| このお話は、最近になって堀越さんの家から偶然発掘された手書きのクラブノート「SF研究会回覧版NOTE/PART3」に書き込まれたものです。したがって印刷されることなく闇に葬られていた不遇の作品といえるでしょう。まあ、7月ということもあって、ここに再録してみました。文句ある? |
むらかみかずや・さく
むかしむかし「ぎんがてい国」という大きな国がぎんがけいのまん中にありました。これはその国のかなしいかなしい恋のお話です。
けんぎゅうはたくさんのうちゅう牛をわく星からわく星へと送りとどける「かうぼーい」でした。わかくてはんさむだったから女の子によくもてて、女性けいけんもほうふでしたがまだどくしんでした。ある日かれはいつものようにうちゅう牛を放牧くうかんにゆうどうしながら「ろーはいど」をのんでいました。
「どこぞにえー女おらんかのお」とかれはいいました。はなしかたはみよしににていましたがべつにいろは黒くありません。
うちゅう牛がある「織もの工場」のそばを通ったとき、そのまどから衣を織っているひとりの女の子のすがたがみえました。かの女は「ぎんがてい国」の王さまのためにほろぼされた星の王女さまでした。すごくかわいいのですが、ちょっとあほです。「ぎんがてい国」の王さまはかの女がすきになりましたが、どうしてもいうことをきかないのでこんな織もの工場にとじこめてしまって、「女工あい史」にかかれているような悲さんな生かつを押しつけたのでした。
「よお、そこのべっぴんのねえちゃん。」
「あい。」かの女はあほでしたがじぶんがかわいいということはちゃんと知っているのです。「あたいをよんだのはあんたね。」
「おう。ねえちゃんなんて名まえだい。」
「あたいは織りひめ。あんたは。」
「けんぎゅうってんだ。なあ、おれとどっかいいとこ行かねえか。」
「そんなこといって、あんたあたいにへんなことするんでしょ。おさないあたいのからだをひらいて女のよろこびを教えようとするのね。でもあんたかっこよさそうだからついてくわ。」
こうして織りひめを工場から連れ出したけんぎゅうは、かの女と四じょう半のげしゅくでくらしはじめました。
しかし、はなにあらしのたとえのように早ろうとしあわせはそんなに長くつづくものではありません。織りひめはにんしんしてしまったのです。けんぎゅうのしゅうにゅうではとても子どもをやしなっていくことはできません。ふたりは近じょのきっさ店で話しあいました。
「へましやがって。」けんぎゅうは織りひめをののしりました。そして言うのです。「おろせよ。」
でも織りひめは赤ちゃんがほしかったのです。ふたりの心はきゅうそくにさめてしまいました。
そんなある日、けんぎゅうが仕事に出かけたあとにひとりのせーるすまんが織りひめをゆうわくにきました。
「おくさん、こんな生かつからにげだして私とくらしませんか。」
「そんなこといって、あんたあたいのからだがほしいんでしょ。うれきったひとづまのにくたいをりょうじょくして愛よくの世かいにひたりこもうとしているのね。でもあんたかっこよさそうだからついてくわ。」
こうしてそのさらりーまんは織りひめを天の川をへだてたかれのまんしょんに連れていってしまいました。
けんぎゅうは家にかえってきて織りひめがいなくなったことをすぐに知りましたが、別に悲しんだりはしませんでした。かれにはもうべつの女ができていたのです。かれはその女と新しい同せいをはじめました。
しかしこころはさめてしまってもからだがおたがいをおぼえてしまっています。とくに織りひめはあのさらりーまんがおもったよりへただったので毎日不まんでいっぱいです。
そこでけんぎゅうと織りひめは毎年いっかい天の川のたもとで密会することにしました。もはや愛のかよいあわないふたりでしたが、ぷれいにてっすることで以前よりももえるようになったのです。
地球のひとびとはこの不ぎ密つうをうらやましがり、ふたりがあう7月7日にはじぶんたちもそのおんけいにさずかろうといのりながらささの葉のあいだから空をみあげてかれらの姦つうをのぞきみるようになったのです。
<了>