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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第十話・異世界の扉』

ダークエルフの国から話せる島へと舞い戻った・・・・舞い戻ったというか、最寄りまくって戻ったというか・・・・とにかく戻って来た。

ウィザードのお兄さんから借りていたデポーションを落とした時は本当にあせった。結果的に、次に買おうと思っていたマジックパワーチューニックを買うことになったのはうれしいやら悲しいやら。なし崩しに次はマジックパワーホースを買わなくてはいけないことになりそう。それを買ったら、デポーションの上下をお兄さんに返却しよう。いつでもいいよ、とは言ってくれてるけど、いつまでも、って訳にもいかないしね。上下デザインが違うのもちょっと恥ずかしいし。

さて、その為にも、がんばってアデナを溜めるしかないわね。

カバンの底に溜まっていたアクセサリーを警備隊長さんに渡して、報奨金をもらう。もう、オークやウェアウルフたちは敵ではなくなっていたので、その依頼も断ることにした。隊長さんは残念そうだったけど・・・島にはまた次々と新しいヒューマンたちが生まれてきている。彼らにその仕事は任せることにしよう。

そうしてわたしは、出発する前と同様、ゴーレムを中心に、近くに数匹だけいるクモ・・・ジャイアントスパイダーを相手にすることにした。戦勝記念の塔のちょうど北側の林をさらに北に抜けると、木々がなくなり、草原のような広場が現れる。その一角に大きな石を丸く並べたモニュメントのようなものがあるんだけど、そこらあたりにクモがいる。草原にはゴーレム、それにウェアウルフチーフやオーク隊長たちが散在していた。

ゴーレムは足が遅いこともあって、数体同時にでも対処できるけど、クモなどはちょっとてこずる。オークたちも基本的には2〜3体ならなんとかなるけど、それ以上になると大変なことになるので、慎重に1〜2体づつね。

そうそう、アミノ式を誘って一緒に遺跡にも行ってみた。全然知らない人達のパーティに、二人で混ざって行ったんだけど・・・これがまた大変だった。以前、トロピカーナさんのパーティでは彼女が司令塔になって、皆に指示を飛ばし、ある程度統制の取れた動きができたんだけど。今回はその司令塔となるべき人がおらず、皆がてんでバラバラに行動するものだから、わたしを含め、何人かが行動不能に陥った。同じようなパーティの構成でもメンバーによって、リーダーによってこれほどまで差があるのもか、と、ある意味、新たな経験をさせてもらった。

アミノ式を誘った手前、「悪いことをしたね」と言ったら、彼は「楽しかったよ」だって。わたしに気を使ってくれてるのかとも思ったけど、どうやら彼は、ギリギリの、死線をさまようような熱い戦いの方が燃える・・・らしい。わたしって、どっちかって言うとのんびりしてる方だから、彼にとっては退屈なのかな? でも、わたしもアミノ式と居ると、彼のペースに巻き込まれてることも結構あるけど。

アミノ式と

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そんなアミノ式や別の友達なんかと一緒にわいわいと過ごす内に、アデナの方もそこそこ溜まったので、本土へと買い出しに出掛けた。そう、マジックパワーホースを買いに、だ。海を渡るのもだいぶ慣れた。時間はかかるけど、以前みたいに溺れちゃうんじゃないかって不安もないし、孤独にも耐えられるようになった。おかげで念願かなってようやくマジックパワー上下が揃った。これでデポーションをお兄さんに返却できる。

「長い間、ありがとうございました」そう言ってお兄さんに返そうとしたら、「まだいいのに」って。でも、借りっ放しも悪いなと思って強引に返してしまった。

また、神殿で新しい魔法も覚えた。ヴァンパイアリックタッチ。敵にダメージを与えると同時に、失われた自分の体力を怪物から吸収して回復する。便利な魔法だ。そういえばトロピカーナさんが遺跡でよく使っていたのはこの魔法か。わたしが回復しようとすると、自分で回復していたのはこれだったのだ。

そのトロピカーナさんと、またご一緒する機会に恵まれた。

「遺跡パーティー参加者募集中!」

勇ましい叫び声が聞こえて来た。聞き覚えのある声。そう、トロピカーナさん本人だ。わたしは、毒をかけて放っておいたゴーレム4体が近寄って来たので、それぞれ一発づつ殴って倒すと、林を駆け抜け、エルフの遺跡へと向かった。

「Narurunさん発見!」

遺跡入り口前に到着したわたしをびしっ!と指射すのはトロピカーナさんその人。覚えてくれていたらしい。なんだかうれしい。勢いに飲まれるようにわたしも答える。

「こんにちは。またご一緒させてもらっていいですか?」

「もっちろん!是非、是非!ヨロシク〜〜」

早速、パーティーメンバーに加えてもらう。

「こんにちは。よろしくお願いします。」

業務課3号さん、おぃーーっすさん。前回も一緒だったひとだ。メイジの男性もいる。名前はfaaiさん。そしてもう一人・・・

「・・・よろしく」

わたしと同じ、マジックパワー上下のメイジの女の子。名前は arame 。同い年ぐらいだけど、なんか、取っ付きにくそうな感じ。トロピカーナさんとは正反対に、おとなしく、あまりしゃべらない人みたい。

「この間はあれからどうなったんです?」

業務課3号さんがトロピカーナさんに問いかけた。

「いやーねー、もう、ヤバヤバでさー。全滅しかけちゃったよー」

事もなげに笑いながら返すトロピカーナさん。どうやら、彼女たちは遺跡に入り浸っているらしい。メンバーも「いつものひとたち」なんだろうか。しかし、笑い話ですか?それ・・・・

「うは、それは大変でしたねぇ、で?どうなったんです?」

問いかけた業務課3号さんも冷や汗をかきながら問い返す。

「んむ。なんとか乗り切ったぞい」

怪しげなピースサインを出して威張る。どうやって乗り切ったのか、具体的なシーンは思い浮かばないんだけど・・・・彼女ならなんとなく気合で乗り切ってしまえそうな迫力があるから不思議だ。業務課3号さんは「あはは、そうですか・・」と答えるのが精一杯の様子。見てる分には面白いけど、大変そうかも。

もう一人、剣士さんが加わり、メンバーがそろったらしい。

遺跡前

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「よし、行きますかーー!」

「おーーー!」

「おぃーーーっす!!」

「・・・・」

「はーーい!」

ゲートキーパーに殺到する面々。でもゲートキーパーさんも慣れたものなのか、てきぱきっと人々を異空間へと飛ばしてゆく。わたしも「お願いします」と言った瞬間に、真っ暗な世界へと飛ばされた。

わたしが遺跡の入り口の階段に着くと、すでにfaaiさんが補助魔法をかけはじめていた。ややこしくなるので、ここは彼にまかせておこう。補助魔法がかかったひとから階段を駆け降りて通路を進んで行く。

「あ、わたし、自分でかけます」

そっか、別に、かけてもらわなくても、自分の分は自分でかけれるよね。宣言して、自分に補助魔法をかける。

そしてもう一人の女の子メイジ・・・arameさんも自分自身に補助魔法をかけはじめた。

「了解」

faaiさんは合点、と剣士さんたちにかけてゆく。ちなみに、トロピカーナさんは、真っ先にかけてもらったらしく、通路の先の方で真っ赤な炎が見えた。わたしたちも急ごう。

向かう先は、前回と同じ図書室。途中、通路や角部屋、それに通路脇の部屋からあふれ出してくる怪物たちをなぎ倒し、焼き払いつつ、あっと言う間に図書室まで。後ろから追いかける形になったわたしたちメイジ三人は出る幕無し。ここら辺りは序の口ってとこかしら。

図書室に入っても、基本的にわたしたちメイジは、後ろから剣士さんとトロピカーナさんの体力に気を配りつつ、剣士さんが相手にしきれない数の怪物が来たらそっちに攻撃魔法だ。一人では大変だけれども、arameさん、faaiさんと連携して、どうにか倒すことができた。それに剣士さんも次々と倒して行くので、メイジのわたしたちが攻撃をうけることも稀だ。

遺跡中

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もはやトロピカーナさんが指令を出すまでもなく、皆がそれぞれの役割を把握して動いているので、とりたてて危険はない。たまに先陣を切る役割の業務課3号さんの後ろから別の怪物が襲いかかることがある。後に続くおぃーーすさんたちがそれを料理する。そこに・・・というか、そこらじゅうにトロピカーナさんの火炎魔法がどどーーんと飛んで行く。見ていて爽快。

しかし。倒しても倒しても、怪物たちは次から次へと沸いて出てくる。前だけではなく、後ろにも。

「きゃっ!」

悲鳴に振り返ると、arameさんが幽霊に襲われていた。わたしはとっさにその幽霊に向けてウィンドストライクを唱える。arameさんも軽快な足取りで幽霊から逃れる。しかしわたしの魔法だけでは幽霊を倒す事はできない。arameさんも魔法を唱え始めた。わたしの魔法が命中すると、幽霊はその矛先をわたしに変えて向かってくる。そこへarameさんの魔法が着弾。続いてわたしが魔法を放つ。今度はわたしが退避だ。後方へ下がりつつ、幽霊と対峙していると、剣士さんと距離が離れてしまった。しかも、わたしとarameさんはスケルトンにも目をつけられてしまった。

やっとこさ幽霊とスケルトンを倒すと二人ともぼろぼろになっていた。ほっとしたのも束の間、状況が激変していることに気付く。というか、気付くのが遅れた。

「げっ!」

お下品にもそう叫んでしまった。

剣士さんたちの体力がみるみる減ってゆく。わたしは、幽霊とスケルトンを倒すために部屋から少し出たところまで後退していたため、内部の状況が見えなかったが、剣士さんの体力の減り具合からして、異常事態が発生したのは明らかだ。

「何、あれ・・・・?」

一足早く、図書室へと戻ったarameさんがつぶやいた。そして、緊急回復魔法を連続で唱える。わたしも、体力の減りが一番激しいおぃーーっすさんに回復魔法を唱えようと、急いだ。しかし、壁が邪魔で彼の元へたどり着けない。あせるとなおさら、足がからまり、思うように前へ進めない。

「あーーん、もぉっ!!」

思い通りに身体が動かせず、わたしはいらだっていた。あせればあせるほど、空回りしている感じ。そしてようやく入り口にたどり着き、中を覗き込んで見た光景は・・・・・光景は・・・・・

わたしはそこで意識を失った。視界が暗転し、あたりは暗闇に包まれた。音も無く、すべての感覚を失った。

最後に見た光景。それは想像を絶するものだった。黒い翼をもった赤い悪魔。まるで地獄の使者。それが数体。そしてまさに仲間たちを食らおうとしていた。わたしが見たのはそこまでだ。

視界はすぐに戻った。そこは、ただ広い空間だった。はるか彼方、地平線まで見渡せる。地面には背丈の低い緑色の植物がびっしりと敷き詰められていた。草原のような場所だ。空は暗く、月が出ていた。

月?!

遺跡・・・閉鎖された空間にいたはずなのに。空が見える。それに、聞こえてくるこの音は・・・波の音? 海?

「Narurunさん、どうしたんです?」

あたりを見渡しても人の気配は全く無い。しかし、声だけはどこからともなく聞こえてきた。トロピカーナさんだ。

「わかんない、ここ、どこ?」

わたしは正直にそう答えるしかなかった。

手短に状況を説明しながら、皆があの混乱した状況を切り抜け、無事であることを確認する。

「何やら面白いことになってるみたいだねー」

そういう問題ですか・・・・トロピカーナさんに突っ込みを入れたいのをぐっとこらえ、自分なりに状況を判断しようと努めた。

「戻ってこれそう?」

帰還スクロールを使えばとりあえず村には戻れるかな? 何より、ここがどこなのか。わたしは地図を広げて見た。そして驚いた。いや、本気でびっくり。

「海のど真ん中だ〜〜」

海底!?

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「へ?」

「はぃ〜?」

みんなも、何のことだかわからない様子だけど、わたしはもっとわからない。あわてて地図を見渡すと、話せる島の、はるか東。大陸のずっと南の海の真っ只中。わたしはそんな場所にいた。なるほど、波の音が聞こえたのはそのせいだったのか。でも、水はぜんぜん無い。空気があって、息もできる。はて? 謎は深まるばかり、ですけど・・・・。

「とりあえず、島に向かって進んでみます。そちらは?」

「おけおけ。こっちは大丈夫だよ」

もう一つの謎。さっきの「あれ」は何だったのか。

「あれはネールカスとドレバヌ。図書室の奥にいたやつが、こっちにあふれ出してきたみたい。誰か別の人が倒されたのかも」

わたしの疑問を見透かしたかのように、トロピカーナさんはそう分析した。なるほど。隣の部屋からなだれ込んできたのね。皆無事にどうにかやり過ごしたようで一安心。そこでわたしは、西・・・話せる島へ向けて走り続けた。わたしの中の好奇心はこの状況を把握、分析したいと願った。この平原はどこまで続いているのか? 島まで走って戻れるのか?

まっすぐと西へ走り続けると、正面になにか浮かんでいることに気付いて足を止めた。正体がわかるところまでじわじわ、と近付いてみるとそれは遺跡の通路にも居た目玉のお化けだった。やばいやばい。

幸いなことに、迂回できる空間は広大だ。少し北へまわってやり過ごす。その後は西へ西へ、ひたすら走る。さっきの目玉以外、怪物にも、そしてヒトにも出会わなかった。

「そっちはどう?」

偶然にも声がかぶった。お互いに心配して声をかけあう。姿は見えないが、声は届き、パーティとして・・・心が?・・・繋がっている状態なのだ。

「こっちは図書室から退避して通路に出た。入り口まで戻って待機するよ」

トロピカーナさんはそう報告してくれた。

「あー、そろそろ時間だし、撤退しようかな、って」

わたしに気を使ってくれてるのか、たまたまそんなタイミングだったのか、真意はわからないが、とりあえず、大急ぎで戻らなくてもよくなったらしい。

「わかりました。とにかく、行けるところまで行って、だめだったら帰還します」

「スク持ってる?」

「帰還スクロール、あります」

「おけおけ。んじゃ、遺跡の入り口で」

「了解しました」

それからすぐだった。わたしは、見えない壁のようなものに阻まれて前へ進むことができなくなった。右へ左へ、西側へと進める場所はないかと少し捜し回ると、左手・・・南側にあった。しかし、そこもまたすぐに進めなくなり、少し南へ。そして西、北、西、南・・・と、まるで迷路のような通路・・・でも、壁は見えない・・・を進んだけど、やがて袋小路へ。

「だめみたい。これ以上進めない・・・」

仕方なく、わたしはカバンから帰還スクロールを取り出して詠むことにした。

「戻ります」

って、どこに戻れるかは・・・やってみないとわからない、か。うう、また変なところに飛ばされませんように。

「了解〜〜」

暗転、そして、聞き慣れた静かな騒音。目を開けるとそこは見慣れた村だった。話せる島の村。ほっと一息・・・・ついてる暇もないので、エルフの遺跡へと走りだす。

ハヤシ

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「村に戻りました。これから遺跡に向かいます」

走りながら報告。

「ういうい、待ってるぞーい」

街道無視。丘と平原をつっきって遺跡へとまっしぐら。途中、ウェアウルフチーフがケンカ売ってきたけど、ウィンドストライクと殴り一発、仕留める。

「はぁはぁ・・・あれ?」

「よっ。おかえり」

遺跡の入り口前ではなく、その手前にある山腹の森に、皆が座っていた。近道のため横切ろうとした森の中だ。

「こんなとこにいたんですか」

「まー、お座りなさいな」

よっこいしょ、と、車座になったみんなの一角に混ざって座る。

「はい、御苦労さん、と。そいじゃー、清算しますかー。みんな、拾ったもの、全部出して」

待ち兼ねた、とばかりにトロピカーナさんがそう言って促す。うう、おまたせしました。みんなカバンをごそごそ、と漁り始めた。そういえば、倒した怪物が落っことした品々を、各々が拾っていたか・・・あんまり気にしたことがなかったけど。

えーと、何を拾ったかな? ほとんど、怪物を倒すのは剣士さんたちなので、わたしたちがその死体のそばにいることがない。だからそういった品々を拾うこともまれなのだ。

「よく拾う人とそうでない人で偏りが出ちゃうからね。公平に分配できるように清算するの」

?マークを浮かべていたのだろう、わたしやarameさんに、トロピカーナさんが解説してくれた。なるほど、納得、なるるん。

でも、もともと持っていたものと混ざってしまってどれが拾ったものかわからない・・・困った・・・・仕方が無いので、覚えているもの以外は全部出してしまうか・・・

どさどさっと、皆がいろいろな品々を車座の中心に並べて行く。こうしてみると、いろいろなものを沢山拾ったのね。しかし、どれもこれも、何に使うんだろう?って物ばかり。体力回復剤とかは剣士さんたちが欲しがるとは思うけど。

「こんなとこかな?」

品物が出払ったころを見計らってトロピカーナさんが話し出す。

「じゃー、欲しいものがあったら、買い取ってもらっていいですよ。何か欲しいものある?」

んーー。見れば見るほど、欲しそうなものは無い。

「特に無いなぁ」

業務課3号さんが言うと、おぃーっすさんも、「オレも特に」と続く。他のひとも「おれもいらないっす」「わたしも」と、何も欲しいものは無いようだ。

「そーですか。それじゃあ、これをわたしがまとめて売ってきて、アデナで分配しますね」

「おぃーーっす」「頼みます」「よろしくーー」と、皆、納得の模様。わたしも特に異存はない。皆の同意を確認してトロピカーナさんは散らばった品々を拾い集める。全部集めると、帰還スクロールを取り出して「行ってきます。ここで待っててくださいね」と言って帰還スクロールの詠みはじめた。

他の人が帰還スクロールを使うところを見たのは初めてだ。目映い光りに包まれたトロピカーナさんが消えるのを見送って、残されたメンバーは車座のまま雑談をはじめた。

「そういえば、arameさん、もうすぐ転職なんだって?」

業務課3号さんがarameさんに話しかけた。

「・・・うん」

そっけなく答えるarameさん。

「へー、いいなー。オレももう少しなんだけどなー。何に転職するの?」

「・・・・ウィズ」

「ウィザードかー。トロピと同じ、火を吹くんだな」

会話の中ではみんな結構、略称を使う。名前も、愛称っぽく言うことがあり、トロピカーナさんはみんなからは「トロピ」と呼ばれていた。ウィザードはウィズ、と略されることがあるようだ。業務課3号さんも「3号さん」とか「業務課さん」と略されている。「火を吹く」と言うのは火炎魔法を使うという比喩だろう。別に口から火を吹くって訳じゃないし。

それはそうと、転職。つまり、メイジのarameさんは職変えてウィザードになる、らしい。転職ってどういう風にするんだろう? まったく未知の世界。転職を済ませたトロピカーナ、そしてウィザードのお兄さんやみづほさんなんかを見ると、より強力な魔法が使えるようになるみたいだけど。漏れ聞いた話ではわたしのようなメイジはウィザードの他にクレリックと呼ばれる職業に転職できるらしい。

いずれにしても、わたしにはまだ早い話。いずれどちらかを選ぶ日が来るのだろうけど、今はまだメイジとしての自分に磨きをかける必要があるだろう。

「ただいま〜〜」

村の方からトロピカーナさんが走って戻ってきた。

「おかえりなさ〜〜い」

「露店で少し売れたけど、残りは全部店売りで、これだけね」

お出迎えもそこそこに、アデナの分配が始まる。それぞれ公平に、売りさばいた品々の代金の合計を人数割りして個々に手渡す。

「ありがと〜」

全員がアデナを受け取ってこれで完了か。そこそこの金額になった。一人で細々とやるよりははるかにいい儲けだ。

「お疲れさまでした!」

「おぃーーっす!」

「お疲れ〜〜」

「ありがとうございましたー」

さて、それでは解散か。皆それぞれに労をねぎらい合う。さて、わたしはどうしようかな、と思った矢先。

「あーそうだ」

トロピカーナさんが何か思い出したように付け加えた。

「これからarameさんの転職試験のお手伝いで本土に渡るんだけど、一緒に行く?」

誰にともなく、いや、正確にはarameさん以外のみんなに投げかけた。当のarameさんを見ると、恥ずかしそうにうつむいていた。手伝ってもらうことも申し訳ないと思っているに違いない。トロピカーナさんに相談したのが運の尽き・・・いや、もとい、功を奏していろんな人に手伝ってもらえそう。もっと正確には業務課3号さんやおいーーっすさんもあらかじめその話は受けていて、そのつもりだったらしい。残るメンバーへの問いかけ。

faaiさんは用事があるから、と断った。もう一人の剣士さんも行けないらしい。

「Narurunさん!?」

トロピカーナさんの声と皆の目がわたしをとらる。えーと、うーと、あーと。

「行きます」

うつむいていたarameさんが、ちらっとわたしを見た気がした。「別にいいのに・・・」そう言っているようにも見えた。でもわたしは転職試験がどんなものなのか見て見たい、と思った。もっとトロピカーナさんや業務課3号さんたちと行動を共にしてみたいとも思った。一人で行った本土。今度は皆で行く。一人では行けなかった場所とかにも行けるかもしれない。好奇心がふつふつと沸いてくる。arameさんを手伝う目的に乗じて。若干、後ろめたい気持ちもある。それじゃ悪いから、と考え直し、はたと閃いたことを付け足した。

「もう一人、手伝ってくれそうな人、呼んでいいですか?」

「お、いいねー。誰?」

ちらっ。「呼ばなくていいよ・・・」arameさんの視線はとりあえず見ない振りをして。

「友達です。ダークエルフの。今はまだダークエルフの国にいますけど、本土で合流できるように頼んでみます」

「おっけーおっけー。こっちも一人助っ人手配済み。もうすぐ来ると思うけど・・・」

「あー、いたいた。こんなところにいたのか」

タイミングよくそのもう一人、って人が現れた。

「きたきたー。おそーーい」

「きたきたー、じゃないですよ。遺跡ってゆーから、あちこち探しましたよ」

「それじゃぁ、ぼくはこれで」「おれも」、と抜ける二人と入れ替わりにその人、ヒューマン・メイジ??のZwolfさんがパーティに加わった。

「んでわ、出発〜〜〜」

ええ!今からですかっ! 前のお兄さんといい、ウィザードって性急な人が多いんだろうか? ウィザードに転職しようとarameさんを見ると、そんな雰囲気はないんだけど。

「おーー!」「おぃーーす!」「エンチャしますねー」

挨拶もそこそこに、Zwolfさんは補助魔法をかけはじめたが、皆は立ち上がり、走りはじめてしまった。わたしも後に・・・続いた方がいいよね・・・。

「待てコラ」

Zwolfさんが追いかけながら、補助魔法を唱えつつ、そんな文句を飛ばす。言葉通りに立ち止まったわたしに、急いで魔法をかけてくれる。見たこともない補助魔法。なんだろう?これ? キス・オブ・エヴァ。他の人はどんどんと先へ行く。

それにしても、本土へ行く。船で行くのか? はたまたわたしのように歩いて行くのか? 回復魔法のあるわたしたちメイジはともかく、剣士さんたちでは少々辛いと言うか、無理なんじゃないだろうか? いずれにしてもトロピカーナさんが向かっているのは港でも灯台でもない、北。

「ちょっと、待ってください、トロピカーナさん。海わたるなら、灯台の方から・・・」

「いいからいいから、着いておいで〜〜。それから、トロピでいいよ〜〜」

わたしの言葉を遮り、北へと目指すトロピカーナさん・・・・トロピ、か確かに、みんなそう呼んでるし、いいか?。島の最北端の蜘蛛がたくさんいるところへ突っ込んで行く。当然蜘蛛は・・・・焼き払われる。可哀想に・・・。

そしてトロピ以下、前を走る人達が次々と崖の上から海へと身を投げて行く。

「ええええ、ここから飛び降りるんですかぁ!」

言ってる暇もなく、わたしひとり、崖っぷちに取り残されるけど、こんなところでまごまごしていると置いて行かれる。後の事はどうなるか知らないけど・・・行くしかないよね?

覚悟を決めて「えいやー」と飛び込む。もちろん息ができなくなるし、水圧で歩きにくい。海中では視界も悪いので、先を行くメンバーの姿もすでにほとんど見えない。辛うじてZwolfさんの後ろ姿が見えたので、彼を追いかけることにしよう。方角を見ると、やや東よりに北を目指しているらしい。

しばらく進むと、突然、前を行くZwolfさんの姿が消えた。見失った!? こんなところで一人迷子はいやだよぉ。とにかく、Zwolfさんが向かっていた方角へ進んでみよう。ちょうど、彼が消えた地点あたりまで来ると、踏み出した足元から地面が消えて、わたしは走って来た勢いのまま、重力の存在を証明するかのごとく、見事に落ちた。

「痛たたた・・」

幸いケガはなさそうだ。ふ、と顔を上げるとそこは・・・・・

「空!?」

なんだこれは? 海底を走っていたのに、いきなり陸地に落っこちた。そう、海岸へと「登った」のではない。しかし、そこは昼と夜の違いこそあれ、一度来たことのある空間。まさに、遺跡から飛ばされた「異空間」そのものじゃないか。後ろを振り返ると、わたしが落っこちて来た崖がそびえていた。登るのは無理のようだ。しかしこれで、わたしが遺跡から飛ばされた場所が全くの異世界ではなく実在する場所である可能性が出来た訳だ。いつかその場所を再び、探険してみたい、そう思った。

海底!!

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もちろん、ここはその場所と同じ場所ではない。かすかに聞こえる波音、広い大地。とうてい海の底とは思えないが、間違いなくここは海の底。ここからは何も見えないけど、もしかしたら海底都市なんてものがあるのかもしれない。

とにかく、視界が広がって、先を行くみんなの姿もはっきり見えるようになったので、安心して後を追う。水圧からも解放されたので、陸上と全く同じように軽快に走れる。そういえば、なんとなく、いつもより身体が軽いような気がするけど・・・・

広野を走りつつ、わたしは交感魔法を使ってハックスに連絡をいれた。「ちょっといい」「ん?どうしたの?」「お願いがあるんだけど」「何?」「知り合いの転職試験のお手伝い、一緒に来て」くれないかな、じゃなくて、来て、と。「・・・わかった。どこに行けばいい?」「やた。細かい話は後で。また連絡する」「うむ」とりあえずは手短に。

走って走ってグルーディンの港が近付くにつれ、前方に壁が見えて来た。そして行き止まり。最初に落っこちた崖とまったく同じ崖だ。これを乗り越えれば港まであともう少しなんだけど・・・先行していたメンバーに追いつく。どうやってこの崖を乗り越えるのか、と思ったら答えは簡単だった。

「さーて、じゃあ、ここで帰還スクロール使いますか」

なるほど。ここはすでにグルーディン港の村の領域ということか。皆が次々と詠唱を始めるのにならい、わたしもスクロールを詠む。いっせいに皆の足元に魔法陣が浮かび、輝き始める。すごく奇麗だな・・・・。思うのもつかの間、詠唱を追えた人から順に輝きに包まれ、消えて行き、わたしも・・・・

おなじみ、と言うほどには慣れ親しんだ訳じゃないけど、グルーディン港の村。全員が同じ場所にたどり着いた訳ではなさそうだ。わたしの隣にはarameさん。さて、どうすればいいんだろう、と思っているところにトロピから連絡が入った。

「広場集合でよろしくー」

わたしとarameさんは顔を見合わせただけで、すぐに同じ方向に走りだした。ちょうど、南門前の広場だったので、通路沿いに東西の通路へ出る。広場へ上る階段の前で業務課3号さんとおぃーーっすさんの剣士さんペアと合流した。そのまま4人で広場へと急ぐ。到着するとすでにトロピとZwolfさんが来ていた。

「そろった? じゃあ、まずは試験の申請をしておきましょうか」

arameさんの到着を見てそう宣言するトロピ。着いてらっしゃい、とばかりに手を振って神殿へと向かって走りだした。後を追う面々。わたしも着いて行く。露店でいっぱいの広場を抜けると、北門の横、村の神殿へと入って行くトロピに続いてどどっとなだれ込む。てっきり奥まで入るものだと思って勢いよく飛び込んだら、みんなが入り口近くで固まっていたので、一番後ろにいた業務課3号さんに追突しそうになった。かろうじて急停止。

大男が二人・・おぃーーっすさんと業務課3号さん・・・が間に入っているので、前に居るarameさんたちやその向こうにいる人がはっきり見えない。このパーティのメンバー以外の人が居るみたいだ。

「さあ、この人に話しかけて」

おそらく、その人が試験の受付をしてくれる人なのだろう。arameさんがなにやら話しかけているのが見えたが、何を話しているのかは聞こえなかった。その人は特に防具や武器を装備している訳ではなく、冒険者ではない、民間の人だろう。大勢で押しかけられて、ちょっと驚いたような顔をしてはいるものの、てきぱき、とarameさんに応対しているように見えた。そして、それに答えるようにarameさんが時々頷いている。やがて、話が終わったのか、その人が軽く手を振ると、arameさんがお辞儀をして振り返った。

それを見てトロピが「OK?」と問うと、arameさんが小さく頷いた。

「OK!OK!」

また先頭を切って走り出すトロピ。ぞろぞろ、と着いて行く面々。

「この後、どうするんですか?」

ハックスへの連絡もある。後の予定を聞いてタイミングを合わせて合流しないと。

「んーー、もう時間も遅いし、今日のところは城村で一度解散しますか。明日、再集合して試験に挑みましょう」

さすがにみんな疲れが見え初めていて、会話もとぎれとぎれ。トロピ本人もしかり。わたしもその方が有り難い。遺跡のパーティ、飛ばされた異世界、海底の空間、本土。めまぐるしすぎて頭がくらくら。

「わかりました」

とりあえず、大急ぎではなくなったので、その旨をハックスに伝える。「ってことで、また明日ね」「了解。その時間に城村に行けばいいんだね」「うん、悪いけど、頼むね」よしよしっと。

港からグルーディオ城の村までの道。以前一人で走った時はおっかなびっくりだったけれども、他の人達と一緒に走るのはなんと心強いだろう。それだけでもわくわくする。明日のarameさんの試験はもっともっと・・・・・考えていると、もうグルーディオ城の村が見えてきた。一人では長く感じる工程も皆と一緒だと、あっと言う間のような気がする。

「それじゃあ、明日。またここに集合ね」

ここまで移動してくるだけでみんなかなり疲れたのだろう。一通りあいさつをして別れて行った。わたしも、さすがにぐったり。早々に村の門を後にした。

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