楽理
邦楽(三曲)関係の人間は、作曲などといった一部専門職の人を除けば、音楽理論に弱い様い方が多いようである。
確かに、理論をまるっきり知らなくても尺八を吹くことが出来るし三味線の演奏も可能である。しかし、たとえば、絵画にたとえて言うたするなら、「ピカソの絵も、児童が落書きした絵も、鑑賞する者が良いと言えば、どちらも同じ価値がある」と主張するようなものである。
確かに個人的にはそう評価したとしても、それが一般的、普遍的な真理、評価であるはずがない。児童の落書きした絵はやはり落書きであって美術館に展示されたりする価値が有ろう筈はなく。また1億円や2億円もの値段が付くはずはないのである。
何れにしろ、ものごとを論じるには、絵には絵の、音楽には音楽の最低の知識位は持ってなすべきではあると思います。
音について
ここで言う音は、音楽として使われる音のことです。
音楽を聞く者にとって、聞こえてくる音は当然心地よい響きのものであり、心安らぐものであることを期待し、箏や尺八が奏でる旋律、太鼓の打つ音、時には小鳥のさえずりや小川のせせらぎのような音にも耳を傾けているのであります。
時には複数の音が共鳴している場合も有れば、微妙にずれた緊張した響きの場合もあります。
しかし、聞こえてくる一つ一つの音は普通の音なのに、全体として不安定で不快に聞こえるような場合もあります。
音について述べるなら、聴覚に限らず、視覚なども含めた総合的な心理考証が必要かとは思いますがここでは一般的な音楽理論のみを叙述しています。
- 音の状態により分類
- 純音:もっとも単純な振動の音。長さ、高さ、強さの3要素を持った音。
- 楽音:音の4要素を持った音
- 噪音:不規則な振動で強さと音色を持つ音
- 音の4要素
1・長さ:音の連続している時間している長さです。
2・高さ:音に振動数で、振動数が多いほど音は高くなり、振動数の少ないほど音は低くなります。
音の高さは、音の高さは振動数により、等比的に表されます。
3・強さ:音の振動の幅の大小によります。
4・音色:音の原音(純音=正弦波振動)の他に倍音が含まれ、この倍音の種類と量により音色が決まる。
- オクターブ
基準の音から完全8度上(あるいは下)の音あるいは隔たり(音程)を言う
一般に完全8度は、基音の倍音にあたる。幹音名とも言う。
- 倍音
楽器の奏でる音には倍音が様々に含まれています。この倍音の種類や大きさは、楽器により違います。これらが合成されて音色となります。
倍音 |
基音 |
第2倍音 |
第3倍音 |
第4倍音 |
第5倍音 |
第6倍音 |
第7倍音 |
第8倍音 |
第9倍音 |
第10倍音 |
振動数
倍率 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
実例(Hz) |
220 |
440 |
660 |
880 |
1100 |
1320 |
1540 |
1760 |
1980 |
2200 |
音名 |
A |
A |
|
A |
|
|
|
A |
|
|
|
|
E |
|
C♯ |
E |
|
|
B |
C♯ |
基音に対する
振動数の比率 |
|
|
3/2 |
|
5/3 |
3/2 |
|
|
9/8 |
5/4 |
基音に対する各音の振動数比率は、実例では基音として、この場合A音を使っている。倍音が大きい場合には、その音の直近下位のA音を分母として振動比率を求めている。たとえば、第6倍音は直下のA音は第4倍音であるからこの第4倍音を分母として比率計算をする。
- 音名(幹音名):変化記号のないもとの音の名前
音楽で使う音の名称
日本では幹音名、ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハである。変化記号には「変」と「嬰」を使う。
イタリアなどは、Do,Re,Mi,Fa,Sol,La,Si
英米では、C-D-E-F-G-A-Bを使う。変化記号は、sharp、fiatを使う。
ドイツは、C-D-E-F-G-A-Hで、変化記号は幹音記号に♯の場合「is」,、♭の場合「es」又は「s」を付ける。
三和音などの場合、其の基本となる底音を根音という。
- 移調・転調:移調は音域の関係で曲全体を平行移動させることであり、琴などの場合の第5弦を希望する音高に決め、其の音を基準に平調子なら平調子に調絃するようなもの。移調は曲の途中で、他の調子(長調、短調など)に変わること。三絃では曲の途中で調子変えをokナウ場合や、箏曲では「支」を動かす様な場合。
- 派生音::派生音とは変化記号(♯、♭)の付いた音のことを言います。
- 変化記号:変化記号は、♯と♭を言う
調号:楽曲の初めに又は複縦線横に置かれ、変化記号の他の音全てに適用される。
臨時記号:♯、♭など5種類有り、記号の置かれた音と、その後の同一小節にある同音やオクターブ音に作用する。
- 音程と度数
音程は音と音との距たりのこと
オクターブを越える場合には複音程と呼び9度、10度などと言う。この場合には8度までの音程を単音程と呼ぶ。
1オクターブ上に、規則的に音を並べることによって音階を作ることが出来る。
音名については、基準とする音との振動比が2倍の音は、オクターブの関係を持った同名音となる。
たとえば
220Hzのオクターブ上は、440HZとなり 440Hzのオクターブ上は880Hzになる。 660Hzではない
440/220=2 と言うように「比率」でもって表す
440-220=220 と言うような「差」の関係ではない。
この1オクターブの間にては連続した無数の振動数を持った音が存在するわけであるが、この中からある特定の振動数の音を選び、並べることによって音階を作ることができる。
日本では、基準音を含めた5音を選ぶ。一般に洋楽と言われる7音階も同様で、選ばれた音によって音階が出来る。
この音の選び方には古来からいろいろ考案されてきたが、絶対的なものはないが、現在使われている代表的なものを後述する。
また、音と音の間の音階の数によって「度」で表す。
【ハ長調音階の場合】
音名 |
C |
D |
E |
F |
G |
A |
B |
C |
C音からの音程 |
2度 |
|
|
|
|
|
|
3度 |
|
|
|
|
|
4度 |
|
|
|
|
5度 |
|
|
|
F音からの音程 |
|
|
|
2度 |
|
|
|
D音からの音程 |
|
6度 |
|
同じ度であっても、音の距たりによって、完全、長、短、増、減、に分けられる。
- 1オクターブを12の半音呈で音階を作る方法
- 平均律
これは1オクターブを12の等しい比によって分割する法である。
ピアノなどの調律に使われる。
完全に調和した音程ではないが、どの音を基音にしても、各音階の幅が一定であるので転調をした場合にも極端な不協和音が生じない。
音楽で使う音は対数的であり、半音程は比率で表す。
全ての隣接した半音間は、2^(1/12)の比率で隔たっている。
パソコンなどの演算表を使う場合、1オクターブ上を、(基音)×2とし、その間の半音呈を、(基本音)の(1/12)乗の比となるように演算する。
1C |
C♯ |
D |
D♯ |
E |
F |
F♯ |
G |
G♯ |
A |
A♯ |
B |
2C |
1 |
2^(1/12) |
2^(2/12) |
2^(3/12) |
2^(4/12) |
2^(5/12) |
2^(6/12) |
2^(7/12) |
2^(8/12) |
2^(9/12) |
2^(10/12) |
2^(11/12) |
2 |
たとえば、D音とC♯の間は、両音の周波数の比を計算すればよいから
E / F
∴ 2^(5/12) / 2^(4/12)=2^(1/12)
- ピタゴラス音律(日本・中国では三分損益法と言う似た音律法がある)
これは、人間にとって、響きが良く、うなり音が生じない、快適な和音感の生まれる音の組み合わせで小さな整数比。和声などの平行な旋律に向いているが、3和音などの場合3度の音が不協音程になるので、これを補正したのが音律法が純正律である。
a)基本音の完全5度上の音を求める(順八)。
b)このときに求められた音を新たな基準音にして再び完全5度上の音を求め、オクターブ下げる(逆六)。
再び、b)で求められた音を基準に、a)-b)を繰り返すことによって求められる音を1オクターブに並べる。
音程は2:3の周波数比である。
下の表は音の振動数比を表す。
C |
|
D |
|
E |
F |
|
G |
|
A |
|
B |
C |
|
D |
|
E |
F |
|
G |
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
基本音をC音とし、G音を得る |
|
|
3/2 |
|
|
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
|
|
|
|
G音を基準に、D音を得る。オクターブ下げる |
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
D音を基準に、A音を得る |
|
|
|
|
3/2 |
|
|
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
|
|
A音を基準に、E音を得る。オクターブ下げる |
|
|
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
|
|
|
|
|
|
|
E音を基準に、B音を得る |
|
|
|
|
|
|
3/2 |
|
|
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
3 |
|
B音を基準に、F♯音を得る |
|
8:9 |
8:9 |
243:256 |
8:9 |
8:9 |
8:9 |
|
|
|
|
|
|
|
|
隣接した音との音程比率 |
この表の上から2段目は、基準の音のと完全5度上の音の振動比、たとえば、C音と完全5度上のG音について、
C:G=2:3 で有ることを表している。
その下の段では、今度はG音を基準に完全5度上の音D音との比を表している。
則ち、G:D=2:3 である。しかし、D音は一番基準のC音の含まれたオクターブに置き換えるために、1オクターブ下げている。
則ち 1オクターブは比が2であるから、オクターブ下げるたのであるから2で割る。
上の表を、基準をC音にして、各音との音の振動数比を計算したもの
C |
|
D |
|
E |
F |
|
G |
|
A |
|
B |
C |
|
D |
|
E |
F |
|
G |
|
1 |
|
|
|
|
|
|
3/2 |
|
|
|
|
2 |
|
|
|
|
|
|
|
基音をC音とし、G音を得る |
|
|
9/8 |
|
|
|
|
3/2 |
|
|
|
|
|
|
9/4 |
|
|
|
|
|
G音を基準に、D音を得る。オクターブ下げる |
|
|
9/8 |
|
|
|
|
|
|
27/16 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
D音を基準に、A音を得る |
|
|
|
|
81/64 |
|
|
|
|
27/16 |
|
|
|
|
|
|
81/32 |
|
|
|
A音を基準に、E音を得る。オクターブ下げる |
|
|
|
|
81/64 |
|
|
|
|
|
|
243/128 |
|
|
|
|
|
|
|
|
E音を基準に、B音を得る |
|
|
|
|
|
|
729/512 |
|
|
|
|
243/128 |
|
|
|
|
|
|
729/256 |
|
B音を基準に、F♯音を得る |
|
9/8 |
9/8 |
256/243 |
9/8 |
9/8 |
9/8 |
256/243 |
|
|
|
|
|
|
|
隣接する音階との音程比 |
音程は周波数「比」で求めるのであり、「差」ではないことに注目すれば、
C音とG音は C:G=2:3 であるから
G=(3×C)/2
C=1 の時
G=3/2 となる。-----@
次に、G=3/2 の場合の完全5度上のD音は
G:D=2:3
D=(3×G)/2 上記結果@より、
D=(3×3/2)/2 =9/4
オクターブ下げるので、2で割る
D=9/4/2=9/8
以下同様に繰り返す。
上の表より、C-Dの音程はその比を採ればよいから
(9/8)/1
で求められるであろう。
また、D-Eの音程比は
(81/64)/(9/8)=9/8
となり、C-DとD-E とは同じ音程比であることが判る。
同様に計算をすればよいが、詳細は他の専門書を参照されたい。ここではハ調を例にしているが、この長音階全ての音が等しい音程比ではないことに注意が必要である。洋楽の主要3和音を響かせた場合などに不協和音が生じる。
数字は分数のままにしてあるが、計算をすれば端数が出てしまうために分数でおいてある。
隣接音の音程差の数字は、たとえば
A音とB音との比を計算するなら、上記表より
A:B=27/16:243/128
B/A=(243/128) / (27/16) これを計算すれば
=9/9 となる。
三分損益は、基本の音(中国の黄鐘)の笛の長さを基準にして、その笛の2/3(三分損)の音、次にその笛に、その笛の長さの1/3を加えた音、今度はその笛の長さの2/3の長さの音・・・を繰り返す。
【計算法】
基音=1とした場合、三分損一
笛(1)の長さ=1×2/3 よって笛の振動数は音は笛の長さに逆比例するから
音程=3/2
笛(2)の長さ=笛(1)+笛(1)×1/3=2/3+(2/3)×(1/3)=8/9 ∵三分益一
音程=9/8
笛(3)=8/9×2/3=16/27 ∵三分損一
音程=27/16
以下同様を繰り返す
- 純正律
根音と第3音の間にうなり(不協音)を生まないように3和音の音程比を、長音階の場合4:5:6にし、短音階の場合10:12:15の整数比にしたものである。
純正律と言えば、三曲関係の偉い先生でも、絶対的な調律法であるように言われる方もいるが、こと地歌などに限って言えば、5音で音階を作っているが、その中に2箇所、半音程があり、単な整数比の共鳴が保証されているとは言えないのである。
C音を基音にした長音階
C |
D |
E |
F |
G |
A |
B |
C |
D |
和音の周波数比 |
4 |
|
5 |
|
6 |
|
|
|
|
基音をC音として各音の周波数比を表している |
6/2 |
|
|
4 |
|
5 |
|
6 |
|
C音をオクターブ下げる場合2で割る。 |
|
6/2 |
|
|
4 |
|
5 |
|
6 |
D音をオクターブ下げる場合2で割る。 |
上の表を使い、C音基準に 各音程を計算すると下の表のようになる。
C |
D |
E |
F |
G |
A |
B |
C |
D |
和音の周波数比 |
1 |
|
5/4 |
|
3/2 |
|
|
|
|
ド・ミ・ソ |
|
|
4/3 |
5/3 |
|
2 |
|
ファ・ラ・ド |
|
9/8 |
|
|
|
15/8 |
|
9/4 |
ソ・シ・レ |
- |
9/8 |
10/9 |
16/15 |
9/8 |
10/9 |
9/8 |
16/15 |
|
隣接二音の音比 |
ド・ミ・ソ和音のE音は
C:E=4:5
E=5×C/4 Cを基準にしているので C=1
∴ E=5/4 これがC音とE音の周波数比となる。
同じように、G音は
C:G=4:6
G=6/4=3/2
ファ・ラ・ド和音のF音は
C:F=3:4 であるから Cを基準にしているのでC=1
∴ F=4/3
A音は
C:A=3:5
∴ A=5/3
ソ・シ・レ和音は基準としているC音が含まれていないので、
共通音であるド・ミ・ソ和音のG音を新たに基準とする。この場合
C音とG音の比から
C:G=4:6
G=6×C/4 C=1であるから
G=6/4 ---A
B音を求める
G:B=4:5
GにAを代入
(6/4):B=4:5
B=(6/4)×5/4=30/16=15/8
D音を求める
G:D=4:6
GにAを代入
D=(6/4)×6/4=36/16=9/4
基準のC音よりオクターブ上であるから、2で割ってオクターブ下げる
D=(9/4)/2=9/8
短音階は同様にA音を基準に計算すれば導かれる。次に結果だけを下表に載せる。
iA音を基音にした短音階
A |
B |
C |
D |
E |
F |
G |
A |
和音の周波数比 |
1 |
9/8 |
6/5 |
4/3 |
3/2 |
8/5 |
9/5 |
2 |
A音との比率 |
- |
9/8 |
16/15 |
10/9 |
9/8 |
16/15 |
9/8 |
10/9 |
隣接二音の音比 |
一般にはハ長調とイ短調は表裏一体のように使われますが、純正律では音程に違いが出来てしまいます。
たとえばC音とD音の音程比を見れば、長音階は9/8であり、短音階では10/9になっています。これはでは旋律が不安定になってしまいます。
三曲に使われる平調子の考察
理解し易いように、E音を基準にした平調子を参考例にします
表を参照しながらそのしたの説明文を読んで下さい。
E |
F |
A |
B |
C |
E |
F |
音名 |
宮 |
商 |
角 |
徴 |
羽 |
宮 |
商 |
和音階名 |
五 |
六 |
七 |
八 |
九 |
十 |
|
箏の弦位置 |
2 |
|
|
3 |
|
|
|
完全五度比 |
|
|
2 |
|
|
3 |
|
同上 |
|
|
5 |
|
6 |
|
|
短音階比律 |
|
(2) |
|
|
3 |
|
4 |
完全4度比率 |
まず基音であるE音(宮)と各音階の関係を確認します。
E音とB音が完全5度の関係であることが読みとれます。ピタゴラス律によって、比率が音を2:3の比にしますとB音を求めることが出来ます。-->表4段目。
A音のオクターブ下の音と基音のE音が完全5度に有ることが判ります。このことからA音が求まります。--->表5段目
A音とC音の関係が短3度です。このことからC音が求められます。
純正律の項で説明した短音階の比率は 10:12:15 で、この比率の中 10:12 が短3度であるA音とC音の比率になります。-->表6段目。数値は各比率を2で約分しています。
最後にの残ったF音はは、、C音とは完全4度の関係にあります。
完全4度は その振動数の比率は 3:4です。基準としているE音のオクターブ上に数値が入力されているのでオクターブ下に置き換えます。このとき2で割ります。
下の表は上の表を、E音を基準値1にした場合の各比率です。
E |
F |
A |
B |
C |
E |
|
音名 |
宮 |
商 |
角 |
徴 |
羽 |
宮 |
商 |
和音階名 |
五 |
六 |
七 |
八 |
九 |
十 |
|
箏の弦位置 |
1 |
|
|
3/2 |
|
|
|
宮との比 |
|
|
4/3 |
|
|
2 |
|
|
|
4/3 |
|
8/5 |
|
|
|
16/15 |
|
|
8/5 |
|
32/15 |
1 |
16/15 |
5/4 |
9/8 |
16/15 |
5/4 |
|
音程比率 |
この表の数値の求め方
B音はE音とは完全5度の関係なので
E:B=2:3
B=3×E/2 E=1
∴ B=3/2
A音は、やはりE音とは完全5度の関係にあるから
E:A=3:2
A=2×E/3
E=2 ∵ このEはオクターブ上の音であるから2を代入。
A=4/3 ---@
C音はA音とは短3度の関係であるから
A:C=5:6
@を代入
4/3:C=5:6
∴ C=(6×4/3)/5=8/5
以下同様
この表から読みとれることは音階は大全音と小半音とで音階が出来ています。
もし、箏を純正律で調絃下場合、確認順序は
5弦を基音にして、七弦、八弦を合わせます。
次に七弦と九弦をあわせます。
最後に九弦と六弦を合わせれば純正律の平調子になります。
全音には音程比9/8と、10/9の2種類有り、前者を大全音、後者を小全音と言う。
半音には音程比が16/15(90セント)をディアトニック半音、小半音とい言い、112セントの変化音をクロマチック半音あるいは大半音という。
ピタゴラス音律で発生した全音はピッチが204セント、半音が90セントである。純正律では主要三和音の、5度の音は完全5度音程なので調和しているが、3度の音の場合ピタゴラス音律では協和しないので振動比を調整し、22セント低く調音する。
【例】
ハ長調のT和音のド・ミ・ソについて
ピタゴラスでは全音程が204セント、半音程が90セント
純正律で、ミを22セント下げれば、
D-E間は
204−22=182(セント)・・・・・・小全音
E-F間は
90+22=112(セント)・・・・・・・大半音
となる
また、90セントの半音をディアトニック半音といいます。
この音程をセントで表す場合がありますが、セントと言う言葉の意味は百分の一と言うことですが、平均律の半音を100セントとし、1オクターブを1200セントで表します。
セントは 1200×LOG(音程)/LOG(2) で計算されます。
エクセルでセルに
=1200*log(音程)/lpg(2) -------(音程は二つの音と音の距たりのことで、たとえば上述の 9/8 、10/9等)
と入力すればセントが計算できます。
尺八の場合、ロの音とツの音の間は1全音半(短2度)です。
純正律で演奏するにしてもロ音に対し全音程の音を吹くにも9/8比であるか10/9比で吹き分け無く他は成らない。
半音の場合は16/15のディアトニック半音で吹くのかクロマチック半音で吹くのかはたまた、平均律の半音なのか決めなくては成らない。だいたい、いくら正確に吹いても指孔一つの調整でそんなシビアなことは困難です。
実際の演奏と理論はなかなか両立はなかなか難しいことが判ります。
【総括】
果たして邦楽(三曲)においては、純正律による調絃が絶対的なものであるのか
これまでの述べてきた音律理論の中、邦楽で使う音階にはどれが良いのでしょうか。
よく言われるように邦楽は純正率でなければならないのでしょうか。それともピタゴラス律(三分損益)が妥当なのでしょうか。はたまた平均律がベストなのでしょうか。
3つの代表的な調律法を良くみれば、複数の音が鳴っている場合のその音同士の調和を重視していることに気が付きます。
純正律は和音が美しく響くような比率で音を求めています。
しかし、尺八曲にしろ、三絃、箏曲は和音を楽しむと言うよりも、時間軸に平行した旋律のおもしろさを重要視しています。
もともと純正律や、ピタゴラス音律などと言ったものは、ハーモニーを意識した理論です。
平均率は、転調が生じたときに便利な音律であり、特にピアノのように容易に音程を変えられない楽器には必要なものです。
三曲の場合、特に古典曲は旋律を主眼に曲が作られています。ハーモニーを特に重要視して作られたものでは無いと考えられるのです。このような曲では、基音と他の音の関係が敢えて整数比で表される様な単純なもの無くても、良いように思います。ただ、残響の大きい場所での演奏であるとか、箏のような楽器の場合の音仕舞がわるく、音が残る場合、それらの音と、演奏している音とが同時に響いて聞こえ、その振動比が悪ければ不愉快なうなり音が生じたり、調和した音であった場合には、深みのある協和した響きを生むことなると考えられます。
これまでの多くの音階理論でも、全音の音程、半音の音程は様々なものが存在します。絶対的な音階はまだ無いのです。洋楽の理論から多少ズレ他ものであっても、こういった音階なのだと決めれば、それはそれとし一つの独立した固有の音階音楽として認識されるものであるように思います。
ただ、近代、現代音楽は和音感を重要視し、ハーモニーを求めた曲で有れば、やはりどういう音階が妥当なのか考える必要があります。
古曲でも、大曲等は最初から最後まで決まった5音だけで曲を演奏することはまず無いでしょう。あれば退屈で聞いておれません。
たえず転調?を行うことによって沢山の音を利用して変化を付けるわけです。
別なことですが、尺八のような楽器、特に地無の尺八等の場合、たとえば440Hzの振動数のA音をならしても、同時に其の前後のある程度幅を持った振動数の音が鳴っているはずで、そうシビアな発音をしているわけではないと思います。
こういった特徴の楽器単独で吹く場合や、大勢であっても同じ旋律を吹いている場合、声明や小川のせせらぎのように音が幅を持って聞こえ、少しも不快には感じない、いや、却って心地よい音に聞こえるのだと思います。これまでの説明でも判ると思いますが、尺八のロとツ音の間は、尺八の指孔を全部塞いだ場合と、1孔だけを明けた場合の音の差です。その間には ツメリ、ツ中メリ、 があり、その各音にはディアトニック音、クロマチック音、平均律場度と言った違ったピッチが存在します。これらを一つの指孔だけで吹き分けることは実際上不可能です。
しかし、現代曲は合奏などによって、同時に多くの音を同時に響かせます。このとき、それぞれの音が調和して美しい響きを聞かせてくれるためには、音階の音がどうあるべきかを考えなくては成りません。また、より美しく強い調和音を求めるなら、求める音の振動に対して発音エネルギーが集中する必要があります。
当然音は、ぼんやりした音から鋭く硬い音に変化するだろうことは想像できますが、この辺のかねあいはその時代、その時代によって少しずつ替わってゆくものの様に思います。
音階の発生について代表的なものを述べたが、一長一短があり、やはり完璧な調絃方と言うべきものは無いようである。ただ、古い曲を演奏する場合には、その時代その時代の制約された条件によって演奏すれば確かにその当時の雰囲気が再現されかもしれない。が決してそれが現在に於ける音楽観に照らして正しいものであるかかどうかは判らない
