映画「エンドレス・ワルツ」と阿部薫

yambow 電子男  

 マイルス・デイヴィスが逝った時、「これでマイルスの完全なディスコグラフィーとコレクション ができる。」と、納得していたコレクターがいた。実際、伝記とか 伝説といったもの は、本人が死んだ後は、 その本人の意志とは無関係に(当然のことなのだが)様々な人の『思い』によって、偶像化されてゆく。 伝説と化した天才ジャズ・インプロヴ ァイザー、阿部薫。正に、『天才 と狂気は紙一重』を地で生きたミュージシャンだ。
 映画「エンドレス・ワルツ」は彼の生前を実際に知っている若松孝二監督と、鈴木いづみ(阿部薫のヨメさん)の『思い』を小説にした稲葉真弓の原作によるものだ。 映画としては、イイ出来だと思う。母親の自殺という衝撃的なシーンから始まったにもかかわらず、実の娘さんも、涙して喜んでくれたそうである。
 映画の大半は、阿部薫と鈴木いづみの狂おしいまでの愛憎物語である。逆に、阿部の音楽性とか芸術性云々に関しては、映画で表現するべきものでもないだろうし、表 現できるものでもない。(それに興味のある人はCDでもっと音楽を体験するしかない。)もし、音楽とか芸術とか云うたぐいのものが、男女の増愛から生まれるものであ る、とするなら、この映画は、天才と呼ばれた彼の音楽性の核心に迫る内容なのかもしれない。
 『男と女』これは、何時の時代でも、永遠のテーマであり続ける。若松監督も、「阿部薫」という 実在の人物を借りて彼なりの「男と女」のひとつの在り方を、表現 したのだろう。最 後に一言。 『男の身勝手と女のわがまま』薫の身勝手は、充分に描かれていたが、いづみのわがままはスクリーンの 裏に隠れていたようだ。

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この文章は「音楽庵JazzyCom」の「フォーラム」の「Yambow JAZZ徒然」から転載させていただきました。

作者紹介

yambow 電子男さんとは、岡山の「LPcorner JAZZ岡山」というレコード屋さんの経営者。
「ジャズ全般扱っています。その他もろもろ音楽に関する面白いことやっています。
去年岡山でも、阿部薫の映画「エンドレスワルツ」の上映会しました。
その利益で若松監督と副島さんを呼んで、みんなで打ち上げしました。」
という行動力のある方。

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この文章の他にも、「若松監督との打ち上げのエッセイ」が
tsuge's Free Improvisationにもある。


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--1997.08.19 初版作成--