尺八課外読み物

飯田峡嶺


14.地唄・箏曲(その4)

浄瑠璃もの

三絃の歴史に示した三絃の系譜中にある沢住(または沢角)から発生した浄瑠璃・薩摩節から、いろいろの浄瑠璃が出た、次にその糸譜・推移を示す。
薩摩節
(寅屋次郎左衛門)
(薩摩太夫浄雲)
外記節(外記太夫)江戸
大薩摩(主膳太夫)江戸
土佐節(山本土佐掾) 式部節
手品節(手品市郎左右衛門)
近江節(近江大掾語斉)
金平節(櫻井丹羽掾)江戸
伊勢島節(伊勢島宮内) 加賀節(宇治加賀掾) 義太夫節(竹本筑後掾義太夫)大阪
播磨節(井上播磨掾) (清水理兵衛)
角太夫節(山本角太夫) 治太夫節
一中節(都太夫一中)京都 豊后節(宮古路豊后掾)江戸 常磐津節(駿河屋文飢右衛門後関東東太夫) 富本節(宮古路太夫、呂太夫と改名富本豊前掾を受領) 清元節(富本斉宮太夫後に清元延寿斉)
正伝節(春富正伝)
薗八節(鷺鳳軒薗八)
富士松節(宮古路加賀太夫後富士松薩摩掾となる) 新内節(鶴賀若狭掾)
繁太郎節(宮古路繁太郎後豊后繁太郎となる)
文弥節(岡本文弥後伊勢出羽掾)
永閑節(虎屋永閑)
杉山丹後掾 肥前節(江戸肥前掾) 半太夫節(江戸半太夫後坂本梁雲)) 河東節(十寸見[マスミ]河東)
以上の如く、多くの流派を生じた浄瑠璃によりその流行に引かれてか形式的音楽である筈の地唄の中に、内容本位のもの(語りもの)として伝えられたものを称して「浄瑠璃もの」と言う。
然して、本源の浄瑠璃は継絶したものが、地唄の中にのみ曲節を残していることは興味ある事である。(前記系譜中
  
枠内にあるもの)

 江戸浄瑠璃もの

半太夫(世いし曽我、その他の曽我もの)
一中節(釣行灯)現在行われない
永閑節(實潤一休、金五郎、笑顔、・・・義太夫に近い)
豊后節(小猿又はうつぼ)

 上方もの

繁大夫(身替音頭・・歌木検校作橋づくし)
義太夫(三吉、千鳥)

繁大夫もの

繁大夫が地唄に取り人れられたのは、建享・宝暦の頃(1744〜1763)鶴山勾当が之を語り、また、作曲したのに始まる。
その後、地唄の一分科として伝えられた。
大阪南派富崎春昇(後東京に出る)が、之の曲に有名であったが、今はなく、その門下は東京に富山清琴、大阪には同門富久春和あり。
曲名
※紙治。髪すき。橋づくし。三勝。※千鳥。三吉。※薄雪。金五郎。※時雨の松。濡れ扇。等(※は代表的なもの)

作もの(サクモノ)(天明〜寛政・1780年頃から作られた)戯曲(ザレウタ)ものヽ略称で「おどけもの」とも言う。

曲名。鼠(荒れ鼠、曲鼠、鼠の道行)蛙。たにし。狸、尻づくし。浪花十二月。
(当時、コッケイモノを下品と考えた思想から、作曲者カが恥じて秘したので作者不知となる)

京もの

支化・文政頃(1804〜1829)京都に於いて、松浦検校以下の人々により作曲された手事ものを言う。京ものとは、大阪の人がさして言う言棄で大阪系のものと趣が変わっているので全国的に「京もの」と称するようlごなった。
京もの 京唄もの
京手事もの 箏、三絃合奏のもの(新作)
○松浦検校作品
末の契。若菜。玉の台。宇治巡り。四っの民。四季の眺。新浮船。
○之れを、箏にうつして合奏の形式を作ったのが八重崎検校で、その箏手付をしたもの。
磯千鳥。今小町。茶湯音頭(古曲女手前の改作)。笹の露。竹生島。タ顔。舟の夢。
長等の眷(三絃は菊岡検校)。八重衣。新青柳(三絃は石川勾当)。
また「掛け合い」でも京もので面白いものが出来た。
光崎検校作曲 (三絃) 夜々の星。七小町。干代の鴬。櫻川。三ツ山。千代の春。
(箏) 五段砧、秋風の曲。
幾山検校の作品 (三絃) 萩の露。川千鳥。打盤。横槌。磯の春。影法師。
春の契。
古川竜斉検校の作品 (三絃) 面影。春重ね。(箏手付けは山口巌)
松坂春栄作品 (箏) 楓の花。春の栄。(また、吉沢検校の春夏秋冬の
曲に手事を挿入した)
(三絃) 墨絵の月。