尺八/syakuhachi

尺八の製作についても記述しています。


尺八という楽器の構造、作り方について

尺八の呼称の由来については、長さが1尺8寸(54.54センチ)だから尺八と言う説が一般的ですが、分かったようで分からない説明です。では、何故1尺8寸の長さが笛の代名詞として使われるようになったのかと言うことです。
尺八の長さにおいても1尺8寸の長さだけではなく、色々な長さの尺八があるので、単に長さが1尺8寸だからと言った単純な答えでもないようです。

こだわる方は、一度調べてください。
【参考】
一般には唐の1尺8寸を言うようです。これは、筒音(穴を全部塞いだときの音)が黄鐘の笛の長さです。笛には色々の長さのものがあります。洞簫においても色々な寸法のものがあったのだろうと思うが、時代とともにこの笛に楽理の発達とか、儀式等の整理がすすみ黄鐘(こうしょう=日本の一越=D音)の笛が主に用いられるようになりました。これは、中国の伝説の皇帝黄帝が長さの単位、として笛を使ったと言われます。基準の9寸は穀物の90粒とし、この時の筒の長さの時に発する音を黄鐘という。長さが倍の1尺8寸の笛もオクターブ違う(ただし、9寸の管の一方の笛が閉管の場合は同じ音程になる。この辺は一度調べて下さい)が黄鐘になる。この基準の笛の長さが1尺8寸だから、尺度としての名称である”尺八”と言ったのかもしれない。
あるいは、洞簫と言う笛を仮定し、当然、いろんな長さのものが用いられたのであろうから、用いる洞簫を区別して、黄鐘の洞簫、あるいは黄鐘(一越)の洞簫等と言っていたか、あるいは1尺8寸の洞簫、1尺3寸の洞簫などと言っていたのか定かではありませんが、いずれにしろ一番基準として多く用いられていたのが1尺8寸管(黄鐘)の笛で、この笛をのこと、”一尺八寸の洞簫”が、いつか洞簫全体を指すようになったのではないでしょうか。


演奏で一番よく使われる尺八の長さは、筒音といって、指穴を全部塞いだとき吹いたときに出る音が、D(レ)のいわゆる、長さが1尺8寸(約54.5センチ)のものです。

次に、三曲(尺八史参照)で新曲(一般に邦楽では、新曲と言うのは、宮城道雄、久本玄智などの作曲された曲以降のものを指しますが、もうこれらの曲もも、新古典といえる部類に入るようです。)を吹くときによく使う、筒音がE(ミ)音である、1尺6寸管の尺八もよく使われます。

現代曲は、さらに色々な長さの尺八をつかいます。

尺八は、だいたい1寸変化すると、半音程変化します。(この事については、後半で、詳しく述べます)
本曲と言う、尺八だけで演奏する宗教曲には「地無し管」と言いう、竹の内部を余り加工しない、しても、腐食防止程度の漆を薄く塗り、歌口をつけただけの、素朴な尺八で吹くことが多いようです。
今日、一般に使う尺八は、良く鳴るように管の内側に下地(じ)を塗り、奇麗に砥ぎ上げてあります。
この時、調律も兼ねて行います。

地無し管は音が柔らかく、地を入れたものは音が金属っぽい腰のある音になります。


尺八の歌口と言う、息を吹き込む部分(尺八にはリードが有りません。発音はエッジ部における流体振動によると考えられます)は、流派によって違いますが、意匠的な違いであって、根本的な違いでは有りません。
それよりも、大きな違いは、指孔の位置の違いです。
穴位置の違いは、音の違いでもあります。

昔は、色々工夫して、穴の位置を決めていたようで、全長の寸法を九半割にするとか、十割、あるいは、十半割にして、その割った長さを基準の長さとして、指穴の間隔を決めました。
これは、流派による違いと言うより、製管師の尺八に対する考え方による違いです。
流派による違いの部分は、第五孔(裏穴)が、琴古流では基準穴位置よりより3 分上がり、都山流、1分上がり上田流は2分上がりという、微妙なものです。
今は、ほとんどが洋楽に合わせた平均率で調律されています。


尺八の調律に使う基準の音は、今は、A(ラ)音=442Hzぐらいを基準に調律されているようです。
昔は一越(D音)が585.4Hzほどで、先の、442HZを基準にすると 590Hz程になり、若干高くなっています。



尺八の製作方

尺八を作るのは結構手間がかかります。
一番手っ取り早いのは、塩ビ管(水道パイプ、あるいは電気の配管)であります。
この場合、内径25mm(1インチ)くらいの物を使います。
あごの当てる部分は太い方がよいので、ソケットをはめるのが良いでしょう。
一番よく使う尺八は長さは1尺八寸です。即ち、1尺が30.3センチだから、大体54.5センチの長さになります。
穴の一は前述の表の十割を参考に、三の穴は少し管尻へ下げるか穴を少し小さくすると良いでしょう。
穴の大きさは10.5ミリから11ミリぐらいの大きさにすればいいと思います。
最初は少し小さい穴をあけ少しずつ音を出しながら大きくすればいいでしょう。
〔竹の場合ドリルなどで穴をあけようとすると穴の部分の竹の皮がめくれる恐れがあります。
これをさけるには、絆創膏かテープなどを貼った上から穴をあけます。
また、ドリルの刃を細工して一番外側が高くなるように、中間部をグラインダーで落としたりした専用のドリルもあるようです。)
腹部分は45度位の角度で、内側の方が内径より少しウチよりの位置から切り落とします。
これも、少し外側目に切っておきあとでヤスリで少しずつ内側に削ればよいでしょう。
アゴの当たるところは少し丸みをつけておけばいいと思います。
あまり削りすぎない方がいいでしょう。


最近は木製の尺八が楽器店で売られています。
ワダ楽器の木管尺八の胡蝶は、なかなかよくできています。(寸法によって違うが定価は18,000から25,000円位)
合竹などの尺八も有りますが少し値段が高く4,5万円位します。
音の腰が少し弱いのですが、結構使えるようです。
ワダ楽器の木管楽器はいかにも木管と言う感じですが、管尻部をナイフなどで加工したり、継ぎ手のプラスチック部をきれいに塗装したりすればかなり見栄えがするものになります。
削った部分は液状の瞬間接着剤を流し込んでおけば結構きれいに仕上がります。
継ぎ手のかみ合わせ部分がコルクで出来ていますが、ここを黒のマジックで塗色し瞬間接着剤で表面を仕上げるとしっかり出来上がります。
(この改造については、あくまで参考でありますので、責任は取りかねます。
試される場合は、各人が責任を持って行って下さい。)


尺八は、一般的に竹材を使って造られます。
材料は何でもいいように思いますがよく考えられたもので、実際に長年尺八を吹いてみると、やはり、竹の尺八が一番です。
ただ、唯一の欠点は高価なことです。
安いが調律が悪ければ使いものにはなりません。(安いから調律が悪い、高価だから調律がよいと言うものではありませんので要注意です)
一般には、使いものになるものは20万円から30万円します。
中には何は何百万円と言う途方もない金額のものもあります。
また、尺八家の中には、尺八のその高価なことを自慢する体質の人も結構います。
若い人が尺八に足を運んでくれることを願うなら、この体質を何とかする必要が有るでしょう。
わたし個人の考えとしては、普及管の値段は20万円前後が妥当な金額のように思いますが・・・・・


さて、かようなわけで、尺八をやってみたいがどうも尺八が高すぎて手が出ないと言う方はどうしても自分で尺八を作ろうと考えるわけであります。
尺八の素材の違いは、かなり音色に影響を与えているように思います。
塩ビ製の尺八をいくら上手に仕上げても竹の音色には及ばないだろうと思っています。
たとえば、竹材のものであっても、表面を漆などをぬって硬くすれば音の響きが良くなるし、表面の皮を剥がせば音が軽くなってしまいます。
特に内部の仕上げはもとより、塗りの材質による影響はかなりあるのではないでしょうか。
さて、左様なわけで、竹を選ぶにしてもそれなりの物を選ばなくては、せっかく苦労して作っても満足する音が鳴りません。

まず、尺八の材料である竹のについて知る必要があります。
竹には、日本三大竹と言われる、「孟宗竹」(モウソウ)「淡竹」(ハチク)「真竹」(マデケ)がありますが、尺八にはこのうちの「真竹」を使います。
この三種類の竹についての違いは、素人にはなかなか理解できません。
詳しくは「竹と日本人」(上田弘一郎 N・H・Kブックス)を読まれるとかなり理解できると思いますのでぜひ、一読されることをお奨めします。

私どもが郊外でよく見かける竹藪は、孟宗が多いようです。
孟宗竹は結構太くなるので、藪に太い竹が混ざっていれば孟宗竹と思っていいようです。
淡竹と真竹は、これこそ、なかなか素人には見分けがつきませんが、前述の本を読まれればその違いが納得されると思います。
ちなみに、真竹の皮に大きな斑があり、淡竹にはない。
そして、節の部分の溝を形成している山の部分についての特徴として、下側(根に近い側)の山の高さ(鋭い山の方)より、上部(先端側)の山(まん丸い山側)の方が少し外に出張っているのが真竹です。
竹藪の外見は、真竹の藪は葉が暗緑でガサガサした、荒れた感じのする藪だそうです。
わたしも、言われればそうかななんて思いました。

真竹は干し竿、竹細工などに使われていいて、粘りがあって、手入れさえすれば、年数が経っても表面の艶が保たれます。
淡竹は縦方向に割けやすいので、茶筅などの細かい細工に使われています。

真竹は、生育の数年は、肉が厚くなるように内側に生長するそうです。
だから、三から五年ぐらいの竹がいいそうです。
若い竹は肉厚が十分付かず、また、乾燥した場合表面に皺が出来ます。
反対に古くなると竹材がもろく、腰のある音色が出ないそうです。

さて、真竹の藪を見つけたとしても、その藪の中にに尺八に適した竹があるかどうか山肌の状態をよく見なければ成りません。
山が肥沃で軟らかい土であれば根の部分が土の奥深くにまで長々と伸びてしまって、尺八らしい根の詰まった竹がありません。小林俊風(故人)先生にお聞きした限りでは岩の多い土の痩せた場所の、厳しい自然のにさらされた竹がいいようです。

さて、それなりの竹藪を見つけた場合でも、他人様の竹藪ですので勝手に中に入ってはいけません。また入れません。必ず竹藪の持ち主に了解を得ましょう。(結構、この藪の持ち主を探すのに苦労します)

竹を採るににタダと言うわけにはまいりません。
普通は、竹一本掘らせてもらって1,000円ぐらい払うと言うような条件でもって入山されるのがいいでしょう・・・・(わたしは、20年ほど前には1本600円くらいで採らせもらいました。「どうぞご自由にとって下さい」と言う方もあれば、結構ふっかけてくる方も居られます。次回ももらおうと思えば納得のいくお礼をするのが常識だと思ます。)

竹の採る時期は冬がいいと言われています。
晩秋が良いと言う説もあります。
竹の一番痩せている時期に採れば虫が付かないからです。
2月中旬位までに採る事でしょうか。
いずれにしても、竹を採る竹藪の目星は秋ぐらいまでに終える方がいいと思います。

服装は、竹取は結構重労働なので、雪が降っているときでも作業をすれば汗をかきますので調整出来るようにします。
昼食時や休憩中は結構寒くなりますので、暖かいお茶の入った水筒かバーナなどでお湯を沸かせるような準備も必要です。
足下は、長靴に足の裏貼るタイプのほかほかカイロがいいでしょう。
車などで山の竹藪などに行く場合、雪が残っていたり、霜が多い場所は要注意です。
車のタイヤが雪やぬかるみにとられ、動かなくなってしまいます。
特に、朝方の寒い間は道が凍てついた常態なので走れても、気温が上昇する昼頃には道がぬかるんでスリップし易くなります。
特に、作業を終えて、竹を積んだときの重量のことも、計算に入れて帰の確保をします。
(車では何回も難儀をしました。坂道を下ったために動かなくなり、山道をとぼとぼ電話を探して歩き、トラックの救援を頼んだのですが、このトラックも動けなくなりそうになりました。
結局、山に捨ててあったシュウタンをタイヤの下に敷いてようやく脱出したこともあります。)

さて、竹を掘るにはそれなりの道具がいります。
まず、根元を掘るための鍬〔クワ〕がいりますが、私は車のスプリングを使った特殊な物を友達に製作してもらいました。丁度柄のの部分を境に、両側の刃ををそれぞれ90度変えた物です。(下の写真)
刃の角度を変えるのは、狭い場所で竹根の周囲を掘るのに、場所を移動せずに作業できるからです。

次に、適当な竹を見つけたら、まず太さを測らなくては成りません。
竹の太さは、藪では細く見えていたのに、家に持って帰ると、馬鹿太くって使いものにならなかった、と言った失敗をしてしまいます。(庭の柵に使えました・・・・?)
まず、自分の持っている尺八などで、太さの測れるサシを作っておくのも便利です。

次に、長さや節目の位置を測る定規(折尺)がいります。
せっかくの良さそうな竹であっても、節と節の間隔が悪いと指穴がうまく節目の間に入りません。
あらかじめ、尺八の寸法(呼称)に応じた節と穴の位置を印したものを使います。
管尻は、根があるために掘る前にはサシが入りませんので、第一孔の下の節から上を測れるものがよいでしょう。
根の方は、根を掘っていったときに測ります。
根が合わなければ作業は中止です。

竹がいくらあっても、延べの(1本物)尺八が造れるような竹はまず見つからないでしょう。
基本的には二本継ぎの尺八を造れる竹材を探すことになります。
そこで、継ぎ手にあたる部分の節は多少長くても調整がつきますので、少し節の間隔が長い方に違っていても少し切り詰めれば使えます。
場合によっては、一節以上とばして継ぐことも可能ですので、一節ぐらい上のところで切るとよいでしょう。
竹を掘る前に、作業がしやすいように、枝と竹の上部を先に切っておきます。
あまり上で切ると竹が重くなって藪から運びだすのに苦労しますので、先程述べたように一節程度、長めに切ります。
竹を切る場合、表皮を傷つけないために、節に近い上部を少し切ります。
そのまま、一気に全部切らずに途中で対側の方から残りを切るようにします。
この場合、最初切った位置より上の方を段違いになるように切ることが肝心です。
こうすると、上部が倒れるときに下の切り口のところで、縦割れが止まります。

土の中の根を切る場合、小さな鋸切りがいります。
先の細い丈夫な物がいいでしょう。
また土の中の地下茎とミキや根を切るのに、小さなスコップや丈夫な剪定ハサミも必要な道具です。
十分に地下茎と竹を切り離さずに無理に揺すって切り倒そうとすると大事な根の部分がすぐに割れてしまいます。
このためにも、根きりは重要な作業です。

ここで無理をすると、折角の竹を台無しにすることが多くあります。(実感!)

さて、切り出した竹は出来るだけ根を小さくなるように手斧やハサミを使って切り落とし、根に挟まった土や石をマイナス・ドライバーなどを使って落とします。
こうしないと竹藪から運び出すときに重くて大変です。
切った竹はよく分かる場所に置いておかないと、いったん場所を移動すると見失ってしまいます。
同様に竹藪で、道具をうっかり置き忘れて移動すればまず、見つからなくなってしまいます。
このために、リュックを背負って、その中に道具を入れるようにします。




竹を車に乗せる場合下にビニールシートや新聞紙を敷いておかないと非常に汚れます。

家に持って帰ったなら直ちに水で根の間の土を洗い落とします。
乾燥してしまうとなかなか落とすのに苦労をします。
根も出来る限り整理して小さく切り落とします。

あと、1週間ほどお日さんに当てて乾燥させます。途中無期を変えます。
こうすると、竹の表面の緑みが、ほぼ消えます。
あまり長く干すと割れてしまいますので、そのあと、日の当たらない場所に保管します。
(最初に干しておかないと虫が付きます。虫が入ったなら、灯油に1日浸ければいいでしょう。放ておくとほかの竹にも虫が移ります)

引き続き油ぬきをします(日にちがあく場合陰干ししておきます。)
油ぬきは炎が出る熱源では竹の表面を焦がしてしまいますので、炭火が良いそうですが、2本や3本では準備するのに大変です。
あまりお奨めできませんが私は石油ストーブの上の開いた形のものに、炎や、熱が集中しないように石綿の網を置いたものを使って油ぬきをしました。
このときに、癖の付いた竹をタメます。曲げる部分を中心にその前後を十分に暖めてから曲げます。
一カ所にあまり力を加えるとそこの部分が変形してしまいますので注意しましょう。
色々専門の道具があるようですが、私は図のようなものを使いました。

油ぬきで注意することは、竹をあぶる前に必ず節を抜いておくことです。
こうしないと、節の内側にある空気が膨張して破裂してしまいます。
節を抜くには鉄筋などの先に丸ノミの刃を溶接で取り付けたもの、あるいは、鉄筋などの先を尖らせたものを使います。
根の部分(管尻)は、電気ドリルなどを使って穴をあければいいでしょう。

あとは、1年くらい日陰で十分乾燥保存しておきます。
油紙で丁寧に包んでおくと良いというような話も聞いたことがあります。
すぐに作っても、竹によっては割れてしまうものもありますので、しばらくおいておく方がいいかもしれません。

尺八を作るには、まず、作りたい寸法に節がうまく合っている竹を選ぶ事になります。
寸法を測るには、管尻に成る部分をしっかり見極めなくては測れません。
根をハサミできれいに切って、管底になる部分を鋸で切り落とします。
この場合、まだ、ヤスリなどできれいに仕上げる必要はありません。
根が付いたままの場合は立派な管尻になると思っていても、いざ、根を払うと貧弱な根茎で、使えない場合が間々あります。形のいいところを残して、切り落とさなくては成りませんが、切り落とす場合には、指孔をあける側をきめて、格好良く切らなくてはいけません。
反りと、指穴、管尻の傾のバランスが悪いと後々に製作に影響を与えます。
管尻と、指孔の位置が決まれば、側面の中心で寸法を測ります。
上手く指孔の位置が節の間に来るか、あるいは管尻から歌口にする節の長さが合っているか確認します。
合わない場合は中継ぎにする部分で長さを調整することになります。





(続く)

下地の種類 砥粉地:砥粉に生漆、せしめ漆を混ぜたもの
竹の粉漆地:竹の切り粉を漆で混ぜたもの
石膏地:石膏に水二分、アルコール一分の割で溶いたもの
石膏地は歳月とともにもろく割れてきます。その点漆地は古くなっても生きていると言われます
お金を出して買う場合は、石膏地の尺八は買わないことです。折角、なれてきた頃に、地が割れたりする事になります。
カリン棒 竹の節を削る道具中の節をすっかり削り取っては行けません。