【2007年医大入試の総括と来年の展望】
                       

医歯学部受験予備校フェニックス.ゼミ


近畿大学後期受験生の皆様、いよいよ今年最後の医大入試です。本年度の受験者数は1123名で単純計算の倍率はついに100倍を超えています。ここから国公立後期の受験生のキャンセル状況や他の医大の補欠合格等の影響によって受験生の運命が変わるということになります。19日の発表の翌日に補欠合格通知が来ればかなり「繰り上げ合格」の可能性は高くなるでしょう。最低合格ラインが2004(82%)、2005(89.75%)、2006(86%)という高い最低ラインを考慮すれば90%ラインは必要でしょう。とにかく近畿後期は「点数を取るというよりミスをしない」ということが最も必要です。そして、ある受験雑誌に掲載されていたように「自分より点数が下の生徒がいくら増えても関係ない」という位の強気のブレない精神状態でのぞむことが大切です。本当に「1点差のバトル」なので敵を自分の外に求めるのではなくて自分の心の中に求めることです。「敵は自分である。自分の心である」と冷静にミスをしない精神状態が最も必要とされる最終試験であることは間違いないでしょう。2004年度が630名だったのが2005、2006年から急に900名台に膨らんだというのが大きな特徴ですが、1000名の大台に乗るとは想像さえしていませんでした。むしろ去年をピークに元の600名台に戻るであろうと予想していました。(2月28日の時点で596名だったのが3月2日締め切りまでに527名も増加しています。いかに受験生がぎりぎりまで様子を見ているかがよくわかります。)更に当日欠席者が2004(71名)2005(115名)2006(147名)ということを考慮すれば、埼玉3月8日の発表と昭和期の出願の影響をかなり受ける試験ということでもあります。受験生1人1人のわずか1人前で繰り上げの声がかかったり、わずか1人前で涙を飲む試験である可能性は十分にあります。どれだけ「ミクロの差」で勝てたかどうか?です。また、医大の後期試験である埼玉と昭和と近畿を並べて見ると最もやり易いのが近畿大の問題ではないでしょうか? つまりそれだけ国公立医学部受験生が「出願しやすいクセのない問題」であることは当然ということになります。とにかく全国の医大入試で最も1点の重みのある試験です。また、慈恵会の後期試験が今年から廃止された影響もあり、熾烈な激戦になることは間違いないでしょう。常識的に考えて「点数差」がほとんどない場合、40分の小論文が鍵を握るということになります。そう考えると小論文の対策をしている生徒が有利となるでしょう。これだけ受験生がいると「差」がつかないことが明らかであるため、横書きの400字の小論文の段階評価が勝負を決めることになります。過去の論題は、平成15年が「老後の生きがい」について述べよ平成16年「医学の進歩と人類の幸福について」、平成17年が非常に受験生の間で差がついたと思われる「診療情報の電子化とコミュニケーション」について、平成18年が「生きる、生かす、生かされる」について受験生に書かせる問題である。
近年、医学部の受験では学科試験では「差」がつきにくいため、小論文や面接で最後の決断を下すという状況にあります。400字の中で起承転結と問題解決の克服の意志を示すことは大変だと思います。400字という「非常に少ない量でコンパクトにまとめあげる技術」が本日問われるでしょう。
さて、今年の医大入試を見てみると例年川崎からスタートする医大入試が金沢に変化し、センター試験の前であることもあり受験生が増加しました。わざわざ岡山まで行く必要もないことを考慮すれば当然の現象だと思います。近年、受験生は同じことを考えて動きます。また、情報戦に強い生徒と全くわかっていない受験生の2極化の「差」がますます拡がっているように思われます。
今年の入試であれば藤田と埼玉(前期)が狙い目ではなかったでしょうか。理由は、西日本の受験生は、川崎から近畿大を受験する生徒が非常に多いということ。そして近畿の後、久留米から兵庫、または近畿から兵庫まで待機する受験生が非常に多いからです。その時同時に関東では上位層が慈恵会と北里のバッティング、翌日に昭和、その翌日に下位層が聖マリアンナ受験に動くからです。つまり、「関東と関西に別れての極地戦」になるため全受験生が2つに引き裂かれるということになります。つまり、この時期は藤田への関心が最も少なくなるからです。次に、今年前期(50名)と後期(35名)に分離した埼玉は、西日本の受験生が東海大学の大阪会場が新設された影響もあり、わざわざこの日程で関東まで行かない。まして下位層は無条件に帝京に行くでしょう。翌日に東京女子医大もあることから女子受験生も、有利な科目選択できる帝京と併願しても、埼玉と併願することは考えにくいという理由からです。埼玉も前期で当然多数合格者を確保したいはずですから、前期を受けておいた方が良いという理由からなのです。医大入試は、誰もが自分と同じ考えで同じように受験してくる入試なのです。まず「情報戦に勝つ!」ことが常識なのです。

【私立医大予想掲載の意図について】

過去数年にわたり医大入試のオリジナル情報を掲載して来ましたが、掲載の意図は以下の理由からです。

1、情報が意外に少ない。また行き渡っていない。

行き渡りばったりで受験している生徒や保護者が今だに多い。地方会場が近くにあ るのにわざわざ交通費、宿泊費を使って本校受験したりしている生徒もいる。

2、予備校や塾に詳しい人間が少ない。

国立についてはある程度進学校や大手予備校等で詳しい人材がいるが、私立については本当にわかっている講師も予備校業界全体の1割位であるためナビゲートできる人材が少ない。親が病院の生徒の父兄の方が詳しい場合が多々ある。

3、高校の進路指導部が医大入試についてわかっていない。

「簡単に受かる試験」とみなして国立も私立も全敗する。安易なアドバイスをし過 ぎである。今後も医大入試が簡単になることはない。そんなに簡単に併願合格はで きない。受験校の選定についても高校側が研究さえしていないのに分かるわけがな い。大体高校の進路指導部というのはその高校の生徒が狙う大学が多い所だけに強くなるのである。または高校側が進学実績を出したい大学のみを熱心に研究するのである。したがって高校の中で圧倒的に受験者層が少ない医大については、本人が自分で研究するしかないのである。つまり、入試の背景がわかるまでに1〜2年費やしたりしているのが現状である。したがって本来必要でない無駄な受験料、交通費、宿泊費を浪費することになる。(子供が情報を得てないのに親が子供に「習っているもの」と任せきりにしているからかなりの浪費につながる)たまに将来医学部受験予定の中学生のお子さまをお持ちの父兄から問い合わせがあるが、アドバイスとしては「医大の指定校推薦(各高校に1名枠位)がある高校」を狙ってそこから逆算して選ばれたらどうですか?と答えている。指定校推薦から推薦入試に強い高校に入ることが最も楽であると思う。卒業後の「いつ合格するのかの苦労」を考えるとお釣がくる位だと思うのだが... (受験勉強の苦労を考えれば範囲の限定されている中間・期末テストを3年間ずっと完璧にする方がはるかに簡単である!と今の受験生なら全員言うと思うが.... どうだろう)ただ推薦を狙うのであれば中学生時代から「課外活動」「リーダーシップ経験」「ボランティア活動」等「生徒の見本」となる活動履歴を持っておくことは言うまでもない。

4、問題に触れる機会が少ない。

予備校や塾のテキストに医大の問題が挿入される頻度が圧倒的に少ない。

5、生徒の親が30年前の感覚で「医大入試のイメージ」をとらえている。

親が国立医学部出身の場合,子供がなぜ不合格になるのか理解できていない。したがって親子喧嘩が絶えない。「時代のギャップ」が家庭内不和を起こしているケースが多々ある。子供も「相談しても仕方がない」と家族内コミュニケーションが不足している。ただでさえ大変な試験であるのに「ぎすぎすした家庭の雰囲気」でうまくいくわけがない。最も大切なモチベーションが上がらないのである。非常に危険である。親もある程度は研究すべきである。忙しいのは十分理解できるが.....

6、2次の指導が不十分である。

2次の面接や小論指導ができる人材については「天然記念物」並に少ない。他学部と同じ小論指導を受けても医療用語の知識が欠けていては勝負にならない。

例えば、医学部入試でなぜ面接、グループ面接が必要なのか今1度ここで考えて見る「意義がわからないと人間は行動を起こさない」からである。現代の社会は「超便利社会」である。「超便利社会=人と話をしないで済む社会(コミュニケーションが最低限で済む社会」にものすごいスピードで進んでいる。例えばコンビニで買い物をしてレジが終わるまでに人と話すだろうか?今日1日ほとんど他人としゃべらず、無意識に黙々と全ての会話をメールで済ませていないだろうか? 我々はTV、DVD、パソコン、携帯にものすごく影響を受けているのではないだろうか?(今、この文章を読んでいる保護者であればパソコン、携帯のおかげで急速に漢字を忘れるようになっているのではないだろうか?)しかし、医師の卵が患者とコミュニケーションを取れないで済まされるわけがないだろう。そんな所まで医学部の教授が指導したいだろうか?例えば医師不足の深刻な地域に「うまくしゃべれない医師」を早急に提供する必要性があっても「お客である患者」の前に出せるだろうか?自分が患者の時に意志疎通ができない医師に安心をもらえるだろうか?さらに不安になるのではないだろうか?また、今の時代「お客である患者」は、ものすごく「医師(病院)から頂く薬」にものすごい情報武装して来る世の中である。その厳しい情報武装した患者に正確に自信を持って情報伝達できる素材であるかどうか?を見るのである。「筆記試験パーフェクトでパソコン、ネット、携帯電話中毒気味の受験生」と「点はある程度取っているがコミュニケーション能力は卓越したものがある受験生」のどちらを選ぶのか?という話である。2次で何度も失敗している場合は1度考えて見る必要があるのではないだろうか? パソコン、携帯中毒者は「対人恐怖症でデリケートで精神的に傷つき安い反面、携帯メールなら普段面と向かって言えないことも言える」という一面を考慮すればグループ面接は必要な試験であると言える。よく受験生が「面接のない所を受験する」というのを聞くが、無意識に自分の「コミュニケーション能力の弱さ」を自然に露呈しているように聞こえるのである。逃げていても仕方がないのである。将来、患者さんや患者の家族とメールで意志疎通するわけではないのだから......

7、模擬試験の結果だけで計り知れない部分がある。

成績毎に輪切りにされたA判定でも失敗する傾向がある。急に問題傾向が変化したり模擬試験の問題と医大の過去問題の「差」が大きいからである。

8、1年間の時間配分のわかっているようで本当は気がついていない「誤認識」がある。人間は自分の都合の良いように考える

よく「1年勉強すればいける」「今年の1年はやる!」という詞をなにげなく耳にすると思うが、実際は4月から12月までフルにやったとして「9ケ月」である。(当たり前だが現実には3ケ月不足している。)次に日数計算としてわかりやすく30日として30日×9=270日である。(そしてこの中には睡眠時間や食事や風呂の時間や音楽を聞いている時間も入っている。)更にわかりやすく言えば国公立であれば小論文を入れて8科目としよう。270÷8=33.75である。1科目34日で完成!(繰り返すがこの中には睡眠時間や食事や風呂の時間や音楽を聞いている時間も入っている。)そのうちの7割を勉強時間に充てたとして24日である。「1科目を24日で完成させる」というのは「超人的な世界」である。そしてセンター9割と2次対策となるとほとんど「職人芸」の世界である。24日で問題集を何冊解けるだろうか?「まだ時間はあるさ」と都合の良いように考えるのが人間の弱い所である。私立でさえ小論文を入れて5教科としても1科目54日(そのうちの7割を勉強したとしても1科目38日である)である。現役生が9月から国公立から「間に合わない」と急きょ私立に変更し、「私立中心の強者」にも負けてしまうのも「時間配分の認識ミス」が大きな原因である。つまり、スケジュール管理が最も大切なのである。また、生徒も生身の人間であるため、年に何回かストレスで勉強が手につかない期間がある。あるいは、机に座っているのだが、効果が上がっていない期間も必ず出てくる。人間なのだから当然疲れも出て来る。全く勉強したくない日もあって当り前である。そう考えると「時間が無意識に引き算されている」ことが理解できると思う。よほどの自己コントロールが必要なのである。誰も注意してくれないと絶対に自分に無意識のうちに負けてしまう」のである。人間は自分に都合の良いように考えるからである。家族に「たまにはゆっくりしたら?」と言われたら「そうだな、たまにはいいな!」となるのである。人間は弱い生き物なのです。

以上いくつか説明しましたが、「失敗には理由がある」と納得してがんばって下さい。

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