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『話せる島記・創作小説』

『創作小説・その1』

三周年記念・ファンフィクションコンテストに応募した作品。


『ナルルンの話せる島記』

話せる島。

私たちヒューマンの生まれ故郷であり、大陸南西の海上に浮かぶ孤島である。多くのヒューマンがこの島で修行を積み、そして巣立って行った。私もその中の一人だ。

私は長い長い転職試験の途中、息抜きにと話せる島に戻り、滝の上で一人のんびりとしていた。なんでも、歌う滝と名が付いているらしいが、私達は愛着を込めて『話せる島の滝』と呼んでいる。

一体、何度この滝へと訪れたことだろう?

アデン大陸へと進出した後も、何かの用事で、あるいは今日のように用も無くこの滝を訪れることがある。下から見上げるもよし、登ってのんびりと見下ろすのもよし。まあ、見える風景と言っても戦勝記念の塔がうっすらと見える程度で、塔に集う人々の姿までは確認できないのだけれど。

手前の平原のにはかろうじてウェアウルフの姿が確認できる。残念ながらそのウェアウルフと戦う人の姿はない。さらに手前に視線を移すと、川にかかる橋が・・・・ん?

私はその橋を渡る一団に目を奪われた。普段は誰もいないところに人影。珍しいな。1、2、3・・・4人か。全員剣士のようで、皆、鎧を身に着けていた。ただ、一人は背丈がずいぶん違う。ドワーフの女性のようだ。同じ方角に走って行くところを見ると、パーティだろうか? その方角はおそらく・・・・。

興味を引かれた私は、立ち上がって滝から降り、彼らの後を追ってみることにした。

橋の近くまで戻ると、彼らはすでに走り去った後で、姿は見えなくなっていた。しかし彼らの向かった先はなんとなく予想が付いている。滝から続く山沿いに森を抜ければその場所に辿り付く。倒れた門柱。崩れ落ちた壁。数段の階段。ここがかつては神聖な場所であったことを物語る建造物が、今では無残な姿をさらしている。エルフの遺跡と呼ばれる場所だ。

遺跡の入り口には、独特のローブをまとった女性が立っていた。ゲートキーパーだ。そこにも一団の姿はなかった。私はゲートキーパーにお願いをして、遺跡内部へと移動してもらった。

初めて訪れた若い人ならば、この陰とした空気と光景に圧倒され、恐怖を覚えるだろう。実際、駆け出しの冒険者が・・・かつての私が・・・独りで探索を行うことは困難で、非常に危険なものだ。

長い階段を降り、通路を駆け抜け、突き当たりを右に曲り、少し進んで足を止めた。いや、別に止まらなくてもよいのだけれど、ついクセで立ち止まってしまう。通路の中程、右手に部屋があって、その出入り口にスケルトンの一団が待ち構えているからだ。迂闊に前を通ったり、突っ込んで行くとスケルトンたちが一斉に攻撃してくる。

ゆるゆると進み、覗き込むと、そこに居る筈のスケルトンが居なくなっていた。考えられる答えはふたつ。ひとつは誰かがここを通り、スケルトンを倒したと言うこと。一度倒してしまえば、しばらくは復活しない。放っておくといつの間にか復活してまた警備を始めるのだが、今はもぬけの殻だ。つまり直前に誰かに倒されてしまったことを意味している。

もうひとつの答え。それは、スケルトンを倒したのが、さきほど見かけた剣士の一団であると言うこと。時間的にちょうどつじつまがあう。スケルトンのいなくなった通路を進むと、案の定、部屋の中から音が聞こえて来た。怪物たちの咆哮、剣を振る音、剣士たちのかけ声。私は階段を降り、その部屋の中を覗いた。物音から想像した光景がそのまま繰り広げられていた。

剣士ばかりの一団だったため、怪物たちと入り乱れて戦っている。善戦しているものの厳しそうなのは明らかだ。メイジが居ないため、補助魔法の効果も得られず、回復も薬品に頼るだけだ。

おまけに、彼らの戦い方と来たら。それぞれがそれぞれに別々の怪物と対峙している。しかも怪物の方が数が多いため、明らかに不利。手出ししようか迷って居ると、女性剣士が二体の精霊からまともに魔法をくらった。彼女は悲鳴と共に力尽き、崩れ落ちた。戦う相手を失った精霊が他のメンバーへと矛先を変える。もう迷っている暇はない。私は残った男性剣士さん二人とドワーフに続けてバトルヒールを唱えつつ、言った。

「一番弱ってる奴から先に集中攻撃して。一番右側の赤いやつ」

一瞬、何が起きたのか理解できないようではあったが、私がヒールしているのを確認するとすぐに動いてくれた。ヒールの合間に補助魔法もかけて行くと、怪物は確実に一体、また一体と倒れて行く。形勢は逆転した。多少、余裕が出来たところで、倒れている女性剣士さんを復活スクロールで蘇らせることにした。

女性剣士さんは生命力を取り戻し、立ち上がった。すぐに戦闘へと戻る。私が後ろからヒールと補助魔法を追加で唱えるころには戦いが一段落したところだった。しかし、ここでのんびりしていると新たな敵がすぐまた現れるだろう。

「こっちへ」

私は彼らを安全な通路へと導き招いた。入り口に戻るとスケルトンの餌食になってしまうため、部屋の外周、二階のテラスへと向かう通路に逃げ込んだ。

「ふう」

階段の踊り場に腰掛けて一息つく面々。さすがに体力もマナもほとんど残っていないだろう。しばらく休息が必要だ。私も同じように腰を降ろした。もちろん、状況が状況なので、ただ黙って座っているはずはない。

「ありがとうございました。おかげで助かりました」

ドワーフの女性を除けば年格好が同じなので誰がリーダーなのかはわからない。おそらく最初に話しかけて来た男性剣士がリーダーなのだろう。

「いえいえ。困った時はお互い様。それに、ヒーラー居ないとちょっと大変でしょう」

「そうみたいですね。力押しでなんとかなるかなって思ったんですけど」

他のメンバーもうんうん、とうなずいている。

「やり方次第じゃいけなくもないんだろうけど・・・それにしても、イザと言う時は、やっぱりねぇ」

「どうです? 一緒にやりませんか?」

話の流れとしては至って予想通りの展開なのだが、さて、どうしたものか。

「随分と歳が離れてると思うんだけど」

最大の理由。年齢差がありすぎる。

「そうなんですか? いや、全然かまいませんよ。ヒーラー、居てもらえると助かります。どうです?」

いくつ?と聞かれるかと思ったけど、本当に気にしていないようだ。あるいは、歳の差が及ぼす影響に頓着していないだけか、その事実を知らないか。ヒーラーが欲しい、と言うところは納得できる。まあ、持てる力で援護してみるのも面白いかな?

「おっけー」

私は彼らと行動を共にすることにした。

軽く自己紹介などしているうちに体力も回復したので、動き出すことにした。私は皆に補助魔法をかけた。

「じゃ、行きましょうか」

武器を握り直し、立ち上がって先ほどの部屋・・・図書室へと戻る。

「水色の精霊と赤い悪魔がアクティブ・・・近寄ると攻撃してくるから、なるべく優先的に、一体か二体づつおびき寄せて」

「サラマンダーは?」

「そいつはノンアクティブ。近寄っても平気だから、まわりに精霊も悪魔もいなければ叩いていいよ」

「さすがに詳しいですねぇ。もう転職してるんですか?」

私が居ることで少し余裕ができたのか、おしゃべりしながらでも狩りができた。

「んー。あー、えと、今、転職試験中」

さぼってここまで遊びに来てるんだけどね、とは言わなかった。

「へーー。そうなんですか」

そんな会話をしている間にも精霊と悪魔が次々に襲って来る。「リーダーが攻撃しているヤツに集中して」と助言して一体づつ確実に仕留めて行く。時折、悪魔が放つ魔法で持続的なダメージを受けるとやっかいなのだが、なんとか私のヒールでまかなえている。

「転職かー。まだまだ先だなぁ」

戦いながら、会話も続く。転職の話に興味を持ったみたいだ。私も、実際まだまだ先だと思っていた。でも私は「すぐだよ」と答えた。

「試験ってやっぱり大変なんでしょ?」

「そうだね・・・」

職種によって試験の内容や難易度は異なるが、いずれにせよ世界中を飛び回る事になるため、大変と言えば大変だ。それに倒すべき怪物も一人では太刀打ちできないような場合もある。誰かしらの協力が必要な場面も多々あり、血盟員や友達同士、お互いに協力しあうことも多い。状況によっては見知らぬ人とその場で一緒に、なんてこともある。

「まあ、その時になったら、いろいろ分かるよ」

実際には経験してみないと分からない。何だってそうだけれど。

「そうですね。楽しみです。オレ、何になろうかなぁ。ってゆーか、どんな職業があるんだろう?」

「あたしらはローグ、ナイト、ウォーリアだね。あたしはウォーリアがいいなー」

「僕はナイトかな」

「わたしはスカベンジャー・・・かな? アルチザンも捨て難いんだけど。物作ったりするの好きだし。でも・・・」

口々に将来の夢を語る。

キッカケは人それぞれだ。最初は何もわからず、やみくもに戦うことで精一杯だが、様々な出会いや経験の中で見えて来るものもある。そして自分が何をやりたいのかも。

私の場合も、幼いころに出会った『先輩』がきっかけだった。その人はもうかなり昔にこの世界から旅立ってしまった。私にこのローブを残して。もう二度とここへと戻る事はないだろう。いや、いつかまた、戻って来るのかもしれない。会えるならば会いたい。ローブのお礼もちゃんと言っていないのに。あの人からは色んなことを教わった。その感謝の気持ちは今も忘れない。

「うっ!」

ぼんやりとそんな事を考えていたら後ろから魔法を食らった。皆の背後に居たため、そのまた後方に現れた精霊から攻撃を受けたのだ。狭いダンジョンではありがちなミスだ。先ほど『ナイトになりたい』と言った彼が私の声に気付いて助けに駆けつけてくれる。。

「大丈夫ですか?」

「だいじょう・・・・あっ!」

しまった。さらにミス。

この遺跡に限らず、ダンジョンでは怪物たちが密集していることが多い。遠くから魔法で仕掛けて来る精霊に剣士さんが切り付けに行くと、奥に居た悪魔が反応して襲いかかって来る。前方でもまだサラマンダーとの戦いが続いていて、さらにまた新たな悪魔が加わる。状況が一変し、余裕が無くなってきた。全力を出し切って応戦しているが、かなり深刻な状態。ヒールだけでは切り抜けられない。

こうなったらもう・・・・・

私は咄嗟に呪文を唱えた。私の最も得意とする魔法を。

魔法が発動すると、一瞬にして辺りが真っ赤な炎に包まれる。

精霊も、悪魔も、火にはめっぽう強いサラマンダーでさえも一瞬のうちに灰となった。

炎が収まり、ダンジョンの暗さが戻ると、静寂が訪れた。

「こっち。さっきの階段へ」

何が起きたのか訳が分からない様子で立ち尽くす面々に声をかけて移動を促す。それでもなかなか動こうとしない。やがてまた悪魔が近くに現れて攻撃を仕掛けて来る。私が火炎の魔法を打ち込んで瞬殺すると、それが合図であったかのように皆が動き出した。

最初の時と同じように、階段の下で座り込む。

「すごい!すごい!あれ、何?魔法なの!?」

当然のように質問の嵐。

「あれは・・・・火炎属性の攻撃魔法だよ」

「転職試験中って言うからメイジさんだとばっかり思ってましたよ。もうウィザードに転職してたんですね」

少しでも他の職業について勉強している人なら知っていることだ。火炎の魔法を扱うウィザードと言う職業について。

「でも、ウィザードって攻撃専門でヒーラーじゃないんじゃ?」

ごもっとも。普段、私がヒーラーとして振る舞うことなどはほとんどあり得ない。パーティーでの役割は文字どおり絶対的な火力で敵を打ち負かすこと。自分やパーティーのメンバーが危機に陥ろうと、全力で敵を殲滅して乗り切ることが仕事だ。たとえこの身に何が起きようとも。

「メイジの時代に覚えた回復魔法とかはまだ一応使えるんだ。だから、ヒーラーとしてはメイジのままってこと」

「なるほど・・・」

説明すると納得はしてくれたようだ。だから、一番最初に『歳が離れている』と言ったんだけど。

いろいろと話しているうちに、私が使える様々な魔法を見せてあげることになった。図書室へと戻り、私は自分の魔法のいくつかを解説を交えて披露する。感嘆と畏怖、そして羨望の眼差し。そうだ、あの日、あの人を見つめていた自分の瞳と同じ・・・なのだろう。

こんな風に歴史は受け継がれて行く・・・のかな?

彼らは剣士であるから、私のような職業に憧れても仕方はない。しかし、絶対的な『力』そのものには憧憬を抱いたはずだ。『もっと強くなりたい』・・・と。

他にも、高位の人とパーティを組んでも経験を得られないことなども簡単に説明した。彼らは彼らで工夫をこらし、戦い方を見つける必要がある。あるいは、同世代のメイジを見つけ、仲間に加えるのも手だ。私はパーティから離れ、彼らに助言と、少しだけヒールを与えながらしばらく見守ることにした。

やがてコツをつかみ、彼らが自分たちの力だけで安全に戦うことができるようになった頃、私はこの場を去ることにした。戦いに専念している彼らの後ろから「じゃあ、がんばってね」と声をかけて。私は帰還スクロールを取り出して詠んだ。スクロールの力で空間を飛ぶ瞬間、ちらりと振り向いた彼らの笑顔が眩しかった。

また、いつか、どこかで・・・・・しかし、彼らが私のことを覚えているかどうかは定かではない。私にとっても、これはほんのささいな日常のひとこま。いつまでも覚えていられる自信もない。だから、ここに書き記しておこう。

『ナルルンの話せる島記』として。

・・・さて、700本ノック、行ってくるか・・・。


ま、さすがに入賞ならず。コミックと小説を同列にするのもどうかと思うけどw 入賞は2作品が漫画。小説は1作ですた。全部で100作の中だからねぇ。まあ、内容的にあれなのもあるけど。

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