもおもしろくなかったので、振り向いて岩山を見上げたあと、西へと走りだした。

さあ、帰ろう。暖かい、わが故郷へ!

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