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07.05.05 記
花水木
店のガレージの端に一本の花水木がある。20年前、この地で商売を始める時にブロック塀ばかりではガレージが殺風景だと知人が苗木を植えてくれた。毎年4月の中旬、他の家の桜が終わった頃にピンクの花を咲かせる。
植えた当初、若木の花水木は立ち姿がよく四方に枝を広げ、道路の近く目線の高さに愛らしい花を付けた。店の窓から見ていると、歩いて来た人が花を見て一様に何か楽しそうな嬉しそうな様子をした。ちょうど難しい顔をして歩いている老人が乳母車の幼児を見て、とたんに嬉しそうに近づくように、当時この木には何か見る者の心を喜ばせる強い力があった。
そうした花水木のすぐ横に、木斛(もっこく)が頭を払われて蹲っていた。それはある時、植木屋さんに頼んでガレージにジャリ(砕石)を入れてもらう折り、ジャリを積んだトラックに姿のいい木斛が一本積んであった。折角のものだから貰っておきたいが、ガレージは広く空けておきたいので、どこにも降ろし場所がない。それで結局は花水木のふちに植えてもらった。ところが後日、知人から異議が出た。近すぎて先で木が大きくなって喧嘩すると言うのだ。花水木は親切で植えて下さったものだが、木斛は植木屋さんに金を払ったのだから私の自由にできる。ここは切らねばならない。それで、地上50センチのところで切った。枯れる様子はないが花水木の横で哀れであった。
4月道 華と哀れが 右左
その後、花水木は幹が太くなりアイドル性がなくなった。もう昔のように花の咲く頃に見る者の心を華やかせる強いものがない。3年前には大量に毛虫が付いた。また園芸の心得のない私がむやみに枝を切るので樹形が崩れた。その代わり落ち着きがよくなった。また夏には葉っぱをいっぱいに付けて道を通る少しの風にも枝をゆらしている。冬には鉄サビ色の葉っぱを数枚付けて、何となく大人の雰囲気も出てきた。
一方、50センチのところで幹を切られた木斛はその後、元気なく蹲っていたが、ここ数年樹勢がもり返し盛んに枝を伸ばす。数年前から下の方の枝は丸く刈り込むが上に伸びる2本の枝は切らずにそのままにしている。その2本が勢いよく真っ直ぐ伸び、今、花水木の横で一風変わったモダン刈りの姿で立っている。
08.04.撮影 |