オ ー ル ド ヒ ロ
    ヒロ空港に着き、予約していたレンタカーをピックアップして、
 まずはナニロアホテルに向かった。
 
 今回の滞在ではほとんどヒロホテルに泊まることにしていたが、
 最初の2日間だけは、古いなじみにも顔を見せておかないと「ばち」が

 あたるような気がする。

  ナニロアホテルはヒロ湾に面したバニヤンドライヴ沿いにある。

 空港からはそのまま海に向かって走っていく感じでいけば良い。

    スイサン・マーケットの横を過ぎてバニヤンツリーが両側にうっそうと

 茂っている道を進むと、ホテルは直ぐそこである。

     ここから目と鼻の先には、リリウオカラニ公園がある。そこには、

 きれいな日本風庭園があり、その先には、ココナッツアイランドという

 小さな島がある。

  そこは、昔日本人学校があった場所であると聞いているが、この街を

 襲った2度の大津波とハリケーンは島に何の跡形も残してはくれていない。

    日本風庭園も何度かのハリケーンのせいで、ちょっと寂れた感じになって

  しまっている。

    さて、ホテルに到着した。

    ここのホテルは隣のヒロハワイアンホテルと並んでヒロ湾に面して建って

 おり,観光客も結構泊まっているはずではあるのだが、ハワイ一晴天率が

 悪いといわれるヒロ天候のせいもあるが、ほとんどの客は火山観光か早足

 のサークルアイランドツアーの足場として利用しているため、ほんの1〜2日

 程度しか滞在せずに足早に過ぎ去ってしまう。

    その上昼間は火山観光なんかに出かけてしまうので,ほとんどホテルで

 団体客、特に日本人を見かけることはまずないし、ヒロの街中であれば

 ほとんど見かけることはない。

    ホテルのエントランスに車をつけると、TANAKA氏が荷物をピックアップ

 してくれた。

    ヒロの街ではこのホテルが定宿だから、TANAKA氏とは顔見知りに

 なっている。

  「また、お世話になります」と言いながらチップを渡すと、彼は、「また、コナまで

 毎日通うのかね」と笑った。

    彼は私がこのホテルに泊まるようになるずっと前からここで働いている。

   そのためベルボーイと呼ばれるには、多分相当歳を取りすぎているのだろう、

 笑うと顔全体が皺だらけになる。

    フロントに行くと、私の顔を見ただけで、今度は短いんだなとだけ言って、

 部屋の鍵を渡してくれた。

    鍵を受け取ると、TANAKA氏が荷物をカートに載せて部屋まで運んでくれた。

  もちろん部屋まで世間話をするためである。

    彼が言うには、ヒロもここのところの不景気で、良い話は聞こえてこない、

 まるでこの街の天気みたいだと、肩をすくめながら小さく苦笑いした。

    そんな話をしているうちに部屋に着いた。彼はマスタキーで部屋を開けてくれて

 荷物を運びこみながら、聞いてきた。

  「また、あの店にも通うのかね」と、「ああ、行ける日はね、とりあえず明日の午前

 中はオフだから早速行ってみるつもりだ」と言うと

  「あんたも、相当の変わり者だね、ヒロに泊まって、古びたファウンテンサービスに

 通いつめて、その上コナの街まで仕事に毎日通うなんて、めったにいないというより、

 クレイジーだね」

   「いや、僕はこの街が好きなだけなんだ。」と言いながら、チップを手渡すと

   「そうかい、じゃあがんばってな」と顔中皺だらけの笑顔でそう言ってから部屋を出

ていった。
 

    ファウンテンサービス へと続きます。

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