阿部 薫に関する本といえば、下記の2冊が決定版。 阿部薫 1949-1978 文遊社 定価3,398円(税抜き) 文遊社:郵便番号113 東京都文京区本郷2-20-9 TEL:03-3815-7740 なにも言うことはありません。この1冊で阿部薫のほとんどすべてが判ります。 (じゃあこのホームページは不必要?って。とんでもない。ここは情報交換の場にしようという目的があるんです。) 「阿部薫覚書」(ランダムスケッチ社 絶版)の再編集版ですが、追加されたものが多い。 (どういうわけか削除された文章も少なくない。残念なことだ) 大型書店で手に入るはずですが、ニフティなどでのオンラインショッピングでも入手可能 です(手垢がついてなくて、交通費を考えると安上がり)。 間章はもちろん、五木寛之、立松和平、中上健次、坂田明、近藤等則、坂本龍一など各界 有名人や音楽関係、ライブハウス関係者らが阿部薫の思い出を綴っています。特にご家族の 書かれた文章は涙なしでは読めませんでした。 また、ここでの「年譜」による演奏記録のすさまじさに驚嘆。 未発表音源の多いこと(是非とも発表をお願いしたい)。 さらに、あなどれなかったのが(ごめんなさい、私が悪かった)、 鈴木いづみ 1949-1986 文遊社 定価2,427円(税抜き) 「鈴木いづみ」とは小説家であり同い年である阿部薫の奥さんでもあった女性。 ヌードモデル、ポルノ女優「浅香なおみ」を経て小説家となる。時代の異端児。 破天荒な夫婦生活ではあったが、阿部薫とは魂が共鳴していた。 そして、既に法的には離婚していたが同居を続け、阿部の最期を見取る。 彼女自身は1986年2月に自宅で首つり自殺によりこの世を去る。 「阿部薫について書けるのは私(鈴木いづみ)だけだ」ったはずなのに、それは果たされ なかった。誠に残念である。 この本は「阿部薫 1949-1978」と同時に出版された。 小説家「鈴木いづみ」の評伝ではあるが、阿部薫は彼女を語る上で切り離すことが出来な い存在であり、「阿部薫 1949-1978」とは異なる面から多くを知ることが出来る。 この他に、文遊社より「鈴木いづみコレクション全8巻」が発売途中であり、既発売の第 1巻「ハートに火をつけて!」は自伝的小説であり、第5巻「いつだってティータイム」( エッセイ集 原本は1978年出版)には、ハッキリとは書かれていないが阿部と思われる人物 が所々に現れる。 また、1997年8月20日に発刊された第7巻「いづみの映画私史」には阿部の死を意外なほど 淡々と綴っている「死んだ男がのこしたものは」が収録されている。また、「グッバイ・ガ ールはやめようか」では阿部のことを「彼は、わたしの宗教であった。」と語る。 そして、「阿部薫のこと...」を収録したシリーズ最終の第8巻が1998年01月20日に発売。
上記の本は、内容が充実しており、かつ、比較的簡単に手に入る「阿部薫」の貴重な資料 であり、価値の高いものと思ってます。 しかし、音楽抜きで、言葉や文章でいくら表現しようとしても伝えきれないし、当然「阿 部薫」は再現・再生されない。思い出を語ることは出来ても、互いの記憶を共有することま では不可能なように。 幸い阿部の録音は数多いし、彼の発した音は表現豊かで魅力たっぷりである。これらの音 を聴き、執筆者達の思い(出)を読むことで、阿部薫から「音楽」について多くを学ぶこと ができるように思う。 もし、フリージャズと呼ばれるジャンルに興味がおありなら、副島輝人の「現代ジャズの 潮流」(丸善ブックス004)が詳しく分かり易い。阿部に対する説明はたった一言であるが、 世界のフリージャズについてその発生と変遷を、代表的ミュージシャンとグループを挙げ解 説している。 あと触れるべきかどうか迷っているのが、稲葉真弓による小説「エンドレス・ワルツ」で ある。主人公は鈴木いづみと阿部薫。興味のある人はすでにお読みになられたと思うが、果 たして、どこまでが真実で、どこまでが虚構なのかお分かりになったでしょうか?稲葉は何 を目的に彼らを小説にしたのか?すべてが真実なら大変嬉しいが、「小説」と言う以上は、 残念ながら、その内容は「嘘」であると言わざるを得ないように思う。雰囲気だけを読みと ればいいのかも知れないが、生々しい文章は我々に誤解を植え付けるだけかも知れない。 (と思って、私は本屋で3行ほど立ち読みしただけである。どなたか御意見をお送り下さい)
--> --1998.02.10 第6版作成--