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『話せる島記・外伝』

『第一章・それぞれの道』

『第二話・杏樹とタイガーホーネット』

杏樹、サリュー、エル・ロンドたちと本土へ渡ったあたし。特に本土に用があった訳ではなかったが、グルーディン港の村とその周辺でウロウロとしていた。彼女たちはいつも一緒に行動している、という訳ではなく、それぞれ好きなことをしているようだった。感応魔法で彼女たちの存在は感知できるので、何処に居ても交感魔法で挨拶を交わしたり、近況を報告しあったりすることもできる。

港の村でぼーーっとしていると、そんな中の一人、杏樹と再会した。

「やー。杏〜〜。こんちわ。ここにいたんだ」

杏樹のことはみんな、「杏(あんず、またはアン)」と呼んでいた。あたしも習ってそう呼ぶ。エルなんかは「杏(あん)ちゃん」と呼んでいるみたいだ。

「よ。何してんの?」

「ん〜〜。ぶらぶらっと。杏は?」

「転職試験」

「ぉぉ。大変だねぇ」

「そうでもないよ。ちょっと面倒だけど」

「?」

大変じゃないけど、面倒? 微妙なニュアンスだな。

「これからクモ20匹倒さないと」

なるほど。クモを退治することそのものは大した危険もなく大変じゃない。けど、20匹となると数が面倒、ってことか。

「そっかー。じゃあ手伝おうか? すぐそこでしょ?」

あたしが親指立てて示したのは村の南東。

「助かる」

「おおけー、んじゃ行こうかー」

転職か。あたしもそろそろ転職試験受けなくちゃな。

お姉ちゃんがならなかったウィザードになろうか、それともお姉ちゃんと同じクレリックになるか。実はほぼ決めている。歳もそろそろ頃合い。帰りに受けていくか。どうせ一度島に戻らないといけないしね。

とか考えている内に杏がどんどん先へ行く。

「待って〜〜〜」

杏はすでに道から外れ、怪物たちの棲む草原へと突入していた。やっとこ追い着いて、戦っている杏に補助魔法・・・と言ってもまだマイトとシールドしかないけど・・・と回復魔法をかける。

「ありがとサンキュ」

杏は、言いながらも次の獲物に襲いかかる。

いえいえ、どーいたしまして。とは、あたしは・・・お姉ちゃんも・・・滅多に言わない。

だってそうでしょ?

杏やアミノ式たち剣士さんが怪物を倒したからって、誰もありがとうとは言わない。そりゃ、大ピンチのところを助けられたとかなら別だけど、普通に狩りをしているときは、敵を倒すのがあたりまえなんだから。それと同じように、あたしたちメイジやお姉ちゃんのようなクレリックが回復魔法や補助魔法をかけるのも「あたりまえ」の事なんだけどなぁ・・・。杏もそうだけど、時々、都度、お礼を言われるのもなんかくすぐったいと言うか恥ずかしいと言うか。まあ、嫌な気分になる訳じゃないから、いっか。

杏はクモと言わずクマ、トカゲ、ネズミ、ウェアウルフなど、手当たり次第に倒して行く。それも間断なく。

「ちょっと待った〜〜、杏〜〜〜」

「ん?」

手を休めず、顔だけこっち向けて。てか、止まれって言ってるんだけどな。

「マナ尽きた〜〜。休憩しよ〜〜」

とりあえず、今、戦っていたクマを倒し終え、アデナを拾うと、あたしの方へ戻ってきてくれた。その杏のマナも空からだ。

マナを使うからって、魔法が使える訳ではない。元になるマナ、精霊の力は同じだけど、その使い方が違うのだ。剣士さんたちはマナを瞬間的に身体能力へと変換し、いわゆる「必殺技」を繰り出す事ができるのだ。敵に大ダメージを与えることができるが、それだけに連続して使うとすぐにマナが尽きてしまう。剣士さんはあたしたちメイジとは逆に体力はたくさんあるけど、マナの総量は少ない。

「こっちこっち」

名残惜しそうな顔の杏。マナ無くてもまだ戦える、と訴えているようだ。気づかない振りをして、手招きする。とりあえず、草原の真ん中にいると危ないので、街道まで退却。街道の脇に座り込んで一息。ふぅ。

杏樹

Lineage (R) II and Lineage (R) II the Chaotic Chronicle are registered trademarks of NCsoft Corporation. 2004 (c) Copyright NCsoft Corporation. NC Japan K.K. was granted by NCsoft Corporation the right to publish, distribute, and transmit Lineage II the Chaotic Chronicle in Japan. All Rights Reserved.

「そういや、サリューとエルも転職終わったって」

「うん。聞いた」

「えーと、サリューが戦士(ウォーリア)、エルが騎士(ナイト)だっけ?」

「みたいだね」

「杏は?」

「戦士」

戦士と騎士とどう違うのかよく解ってないところもあるんだけど、言葉の響きからして、なんとなく杏に似合っているように思える。エルの騎士もわかる。サリューって・・・どうだろう? そういえば、サリューは顔を出す機会が少ないようで、滅多にみかけない。その割りには転職を済ませたってことは、活動してる時間帯があたしとは違うだけか。エルも会う頻度は少ない。わりと時間がが合うのは杏かな?

みたいにおしゃべりをしていると、杏の方が先に回復した。あたしの方はまだ半分程度だ。体力に比べるとマナの回復には時間がかかる。体力は回復する魔法があるけど、マナを回復する魔法なんてないのだ。

そんなあたしをよそに、杏はすっくと立ち上がって、怪物めがけて走りだした。

「座ってて」

そう言い残して。

・・・と言われてじっと座っているのもなんだか気が引ける。でもマナはまだ完全に回復していない。もじもじしながら見ていると、そんなに無茶をしている訳でもなく、数体倒すと、てとてと、とこちらに戻って来て、ひょこっと座った。

「ごめんね、時間かかって」

正直な気持ち。杏にしてみればもう回復しているのだから、うずうずしていることだろう。アミノ式とお姉ちゃんが二人で居た時もそうだったけど、やっぱりこのバランスは気分のいいものではないよね。もっと効率よく、マナを減らさないように工夫しないといけないかな。かと言ってじっとしているのも性に合わないし。

「ん。まあ・・・」

面と向かっては言わないよね、普通。

やっと完全回復。行くね、と走りだす杏に補助魔法をかけつつ追う。しばらく、そんな繰り返しで、杏の転職試験の一部が完了した。

「戻って転職する?」

「いや、まだ20歳になってない」

試験に合格しても、20歳にならないとその資格は得られないのだ。

「了解、じゃあ、もう少し狩りを続ける?」

「うん。ちょっとあっちの方へ行ってみよう」

杏の走りだした方へ着いてゆく。道から外れ、海岸から離れるように内陸を目指すと、草原から森へと入って行った。その森を抜けるとまた草原が広がっていた。そこにもさきほどの海岸と似たような怪物がいたが、少し手ごわそうな敵も混ざっていた。しかし、杏と二人ならばさほど怖い相手でもないだろう。お決まりのように、あたしの補助魔法を待たずに杏は突撃していった。

杏樹

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テンポよすぎる杏の動きに着いて行くのが精一杯だ。アミノ式も

だけど・・・どっちもどっちって感じかな。ある意味、そっくり似ている。そういえばアミノ式も「戦士(ウォーリア)」だっけな。

「うっとりするような甘い密をさし出せ・・・・」

狩りをしていると、突然、不気味な声が聞こえて来た。声と共に不穏な羽音。杏も異変を感じたのか、戦いの手を止めた。きょろきょろ、と辺りを見渡すと異変の元が見えた。

「アレか・・・」

杏の視線の先、あたしも見えている。でっかいハチの集団。5〜6匹はいるだろうか? ひときわ大きい身体のリーダーらしきハチを取り囲むように少し小さなのが数匹。

タイガーホーネットと、そのとりまきのイエローホーネット。

見ていると、時折、何かをつぶやきながら近くをうろうろとしている。タイガーホーネットが動くとイエローホーネットたちが後を追う。

近寄りさえしなければ・・・ちょっかいを出しさえしなければ、特に襲われることもないだろう。

「戦ってみたい・・・」

杏がぼそっと怖いことを言う。

「マテマテ」

今にも飛び出して行きそうな杏の首根っこを押さえて引き留める。まあ、杏がその気になればあたしの手なんて簡単に振りほどくことはできるんだろうけど。杏は素直にあたしの言葉にしたがってくれた。

勝算があるとは思えない。しかし、まあ、どうしてこう、剣士さんってのは血気盛んなのだろう。アミノ式もしかり。あたしが臆病なだけ? いやいや、勇敢なのと無謀なのは違うぞ。うんうん。

「もうちょっと大きくなってからね」

むすっとしている杏。所在無げに剣をもてあそんだかと思うと、その柄をギュッと握り直し、振り向いて近くにいた目玉の怪物に突進していった。乱獲再開である。

メイジのあたしやお姉ちゃんは、剣士さんと共に狩りをする場合、常に彼らの後ろから着いて歩く事になる。自分が前へ出て先制することはまれだ。後ろから見ていると、アミノ式のワイルドな動きと杏の軽やかな動きに少し違いが見える。同じヒューマンの剣士ではあるが、性別の違い、なのだろうか。流れるような杏の体勢。剣を振るうその動きに合わせて、細くまとめた後ろ髪が尻尾のようにふるふると揺れる。勇ましい姿に似つかわしくないほど、可愛いと思ってしまう。このあたりは男女の差だろうか。

狩りを続けていると、ふ、とまた異変に気付いた。羽音が消えたのだ。杏も気付いたらしく、手を止めてホーネット軍団の居た方向を見やる。果たしてそこには、ホーネットたちの姿が無くなっていた。はて?どこへ? と言う答えはすぐに明らかになった。

森の方向から、剣士の男性、それに続いてホーネットの軍団がこちらへと戻って来たのだ。

剣士の男性は、いで立ちからしてあたしたちより、はるかに年上のようではあったが、それでも一人で立ち向かうには力不足だったのだろう。切りかかったはいいものの歯がたたないと判断し、今は必死で逃げ回っているところ。彼とホーネットはあたしたちの目の前を通り過ぎ、反対側の森へと消えていった。

呆然と見送ることしか出来なかった。

しかしそれは仕方が無いこと?

ちら、っと横目で杏を見ると、彼らの消えた森を見据えて微動だにしない。何を思って居いるのか、あたしには計り知れない。もしかしたら、あたしと同じことを考えているのかもしれない。

ホーネット

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「来た」

あたしが杏の方に気を取られていると、その杏の口が動いた。そしてその視線の先を見ると、さっきの剣士さんとホーネットが消えて行った森からまたこちらへと戻って来ていた。

杏が動く。あたしも一瞬遅れて動く。

こちらへ向かって来ていた一団とすれ違いざま、あたしは剣士さんに回復魔法をかけた。杏は最後尾のイエローホーネットに切りかかって行った。

剣士さんは走り去ろうとする。当然ホーネットもそれを追う。その後から杏、そしてあたし。しかし、後ろからだと追いつけない。

「曲がって!」

杏が叫んだ。

意図を理解したのだろう、剣士さんは一瞬停止すると、すぐさま右へと進路を変えた。ホーネットたちも弧を描くように移動したため、杏がその最後尾のイエローホーネットに追いついた。剣士さんもそれに気付くと、大きく右へと弧を描くように走り始めた。

小高い丘の上で、剣士さん、ホーネット、杏の輪ができた。

あたしはその中心に立ち、剣士さんに回復魔法をかけ続ける。杏がホーネットに追いつけたのと同様に、ホーネットも剣士さんに追いついてしまったのだ。ぐるぐると周りを回る一団を追いかけるようにあたしもその場で回転する。目、目がまわる・・・

杏が最後尾のイエローホーネットを切り続けていると、ホーネットたちの動きが変わった。今度は一斉に杏の方を目指しはじめたのだ。杏もその変化を敏感に察知したのか、逆方向へと逃げ出す。一瞬だが、杏はホーネットたちの攻撃をまともに受けてしまった。あたしはすぐさま杏に緊急回復魔法を連続で唱える。

すると、今度は・・・

「きゃああああ」

あたしが追われるハメになった。

目がまわってふらふらだけど、それでもできるだけ急いで逆方向へ。あたしが逃げ回っていると、後ろでは杏と剣士さんが最後尾のイエローホーネットを倒すのが見えた。やった。一匹やっつけたぞ。そうすると、今度は剣士さんが追われる。あたしも今度は回復魔法の合間に杏の横に付いて殴りで参加する。

二匹目撃退。杏が追われる。次はあたし、そして剣士さん。ぐるぐると右へ左へ。黄色い輪が回る。

三匹目を倒した時点でおかしい事に気付いた。

「なんか、減ってないよ・・・」

倒した数と残っている数が合わない。

「ってゆーか、増えてる〜〜〜」

倒しても倒しても、後からすぐにまた復活しているのだ。

「これじゃキリがないよ〜〜」

いや、キリはあった。マナと体力のキリが・・・

・・・・・・

「巻き込んでしまって、すまない」

剣士さんの声が聞こえる。

「ま、しょうがないっしょ」

杏が答える。

あたしは、いや、あたしだけでなく、剣士さんも杏も、身動きひとつできないが、声だけは発することができた。いわんや、全滅である。善戦したとは思うけど、消耗戦になれば圧倒的に不利。ホーネットが復活さえしなければギリギリ、いい勝負だったろうか。その思いも込めて、あたしは愚痴を言う。

「あれは反則だよねぇ・・・」

「それも含めて、戦い方を考える必要は、あるね」

杏はまだやる気満々らしい。なんとか思い止どまらせなければ・・・・

「戦い方もだが、人員も少し増やした方がいいだろうな。一人では全く無理のようだし、三人でもこの有り様だからな」

剣士さんが変わりに、おそらく自戒も込めてそう言ってくれた。これで杏も一人でどうこうしようとは思わないだろう。

「・・・だな」

「さて、とりあえず・・・・最寄りの村へ行きましょうか」

三人そろってグルーディン港の村へと舞い戻った。

村で少しだけ雑談をして過ごした後、あたしは話せる島に戻ることにした。杏は転職の為に近くでまた狩りを続けるとのこと。剣士さんともその場で別れた。

あたしはおなじみの海底ルートを使って話せる島の村へと戻り、そこで一時休息を取ることにした。

ふはぁぁ・・・眠い・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・夢を見た。

これまたおなじみになった雪景色である。ここは一体どこなんだろう?全くの別世界なのだろうか?

その別世界であたしなのかお姉ちゃんなのか・・・どちらでもないあたしは雪の海岸にいた。

そういえば、夢の中では降り積もった雪を見ることはあっても、雪が降っているところは見たことがないな・・・・視界に入る海の上、どんよりとした空を見てなんとなくそう思った。

ホーネット

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海岸には見慣れた姿のウェアウルフがいた。島にいるのと種類は違うのだろうが、外見はそっくりだ。そのウェアウルフに向かって行って、あたしは両手を胸の前にあてがって気を溜めたかと思うと、今度は大きく伸びをするようにその手を頭の上に広げた。

すると、気が大きく膨らんで怪物の頭の上でぱちん、とはじけ、まるで花火のようなきれいな光りが広がった。

魔法?

それにしては呪文を唱えた様子はなかった。緊急回復魔法のようなものだろうか?

続けて、剣で切りかかる。もちろん応戦されるため、こちらも殴られるが、少々のことではびくともしないようだ。あっさりと怪物を倒すことができた。いつもなら倒れた怪物になど興味は無い。しかし、その怪物の死体はいつもとは違い、まるで病死したかのように紫色に変色していた。いや、にぶく光っているのだろうか?明滅しているようにも見える。

あたしは、しゃがみこんでその死体に手を突っ込んだ!!

げーーっ。

ぐちょぐちょ、ぬちょぬちょ。

一瞬ではあったが、確実に、死体にめり込んだ手がその内部をかき回しているのを感じた。思わず吐きそうになるのをこらえていると、指先になにか堅い物が触れた。骨?

なにかはわからないが、それを掴むと死体から手を引き抜いた。

その手には研磨剤が握られていた。予想に反し、腕には血も体液も、紫色の変な液体も、水分すら付着してはいなかった。

一体、今のは何??

そんなあたしの混乱を他所に、夢の中のあたしは次の獲物に狙いをさだめ走りだしていた。

くらくらとする頭を抱え、あたしはまた深い闇の中へと落ちて行った・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

はっ!

転職試験・・・・受けて来るの忘れた・・・・・・。ま、いっか。また今度。

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