・・・コバルト文庫系小説のお薦め

「買うは一時の恥、読まぬは一生の損」 どっかで聞いたことがあるような言葉ですが(^^; まぁ食わず嫌い程損をしているものはないと思うんです。男性諸氏にとってはちょっぴり高いハードルもあるかと思いますが、壁を越えた時にはきっと何か得るモノがあるはず...たぶん...きっと...(^_^;


「機械の耳」小松由加子/集英社コバルト文庫 (ISBN4-08-614460-3)

雪森かのこ、彼女の左耳は幼い頃デンキサンショウウオにとられてしまっていた。西崎孝行、彼は生まれる前の事故の為に体の多くの部分を機械で補っていた。失った耳にコンプレックスを感じ、バイオリンをひくことに行き詰まりを感じていたかのこが、自らの一部でありながら受け入れることのできない孝行の機械の左耳をつけた時、彼女の前には今まで感じられなかったもう一つの世界が広がっていた。二人が互いの見失っていたものを得ることのできた夏祭りの夜の出来事をちょっぴりセンチメンタルに、ちょっぴりコミカルに描いた作品で、童話的な雰囲気が独特の味をだしているところがいいですね。

表題作ほか「かえるの皮」を収録。


「天夢航海」谷山由紀/ソノラマ文庫 (ISBN4-257-76826-6)

『天夢界紀行』という名の冊子に綴られた物語。それは『ここ=現実』とは違う世界、別天地の天夢界にまつわる物語。地上に墜ちてきてしまった天夢界の人々の望郷の念、決して幸せだけが待っているとは限らなくても捨て去ることのできない想いに、本を読む人々は自らのおかれた環境、立場、人生をそこに重ね合わせて、いつか自らを『天夢界=本当の世界』へと連れ戻しに来てくれる船を待ち焦がれるようになっていた。しかし偶然冊子に挟まっていた船のチケットを手に入れた人々は、それぞれに異なる搭乗の日を迎える。それは必ずしもチケットを入手する前に望んでいた形ではないこともあった・・・この本はそれらを描いた連作短編集です。逃避的な意味で描かれがちなテーマですが、この本はそこにとどまっていないところが読後感の良さを生み出していると思います。


「ちょー美女と野獣」野梨原花南/集英社コバルト文庫 (ISBN4-08-614322-4)

『絶望の森』の奥深くに棲む、彼は友の魔法使いの手によって獣の姿にかえられたトードリア国の王子ジオラルド。その傍らにはしきジェムナスティ国の王女ダイヤモンド。二人は獣と人という間にもかかわらずを育み、睦まじく暮らしていたが、ある日決心したジオラルドはかけられた魔法を解くためにダイヤモンドと愛の誓いを、口づけをかわした。目も眩むような閃光に包まれたジオラルドはその身を在りし日の人の姿へと戻っていた。そしてその姿を見たダイヤモンドは・・・

「信じらんなーーーーーい!
  かわいくなーーーーーーい!
   サイテーーーーー!」
 あれ(^^;?

だてにタイトルに『ちょー』が付いているわけではありません(^^; 魅力的なキャラが入り乱れてあれやこれやの大騒ぎをひき起こすファンタジー...でいいのかなぁ(^_^;?

ダイヤモンドとジオラルドが紆余曲折の末に無事に結ばれるタイトルの第1作からのシリーズ。


「楽園の魔女たち」樹川さとみ/集英社コバルト文庫 (ISBN4-08-614153-1)

 ある日4人の少女のもとに不思議な手紙が届いた。差出人は“楽園”の主、エイザード、書かれていたのは彼女達を弟子として“楽園”へ招く言葉であった。それぞれに思うところのあった4人はエイザードのもとに集い、料理番のナハトール、使い魔のごくちゃんとともに、修行の日々が始まったのであった。

・・・嘘は書いていないよな(^^; でもこれだと“ただの”本格派ファンタジーのようなんですが、それで終わる話ではありません。まず弟子達からして『外見も性格も無邪気というよりお子様なんだけど実は人妻』なマリア、『一見すらりとした長身の美少年、でも口下手で素直な正確が災いを招いてしまうれっきとした女の子』なファリス、『大陸随一の学び舎の元主席、冷静沈着という言葉では表現しきれない妙な性格』なサラ、そして『大陸最大の版図を誇る帝国皇帝の孫娘にして、カ◯◯以外の生物に対してほぼ不敗を誇る無敵のプリンセス』のダナティア、いずれ劣らぬ個性派揃い。もちろん彼女等の師匠であるエイザードにしても正体不明、真意不明、行動不明な変人ですから、これで平穏無事な生活がおくれるわけはありませんヾ(^o^;ぉぃぉぃ

第1作「〜賢者からの手紙〜」以降のシリーズ作品。


「十二国記」小野不由美/講談社X文庫ホワイトハートほか

 女子高生、中嶋陽子は夜な夜な夢の中で迫り来る異形のモノ達に苦しんでいた。次第に距離をつめられて、いよいよ今日明日にはその歯牙にかかるかと思われた日、学校にいた陽子の元に一人の男が現れたことから夢の世界の出来事が現実となって襲い掛かってきた。その男、ケイキに連れられるようにして陽子は異界、『十二国』へと旅立ち、自らの出生とともに大いなる運命の流れを知ることとなる。

う〜ん、言葉では表現しきれない程大きなスケールで、それに負けないぐらいキャラクターが一人一人しっかり立っているので、シリーズが続くにつれて物語の厚味がどんどん増しています。それぞれがそれぞれの考えでそれぞれの道を歩んでいる。まさに『生きている』物語だと思います。


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