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 デンマーク高齢者福祉最前線ほんね情報!

「老人ホーム(プライエム)を超えて」(かもがわ出版)の著者松岡洋子が贈る、本音のデンマーク高齢者福祉最前線メルマガ。施設と住まい、ケアに焦点をあて、日本との比較論に本気で迫る!最新の日本を通して、最新のデンマークを覗いてみない? 発行は不定期です。

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*****マガジンの見本です*****

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松岡洋子の
デンマーク高齢者福祉最前線ほんね情報!

<「老人ホームを超えて」を超えて!>

第1号 (2001/7/20)
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はじめまして!松岡洋子です。今、私はデンマークに来ています。
処女作「老人ホームを超えて」では、「住まい化した施設」を中心に紹介し
ましたが、私の興味はいまや「高齢者が元気で暮らすための高齢者住宅」へ
と広がっています。
今回は、そんな「高齢者住宅」を見に来ました。
もち、自腹!だから、言いたいこと言い放題!一生懸命に見て、真実を伝え
ます。

コペンハーゲンから、電車で北西へ約15分。リュンビュー市につきます。
そこら、バスで約30分。約200戸が集まる集合住宅街に着きました。
この集合住宅街はいわゆる日本のマンション形式(三階建て集合住宅と二階
建て集合住宅)の建物が、中庭を囲むような形でレイアウトされている住宅
団地。そして、その中の一棟が高齢者住宅になっています。
ここには24戸の「若者住宅」もあります。
デンマークでは、18才で多くは親元から独立しますから、そんな若者に向
けての住宅が雇用意されています。私はあまり見ていませんが、40F前後
で、家賃も2000krまでで安く設定されています。
ここには、一般住宅(165戸)、若者住宅(24戸)、高齢者住宅(24
戸)の計231戸があります。
こういうと、日本の住宅関係者が「「多世代交流型タウン」ですね」などと
大喜びされそうです。が、彼ら(高齢者)がいう「Social life」は、若者や
子供をもつ世代との交流によって実現するような安易なものではないという
のが私の感触です。かれらはもっと固有の文化をもっていて、いつまでも社
会・人間とつながっていたいと願って行動をしている。
赤ちゃんを見ることで心がいやされることはあるかもしれない・・・と、こ
こまでは妥協しても、若い世代と交わることでかれらの「Social life」がよ
り崇高なものになっていくとは、とても思えないのです。
第一に、若者は高齢者にそれほど興味をもっていないし、女性は働いている
ので日本にあるような「公園デビュー」的な、昼間公園で子供を遊ばせる
シーンは皆無、よってそこで高齢者と若い世代の心温まる関係なんて皆無と
言ってよい。世代間連帯は税金によってのみ、行われているのでは?という
のが持論なんです。昼間の住宅街はみじめなくらいに閑散としています。

しかし、高齢者の住まい方のひとつとして「多世代交流タウン」というコン
セプトは少し気になっていたため、非営利住宅協会のアナスという男性に聞
きましたが、かれは言下にこう答えました。「それは選択の問題でしょう
(彼らがそれをいいというなら住めばいいだけのこと)」と。目からウロ
コ。
日本では、住まいのあり方まで作る人が決めて(一応調査はして)、「ほ
ら、あなたの欲しかったのはこれでしょう?」と突きつけるんですよね。
売れる住宅を作る発想が強すぎる。彼らが望む住宅を追求すれば、おのずと
売れるとおもうのですがねえ。

高齢者住宅と普通の住宅の違いは、外からは一見しては分かりませんが、一
般住宅との構造的な違いは以下の点があげられます。
 ―建物(一棟になっている建物)の入り口に自動ドアがついている。
  車椅子の人でも簡単に出入りができるよう、建物の入り口が自動ドアに
なっていて、
  ボタンを押せば自動で開き、勝手にしまってくれる。
 ―エレベータ付き(二階上の高齢者住宅には義務づけられている)
  因みにバウパルケンの二階建て一般住宅の二階には直接階段で登れるよ
うになっていた
 ―室内の床は、完璧なまでに段差がないバリアフリー。
 ―トイレが広い。(介助ができるよう)
 ―引き戸がうまく活用されている(寝室のドアなど)
 ―比較的コンパクト(悪く言えば、狭い)
  ボウパルケンの一般住宅の平均の広さは不明ですが、多分100平方
メートル前後と思われるボウパルケンの住宅の広さのバリエーションが33
〜117平方メートルでした。それぞれの、タイプの詳細は現在不明です。

また、寝室に持ち込まれたリフト、バスルームのシャワーチェア、地下の電
動車椅子などはこの住宅に備え付けのものではなく、あくまでヨーゲン・
ベック(夫)さんに市から無料で貸し出されたものである。

建物に管理人などはいません。集合住宅の場合、庭掃除・ごみ集め・冬の雪
かきなどのケア・テーカーはいますが、日本にいるようなマンションの管理
人とは全く異なります。
ソフィルン(P200)の場合、高齢者タウンの核としてデイセンターがあ
りました。そして、住人はデイセンターに遊びに行く。そのセンター長が高
齢者住宅に住む老人たちのこともよく知っていて、住宅の図面ももっていた
りしたが、ここにはデイセンターなどなく、純粋な住宅団地であるので、こ
うした管理・世話人は全くありません。

また、デンマークの古都ロスキレ市からバスで約1時間。田舎町には、コレ
クティブ的な住み方をしている人たちの高齢者住宅がありました。広さに応
じて5種類。58,65,72,81、92平方メートル。

かれらは、新規入居者は自分たちで決めるといっていました。が、市の住宅
でどうしてそのようなことが可能なのか?
ここは、高齢者住宅でありながら「Senior Bofaelleskab」(=シニア・コハ
ウジング)というコンセプトでつくられた住宅です。コレクティブよりは連
帯は薄いですが、コレクティブハウスに近い形で企画された住宅です。
拙著P210で紹介している「クレアティブ・シニアボ」は、共用スペース
に4戸が接する形で配置され、5戸がつらなっています。さらに、3戸が全
くの独立で建っています。
ですから、ブラームスネス市の高齢者住宅は一般の高齢者住宅と「コレク
ティブ・シニアボ」の間に位置する高齢者住宅だと考えることができると思
います。

各戸は、共用棟から全く独立しているからです。
また、「Bofaelleskab」は「co-housing」と訳され、「kollektiv」よりは共
同体的結びつきはゆるやかと、SD福祉用語辞典にも書いてあるので、この
解釈は大丈夫です。

そしてこれも「クレアティブ・シニアボ」と似ていますが、現在住んでいる
人たちは2年をかけてよい関係を作り上げ、住民委員会(5名。4年任期が
2名、2年任期が3名)も作って、助け合いながらよりよく社会的に暮らし
ていこうとしています。

助け合いや、ソーシャル・ライフのイメージは次のようなもの
 ―病気になった時に助ける
 ―困った時には買い物を手伝う
 ―共用棟で、会議したり、食事したり、
  一緒に歌ったり、パーティしたり、バーベキューしたり
 ―共用棟にはボードを作って
  「私は木曜日に芝居を見に行くけれど誰か一緒に来ない?」
  「フランス語の勉強を一緒に始めない?」
  という誘いのメッセージを貼るなど。

よって入居者決定について、彼らにはかなり大きな裁量が認められていると
考えられます。
また、「誰を入居させるか」という点について、市の権限が大きい地方自治
体と小さい地方自治体があります。
つまり、非営利住宅協会に高齢者住宅の企画・建築・運営を丸投げしてしま
うと、入居者決定までも任せてしまうこともあると聞いたことがあります。
これは、本当に市によって全くことなるので実状は、把握困難。この物件
は、非営利住宅協会の裁量権が大きく、それに伴って住民の入居者決定権も
強くなっていると考えることができると思います。
いろいろなタイプ、高齢者住宅が増えています。
コムーネに采配を任せて、高齢者の声を聞いて住宅を作ると、個性は本当に
まちまちです。

 


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