日本に侵入したセアカゴケグモの温度と日長による休眠の誘導

田中 真一(大阪環境保全;大阪市大・理)・田中 一裕(北大・低温研)


 セアカゴケグモ(Latrodectus hasselti)は日本に侵入してから数回,冬を越したと考えられている.これが偶然によるものか,それともこのまま日本に定着し,分布を拡大しうるのかどうかは本種の低温耐性が重要な指標となるだろう.同じヒメグモ科に属するオオヒメグモ(Achaearanea tepidariorum)では,幼生および成体が短日条件で休眠に入り,温帯域の個体群では同時に耐寒性が増すことが知られている.そこで,本種にもこのような休眠が存在するかどうかを調べた.

 実験には大阪府下で採集された個体群を用いた.卵のうは25oC一定の16L-8D(明期:暗期=16hr:8hr)に設置し,出のうした幼生を,1)25oC,16L-8D;2)25oC,12L-12D;3)20oC,16L-8D;および4)20
oC,12L-12Dの4つの条件でそれぞれ個別飼育した.25oCでは日長にかかわらず発育速度はほぼ同じであったが,20oCでは12L-12Dで明らかな発育遅延が見られ,オスの場合,終齢幼生で発育を停止した.この結果は本種が低温・短日の条件で休眠に入ることを示すが,このことが温帯域のオオヒメグモのように耐寒性の増加につながるかどうかは今後の課題である.


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