第51話 「新しき変身!うさぎパワーアップ」

  幾原邦彦演出 脚本 柳川茂  作画監督 香川久

 新シリーズにつきものの、主人公のパワーアップ&新アイテム登場ストーリー。Rになってからここまで、ムーンスティックが使えないため、セーラームーンはムーンティアラアクションで戦っていたが、前話の第50話でとうとうティアラも作動しなくなって、セーラームーン大ピンチ。そのためここに来て新しいアイテムと必殺技が登場する。ちなみにこの回が三石琴乃復帰第1回になる。

 ストーリー

 春といえばお花見と言うわけで、うさぎ達一行は春名先生を始め、なるちゃん・海野・夏美(実はアン)らと共にお花見にやってきます。しかしそこに、お花見客のエナジーを狙ってエイルとアンが放ったカーディアン・レイシーが現れる。レイシーの攻撃で絶体絶命に陥ったセーラー戦士達を助けるため、うさぎはセーラームーンに変身して戦うが、その戦いの最中変身ブローチが壊れ、変身が解けてしまう。

 チェックポイント

 よくあるパワーアップストーリーではあるのだが、随所に幾原氏らしい演出が見られ、なかなか楽しめる一編になっている。例えば前半のサクラの下で大騒ぎしているうさぎ達の姿を背景にしながら、その全面にキャラクターを配置してストーリーを進行するという、二重構成画面的演出は独特。またそこで繰り広げられるドタバタ騒ぎは大笑い。またこの最中のレイの激カラファイヤーシーンでの間の取り方や、前面キャラから後面背景のキャラに自然に移行する演出などは非常に巧妙。(前面キャラで現れていたレイが、炎を吐きながら一周している間に、後面の遠景の中に溶け込んでいる。こうすることによって、視聴者は自然に、近くの視点から遠くの視点に移って、この大騒ぎの全体を眺めることが出来るのである。アニメでしか出来ない演出。)

 またうさぎの変身が解けるシーンで、セーラームーンのコスチュームが一旦リボンのようになってから元の服に戻るといったビジュアルもおもしろい。セーラームーン変身シーンでは、リボンが体に巻きついていくような感じで変身するから、それの逆算をして、こういったシーンになったのだろう。なおこのような変身の解けかたというのは、幾原氏が監督した劇場版Rでも見られており、うさぎが宇宙空間にリボンをなびかせる美しいシーンになっている。

 妖魔レイシーの描き方も秀逸。樹木から現れる美しくも不気味なカーディアンである。またその顔が急に恐ろしく変化するというのは、実に古典的な妖怪の描きかたと言える。またセーラー戦士達が樹木にとり込まれているシーンも、幻想的で恐ろしいシーンである。何となく象徴的なイメージを持った画面構成で、このあたりも幾原氏の演出の非凡さを感じさせる。

 しかし私個人としては一番良かったのはセーラームーン復帰のシーン。心の中に落ちていき、クィーンセレニティと出会い、新しい変身ブローチを受け取るという美しいシーンを経由して戻って来たセーラームーンの第一声が、「あんまん!肉まん!春爛漫!」というとんでもない駄洒落で、思わずその落差には肩がずり落ちてしまう。なおここのセリフの独特の節回しは、いかにも三石琴乃らしい台詞回しで、復帰していきなりかなり張り切っているのを思わせる。

 また妙な可笑しさといえば、月影のナイトだろう。登場シーンのセリフがふるっている。「今宵は花の美しさを愛でるにふさわしい。はかなく散り行く桜ゆえ、汚れた手で散らせるのは許せぬ。」こんなキザでぶっ飛んだセリフがスラスラ出てくるこのキャラは確かにただ者ではない。また去っていくシーンの「勇気ある 乙女に桜も かなうまい」といった5・7・5のまるで俳句のような一言も特徴的で、これと「アデュー」の別れの挨拶は月影のナイトというキャラクターの定番となる。

 

 

 

今回のチェックシーン

 みんなのお弁当に目を輝かせるうさぎ。ここのシーンは後ろで遠景を出しながら、手前でキャラがストーリー進行するという、斬新な画面構成です。

うさぎ「みんなのお弁当おいしそう。」

レイ「それに比べてあんたのお弁当は。」

 うさぎ作の不格好なおにぎりが、画面にドーンと現れる。

うさぎ「私、レイちゃんみたいにお手軽じゃないもん!」

 レイのお手軽弁当。どうやらファーストフードですが、しかしラクダナルドって何?

 レイの嫌味に怒ったうさぎの陰謀。うさぎはこの後、この激カラサンドイッチをさりげなくレイに渡します。

「ファイヤー!!・・・・ソウル・・」

 哀れレイは激カラサンドの餌食に。

 レイがサンドイッチを口にしてから、このシーンまでの間が絶妙です。

「こんなもん食べて、盲腸が破裂したらどうするのよ!」

 怒ったレイがうさぎに飛び掛かる。

 それにしてもレイの口が思いっきり腫れている。

 サクラの木から現れる敵のカーディアン。

 このあたりの映像的表現は見事。

 ブローチが弾け、変身が解けてしまう。セーラームーン大ピンチ。この変身が解けるシーンは劇場版Rでも似たようなシーンあります。

 心の中に落ちていったうさぎ。彼女はそこでクィーンセレニティと出会い。銀水晶を受け取ります。

 サクラの木に取り込まれているレイと美奈子。幻想的で不気味なシーンです。

 同じく、亜美とマコト。このシーンのイメージは幾原氏が昔見た恐い夢から来てるとか。

「あんまん!肉まん!春爛漫!お花見は庶民の娯楽のチャンピオン」

 セーラームーン復活。しかしもっとまともなセリフないの?

 復活はいいが、相変わらず大苦戦のセーラームーン。しっかりしなさい。

「今宵は花の美しさを愛でるにふさわしい。」

 そこに現れたのは、オタスケマンの月影のナイト。それにしてもクサイ台詞がスラスラ出るやつ。

 新アイテム、キューティームーンロッドを使ったセーラームーンの新必殺技でカーディアンを倒す。

 こうして一件落着。素直に終わっておけばいいものを、どうしてもレイは一言嫌味が出る。動揺する美奈子とまこと。

 結局、いつものようにレイとうさぎの二人はケンカ。それにしてもすごい顔。

 

 

セーラームーンの新必殺技 ムーンプリンセス・ハレーション 

 新アイテムのキューティームーンロッドを使った新しい技。月形のビームが飛んでいって、相手を浄化してしまう。前シリーズの最終回でムーンスティックを失ったうさぎが、代わりに獲得した技。攻撃力は当社比50%アップ(笑)。

 

 

セーラーマーズの新必殺技(笑) ファイヤー・激カラ・ソウル

 口から灼熱の炎を吐き出しすべてを焼き尽くすという、炎の戦士セーラーマーズらしい豪快な技。しかしこの技の使用にはアイテムが必要なこと(激カラからし)と、この技の使用による肉体的ダメージの大きさのため、結局は実戦においては使用されていない。

 

 

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