ボランティア活動を通じて

 誕生日ありがとう運動というボランティア活動に参加したきっかけは、高校生のとき見た小さな新聞記事です。「使用済み切手をお送り下さい。知力ハンディキャップ問題に関わる啓蒙活動に役立てます」とありました。一度使われた切手が、よみがえるという不思議。身の回りにボランティアの機会が、存在したことの驚き。自分にもできることがあるんだ。ボランティアとして、参加できることがあるんだ。そう思えたことが、ボランティアとしての第一歩でした。そのときから、自分にできることからはじめようと思いました。

 その頃、私は京都に住んでいて、いつしか京都友の会の映画会に参加し、月一回の施設への訪問もはじめることとなりました。施設訪問といっても、部屋の掃除をしたり、修繕の手伝いをするわけではありません。そういうお手伝いをすることもありましたが、大抵子どもたちと、その日一日遊ぶというものでした。

 初めての施設訪問のときは、あっと言う間に時間が過ぎてしまいました。帰りは喫茶店に寄り、その日参加したメンバーで反省会です。インベーダーゲームができるテーブルは、足を伸ばすのには窮屈でした。みんなそれぞれコーヒーなど注文をして、今日一日どのように過ごしたか、自己紹介を交えて感想などを述べていきました。後に、施設の子どもたちに、誕生日カードを贈る割り振りをしました。驚いたことに、子どもだと思っていた人たちは、ほとんどが私より年上でした。何だか、複雑な気持ちになりました。「遊んであげた。何々してあげた」というような思い上がった気持ちが、もろくも崩れた一日となりました。

 会の啓蒙活動のひとつに、成人式の日のビラ配りがありました。私も京都会館の前で、晴れ着を着た人たちに、運動のビラ配りをしたことがありました。次の年、その会館で自分が成人式をするとは夢にも思わずに。その頃の会館は、車椅子の入場を拒むかのような設計がなされていて、会場にそのまま車椅子で入場することができませんでした。同じ社会に住んでいて、同じ二十歳の人が、式に出席するにも困難な状況が、そこにありました。車椅子が狭い階段をのぼれるように介助するという形で、次の年、私は成人式を迎えました。車椅子を押したのも、そのときが初めてでした。自分の目線というものを考えたのも、そのときが初めてだったような気がします。自分が立った姿勢だけで物事を見ていると、見えない部分がたくさんあることに気づきます。いろんな目線で物事をとらえないと、真実が見えてこないとも言えそうです。

 同じ社会に住んでいるみんなが、バリアフリーの生活できるようになるには、物理的な建物の構造を問題にしなければなりません。しかし、自分の内なるものにも目を向けなければなりません。私は、自分の心の中に生れてくる差別に悩むことがあります。どうしたら、もっと素直になれるのか。自然体でいられるのかと。誰にだって、悩みはあるものだ。目に見えないハンディがあるのだ。そんな慰めにも似た言葉で、自分を納得させようとしている私がいます。ボランティアという言葉が、本当に必要なのか問うこともあります。自然体でいられたら、そんな言葉はいらないのではないかと思えます。素直な行動そのものが、ボランティアではないかと。障害者と言う言葉が、本当に必要なのでしょうか。区別するのにいるのだとしたら、人は皆、唯一の名前があるのですから、それで区別できるはずです。

 「どうつき合えばいいのか」と言う大きな問題をテーマとして掲げても、すぐにはその答えは見付かるはずもなく。しかし、諦める必要もなく。日常生活の中にそのヒントが隠れているはずですから、それを見逃さにようにしていきたい。

参考:誕生日ありがとう運動に参加したきっかけ

これだけ手話 これだけ手話
はじめてのボランティア
これだけはおぼえておきたいな

田中 ひろし (著)
二宮 祐子 (編集)
出版社: 同友館 (1996/12)
単行本:65ページ

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誕生日ありがとう運動 京都友の会


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