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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第九話・遠い故郷』

ダークエルフの国に少しだけ滞在し、わたしはまた話せる島に戻るための旅に出た。

ハックスに教えてもらった「名前の色」のおかげで注意するべきポイントを知ることが出来るようになったので、ずいぶんと楽になるだろう。街道の近くにいたオークやキノコ、コウモリと言った来る時には恐ろしかった相手も、帰りには通りすがりに倒してみたりと、余裕である。それでも、道から大きく外れると危険かもしれない。突然真っ赤な強敵と鉢合わせなんかしたら・・・・・できる限り街道を走ろう。分岐点で地図を広げ、進むべき方向を確かめる。ダークエルフの国から離れると、東西に道が別れている。西はグルーディン港の村。東はグルーディオ城の村へと続く。帰りを急ぐのであれば西。観光してゆくのなら東だ。さてどうしよう。

行きはどたばたしていて、村をゆっくり観光することができなかった。少々遠回りでも、観光していく価値はあるだろう。ちょっとだけ逡巡した後、わたしは三差路を左へ曲がり、グルーディオ城の村を目指すことにした。

走ることしばし。わたしは大きな橋の前で足止めされることになった。

「この橋、わたれるの?」

誰にともなく、わたしはつぶやいた。

わたれるかな?

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橋脚はしっかりした頑丈な作りらしいのだけれど、橋そのものは全体が網状のもので、ヒトが乗って大丈夫なものか判断が付き兼ねた。網の目を通して下の川面が見えている。落ちてもさほど問題はないんだけど、ずぼっ、とかって落っこちるのもカッコ悪いし恥ずかしいじゃない。罠かもしれない。ここはひとつ慎重に。

橋のたもとに衛兵らしきエルフが立っていたので聞いてみたのだけれど、この道を進めばグルーディオだとか、東はエルフ村だとかは教えてくれたけど、橋が大丈夫かどうかは教えてくれなかった。でもまあ、「この道を進めば」ってことは、「橋を渡れば」ってことなのだろうし、演繹的に判断すれば「この橋は渡れる」ってことだろう。

見ると、橋の両端、それに中央にはしっかりとしていそうな「板」がはめられている。網の上を歩くのは少々怖いので、その端の板のところを歩いて渡ることにした。恐る恐る片足をかけ、どんどん、と踏みしめてみる。うん、大丈夫そうだ。二、三歩ゆっくりと進んでからだーっと走った。ほっ。無事に渡れた。

そのまま通り過ぎてもよかったのだけれど、渡ったところで振り返り、わたしはもう一度橋へと戻った。

つんつん。網の部分をつついてみると、見た目と異なり、びよよーん、とへこんだりはしなかった。同じように片足を乗せて踏んで見ても弾性がある感じはせず、思い切って両足を乗せてみると、何のことは無い、普通に立てた。と言うか、普通に歩ける。なーんだ。悩むことも何もなかったのか。

わたしはしばし橋の上であっちにこっちに、歩き回ってみた。ここで落ちたら、それはそれで面白い土産話にはなるだろうけど。

「・・・・・行こう」

こんなところで遊んでいる場合ではない。先を急ごう。

道中、周囲を警戒しつつ街道をひた走っていると、状況が変わってきたことがわかった。どこも道の両側は少し起伏していて、見通しが悪いのだけれど、視界に入る範囲で見える怪物たちの名前は真っ赤かもしくは薄い赤。

「うわー、やばそ〜」

色の件を知らなかったとしても「未知への恐怖」だが、それがわかったからと言って恐怖が無くなる訳ではない。むしろ現実味の有る恐怖感は、より強くわたしの心を圧迫する。相手がわたしよりも強い、ということは、戦ったら確実にやられることを意味するからだ。

最寄りの村へ。

できれば唱えたくない呪文。

街道の周囲の様子は、進むほどに変化に富んでいた。さすがは本土。橋を越えたあたりはまだ平野と言った感じだったが、少し進むと高い崖が両側に迫ってきた。谷間で逃げ場がない状態ではあるのだけれど、幸いなことにこのあたりには怪物たちは居ないようだ。谷間を抜けると今度は起伏の激しい丘陵地帯へと出た。右へ左へ、上へ下へとめまぐるしく変わる。街道はそこを縫うように曲がりくねりつつも南へと続いた。

左右に見える怪物たちは黄色、もしくは白。戦うことも不可能ではないかもしれないけれど、ここは自重しよう。ここも、道の方にまで出てきている怪物はいないようなので、さっさと急ごう。地図で見れば、グルーディオ城の村はもうすぐだ。

いや、あれがグルーディオ城か?

ふ、と地図上の現在地と建物の位置関係を確認すると、ちょうど右手にグルーディオ城がある。街道の右手を川が流れているらしいが、その向こう岸の丘に立派な建物が見える。と、すると、あそこに見える建物がグルーディオの城か・・・・そして、その南手城下にはグルーディオ城の村がある。もうすぐだ。

はやる気持ちを押さえて、右へ左へうねる街道のできるだけ真ん中を走ってゆく。そうして突き当たりを右にまがると小さな橋・・・・この橋は石造りの小さなものだ・・・があり、そこを渡れば目の前がグルーディオ城の村だ。

「と〜〜ちゃ〜〜〜く」

だん、っと、村の門をくぐったところに着地。無事にたどり着けました、と。

あいかわらず、村の衛兵さん達はわたしを含め、大勢のヒト達にも我関せずって風で、何も言わず通してくれた。もしかしたら、ひとりひとりちゃんとチェックしてて、不審な者は呼び止められたりするんだろうか。ぱっと見た感じ、誰も何もとがめられることは無いようだが。

出掛けに立ち寄った(最寄った)時にも思ったことだけど・・・・

「すごいヒトだなぁ・・・」

走るヒト、座るヒト、物を売るヒト、立ち止まっておしゃべりしてるヒトたち。エトセトラ、エトセトラ。まさに種族のルツボ。

先ずは商店を見てまわろう。その後、広場にいっぱいある露店を見てまわるのもいいか。広場の周囲の建物を見て回ると、武器と防具のお店と、魔法関係のお店とがあった。武器と防具の店頭に並んでいる商品は、グルーディン港の村で見かけたものに加え、より高価なものもあった。もちろん、今のわたしに買えるはずもないので、ウィンドウショッピングするしか無いのだけど。

一方、魔法関係のお店はさほど変わりなさそうな品揃え。もっとも、魔法書はいっぱいありすぎて、何があって何が無いのかなんてわからないんだけど。それに、話せる島でもどこでも、魔法書以外の道具とかを買った事もなかったし。ざっと見た感じ、同じように見えた。そう、先日拾った帰還スクロールとか他にもいろいろ便利な道具もあるんだろうけど、わざわざアデナを出して買う余裕なんてないし。帰還スクロールにしても、時間はかかるけど歩いて帰れば済む話だし、使わないに越したことはないだろう。

またいずれ、要り用があったらここに立ち寄る日も来るだろうけど、今はいいや。

広場の露店も同じようなものだった。わたしにとっては見てまわるだけで、実際に利用出来そうなものはない。武器や防具は高くて買える訳ないし、動物の皮とか、買う意味がないし・・・なんでこんなもの売ってるんだろう? だれか欲しがる人いるのかしら? まあ、需要があるから供給もあるんだろうね。どういう理由なのまではさっぱりだけど。

結局、ここもまだわたしには馴染めそうにない。だいたい、ひとごみは苦手だ。話せる島でもヒトがいっぱいだと思ってたのに。あまり長居をしてもしようがなさそうなので、早々に旅立つことにした。

ちょっと方角がわからなくなって、出口を探してうろうろした後、やっと正しい出口をみつけて外に出た。最初に来た時に通った道だ。ここからグルーディンの港まで戻ろう。村を出て軽快に走りだしたのはよかったのだけど、しばらく行くと、何物かが後ろから攻撃してきた。何が起きたのかわからない内に、わたしは道の真ん中で倒れてしまうことになった。

動かない身体、でも視線は動かせる。見ると、話せる島に居るウェアウルフに似た人狼型の怪物が去って行くのが見えた。レスウェアウルフ。あれにやられたのか・・・・ついでに見えたのは、わたし自身の持っていた盾。手から離れ、近くに落っことしていた。あーあ・・・・

落とした盾

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選択肢はただひとつ。最寄りの村へ。トホホ。

わたしは今出発したばかりのグルーディオ城の村へと連れ戻された。しかし、嘆いている暇はない。今回は盾を落としてしまっている。急いで拾いに戻らなければ!!

ひとごみをかきわけ、出口に向かうも、また間違えた。村の中ってどうしてこう、方角が分かりにくいのかしら。あせると余計に訳が解らなくなる。泣きたくなるのを必死でこらえて出口を探す。そしてやっと元の街道に戻って一目散に倒れた場所へと向かう。しかし、その道の反対側からは次々とヒトが走って来る。つまり、わたしの落とした盾は・・・・うう、もう誰かに拾われちゃってるだろうなぁ・・・・・

あきらめ半分。でも残ってる期待半分。とにかく急ごう。

距離はそんなになかったらしい。

「ああった〜〜〜〜〜」

心の中で叫ぶと同時に、自分の盾に飛びついた。よかった〜〜〜。

一息ついたところで、改めて帰路へ。

考えて見ると、わたしの年齢、そしてこの装備は、ここらへんに住むヒト達とは格が違いすぎる。すなわち、彼らにとっては、わたしの装備などは「おもちゃ」に過ぎず、興味の対象にもならない、と言うことなのだろうか。だからこそ、拾われずに済んだ、と。わざわざ戻って、すれ違ったヒトを捜し出して、そのことを尋ねるのも失礼だし、第一、名前すら覚えていない。一人はドワーフの男性だったけど、それだけの手掛かりではあの大勢の中から見つけだすのは不可能だろう。

いけないいけない。また考え事をしてたら、襲われちゃう。周囲警戒。注意一秒、最寄り一発?

悲嘆の廃墟の入り口まではすぐだった。今回はここには用はない。と言うか、もともと用はなかったんだけど。結果的にいい経験をした、ってことにしておきましょう。そこを過ぎると捨てられた露営地。来る時には気付いてなかったけど、こちらから走って来ると道が二股に別れていた。一瞬迷ったけど、地図で確認すると左が帰り道だ。右へ進むと捨てられた露営地へとまっしぐら。あぶないあぶない。

このあたりもヒトが多く、道の南側の森では戦いの音が絶え間無く聞こえて来るし、右手にある露営地への入り口はいろんなヒトが出入りしたり待機したりしている。もちろん、わたしの前から、後ろからもヒトは大勢行き来している。

おかげで何のトラブルもなく抜けることができた。悲鳴とか聞こえたような気もするけど、聞かなかったことにしましょう。丁度、露営地を抜けたあたりでまた分岐があったけど、今度は右だ。左はまた別の場所へと続いているらしい。そちらに行くのは、また今度・・・・いつになるのかはまだ全然わからないけど、当分先のことでしょう。

そこからグルーディン港の村まではさほど遠くはなかった。わたしの遅い足では随分とかかったけど。なんでこんなに足が遅いんだろう・・・荷物が重いからなのか、まだ若くて鍛え方が足りないからなのか。追い抜かれるとちょっと悔しい。見ていると、エルフやダークエルフは特別に足が速いみたいだ。ハックスと一緒に走っていたときも、彼の方がどんどん先へ行ってしまい、時々待ってもらわないと追いつけなかった。彼とはそんなに年齢も離れてないはずなのに。

そんなこんなで、やっとこ、グルーディン。

ここも特に用はないんだけど、やっぱりなんとなくお店をまわって見たくなるのは女の子だからかな? 買えなくても、用がなくても、並んでる商品を見るだけでも楽しいよね?

実を言うと、全く買えない訳じゃない。今着ているデポーションよりも少しだけ性能のいい、マジックパワーの上か下かどちらかなら買えるお金は持ってるのだ。でもやっぱり、武器もほしいし、服は上下おそろいでなきゃ、ファッションとしてもいまいちかな、って思いもある。買う時は上下まとめてがいいよね。

そんな事を考えつつ、港の村をうろうろしていると・・・・お店のヒトにはにらまれたけど・・・・別な建物があることに気付いた。中に入ってみるとそこは倉庫だった。そう言えば、話せる島の村にも倉庫があって、ドワーフのおじいさんが管理していたっけ。荷物を預かってもらえるらしいんだけど、今のところ用はない。もちろん、この港の村の倉庫にも用はない。とりあえず、そういう場所がある、ってことだけは覚えておくとして、さて、帰りましょうか。

来た時と同じ。そして、前回と同じ。村の南の崩れた門から抜けて一路南へ。

港村

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えっとこ、えっとこ、走る。えーっと、どのあたりで海に出るんだっけか。以前通った時の記憶を呼び起こしてみる。しかし、その記憶が少々あやふや。はて、どこら辺だったか。確か、クマさんと目玉のお化けのいるあたり。この辺かな? 丁度、クマさんと目玉がいる。もちろん、近付く訳にはいかないので、遠巻きに。先ずは目玉を避けて通る。今度はクマさんだ。クマさんを避けようとして迂回しすぎると目玉にからまれそうなので、ギリギリのところを通ろうとしたら、クマさんに気付かれた。

やばいっ。

一目散に逃げる。逃げるけど、追いつかれる。

クマさん

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そうだ、目の前はすぐ海。海に飛び込んでしまえば、追って来ないだろう。熊って泳げたっけか? ええい、まあいい。海へと飛び込んだ。しかし。

「うそ〜〜〜〜っ!」

クマさんは海水もなんのその、同じように飛び込んでわたしを追いかけて来ていた。これはまずい。海の中では水圧のせいでなかなか前に進めない。なのに、クマさんは平気な様子で、陸上と同じようなスピードで追って来る。泳ぎ上手すぎ。つかまるのは時間の問題・・・いや、一瞬だった。わたしは逃げることもかなわず、海底に横たわることとなった。

教訓。海に逃げ込んじゃ、駄目ダメ。まあ、そのことが分っただけでもよしとするか。何事も経験。うんうん。

「最寄りの村へ」

振り出しに戻る。いや、始まりの場所、という意味ではない。グルーディン港の村だ。話せる島の村だったらラッキーだったけど。そうは甘くない。はぁ・・・・仕方ない、また走りますか。

さっきは双子半島のかなり北側で海に出ようとしたのだけれど、今度はもうちょっと南へ下り、半島の下側からアプローチしてみよう。先程の場所を通り過ぎ、さらに南へ。半島の北側はずっと切り立った崖になっていたけれど、ここら辺はもっと土地が低く、広い砂浜になっていた。さらにその砂浜には怖そうな怪物たちがうろついていた。

緑色の肌。とがった口。つるりとした頭。二本足で立ってはいるが、あれはどうみてもトカゲ。名前はランクリザードマン。鎧を着ているところを見るとそれなりの知性を持った生き物なのだろうか? 大きいのから小さいのまで、数種類いる。さらに、緑色の蜘蛛。トリムデンも居る。

「さて、どうしたもんかな?」

街道で、誰にともなく、つぶやく。それは臆病な自分を奮い立たせるためだったかもしれない。戻って無事に通れた実績のある北側から海へ出るか、ここからあのリザードマンの間を突っ切るか。考えながら、よく見渡してみると、通り抜けられそうな「間隙」をみつけた。あそこなら突破できるか?

怪物たちは、ただじっとしている訳ではなく、時折動いて自分の「立ち位置」を移動させる。常時動き回っている訳ではないが、全体的にはその位置関係を変化させ続けている。ぐずぐずしていると、その間隙がまた埋まってしまうかもしれない。いや、その流れで考えれば、もっと大きな間隙が生まれるのを待つのも得策かもしれない。

「さて、どうしたもんかな?」

わたしは、自分自身に答えるために問いかけた。そして、万が一に備えて補助魔法をかけて、言った。

「決まってるわよ」

頭の中に描いた突破ラインをなぞるように、砂浜を駆け抜ける。

1匹、2匹、3匹。よし、トリムデンもクリア。この中でヒトの動きに敏感に反応するのがわかっているのはトリムデン。ダークエルフ村に向かう時に襲われた覚えがある。こいつだけは確実に避けよう。

4匹、5匹・・・・次に並んだ6匹目と7匹目の間を越えることができれば、もうすぐそこは海だ。あせる気持ちを押さえながらも、慎重に、そして迅速に。

よしっ、抜けたっ! あとは海まで一直線!

「キシャーー!」

後方、左右でほぼ同時に、雄叫びが上がった。泣きたくなった。でも止まったら最後。ここで立ち止まる訳にはいかない。かと言って、海に逃げ込んでも意味はない。それはさっきのクマさんで実証済み。とにかく、真っすぐ、半島の突端を目指そう。

考えている間にも、リザードマンの足音はどんどんと近付いて来る。海はもう目の前。少しだけ右にそれて半島の海岸線に沿って走れば、あるいは・・・・波打ち際で進路を変えようとしたときだった。わたしは、後ろから2本の槍で串刺しにされていた。その槍を引き抜かれた時、わたしは悲鳴とともに波打ち際に沈んだ。と、同時に引き抜かれた槍に上着を引っ掛けられ、脱がされてしまった!うそーーん!いやーん!このスケベトカゲめっ!

泣きっ面に蜂ならぬ、泣きっ面に槍トカゲ。いや、正確には槍トカゲで泣きっ面か。それんなことはどうでもいいけど、幸いなのは、トカゲたちはわたしの服には興味を示さず、拾ったりはしなかったこと。グルーディオでレスウェアウルフにやられた時も盾は無事だったけど、恐ろしいのは怪物たちよりもむしろ人間たちの方か・・・

とほほ。なにはともあれ・・・今日、何度目?

「最寄りの村へ」

さて困った。上半身裸。このまま村をうろつき回るのも格好悪い。そう言えば、カバンの奥に最初にもらった「見習いのチューニック」が残っていたっけ? ごそごそ。あったあった。とりあえずはこれを着ておこう。しかし、今となってはこの服でも裸同然だよなぁ・・ううっ。

上着・・・デポーションチューニックを取りに戻ったとして、この状態でトカゲたちに太刀打ちできるかどうか。うまく行けば、目を盗んで取り戻せるかな? とりあえず、現場に戻ってみることにした。半島近くまで来て、考え直す。このまま浜辺の方へ向かうのは危険だ。さっきはなんとか波打ち際までたどり着けたけど、今回も無事に進めるかどうかは疑問。別のルートを探そう。

街道から海の方まで手堅く行けるコースを探して歩く。すると、半島の北側の一番くびれた場所が比較的安全に通れそうなことがわかった。そこからアプローチしてみよう。思えば、一番最初に通ったのはここだったかもしれない。するするっと海岸まで出ることができた。そこは「湾」と言った感じの入り江になっていて、そのまま半島の突端まで行けそうだ。怪物も人もおらず、何事もなければバカンスができそうなプライベートビーチだ。しかし、今はそんな悠長なことを考えている暇はない。

左手に崖を見上げながら、海岸線を歩く。突端に出ると、反対側の半島が見えたので、そこまでは海の中を進む。話せる島からここまでの距離を考えればなんでもない。怪物の気配もないけれど、周囲を警戒しつつ、南側の半島にたどり着いた。そこからさらに南側へと回ると。

「あった!」

双子半島の南半島の付け根付近。そこにわたしの上着が落とした時のままの姿で転がっていた。ついでに、わたしを倒したリザードマン2体もきっちりそばに居る。

とかげさん

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岩陰からそっとその光景を伺いながら思案する。

このまま突撃すれば元の木阿弥だろう。やられるのが落ち。どうにかリザードマンたちの隙を突いて服だけでも回収できればいいのだけれど。

と、その時、リザードマンたちは服から離れるように歩きだした。元の持ち場・・砂浜の方へと戻ろうとしているのだろうか。しめた、今だ! 服からずいぶんと離れてくれたことを確認して、わたしは岩場から躍り出て、落とした服へと突進した。

バシャバシャ。

波打ち際を走ると水音が鳴る。どうか気付かれませんように!祈るように、でも大急ぎで、もう少し、あとちょっと。ダッシュ&奪取だっ。

「うわっ、っとっとっと・・・」

もう服に手が届く、と、手を延ばして腰をかがめようとしたら、砂に足を取られてしまった。もつれそうになる足をどうにか制御し、倒れないように、踏ん張ろうとして、数歩、跳びはねるように前に進んでしまった。ぴょんぴょんぴょん。辛うじて踏みとどまり、態勢を立て直したその目の前には・・・・

「あっはは〜〜」

当然の事ながら、愛想笑いが通じる相手ではなかった。わたしは回れ右をして一目散に逃げ出した。もはや服どころの騒ぎではない。いや、と、言うよりも「これ以上、何も落とさないように・・・」そう祈るのがやっとだった。

願いは聞き届けられた。

おかげさまで、今回は何も落とさなくて済んだ。よかった、よかった。

「いや・・・まぁ、よくはないんだけどサ」

倒れたまま、愚痴っぽくつぶやく。聞いていたのはリザードマン二体。聞いていたかどうかは不明だけど。取り急ぎは・・・

「最寄りの村へ」

本日4度目の最寄りの村である。これは参った。デポーションチューニックをあきらめる手もある。残念だけど、デポーションチューニックならなんとか買うアデナもある。でも、あれは、ウィザードのお兄さんに借りているもの。無くしたから買って返します、って言うのもちょっと気が引ける。黙っているのはもっと気乗りしない。やっぱり、ちゃんと回収して、そのまま返したい。

ならば、どうやって取り戻そうか?

裸同然の今の状態ではまともに戦うことも不可能だ。特に、2体同時に相手をするのは無謀。1体づつならどうにかできるかもしれないけれど、それにしても防具は必要になるだろう。

とぼとぼと村を歩きながら、考えをまとめる。そして、足は一件のお店へと向けられていた。

「ん? どうした? 元気がないな。何かあったのかい?」

さすがに真っ暗な表情だったのだろう。おでこに黒い縞模様でも出ていたかもしれない。そんなわたしに、お店の人が声をかけてくれた。思い切ってこれまでの話をしてみることにした。

「実は・・・」

「そうかい、そりゃ御苦労だったねぇ。うちの防具でよかったら役に立ててくれや」

防具屋さんで経緯を説明したけれど、だからと言って、同情してまけてくれるほど世の中は甘くはなかった。気持ちはわかるけどねぇ、うちも商売だから。はい、はい、わかってますよ。

うーー。サイフと商品棚を見比べながらにらめっこ。選択肢は3つ。

1、デポーションチューニックを買う。

2、マジックパワーチューニックを買う。

3、何も買わない。

1なら、そのまま話せる島に戻ってまたアデナをためて、自分用の装備を買う資金にする。お兄さんには買った服を返そう。

2のマジックパワーチューニックは、次に自分で買おう、と思っていた服。現状ではホースまで手が回らないので、上だけになるけど。この服で、果たしてリザードマンに立ち向かう事が可能かどうか。

3・・・・・何も買わない、って訳にはいかないよなぁ、やっぱり・・・・

わたしは決断を迫られていた。

どうしたらいいかな? 相談できる友達がいない。もっとも、そんな友達がそばにいるのなら、一緒に行って回収を助けてもらえるだろうし、そもそもあんな風に無様な姿をさらすこともなかっただろう。独りがいかに危険か。いかに無力か。

いや。

いつも誰かに頼っていられる保証はどこにもない。自分がやらなきゃ。自分でやらなきゃ。

答え。2番、かな、やっぱり。本当は先に武器が欲しくて、我慢して貯めてたのに。まぁ、これも運命。仕方が無いとあきらめましょう。

でも現金なもので、新しい服を手に入れ、着てみたらなんかわくわく。よーし、やるぞー、って気になるもんだから、いい加減なもの。腹を決めたから、ってのもあるかもしれないけど。それじゃあ、まあ、行ってみましょうか。

道は覚えた。半島の北側の付け根・・・静かな入り江の浜から突端へ。そこから南側の半島の突端へ。ここまでは万事OK。岩場から覗いてみると、リザードマンたちはまだわたしのデポーションの近くをうろうろしていた。しかし、二体のリザードマンの間は最初にくらべて随分と開いている。しめしめ。左側の岸壁に沿ってそろそろと進み、片方のリザードマンにわざと気付かれるところまで近付く。思惑どおり、左側にいた一体がわたしに気付き、こちらにやってくる。反対側の一体は気付いていないようだ。

なるべく、遠くへ。突端の方へもどるようにして走り、岩場の陰に入ったところでウインドストライクを唱える。一撃をくらわすのと、一突きくらうのがほぼ同時。バックステップですぐさま後退。逃げつつバトルヒールで体力を回復し、振り向き様にまたウィンドストライク。これを数度繰り返すころには双子半島の間まで走っていたが、どうにか一体、倒すことができた。

とかげさんと裸で

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一度座って疲れた体と精神を癒し、また元の場所へと戻って同じ段取りでもう一体をやっつける。

そして・・・・

「やったぁ」

雄叫びにも元気がないかも。はぁ・・・・一体、わたしは何をしに来たのだろうか?

「・・・帰ろ」

生まれ故郷までの道程は、果てしなく遠いように思われた。海底の暗い雰囲気もまた気分を盛り下げてくれる。島の灯台の影が見えて来たころにはもう、泣きそうな気持ちだった。

その灯台の脇に上陸したわたしは、浜辺・・・この上なく安全なすばらしい、美しいとまでは言えないまでも素敵な、話せる島の浜辺・・・に、どっかと座り込んだ。

長かった旅がひとつ終わった。

でも、わたしの旅はまだまだ始まったばかり。

これからまた、どんな冒険が待っているのだろう?

これからまた、どんな出会いが待っているのだろう?

そしてわたしは深い眠りへと誘われて行った。

はぁはぁ

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