芝居唄
芝居に使う下座音楽或いは下座音楽家の作曲した唄のことで、芝居唄をそのまヽ地唄として用いるものと、地唄畑の検校勾当が改調して用いるものとある。
その曲名は、
淀川。青葉。狐火。道成寺。狐会。松風。放下僧。(岸野次郎三)。出口の柳。(杵屋長丸郎)石橋。(芳村藤四郎、芳沢金七)。十三がね。(湖出金四郎、山本嘉市)。検校連の改調したものには、金五郎(竹島幸左衛門 増井勾当改調)。鳥辺山(湖出金四郎 岡崎検校改調)
以上の内「狐会」は、お稲荷様の奉納献曲として名高く、「出口の柳」は元禄時代に流行した「歌察文」(ウタサイモン)を取り入れてあることで、珍しい曲lごなっている。
(新版歌察文野崎村のお染・久松の道行合いの手は、これを派出したものである)
手事もの(1781〜1830頃)
歌詞と歌詞との間をづなぐ「合いの手」(手事)が発達したもので唄よりもこの「合いの手」を、味はせるもので純形式的な作曲である。
その形式には、地もの、替手もの、段返しもの、打ち合わせもの、と大別される。
地ものは、また、砧地、すごもり地、ひろい地、うけ地、おくり地、神楽地、等に、別けられる替手ものは全曲を通じ、替手のあるもの、手事のみに替手のあるものとに別れる。
段返しものは、手事が一段二段と別れて居り交互に合奏出来るもの。
打ち合わせものは、他の曲と合奏する様に作曲されているもの。
(曲中の一部が打ち合わせになるのは「地もの」に属する)
手事ものに属する曲
三段獅子(佐山検校)・更衣(市川検校・)さらし(深草検校)・難波獅子・八重霞(継橋検校)八千代獅子(藤永検校)・虫の音(藤尾勾当)・薩摩獅子(二代藤永) -以上元禄期-
残月。越後獅子。東獅子。玉椿。梅の月。翁(峯崎勾当) -以上寛政頃-
松竹梅。根曳の松(三ツ橋勾当)。三段砧(島住勾当)。玉川(国山勾当)。さむしろ(在原勾当)。松の寿(?) -以上文化・文政まで(大阪)
末の契。若菜。玉の台。宇治巡り。四季の眺。新浮船。里の暁。深夜の月(松浦検校)磯干鳥。今小町。茶湯音頭。笹の露(酒)。タ顔。舟の夢。長等の春(菊岡検校)八重衣。新青柳(石川勾当) (京都)
作曲形体
前唄・手事・後唄の三段形式を本体とする
細分すれば
@前唄 前弾
前唄手事 ツナギ
マクラ
手事
チラシ後唄 A前唄 前弾
前唄手事 ツナギ
マクラ
手事
中チラシ
手事
チラシ後唄 B前唄 前弾
前唄手事 中唄 手事 後唄
等の構成のものがある。段返しものには柑枕・残月等がある。
打ち合わせには
全曲のもの
玉椿と袖の露。万才獅子と八干代獅子。神楽と鳥追。打盤と横槌
曲の一部
けしの花(手事の一部分が交互に)さごろもと都獅子。萩の露と磯干鳥のチラシ。桜川と八重霞。
があり詳細区分はる。
砧地
秋とか砧とかの内客の表示をする本手のための砧地を用いてその心持ちを助ける。(東獅子。さむしろ。たぬき)
巣篭地
鶴の巣篭の曲に用いたのが始まりという地。(松竹梅。根曳の松。鶴の巣篭り)
びろい地
変奏的に用いるもので京もの(後述)に多い。(椿尽し、七草、梅の月)
うけ地
地が先になって本手と対するもの。(玉川、椿尽し、の手事のかかり)
おくり地
地があとになって本手と対するもの。(玉川の、さらさらと、の合の手)
神楽地
神楽の気分を表すために用いる。(神楽始・浪花十二月の神楽の合いの手)
替手
地ものヽ作曲。三味線技巧の発達から合奏中に盛込みがしばしぱ行れて送に替手となった。
手事の部分のみlごあるもの。残月。新娘道成寺。新松竹梅。
全曲を通じてあるもの。富士太鼓。東獅子。石橋。玉川。
替手作家
大阪 | 菊吉検校(幕末) | 三下がり残月 | 手事のみの替手をつくる |
九州 | 都久の都 | 新娘道成寺 | |
京都 | 幾山検校(幕末〜明治) | 全曲の替手をつくる | |
古川検校 |