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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第十二話・クレリックへの道』

荒れ地で幾度となく戦闘を繰り返し、傷付き、倒れながらも、皆で協力し合って、どうにか目的の場所にたどり着くことが出来た。

arameさんがメイジからウィザードに転職するための試験。

地水火風の精霊の力を得る・・・というか、認めてもらうための旅。

今、arameさんは荒れ地の片隅でリザードマンと話をしている。わたしたちはそれを見守りながら、回復するために座って雑談をしていた。しかし次第に話題についていけなくなったわたしはぼーっとしてしまった。あまり皆と打ち解けようとしないハックスも同じようだ。

「あ、そうだ、ハックス〜」

交感魔法でハックスに声をかけてみた。ちょっと思いついたことがあったからだ。

「ん?何?」

「記念写真、撮ろう」

「何だそりゃ」

「いいから、いいから。ほら、立って立って」

「何だかなぁ・・・」

言いながらも言葉に従ってくれるハックス。ぱちっ。

記念写真

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

「何やってんの?」

気付いた業務課3号さんが声をかけてくる。

「なんでもないよー」

とか言ってると、arameさんの話も終わったようだ。次の場所へと向かおう。お次は絶望の廃墟。「土」、「水」、「風」、と来たので、残りは・・・火の精霊さんか。荒れ地から絶望の廃墟はすぐ近くだったが、火の精霊・・・サラマンダーから受けた試練は、えらい遠くのクモを倒して来いとのことだった.したがって皆でまた遠征。どちらかと言えばその工程の方が辛いものだった。しかし、そこは、それ、「独りじゃない」から。

荒れ地もそうだったけど、絶望の廃墟も初めて訪れる場所だった。いくら皆と一緒とは言え怖いものは怖い。それでも荒れ地ほどではなかったらしく、問題なく通過することはできた。

ただ、廃墟のとある場所でトロピは進軍を止め、迂回するように指示を出した。どうも「危ないヤツ」が近くにいたらしい。ちらりと見えた姿は廃墟やエルフの遺跡などにもいた幽霊と似たような姿で、たくさんの骸骨を従えていた。トロピいわく「からまれたら即全滅」だそうで。触らぬ神・・・じゃなくて触らぬ幽霊に祟り無し、と、やり過ごし、目的を達したわたしたちはグルーディン港の村へと帰還した。

いよいよarameさんの転職試験も最終段階だ。神殿に乗り込み、まずは入り口に居るお姉さんに報告。わたしは見せてもらうことができなかったが、arameさんは四大精霊から某かの品を受け取っていたらしい。それをお姉さんに渡して、違う何かと交換してもらったようだ。それを手に、大神官様の前へと出るarameさん。

arameさんの話を聞き終えたのか、大神官様は大きく頷くと、手にした杖をarameさんの肩へとそっとあてがい、なにやら呪文のようなものを唱えた。すると、arameさんが持っていた品が輝き出し、その輝きがarameさんを包み込んだ。そして爆発・・・arameさんは目映い光りの柱となったかと思うと、やがて光が薄れてきた。

てっきり、大変身したarameさんが現れるのかと思ったら、以前のままのarameさんだった。少なくとも見かけは全く変わっていない。マジックパワーローブにシーダー杖。

再度、大神官様と一言二言、言葉を交わしたarameさんはてとてととこちらに戻って来た。

「済んだ?」とトロピ。

コクンと首を縦に振って答えるarameさん。

「よしよし、おめでと〜〜」

トロピの言葉に釣られるように、皆、「おめでと〜〜」と祝いの言葉をかける。わたしも、そして無口なはずのハックスも。arameさん本人は照れくさそうに、でも照れ隠しなのか、拳を突き上げて「や〜〜!」と一声叫んだ。

「よしよし、早速、魔法覚えようか」

歓喜の声が静まったところでトロピが仕切る。ウィザードとしての新たな魔法だろう。

「魔法書持ってる?」「はい」「よしよし」

arameさんは同じ神殿の片隅にいる人に声をかけて魔法書を差し出す。そして輝く魔法書をその精神へと取り込んで行く。いくつかの魔法を覚えると、またこちらに戻って来た。

「よーーし、試し撃ちに行きましょー!」

本人よりも誰よりも、一番張り切っているトロピ。彼女に引っ張られるように一同は村の南口から出ると、すぐ近くの草原へとやってきた。そこにはリザードマン、それにクモなどが散在していた。

「いい、arameさん。ウィンドストライクと同じ要領で、新しい魔法、試してみて。あのクモで」

「・・・はい」

ちょっと緊張してるのだろうか? arameさんは少しぎこちなく前へ進むと、魔法を唱え始めた。それはトロピやみづほさんと同じ火炎の魔法だった。arameさんが詠唱を開始し、手を交差して頭上にかかげると、辺りの熱気が集約され点火する。そしてウィンドストライクと同じように最後の呪文と共に手を前方へと突き出すと、炎の固まりが飛翔する。

炎の魔法

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クモ目がけて放たれた炎は着弾とともに爆発し、炎上させる。しかしまだ威力が足りないせいか、一撃ではトドメを刺すことは出来ないようだ。怒り狂ったクモはarameさん目がけて突進してくる。

arameさんは続けて魔法を唱えようとするが・・・詠唱が長く、その間にクモがarameさんにたどり着き、その大きな鎌のような足を振り下ろす。それでもめげずに詠唱を続けるarameさん。二度の攻撃を受けた後、ようやく火炎を放つことが出来た。目の前で炸裂する炎。arameさんも巻き添えになったか? と思ったが、どうやら術者には影響を与えないらしい。クモだけが炎上し、その場に崩れ落ち、灰となって消えた。

「二発目はオーラバーンでいいよ。一発目でほとんど体力削ってるはずだから」

トロピのアドバイスに基づき、再度魔法を唱えるarameさん。一発目の炎の後、近寄って来たクモに対し、一瞬の詠唱。ほとんど呪文を詠むと同時に銀色の光の壁が現れ、クモに叩きつけられた。あれがオーバーランっていう魔法らしい。そんな風に新しい魔法を少し試したところでさすがに皆も疲れたのだろう、誰からともなくお開きの流れになって来た。

「・・・今日は・・・どうも・・・ありがとう・・・」

照れくさそうにarameさんがお礼を言う。おめでとう、おつかれさま、と返す面々。手を振り、三々五々、その場から去って行く。わたしとハックスもarameさんとトロピに別れを告げた。

「それじゃ、わたしたちもこれで失礼しますね」

「ほいほい、お疲れ〜・・・・あ」

トロピが何か思い出したように付け加えた。

「Narurunさんは転職しないんですか?」

「え?」

「Narurunさんも一緒に転職試験、受ければよかったか、と。今さらだけど」

「あは。わたしは・・・まだ、何になるのか、決めてないですから」正直、まだ何も考えていなかったと言うのが正しい。

「そかそか。もし、試験受けるなら声かけてね」

「はい、お願いします」

「・・・・ウチも・・・・」

横で聞いていたarameさんがポツリと言った。

「ウチも手伝うから」

「うん。ありがと。それじゃあ、また」

「ういうい、おつかれーー」

わたしとハックスは一旦港村へと戻ることにした。

「今日はどうもありがとね」

二人きりになったところで改めてハックスに礼を告げる。

「いやいや」

ハックスはもとより、わたしも随分と疲れていたようで、会話が続かない。

「じゃあ、またね」

「うん、また」

短い挨拶を交わして、互いに村を後にした。さすがに眠い・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

夢を見た。

以前に見た夢と同じ、雪のある世界だった。

左右に切り立った山があり、わたしはその峡谷とも言える山道を走っていた。世界は雪に閉ざされているものの、山道は人の往来があるためか、雪の下から茶色い大地が見えており、熔けた雪で少しぬかるんでいた。その山道の脇にゴブリンがいた。

わたしの知るゴブリンは、話せる島に少数存在するものだけであったが、ここには沢山居るらしい。山道の脇と言わず、道の真ん中にもうろうろしていた。

わたしはそれを無視して進んだ。目の前に高い山が見えて来た。行き止まり? いや、山道は洞窟へと繋がっていた。しばらく進むとその暗い入り口が見えて来た。近付いて中を覗き込み、目が暗さに慣れてくると中の様子がわかってきた。

入り口からすぐのところにオークがいた。剣を持ったオークが二体。弓が一体。わたしは剣を構えて・・・・剣! わたしが剣!?・・・・そろりそろりとオーク達に近付いて行く。わたし自身の経験から判断すれば、そのオークは恐れるほどのものではないはず。

ゴブリン

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案の定、近付いても無問題だった。ほっと一息を付いて、やや曲がった洞窟の道を先へと進んで行った。洞窟の入り口付近も広々としていたが、その先にはもっともっと広い空間が現れた。洞窟と言っても自然にできたものではなく、明らかに人の手が加えられた施設のようだ。壁や天井が崩落しないよう、きちんと補強されている。

一瞬、ダークエルフの村を思い起こしたが、それとはまた異質な空間だった。ダークエルフはちょっと怖い感じもするけど、一応、話の通じる相手だ。ここにいたのは全て怪物。しかもあちらこちらと闊歩しているではないか。

わたしはここに何をしに来たのだろう?

それ以前にここはどこだろう?

考えれば考えるほど、わたしの意識は混乱し、また深い闇へと包まれてしまうのだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

わたしはまた、話せる島へと舞い戻っていた。やはりここが一番落ち着く。用もなく、滝へと登り、ぼーっとしていた。

本土からの帰り道は、以前、ひとりで島と本土を行き来していた時の南側の海底ルートではなく、Zwolfさんたちに教えてもらった北側の海底の異空間を使うルートを試してみた。グルーディン港から海へ飛び込み、しばらく普通に海底を歩くとすぐに海底空間へと「落ちる」ことができた。ここを通れば水圧を受けることがなく、速く走れるし、何よりいちいち回復魔法を使わなくて済む。これで今後は島と本土の往復がかなり楽になるだろう。

地図を見ながら一直線に話せる島を目指す。さすがに距離があるためすぐに、とはいかないが、以前の事を思えば苦にはならない。うきうき気分で鼻歌交じりに走っていると「対岸」が見えて来た。話せる島側の崖である。

行きと同じように、崖下に張り付いて帰還スクロールを取り出して詠む。トロピの話だと、「場所が悪ければ元の場所に飛ばされる」らしい。この場合はグルーディン港の村へと連れ戻されるってことだ。無事に話せる島の村に戻れますように・・・祈りながら詠唱した。

視界が暗転し、空間を越える。恐る恐る目を開けるとそこは・・・・ほっ。これこそお馴染みの村だった。二重、いや三重の意味でほっと一息。

ひとつ、無事に話せる島の村に戻れたこと。

ひとつ、arameさんの転職試験が無事に終わったこと。

そしてなにより、話せる島に戻ったこと自体が、ほっとする瞬間だった。

arameさんの魔法もしかり、トロピの魔法を見てもウィザードに憧れる気持ちは強い。それだけではなく、みづほさんの範囲魔法、お兄さんが見せてくれた猫を召喚する魔法。そういえば何故かわたしの知り合いにはウィザードが多い事に気付く。これも何かの縁なのだろうか? それとも絶対的にウィザードの人口が多いんだろうか? 知り合いの中で「クレリック」はZwolfさんだけだ。補助魔法、回復魔法に長けているが、反面、ウィザードのような攻撃魔法使えない。

ウィザードかクレリックか。トロピの言葉通り、arameさんと一緒にウィザードの試験を受けてしまっていれば二度手間にならずにすんだかもしれない。しかしまだ自分の中ではどちらかに決めるという意識はなかった。

ぼーっと考えていても仕方がない。今は自分にできることをしよう。メイジとしての自分にできることを。

滝から降り、北へと向かう。もうすでにジャイアントスパイダーやポーカーと言った西海岸にいるクモも相手にできるようになっていたので、そこでひたすらクモを狩り続ける。時折聞こえる遺跡パーティのお誘いに乗ってみたり、アミノ式やLestと一緒になって暴れてみたり。ある意味、戦う相手は変わったものの、以前となんら変わらない生活。

このままでもいいかな。

いや、このままじゃいけない。

どっち?

決めあぐねているうちに20歳を迎えた。区切りの年齢になると新しい魔法を覚えられると学んでいたので、神殿へ行き、神官様に目録を見せてもらおうとした。しかし神官様の言葉は冷たいものだった。

「今のあなたに伝えられる魔法はありません。40歳になったらまた訪ねて来て下さい」

40歳!? 何、それ? これからまた20もの間、今使える魔法だけで過ごせ、と?

あ。

はた、と気が付いた。そうか。「転職」しなくちゃだめなんだ。arameさんは転職した直後、つまり20歳で新しい魔法を覚えていた。それは「ウィザード」の魔法。もはや「メイジ」としての新しい魔法を覚える事はできないのだ。それは結果として・・・

「転職しろってことなんですね・・・」

イエスともノーとも、神官様は答えてはくれなかった。

わたしはまた、滝の上に居た。

滝の上から

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滝の上からは戦勝記念の塔のあたりまで見渡せる。ここからだと怪物も人も小さく小さく見える。時折、剣を交える光や魔法の輝きがあちらこちらで見えた。その輝きの色でなんとなく何の魔法かわかるようになっていた。赤い光はウィザードの魔法。白い光はウィンドストライクかアイスボルト。オレンジ色に立つ光の柱はヒール。一瞬、きらきらと跳びはねる光は剣を交わしているところだろう。青い光は・・・補助魔法だろうか。

いろいろと思いを巡らせていた。

その中でひとつ、少し前から感じていたことがあった。それは、アミノ式と二人でやっている時のこと。以前は怪物にやられたアミノ式の体力を余裕で回復できていたのが、最近、追いつかなくなってきたのだ。なにせ彼は次から次へと矢継ぎ早に怪物たちに襲いかかるので、回復が追いつかない。間に合わせようと緊急回復魔法を連続で使ってしまうと、今度はマナが足りなくなってしまって、すぐに休憩しなくてはならなくなる。下手をすると二人そろって倒れてしまったりもする。それでなくても他の人と比べてのんびりしているわたしは、はっきりいって彼にとって「足手まとい」になりつつあると感じたのだ。

思い切ってそのことを彼に告げたことがあった。彼は「ぜんぜんそんなことあらへん。走りっぱなしも疲れるからなぁ。まぁ、たまに休憩は必要やろ。気にせんでええよ」と、わたしを気遣ってくれているのか本心なのか。彼の性格も大体把握してきたつもりだけど、知れば知るほど解らなくなるところもある。大ざっぱでワイルドな面もあれば、優しくて細やかなことがあったり。ウソを平気で吐くような人じゃないのは確かだけど・・・・。

ウィザードへの憧れも、もちろん、ある。かわいい猫を召喚してみたい。派手な魔法でどどーーんと戦ってみたい。

でも。でも。

じっと考えていても結論は出ない。気晴らしにまたクモ退治にでも行ってみるか。

滝を後にし、西部の海岸へ。通称「クモの丘」。ここはいつも沢山の人で賑わっている。時間帯によってはうろうろしているクモを探す方が大変だ。この日もあちら、こちらで戦いの声が聞こえて来て、手近にクモは見当たらなかった。

ふ、と岸壁に近い方を見ると、数匹のクモを相手にしている剣士さんがいた。がんばってるなぁ、と思ったら、どうやらやばそうな雰囲気。いや、待てよ、余裕なのかもしれない。どっちだろう? でも、躊躇していて彼が倒れてしまったら・・・・わたしの責任、では無いかもしれない。でも、なんとなく後味悪いよね。

わたしは、おせっかいを承知で彼に緊急回復魔法を連続で唱えた。その後、一体のクモを倒した彼は二体目と対峙した。まだ二体残っている。アミノ式と二人でやっている時のペースを思い出しながら、定期的に彼に回復魔法をかけることにした。少々時間がかかったものの、全て倒すことができた。

彼は肩で息をしながら、それでも、ほっとした表情を見せて言った。

「ありがとう、助かったよ」

「いえいえ、どういたしまして。よかったですね」

わたしも微笑みを返した。ついでと言っては何だけど、攻撃と防御の補助魔法もかけてみたりして。そうすると彼は、「おお、これは・・・ホントにありがとう」と、えらく感謝してくれた。これくらい、お安い御用なのに。

そんなことがあったから、と言う訳でもない。以前から同じようなやりとりはしょっちゅうだった。きっと、理由のひとつにはなっているだろう。クモを狩りながら、考えた中からわたしが出した結論。それはクレリックになること。理由は他にも色々あった。論理立てて明瞭に説明できる状態ではないが、わたしはクレリックになりたかった。以前から漠然とそう思っていたところもあるし、ある意味、感性の導きとも言える。ウィザードへのあこがれもあるが、それ以上の何かがある。とにかく、そういうこと。

先ずは神殿へ行ってみよう。転職について何か訊ねられるとしたらおそらく神官様だろう。

神殿を訪れ、神官様に話を聞くと、転職については大神官様に伺えとのこと。大神官様に丁重にごあいさつして、用件を切り出す。

「あの、早速ですが、転職・・・クレリックに転職したいんですが、どのようにすればよろしいのでしょうか?」

「うむ、そなたも既に十分な経験を積んだようだ。もちろん、新たな職業に就く準備は整っていよう・・・・すでにこの島は君にとっては狭すぎる。大陸でさらなる見聞を広げる必要があるだろう。アデン本土へと赴き、大陸にいる我が同胞を訊ねるがよい」

えーー、そんなことはまだ・・・と反論しても失礼だし、意味もないだろう。この島でもまだ行ったことのない場所も沢山あるし、エルフの遺跡だって一人で歩き回ることもできない。まだまだ島でやることもあるような気もするけど・・・そういえば、島の北西にとんでもなく手ごわい怪物が時折現れるらしいけど、まだ見たことはないな・・・・それはともかく、arameさんの転職も、出発点はグルーディン港の村だった。とりあえずはそこに行ってみるか。

「わかりました。ありがとうございました。それでは・・・行ってまいります」

そのことについて、あれこれと声をかけてくれた訳ではないが、大神官様は大きく頷いて答えてくれた。一礼してその場を離れる。神殿に並んだ他の神官様たちにも軽く会釈をして神殿を後にした。

旅立つ前に、アミノ式に声をかけて行こうと思った。そういえばここのところ見かけてないな・・・・どうしたんだろう? きょろきょろと探し回るまでもなく、感応魔法でも察知できない。みづほさんも、お兄さんも、トロピやarameさん、業務課さんたちも、知り合いは誰も見当たらない。

「試験受けるなら声かけてね」「ウチも手伝うから」トロピやarameさんが言ってくれていた。業務課さん、おぃーーっすさん、それにハックス。連絡すればすぐに来てくれるだろう。

こういう日もあるか。

わたしは一人で出発することにした。

グルーディン港の村への行き来はもう慣れたものだ。村に到着するとすぐに神殿へと向かった。こちらの大神官様に転職について話を聞くと、ひとつの課題を与えられた。いや、課題と言うよりは、実際に神殿で「困ったこと」が起きていて、その解決をわたしに押し付け・・・もとい、託す、とのことらしい。それを無事解決したらクレリックへの転職を認めてくれると言うのだ。

その「困ったこと」。それは、神殿に属するある人物が、神殿の教えに背くような内容の書物をしたためたらしい。その人物自体は行方不明だが、書物の方はある程度回収され、残ったものも僅かで、在りかもほぼ特定できているとのこと。わたしに与えられた任務はその書物を回収すると同時に著者本人を見つけ出して来ること。事態が事態だけに神殿自らが慌ただしく動き回ることは避けたいってことらしい。そこで第三者的な立場でもあるわたしに白羽の矢が立ったと言うところか。その人を亡き者にしろってことではないのでホっとした。

まずは在りかの特定できている書物を回収に行こう。その所有者から著者の手掛かりを掴むことにするか・・・・向かう先はそんなに遠くない。グルーディオ城の村へは道なりに歩けば問題ないことをすでに知っている。トロピたちと来た時は道から逸れて近道をしたところもあるが、一人きりだし、安全な道を行こう。

と、村を出たところで顔見知りとすれ違った。おぃーーっすさんだ。あいさつを交わし、「どこいくの?」「転職の試験なんです」「オレはペットをもらいに」「ペット?」「うん、もらえるんだよ」「へええ」「それじゃっ、頑張ってね」「うん、またね」とか、軽く話をした。ペットか・・・落ち着いたら考えてもいいかな? 

さて、特に問題なくグルーディオ城の村までたどり着くと、早速仕事にとりかかった。この村に三冊の書物がある。三人の人からそれらを回収するのだ。

二人は状況を説明し、書物を渡してほしいと頼むと、潔く手放してくれた。一人だけ・・・・西門の衛兵だけは、交換条件を出してきた。悲嘆の廃墟で無くした母親の形見のネックレスを探して来たら、と。

彼の手元に残っていたネックレスのチェーン部分だけを預かり、それにピッタリ合う飾りの宝石を見つけださねばならない。しかも場所は「あの」悲嘆の廃墟。おそらくはゾンビに奪われたと状況は把握しているらしいが、衛兵の仕事があるので取りに行くことができないと言うのだ。

背に腹は代えられない。わたし自身の転職のためでもある。神殿の仕事のこともあるし、何より母親の形見である。一肌脱いでも罰は当たるまい。

グルーディオ城の村から悲嘆の廃墟までは距離もそんなに離れていない。来た道を戻り、その南側の入り口の前に立った。蘇る過去の記憶。単身、初めてここを通った時のこと。ついこの間もarameさんの転職試験でも訪れてはいるが、あの時は皆が一緒だった。高まる緊張。しかし、「あの頃のわたしとは違う」と自分に言い聞かせ、思い切って補助魔法を唱え、廃墟の中へと足を踏み入れた。

ぞんびー

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入ると、すぐ目の前にゾンビがいた。基本通り、ウィンドストライクを唱えるとすぐに反転離脱。幸いなことにゾンビはゴーレムと同じく足が遅かったため、あわてて離脱しなくても済みそうだ。数度、ウィンドストライクを放つとゾンビを倒す事ができた。

ゾンビの死体が消えた後を調べてみると、きらめくものが落ちていた。拾い上げてみると美しい・・・でもそんなに高価そうではない・・・宝石のはめ込まれた飾りだった。警備兵から預かったチェーンを取り出してそのはめ込み部分を合わせてみると、ビンゴ。これに間違いなさそうだ。わたしはその石を握り締め、廃墟を後にした。

グルーディオ城の村へと舞い戻り、警備兵に宝石とネックレスを渡し、確認してもらう。

「間違いない、母の形見だ」

そう言ってしばらく手のひらの上の宝石を見つめたあと、握り締め、懐に仕舞うと、代わりに書を取り出し、わたしに差し出した。

「これが君の・・・いや、神殿の連中が探しているモノだ。約束通り君に託そう」

「ありがとうございます」

「礼を言うのはこっちの方だ・・・ソレに関わってビクビク暮らすよりはいい。何より形見を取り戻してもらえて助かった」

神殿はその書物とその内容が広まることを阻止したいだけで、今回の件に関しては所有者に「おとがめ無し」とのことだったので、話を手短に進めることができた。もちろん、監視されることにはなるだろうけど。

先の二名と同様、彼にも著者の情報についてたずねて見たが有力な情報は得られなかった。とりあえず、三冊の書物を回収することはできたのでグルーディン港の村へと戻り、神殿に書物を届けることにした。

神殿に戻り、三冊の書物を神官様に手渡すと、さも当たり前かのように礼などはもらえなかった。期待した訳ではないが、労いの一言があってもよさそうだけど。まあいい。それよりもウレシイ情報が得られた。その著者の行方が掴めたと言うのだ。

情報によるとその著者は神殿の目から逃れるために話せる島へと渡ったらしい。彼を追ってわたしも故郷へと舞い戻ることになった。故郷の神殿はもちろん通い慣れた場所だ。神官様も大神官様も顔見知り。事情を説明すると著者の人物像と名前を教えてくれた。その人物には心当たりがあった。エルフの遺跡に向かう道で見かけた記憶がある。わたしはすぐにその場所へと向かった。

彼はすぐに見つけることができた。話かけ、事情を説明し、彼自身がもつ書物の原版を受け取ることができた。神殿は彼に対しても処罰は与えない、と告げたからだ。もはや神殿に戻ることは叶わないのだろうが、牢獄に閉じ込められたり、抹殺されたりしないと解ると、彼もおとなしく指示に従ってくれたからだ。

念のため、彼に誓約書・・・・二度とこのような書をしたためたり、布教したりしないよう・・・にサインをしてもらい、それを持ち替えることにした。

話せる島の神殿で大神官様にその誓約書を確認してもらってから再度グルーディン港の村へと戻る。言うは易いが、実際走ると結構大変なのだけど。

海底の空間を走りながら考えてみた。あの書物にはどんなことが書かれてあったのか。神官様からその内容に目を通すことを禁じられていたので、中を確認する訳にはいかなかった。興味が無かったかと言えばそんなことはないけど、何処で誰に見られているか解らないと言うこともあったし、それも試験の一部かもしれないと思ったからだ。もしかしたら、この件そのものがわたしを試すために「用意された」ことではなかったかと思える程だ。

実際、そんな「危険な」書物の著者や所有者に「おとがめ無し」と言うのもうさん臭い話だ。なるほど。なんとなく裏は見えた。もしあの本を開いてみたら「不合格」とだけ書かれていたかもしれない。でもそのことを突っ込んでも仕方が無いし、教えてくれるはずもないだろう。下手をするとその時点で不合格とされるかもしれない。

考え過ぎ、勘ぐりすぎ、だろうか?

とにかくグルーディン港の村まで戻り、神殿へとやってきた。最後に大神官様に報告だ。疑問に感じたことは伏せ、仕事をやり遂げたことだけを伝える。

「確かに。御苦労であった。

そなたはこの神殿に仕え、アインハザードの教えを紐解くに相応しい人物であると認めよう。

クレリックとして活動することを許可する。」

大神官様が持っていた杖を一振すると、わたしは何かの力を感じた。瞬間、自分自身が輝いたようにも思えた。それは、力を与えられたと言うよりは、自分の中に封印されていた何かが解き放たれたような感覚だった。

「ありがとうございます」

丁寧にお礼を述べて、大神官様の前から立ち去る。

実感は沸かない。何が変わったのか? arameさんの時と同様、見た目にも変わるところはない。変わったとすれば・・・あ。

神殿から出るところで、思い出して踵を返し、急いで中に戻る。そして神官様に「クレリックの魔法を覚えたいんですけど」と元気よく告げた。神官様は微笑みながら目録を開いて見せてくれた。そこには初めて見る魔法の数々が並んでいた。

マジパワ

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