卵だった。
何が生まれるのか、誰も知らなかった。
だからみんなは、ワクワクしながら見守った。
ところが。
どんなに待っても、懐で暖めても。
とうとう、何も生まれてはこなかった。

そうして、やっと気づいたんだ。 それが、純粋で、無垢な、
他の何物でもない、“ただの卵”
だったということに。















くオズ>は、京都産業大学SF研究会の正会誌として昭和51年1月15日に創刊、以後5年間にわたって通算4冊が発行されました。最近になって第5号が完成したという話ですが、OB会ではまだその詳細をつかんでいません。
一方<ルシフェル>は、同会の副会誌として昭和50年から52年までのおよそ3年のあいだに、創刊準備号を含めてこれも4冊が発行されています。
本書は、その8冊に収められた創作の中から、編者が個人的な好みでセレクトしたアンソロジィです。 思えば両誌が隆盛を極めていた頃、それが僕たちにとってのSF研黄金期でした。その活発な活動から何かがなされることを、僕たちは予感してさえいました。それはファンダムの大きなファクションになることだったかもしれないし、あるいはプロに至る軌道へ加速することだったかもしれません。しかし、ドロシーはいつかカンサスへ帰って行く。お祭りも、いつかは終わるのです。あとには不恰好な、夢という恐竜の卵たち。
生まれることのない無精卵でした。だけど彼らだってそれなりの存在理由があったはずです。10年たって、僕は今また彼らを手に取っています。で、いっそ料理してやることにしました。それは、ほんの簡単な目玉焼きです。いやむしろ、無造作にひっかきまわしたスクランプルド‐エッグス。味わってみてください。もう一度だけ。束の間、オズの魔法が蘇るかもしれません。


















=オズの短編集=