『第十話・受け継ぐもの』
お姉ちゃんがいなくなった。あたしに、全てを・・・装備品、アデナ、その他諸々の品々を・・・残して。
お姉ちゃんだけじゃない。友人、知り合いの幾人かも、先日のオークさん、クレリックさんと同じように変容したこの世界から旅発っていった。
あたしは、そんな人達からいろんなものを受け継いだことになる。物だけではない、さまざまな想いも。
この世界にとどまり、この世界に暮らすことを選んだ人達も多い。あたしもその中の一人だ。
あたしは、そんな別れと出会いを繰り返し、少しづつ成長した。
クレリックだったあたしは、本来ならばプロフィットになるはずだった。けれど結局、お姉ちゃんが目指したビショップになった。お姉ちゃんの意志を受け継いだ格好だ。ただ、お姉ちゃんが目指していたものとは少し違うかもしれない。おしとやかなお姉ちゃんと違い、ビショップになってからもずっと長い間、格闘武器で殴りを基本とするスタイルを変えなかった。さすがに、いつまでもそのスタイルが通用するはずもなく、魔法でアンデットと渡り合うのが精一杯。もっぱらパーティーでは純粋にヒーラーとして動くより他はなかった。
それでも、格闘武器は使い続けている。
もっと他に自分の職に合った武器があるのは分かっているが、このスタイルだけは譲れない。もはや、格闘武器はあたしの一部なのだ。カーディナルとなった今でさえも。
一度、武器の買い替えのタイミングでしばらく武器を手放すことになってしまい、友達から借りた二刀流の剣を使ったことがあったが、あたしが、あたしじゃない、そんな違和感でいっぱいだった。改めて新しい格闘武器を手に入れた時はホっとしたものだ。
あたしがこの武器を手放す時。それはおそらく、この世界を去る時だけだろう。それこそ、誰かに受け継いで。
オークさんから受け継いだ武器も手放していない。随分とお世話になったが、さすがにもう自分で使うことはない。今では姉妹・・・そう、新しく生まれた妹たちに大切に受け継いでいる。
お姉ちゃんが出会った友達も、あたしが受け継いだような形になった。白鳳天翔の人々、ＭＰ軍団の人々。他にも、村でよく出会う様々な人々。そして、新たな出会い。
そんな人達と一緒に、いろんな経験をした。
いろんな場所へ行った。
戦争も見た。
ヌルカが倒されるところも見た。
オルフェンの討伐に参加して、勝利した。
世界中の海を泳いでみた。
あちこちの山にも登ってみた。
世界の果ても見た。
一人で歩き回ることも多いけど、たいていは誰かと一緒だったり、交感魔法でおしゃべりしながらだ。
そんな人々もまた次々とこの世界を後にして行った。
高子・・・ファル・・・・杏樹・・・・魔宝さん・・・・それに、エル・・・・他にもいくつもの出会いと別れがあった。本当にたくさんの出会いと別れが。
お別れの挨拶さえできなかった人も数多い。
ひょっこりと戻ってきた人と偶然に再開することもあるが、それは奇跡に近いことだろう。それでも、何人かの人達とはばったりと再会したこともある。
もちろん、変わらず元気にやっている面々もいる。しかし、すでにそれぞれの血盟でそれぞれの役割があったり、歳の差があったりと、一緒に戦うことはめっきりなくなったけど、村や狩場で出会えば挨拶もするし、都合が合えば繰り出すこともある。
あたし自身は、たまに落ち込んだりすることもあるけど、基本的には元気にやってる。あたしがある程度落ち着いた頃にはお姉ちゃんもちゃっかり復活。今度はあたしのお古をお姉ちゃんに受け継いだりと、また忙しい毎日を送っていたりもする。姉妹も増えたりしたしね。
ウィザードのナルルン。ドワーフの双子、バウンティハンターの成るるんとウォースミスの成るルン。そうそう、例の『夢』はドワーフの双子のものだったんだ。
それにもう一人、平行世界のあたし。そこでもまた一つの物語りが生まれたけど、それはまた別のお話として。
あれも、これも、それも、どれも、まだまだ話し足りないことはいっぱい、いっぱい、あるけれど、とりあえず。
大陸のどこかで・・・・あるいは話せる島のどこかで、お会いしましょう。
じゃ、また＾＾ノシ
追伸・・・・・
続きは、『なるるんの話せる島記』にて！ｗ
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