第68話 「ちびうさを守れ!10戦士の大激戦」

  幾原邦彦演出  脚本 富田祐弘  作画監督 伊藤郁子

 あやかしの四姉妹編も佳境に入り、やっと敵の正体が見えてきます。またちびうさが未来から来たらしいこと、ちびうさの母というのが実はうさぎの未来らしいことなど、このシリーズの核心部分に迫っていく回になってます。

 ストーリー

 うさぎにおねしょを怒られたちびうさは、一人で家を飛び出す。寂しさのあまり元の世界に帰ろうとして失敗したちびうさは、悲しみのあまりエナジーを放出してしまう。それを見つけたあやかしの四姉妹とルベウスがちびうさの命を狙って現れる。一方、セーラー戦士達もちびうさを守るために駆け付け、10戦士の激闘が始まる。

 チェックポイント

 タイトルからしてほとんど怪獣映画か戦隊もののスペシャル版といったノリだが、実際に内容の方もそれに近いところがある。今回は全メンバーの顔見せのような要素が強く、後半の戦闘シーンはかなり派手なことになっている。昔から対決パターンの王道は、同系統の技を使う者同士の対決シチュエーションだが、そもそもあやかしの四姉妹はその技がセーラー戦士達と近いので、セーラー戦士VS偽セーラー戦士といった趣が出ており興味深い。またここで現れた、マーズVSコーアン、マーキュリーVSベルチェ、ヴィーナスVSカラベラス、ジュピターVSペッツといった対立パターンは、この先にあやかしの四姉妹の個人戦のストーリーに突入した時にも持ち越されることになる。

 映像的にも結構うまい見せ方をしており、動画枚数の制限の中でも、躍動感あふれる画面構成になっているのはチェック。10戦士がお互いににらみ合いの構図(止め絵)の後に来る3分割画面なんかは、王道通りの演出ではあるが、奇麗に決めていてカッコイイ。またマーズとコーアンの戦いは止め絵で誤魔化しているものの、決して迫力が減退してはいないし、ベルツェの攻撃を紙一重でかわすマーキュリーの動きは非常にスピード感がある上に、この後相手をにらみつけるマーキュリーの凛々しい表情はファンならグット来るところ。またヴィーナスVSカラベラスの対決では、上下2分割画面と止め絵の組み合わせというパターンで変化をつけているし、ジュピターとペッツの対決も引きだけでなんとか見せている。このように決して恵まれているとはいえなかったであろう制作条件の中で、見せ方の工夫で画面が単調になることをなんとか防いでいる。この辺りは、昨今の何かといえば止め絵しか使わずに、せいぜいがそれにCGエフェクトをかけるだけといった単調な演出には、是非とも見習って欲しいところである。

 なお、見た目の派手さだけに目を奪われて、一方でこの回のストーリーはこのシリーズのターニングポイントになるという点を見落としてはいけない。この回でちびうさやブラックムーン一族の正体について明かしはじめているというのもポイントだが、なんといってもちびうさがセーラームーンを信じはじめているということの方が重要である。彼女はたった一人別世界に来た上に圧倒的な力を持つ敵に命を狙われるという過酷な運命の元におり、今まで精一杯強がってきていたのだが(セーラームーンを信じていなかったのもそのため)、この回で体を張って自分を守ってくれるセーラームーンの姿を見て、彼女を信じる気に成り始めるのである。このあたりのちびうさの心情の変化には注目。

 また一方のうさぎの方も、ちびうさに対して母性本能のようなものが目覚め始めている。これ自体がこの二人が未来の親子であるということの伏線でもあるのだが、ここまでどちらかというと姉妹に近かったうさぎとちびうさの関係が、この頃から母娘という色彩を帯びていくことになるのにも注意。このようなキャラクターの心理的描写の裏付けがあってこそ、動きが中心の回でも内容が浅薄にならないのだ。

 

 

 

今回のチェックシーン

 うさぎの夢、衛との結婚式。祝福のシャンパンを浴びながら「冷たい・・。」

「えっ!?」

 あの冷たさは夢じゃなかった。慌てるうさぎとそれを追いつめるルナ。画面をどんどん拡大しながら同じシーンを繰り返す演出が、可笑しさを盛り上げる。

 まさかうさぎがおねしょ!?

 だけど実はちびうさが原因でした。

 翌日、うさぎは進吾に嫌味を言われながら、布団を干す羽目に、しかし妙にファンシーな布団たたき。普通の雑貨屋にはこんなものはないぞ。

「徹底的に私を追いつめてくれたのは誰よ!」

 突っ込むうさぎに誤魔化すルナ。よくあるパターンですが、それにしても二人ともすごい顔。ここまで豪快に崩れるヒロインもこの作品が初めて。

 ちびうさの回想シーンに現れたちびうさの母。この時点でははっきりと顔を見せてません。彼女の顔がはっきり出るのはこの回の最後から。

 回想シーンでこのような調子の絵を使うといった手法は、古典的と言ってもいいですが、奇麗です。

 悲しみのあまりエナジーを放出するちびうさ。透過光の演出ですが、かなり激しいので、今なら規制がかかりそうです。

 ちびうさを追いかけなければいけないはずなのですが、まずは化粧直しから。この辺がこの連中の可笑しさです。そういえば彼女たちは、典型的な「外だけ飾るが内面が飾れていない女性」として描かれています。

 ちびうさとプー(後にセーラープルートであることが分かる)との会話を物陰で聞くうさぎ。ちびうさにもつらい事情があることを、うさぎが知るシーンです。

 ちびうさの回想の中のセーラー戦士達。遠景ですがどう見てもマーズ達なのはバレバレ。そこから類推すると、クィーンがうさぎであるのは推測つきます。

 勢揃いのあやかしの四姉妹。めいめいがカッコをつけます。

 それに対して、真打セーラー戦士達登場。一人一人がキチンと決めポーズつけるのは、歌舞伎の見栄にも似て小気味いい感じもします。

 対峙するセーラー戦士達とあやかしの四姉妹。対決ものには必ずあるシーン。お約束です。

 そして3分割画面で駄目押し。真ん中でうさぎが動いているのが、画面に変化をつけている。

 マーズ対コーアンの炎の対決。画面は動いてないにも関らず、躍動感が感じられます。

 ベルツェの攻撃をかわすマーキュリー。彼女にしては珍しく肉弾戦的雰囲気があります。ここの動きはすごく速く、またこの後のマーキュリーの表情がいいです。

 ヴィーナスとカラベラスの鞭対決。2分割画面からこの止め絵になだれ込みます。ビシッ!ビシッ!・・ああ、女王様ぁ・・違うって・・

 ジュピターとペッツのまさに肉弾戦。なかなかカッコイイです。この構図もいい。

 突然のルベウスの攻撃から体を張ってちびうさをかばうセーラームーン。

 敵の親玉ルベウス。とことん卑怯な奴で、恐らくこの作品一の嫌われ者です。

 ルベウスの激しい攻撃にさらされながらも、必死でちびうさを守り続けるセーラームーン。その姿がちびうさに信頼感を植え付けます。

 セーラームーンの危機に現れたオタスケマン、タキシード仮面。なんとルベウスの攻撃を大量の薔薇で受け止める。そんなのありか? これにはルベウスでなくても「まさか」。

「ママを助けて・・」

 セーラームーンを信じたちびうさは、セーラー戦士達に助けを求めます。これは彼女にとっての心情の変化です。

 

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