第46話 「うさぎの想いは永遠に!新しき転生」

  幾原邦彦演出 脚本 富田祐弘  作画監督 只野和子

 第45話で仲間を失ったうさぎは単身クインベリルに挑みます。彼女の最期の戦いを描いたのがこの第46話。この作品はこの後放送延長になりますが、元来は最終回として作られていただけあって、演出・脚本・作画共に最精鋭スタッフを結集した非常にレベルの高い作品となっています。

 ストーリー

 レイ達の犠牲により、うさぎはDポイントにやってくる。そしてうさぎの前に現れたのはクインベリル。そしてその横には、暗黒のエナジーに支配されたエンディミオンの姿があった。記憶をなくし、完全にダークキングダムの戦士となってしまったエンディミオンは、セーラームーンの命を奪おうと攻撃をかけてくる。うさぎは必死で衛に呼びかけるのだが、その言葉はダークキングダムの戦士であるエンディミオンには届かない。

 チェックポイント

 セーラー戦士達を失ったうさぎにさらに過酷な運命が迫るのがこの回。この回は何と言ってもうさぎの心情の描き方に注目。ここでのうさぎは、仲間達の死を無駄にしたくないとの想いだけで戦っている。衛の攻撃に全く手出しが出来なかったうさぎが、ベリルが「お前達のしていたこともすべて無意味だったのだ。」と言った途端に、衛に対してティアラを放ったのに注意。この時点での彼女を突き動かしている原動力がなんであるかを思わせるシーンである。しかしティアラを受けながらも再び立ち上がる衛に対して、彼女はとうとう戦うことを放棄する。うさぎとしては、本当は誰も殺したくないのである。「みんなが助かる方法を」というのは後のシリーズでも出てくるうさぎの行動の原則でもある。ここでのうさぎの衛に対する真剣な想いというのも感動的なシーン。そして衛はうさぎによって救われる。

 しかし彼女を待っていたのは、さらに過酷な運命であった。衛が正気に返ったのもつかの間。彼はうさぎをかばって息絶える。衛の「普通の女の子に戻って、かっこいい彼氏でも見つけろ・・。」のセリフと、それに対するうさぎの「衛さんが一番かっこいい・・。」という答えは、二人の愛情の深さを見せて視聴者の涙を誘う。そして倒れた衛を残してうさぎは一人戦う決意をする。この時のうさぎの「ごめん、キスできない・・。」のセリフも秀逸。倒れていった仲間達を思えば、自分だけ幸せな気持ちに浸ることが出来ないとうさぎは言う。この時衛はもう死んでいるのだから、うさぎが幸せな気持ちに浸っているはずはないのだが、あえてこう言って衛に対する最後のキスさえしないことは、うさぎの決意の固さを現しているのである。この時点でうさぎは自らの命を賭けることを決心したのであろう。

 そしてこの回のもう一人の主役とも言えるのが実はクインベリルである。このTVシリーズだけではあまりはっきりしないが、実は彼女はエンディミオンを愛したが故に、クインメタリアに支配されたといういきさつがある。それだけに終盤のプリンセスセレニティとの戦いにおける「この世界はすでに醜く汚れ切っている。」とか「この腐り果てた世界に信じられるものなどない。」などのセリフは、現実に絶望し、希望を失ってしまったベリルの心の叫びとも言える。彼女も実は愛や希望を信じている女性だったのだが、結局は現実に打ちのめされ、悪に染まっていったのである。そしてそれ故に、未だに純粋にこの世界や愛や希望を信じるセレニティに対して怒りを感じるのであろう。この辺りのベリルの屈折した心情、そしてその悲しさは、我々にも訴えかけてくるものを感じさせる。

 圧倒的な現実の厳しさを背景に、攻撃をかけてくるクインベリルに対して、うさぎはこの世界を信じる純粋で若い心で立ち向かうのである。それはあまりにも危うくはかなくも見えるものであるが、仲間達の助けもあって最終的にはベリルに打ち勝つ。これはうさぎの心の純粋さが、ベリルの心の中にまだわずかに残っていた善なる部分に作用したのかもしれない。ラストにおいてうさぎ達が転生するが、ベリルも浄化され転生したと信じたいのは私だけではないであろう。

 なおうさぎ達が転生するというラストは、救いや希望を持たせるものであるが、無条件のハッピーエンドとは言えないものであろう。しかしそれにも関わらず余韻はさわやかなものがあり、この辺りはシナリオのうまさかもしれない。

 なおこの回は演出・作画ともに秀逸なものである。また衛とうさぎの病室でのシーンや、ラストのセレニティとセーラー戦士達のシーンは、後に幾原氏が監督した「劇場版セーラームーンR」にも相通じるシーンであるので注目されたい。またこの回ではBGMの使い方も絶妙で、オリジナルな曲は何一つ使用していないにもかかわらず、非常に効果的な仕上がりになっている。終盤部分での「ムーンライト伝説」にシンクロさせた画面構成は見事なもので、かなり高度な演出である。またこの演出手法もやはり上記映画の終盤で見られているので覚えておいて欲しい。また衛が息絶えたシーンで薔薇が散ったのは、象徴的な画面構成であり、幾原氏が好むところでもある。このような象徴的な画面構成は後の幾原氏の代表作「少女革命ウテナ」で随所に見られてるが、基本的にはこの頃から使われているのだ。

 

 

今回のチェックシーン

 セーラームーンの前に現れたクインベリルとエンディミオン。

 クインメタリアの暗黒のエナジーに支配されたエンディミオン(地場衛)は、セーラームーンを殺そうとする。

 エンディミオンに対して、セーラームーンはとうとうティアラを放つ。しかし暗黒のエナジーを取り込んでいるエンディミオンはそのぐらいでは倒れない。

「お願い、思い出して、私はセレニティーです。」

 衛に対してうさぎの必死の訴え。そしてその訴えが衛の心に変化をもたらす。

 衛の記憶が戻る時に入る病室のカット。このシーンは後に劇場版「セーラームーンR」にも登場しました。

「ありがとう・・。」

 うさぎの心が通じて、正気に返った衛。

 そこに怒りに狂ったクインベリルの攻撃が。衛は体をはってうさぎをかばう。

「普通の女の子に戻って、かっこいい彼氏でも見つけろ・・。」

「衛さんが一番かっこいい・・。」

 正気に返った衛であるが、クインベリルの攻撃からうさぎをかばって力尽きる。

 衛の象徴である赤い薔薇が散る。これは衛の命が尽きたことである。

「ごめん、キスできない・・。」

 うさぎは倒れた衛を残して、戦いに行く決意を固めます。

「この世は私が支配する。」

 暗黒のエナジーを受けたクインベリルは巨大化する。

 そしてうさぎはプリンセスとして覚醒する。いよいよクインベリルとの一騎打ち。

「私は信じてる。みんなが守ろうとしたこの世界を、しんじてる!」

 圧倒的な力で攻撃をしてくるクインベリルにうさぎはプリンセスとして銀水晶の力で挑みます。

「みんな、私に力を貸して!」

 うさぎの呼びかけにセーラー戦士達の魂が結集します。

「うわーー!」

 セーラー戦士達と銀水晶のパワーの前に、クインベリルも最後の時を迎える。

 戦いが終わって、銀水晶の力で転生したうさぎ達。いきなり第1話に戻る。相変わらず寝坊したうさぎ。

 レイは神社の掃除をしています。しかし彼女たちは過去の記憶を失っているのです。

 同じく、相変わらず成績優秀な亜美と、成績ガタガタのうさぎ。彼女たちが再び出会うのいつなのか。

「30点・・。もっと勉強しろよ、お団子頭。」

 衛も転生しているのでした。

「私にはちゃんと夢があるんだから、どんな時にも私を助けてくれるかっこいい彼氏を見つけるって。」

 元気なうさぎの姿です。

 

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