家族への5つの提案

薬物依存に立ち向かうためのガイドブック2 山野尚美著 大阪ダルク支援センターより抜粋  

1. 薬物依存者だけでなく、自分自身のことにも関心をもつこと

 問題を抱えていて助けを必要としているのは、薬を使っている本人だけだと思っておられませんか? もしかしたらそうではないかもしれません。あなたは、自分自身も傷ついたり、疲れ切っていたりしていることを忘れていませんか?我慢したり、気にかけないようにしていませんか?

 あなたは、自分のつらさを声に出してもよいのです。そしてそれを和らげるために、あなた自身のための助けを求めてもよいのです


2. 薬の使用をやめられるのは、本人だけだという事実を受け入れること

 これは、とても苦しいことかもしれません。しかし薬物依存からの回復は、薬を使わずに生きていくということです。本人以外の人の努力によって、もたらすことができるものではありません。もし、24時間本人に張り付いて薬の使用を阻止し、そのまま一生面倒を見るというなら別ですが。


3. 本人のために、自分を犠牲にするようなことをしないこと

 あなたが苦行を重ねる程に、本人の回復が進むというわけではありません。”本人のために”という大義名分の下になされる努力の多くは、勝ち目のない勝負に賭金をつぎ込むような結果に終わりがちです。これはあなたをひどく落胆させるとともに、本人へのいらだちや怒りを蓄積させます

4.本人が薬物依存になったのは、あなたのせいではないことを認識すること

 薬物依存は病気です。ある種の薬物を継続的に使用することによって、依存が生じるのです。あなたに落ち度があったから、本人が薬物依存になったということを裏付ける、医学的な根拠はありません。あなたが自分の落ち度をあれこれ思い浮かべて、それを埋め合わせようと四苦八苦することで、解消される問題ではありません

 

5. 薬物問題以外の部分に目を向けて、本人との関係を育てていくこと

 薬物とのつきあいをどうするかについて、あなたが直接的にできることはほとんどありません。しかし、あなたが薬物依存者の家族であるなら、あなただけにできることがあります。それは、薬物依存の人としてでなく、家族として本人をとらえて、関わりをもっていくことです。薬物依存という問題に対して治療や援助という形で関わることができる人は、他にもいます。しかし、家族として本人と向き合えるのは、あなただけなのです。

 最後に付け加えるならば、この家族としてのかかわりに模範例はないということです。家族の中に薬物依存の人がいてもいなくても、「よそはともかく、うちはこう」という、それぞれのおたくの流儀で、本人を含む家族全員が納得し、満足できる暮らしを送れることが大切なのではないでしょうか。どうか「薬物依存の人を抱える家族としての人生」に自らを囲い込まないでください


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