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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第十五話・パルチザンのアジト』

時が過ぎた。

わたしも成長し、30歳に近くなっていた。

装備もいろいろと新しくなった。

arameさんと同じ、ウィザードのローブ。名前からしてarameさん、みづほさんたちウィザード専用か?と思ったけど、クレリックのわたしでも特に問題なく着れた。ちょっとだけお姉さんになった気がした。実際、妹・・・・なるるんが生まれた事もあって、名実ともにお姉さんなのだけれど。

靴やグローブ、それにアクセサリー関係も少しずつではあるが、新しいものに買い替えたり、拾ったり。お古は、妹のなるるんへとプレゼントして、姉妹で有効利用している。

武器も新調した。シーダーからエヴァの涙、そして命の枝。エヴァの涙も命の枝もどちらも魔法の書だ。これは、魔法を覚えるための本ではなく、本そのものが魔力を持つ武器として使える。ウィンドストライクを始めとする攻撃魔法を唱える際、この本で魔力を増幅させることで、より強力な魔法となるのだ。

ただし。

さすがに本で殴り掛かっても、物理的な攻撃力は皆無に等しい。これで殴って怪物を倒すことなどは不可能だ。もっとも、魔法で相手の体力をぎりぎりまで削り、最後のひと殴りぐらいにはどうにか使える。

あ、そうそう、本には他にも使い道があった。

アミノ式が下品なことやくだらない冗談を言ったら、「本のカド」でガツン、っと突っ込みを入れてあげる。実際にはそんなに痛くないはずなんだけど、見た目と言うか、心情的に痛いらしい。マナに響くとか、そういう訳ではないのだけど。

それで思い出したけど、こんなことがあった。

荒れ地で、arameさんと二人のところにアミノ式が合流することになった。後から来たアミノ式は、大量の怪物たちを引き連れてやってきた。当の本人はわたしたちの目の前を気付かずに素通り。後ろの怪物をわたしたちが倒そうとしたら全部こっちにやってきて、arameさんとわたしはあえなく倒されてしまった。

押っ取り刀で戻って来たアミノ式が一言。

「どうしたん?」

近くにいたクレリックさんに起こしてもらってすぐ、アミノ式に本のカドをお見舞いしたのは言うまでもない。

それはともかく。

武器が強くなっても、自分自身はそうそう強くはならない。むしろ成長するにつれてどんどん弱くなっている気さえする。クレリックと言う職業の現実なのだと実感している今日このごろは、フローラン方面などに住んでいたりした。

フローランは小さな村だ。村人もほとんどいない。冒険者もここを主要な拠点としている訳ではなく、移動中に立ち寄る程度の場所だ。わたしと同じように狩りをしている人を除けば定住している人はほとんどいない。露店もまったくないので、消耗品などを入手するにはやや不便ではある。わたしの場合、消耗品をほとんど使わないため、買い出しに行くことも少なく、ここに定住していても大きな問題はない。

ペットをもらう旅の途中、初めて立ち寄ったときは恐ろしい場所だったが、今のわたしにとっては丁度よい頃合いの場所でもある。

人が居ないのは寂しい面もあるが、一人でのんびりと過ごすにはうってつけだ。村のすぐそばが狩場だと言うのも手軽。村を背に怪物・・・ウィアードビーやダイアーウルフ・・・を村へとおびき寄せれば安全に倒せる。他人から見ればなんとも情けない戦い方であるが、わたしにとってはこれが精一杯なのだ。一体づつであればよほどのことが無い限り倒されることはない。しかし、二体三体と寄ってこられたらちょっと大変なことになる。

安全第一。

それでもついうっかりと周囲警戒を怠ると、振り向いたそこにダイアーウルフがいたりして、泣きながら逃げ惑うこととなる。

戦い方も随分と様変わりした。以前であればウィンドストライク2〜3発でほとんどダメージを受けることなく倒せていたが、ここ最近は5〜6発かかる。クレリックになってからウィンドストライクの威力はほとんど向上していない。戦う相手と比べるとむしろ威力が下がっている感じだ。魔法の発動に失敗してしまうこともしばしばある。そのために何発も打ち込まねばならない。魔法を詠む速度は成長したため、連発は可能なのだけど、それでもやはり詠んでいる間に接近、攻撃されてしまう。結果、回復のため休憩を余儀無くされる。

村がすぐそばなので休憩に関しては問題がない。村には空き家もあるのでそこにお邪魔して・・・無断で・・・のんびりとさせてもらったり、村のあちこちに転がっている農具に乗って遊んでみたり。独りで居るのもお気楽でいいものだ。

農具に乗ったり

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ちょっと寂しいけどね。

休憩のためお邪魔した空き家で変な張り紙があることに気付いた。近寄ってよく見ると、どうやら懸賞首のようだ。見るからに悪そうな人相・・・人じゃないな、悪霊にネズミ、そんな連中に賞金がかけられているみたいだ。あるいはこの家の元の住人の仇なのか。真相はわからないが、わたしが一人でどうこうできる相手ではないだろう。

近くには釣り堀があった。川をせき止めて水を溜めてある。農業のための治水に使われていたのかもしれないが、管理人を置いて釣り堀として活用し、副収入を得ようとしていたのだろう。しかし、周囲には怪物もいるし、そもそも主となる農業を営む農家も怪物に追い払われてしまっているようなので、実際にはここでのんびり釣りをする人などいないだろう。

池、そして川のほとりには大きな風車もあった。かつてここで収穫した穀物を加工していたのだろう。今となってはただのオブジェだ。わたしたちからしてみれば、方角の目印になるのでありがたいものだ。驚いたのは、壊れもせずにずっと回り続けていること。つい最近に捨てられたのか、羽はおだやかな風を受け、ゆっくりと回り続けていた。

そんな風に休憩をかねて村の回りをあちこち見物して回った。居心地がずいぶんといいので、しばらくの間ここで寝起きしていた。

そんなある日。

村の外れで休憩していると、視界の片隅を何物かが横切った。滅多に人も通らないので、怪物が気まぐれに走り出したのかと思ってよく見たら、見知った名前だった。

「アミノ!」

その名前を呼んでみたが本人は気付いて無い様子だ。改めて交換魔法でもう一度呼びかける。

「アミノ、うしろ、うしろ」

その言葉でようやく立ち止まってくれた。きょろきょろ、と辺りを見渡している。少し離れてしまっていたので、走り寄るとようやく気付いてくれたようだ。

「ぉぉ、久しぶり」

「やっほー。どこ行くの?」

「ん。パルチザン」

どこ、それ。

地図を開いて見ると、ああ、あそこか。ディオンの北東、処刑場の北側。処刑場には何度か行ったことがある。アンデッドがいっぱいいるのでうれしいんだけど、人もいっぱいでなかなかいい狩場が無いのだ。それもあって、フローランあたりをうろうろしていた訳だけど。

「ふむ」

「どや?久しぶりに、一緒行くか?」

「おけー、乗った。行こ」

どこへ行ってたのか。野暮なことは聞くまい。南部海岸・・・リザードマンがいる・・・か、ギランから大回りしたか。その程度のことだろう。たまたま、フローランを通ったってだけのこと。たまたま、そこにわたしが居たってこと。これも何かの縁、だ。

お互い、行動パターンが変わってしまった関係で、一緒に居ることはほとんどなくなった。今みたいに偶然出会えばそこは気心の知れた仲。それじゃーね、ばいばい、って手も無くはないけど。たまにはこうやって一緒するのもよろしかろう。

ディオンの丘陵地帯を抜け・・・もちろん、怪物をなぎ倒しながら・・・街道を横切り・・・道の上など走らない・・・・パルチザンのアジトを目指す。

ここはその名の通り、中央部にアジトがある。周囲は起伏の激しい地形と川。まさに自然の要塞と言った面持ちで、起伏を利用した前線基地があちこちにある。その基地をはじめ、各所には衛兵が配置されている。しかし警戒しながら道なりに進めば中央部までは簡単に進める。中央の本拠地は、実は今は無人。建物にはカギがかかっていて中には入ることができない。

ここに居るのは捨てられた露営地にもいたオル・マフムの一族だ。連中は露営地にいたマフムよりもさらに上級らしく、強さも桁違いだ。しかし、わたしもアミノもずいぶんと成長した。だからここでも十分に戦える。もっとも、わたし一人では困難ではあるが。

わたしとアミノ式はその本拠地の裏手の丘を越え、さらに奥地へと向かった。

「ねらいは?」

「研磨剤」

「は?」

マフムも衛兵から下士官、上官まで数種類いるので、どのランクのマフムをターゲットにするのか、と聞いたつもりなのだが・・・

「新しい槍、作りとうてな。研磨剤、大量に要るんや」

「ふむふむ?」

「レイダが研磨剤落としてくれるさかい」

なるほど。オル・マフム レイダーを探している、と言うことか。

「いくつぐらいいるの?50個とか?」

「700個」

ど。

ずっこけて崖を転がり落ちそうになった。

「な、な、な、なんですってー!?」

「あはは、驚くんも無理ないわな。オレも最初驚いた。せやけど・・・」

手にした武器をしみじみと眺めながらアミノは言った。

「もっとええ武器欲しいねん」

この世界では皆、武器、それも良質の武器にあこがれる。

「でも、高いもんねぇ」

おいそれと新調するのは難しいのだ。少しづつ、長い時間をかけてようやく買い替える事ができる。

「作ったら多少でも安ぅ出来るみたいやねん。製作してみよう思て」

ふむ。ドワーフの中でアルティザンと呼ばれる職業の人達は、武器や防具などを作り出すことができる、らしい。もちろん、無から何かを創造することは不可能で、モノを作るためにはその基となる材料が必要だとは聞いたことがあった。ちまたで売買されている・・・そう、わたしたちが拾っては売っている鉄鉱石や黒炭などがその素材なのだそうだ。

「今、何個集まってるの?」

「40個。先、長そうやなぁ・・・・」

ひとつ疑問があった。

「それって・・・」

「ん?」

「研磨剤集め終わる前にアデナ溜まらない?」

「まー、それやったらそれでもええんやけど」

アミノは苦笑していた。自分でもそのあたりは解って言ってるんだろう。あれこれ計算とかして考えた結果なのだろうから、わたしがとやかく言う筋合いは無い。

「どっちにしても」

出来る事は、協力する事ぐらいだろう。

「がんばらなくっちゃね」

「ぉう」

という訳で、多少なり強化された補助魔法をかけ、戦闘開始だ。オル・マフムレイダーに狙いを定めて、と行きたいところだが、周囲にはゲリラ、リーダー、サブリーダー、それにアーチャーとと、様々な階級のマフムたちがおり、どれか一体に手を出すとたちまち周囲から総攻撃を受けることになる。

しかし、今のアミノはそれに対応することができた。彼の持っている武器は槍。長い柄の鋭い刃先を左右に振り回す事で複数の敵を同時に攻撃することができるのだ。だから、わたしの瞬眠の魔法・・・スリープ・・・も足止めの魔法・・・ドライアードルーツ・・・もあまり効果がない。わたしの役目は一斉攻撃を受けるアミノに回復魔法をかけつつ、手があけば本の角攻撃・・・は役に立ってるんだか立ってないんだか。ウィンドストライクもしかりだ。ただ、アーチャー・・・弓使いは、アミノの攻撃範囲をはるかに越えた遠方から矢を放ってくるため、こいつだけには瞬眠の魔法をかけておとなしく眠っておいてもらう。団体さんを片付け終えたらアーチャーを片付ける。もしくはアーチャーを足止めして、その周囲に他のマフムをおびき寄せて一網打尽って手もある。

そんな感じで、連戦するとさすがにマナも足りなくなってくるため、一度退却して回復だ。補助魔法もかけ直さなければならない。

「何個出た?」

「んー、、3個」

「こっちに1個来てるわ。はい」

「さんきゅ」

「やっぱり先はかなり長そうねぇ」

「せやなぁ」

はぁ、とため息しか出ない二人。それでも気を取り直してあれこれとおしゃべりをしながらマナの回復を待つ。

アミノの職業、戦士・・・ウォーリア・・・は主要武器として槍を扱うことができると言う。剣も使いこなせるが、槍の方が使い勝手がよく、アミノにはお気に入りなのだそうだ。ただ、他の人にも槍は人気があるらしい。そりゃ、一対多数の戦闘ができるのなら便利だからだろう。しかし、剣に比べれば流通量が少ないため、入手し辛く、そのために高価なのだそうだ。だからこそ製作する道を選んだのだと言う。

そんな話をしているとマナも回復したので、補助魔法をかけなおして戦闘再開だ。

以前からそうだったが、戦っている時のアミノはいきいきとしてとても楽しそうだ。たとえ攻撃を受けてぎりぎりの体力になっても。普段はそうでもなく、どちらかと言うと温和でおとなしそうなのだけれど、戦いが始まると瞳の輝きが変わる感じ。わたしよりも大柄な体格のせいもあるが、たくましいと思える。

ずっとこの人と居るのもいいかな?

そんな風にも考えたりすることもある。

でも?

何度か戦いと休憩を繰り返す。しかし、研磨剤は10数個しか集まらなかった。

「最初は結構出たんだけどねぇ」

「せやなぁ、途中から全然、出ぇへんようになったな」

「なんか法則あるのかしらね?」

「どうなんやろ」

これは以前からも気になっていたところだ。漠然とではあるが。しかし、考えても答えは出ない。

「さすがに疲れたやろ、そろそろお仕舞いにするか?」

「んーー、そうだね」

本人はもっとやりたそうだけど。わたしの事を気遣ってくれているのだ。

「ほな、帰るか」

「うん」

補助魔法をかけ、道なりに村へと戻る。かなり北の方だったので戻るのも少々時間がかかる。道を走っていると、ふ、と気になるものが目に止まった。三差路を通りがかった時、ちらりと横道を見たら、道端になにか立っていたのだ。姿形はオル・マフムなのだが、名前が「パルチザンの伝令」と、周囲のマフムたちと異なっていたのだ。

「あれ、なんだろう?」

アミノにもそのことを伝えてみた。

「ん?何やろ?」

「ちょっと行ってみようよ」

一人だったら怖くて近寄れなかったかもしれないが、アミノが居るから。でも、無闇に近付くのはやはり危険だろう。そろりそろりと近寄ってみる。いきなり襲われる事もなかったが、驚いたことに話しかけてきたのだ。マフムたちが話せるのは知っていたが、話しかけられたのははじめてのことでちょっとびっくりした。

パルチザンの伝令

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「いいことを教えてやろう」

伝令は語った。

「明日の9時、パルチザンのアジトの主、血の主でもあられるヌルカ様がお戻りになる」

くぐもった声で、しかし、はっきりとそう言った。

ふむ。あの中央にあるアジトには所有者がいるらしい。それがヌルカ、と言う名前なのか。どんな人なんだろう? いや、人じゃないか。

その場を立ち去りながらアミノと相談する。

「明日9時だって」

「どうせまたここでやるし、見物にでも来てみるか?」

「うん。なんか面白そうだよね」

「そしたら、9時前に、アジトの前で」

「だね。わかった。arameさんとかみづほさんにも声かけてみるよ」

「血の主・・・か」

「なんかちょっと怖そうな気もするけど」

「ん・・・・」

なんだかいつになく真剣な顔になって考え込むアミノ。

「どうしたの?」

「なんでもあらへん・・・・ほな・・・・」

ディオン城の村に到着した。

「明日、9時前な」

「う、うん。場所は・・・あそこでいいかな。アジトの前」

「よっしゃ」

「じゃね」

「またな」

・・・・・・・・・・・・・・

夢を見た。

白い世界だった。

でも、なんだか、明日のことが気になって、夢の内容は、はっきりと覚えていない。

白い、雪の、積もった世界だったことだけは覚えている。

ずいぶんと前に見た夢の続き、だと思う。けど今は、そんな事はどうでもいい。明日、何が起きるのか。それだけが気掛かりだった。

・・・・・・・・・・・・・・

arameさんとみづほさんにそれぞれ、ヌルカの事を話してみた。みづほさんは「面白そう」と乗り気だったけど、arameさんの方は「時間あったら行く」とのこと。

そして当日。

話せる島に居たと言うみづほさんはこちらに向かっているとのこと。arameさんはまだ来ていない。

わたしは少し早めに現地へと赴き、ヌルカを待ちながらアミノ式を待った。他にも数人、見知らぬ人が集まって来ているようだ。

先に現れたのはアミノ式だった。

「うっす」

「こんちわ。まだみたい」

周りに他人もいるので、パーティを組んで、中で会話する。

「そか。どんな奴なんやろうなぁ」

「さあねえ・・・」

アジトは周囲を三方を高い丘に囲まれ、南側だけが木造の門になっている。普段は中にも入れるため、中にある「アジト」の建物の近くまで行くことはできる。しかし、その建物の扉は固く閉ざされており、中を伺うことはできない。今もまだ、アジトには誰もいないが、ここの持ち主であるというヌルカが帰って来るってことで、中に近寄るのはちょっと怖い。なので、門が見える範囲で待機だ。

「出た!」

周囲がざわめき立つ。アミノ式だけでなく、近くにいた人達もだ。見ると、アジトの中に続々と怪物が現れ初めていた。GKでも使っているのだろうか?どこからともなく姿を現す。その中でもひと際巨大な怪人・・・緑色の肌、まさに筋骨隆々と言った体格。見るからに凶悪そうなその怪人がヌルカその人だった。

しかも、周囲に居るヌルカの部下の数も半端ではない。近衛兵たちが主人のまわりを取り囲んでいる。そういえば、昨日話しを聞いた伝令もマフムだったな。

ヌルカあらわる

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「あれがヌルカ・・・」

ヌルカだけでも勝ち目がなさそうなのに、周囲のマフムも考えると、手出ししたら最後、って雰囲気だ。

「めちゃめちゃ強そうやな」

言わなくてもわかってるわよ。

みづほさんにも状況を連絡する。彼女もようやくグルーディオ城の村にたどり着いたらしい。もう少しだ。やりとりをしていると、arameさんも感知できたので、どうするかを聞いてみた。ディオンにいるから向かう、とのことだ。

ヌルカの出現に合わせるように、他の冒険者たちも続々と集まって来た。装備品から判断してわたしたちよりずっと年齢の高い人達だろう。10数人になった。パーティを組んだ仲間なのだろうか、なにやら話し合っているようだが、わたしたちには聞こえない。やがてその人達が動き出した。

アジトの中、ヌルカに向けて突撃を開始したのだ。

門に向けてなだれ込む人々。数的に圧倒的に不利だと思うのだけど、勝算があるのだろうか?威勢よく切り込んで行く。しかし、よく見れば門の左右のやぐらの上にもマフムがいた。アーチャー、弓使いだ。門にたどり着く前に頭上から矢の雨が降り注ぐ。何人かは前に進むことができず、こちらに戻って来る。恐らく、大ダメージを受け、危険だと判断したのだろう。近くまで来たエルフさんにわたしは思わず回復魔法をかけていた。

「さんきゅっ」

そう言うと、エルフさんはまた門の方へと戻って行く。

「オレも・・・・」

アミノ式は突然、パーティを解除してしまった。手にした武器を握り直すと、アジトの門のその先、戦いの始まったアジトの中を凝視して言った。

「オレも行ってくる」

いつになく、大真面目な顔。でもその口元には笑みさえ浮かんで居る。

「ちょちょ、ちょっと!」

わたしが止める間もなく、アミノ式は駆け出した。

「あの人たちのパーティに入れてもらう。なるは安全なとこまで下がっとき」

一瞬振り返ってそれだけ言い残すと、激闘の中へと身を投じた。

残されたわたしにarameさんから連絡が入った。

「やられた・・・」

えええ??

「ど、どうしたの?どこ?」

「近道しようと思って丘越えて真っすぐ行ったら、なんか引っかけたっぽい」

アミノも行っちゃうし、どうしよう?

「おーい、Naruru〜〜n」

「みづほさん、いいところにっ」

「へ?」

どこかでarameさんを追い越したのか、みづほさんが先に到着した。わたしは事情を説明して、みづほさんにUターンをしてもらい、一緒にarameさん救出に向かった。ほどない場所にarameさんが倒れていたので、周囲のマフムをみづほさんに排除してもらい、arameさんにリザレクションをかけ、三人でパーティを組むんで急ぎアジト前に戻る。そこで目に飛び込んで来た光景は・・・・

「うわっちゃ〜・・・すんごいことになってんな」

みづほさんが言うのも無理はない。門の手前、安全な広場に座り込む人々、その先、門の中に転々と横たわる人々。そこに一人のエルフさんが駆け寄ってリザレクションを唱えた。起き上がった剣士さんはそそくさとこちら側の広場に戻って来るが、エルフさんの方はやぐらの上から放たれた矢の餌食となって倒れる。

「あーあ、アミノ氏もあんなところに」

倒れたエルフさんのさらに先、門からかなり入ったところにアミノ式が倒れているのをarameさんがみつけた。近衛兵に踏み付けられている。

「めっちゃ強いわ」

そのアミノ式から交感魔法で連絡が来た。

「みたいね・・・ちょっと待ってて、助けられるかどうか、行ってみる」

振り向いてみづほさん、arameさんに「援護お願い」と声をかけてわたしはゆっくりと門に近付いた。先ず、近くのエルフさんにリザレクションをかける。この距離ならまだ攻撃されずに済みそうだ。しかし、立ち上がったエルフさんはまた攻撃されてしまう。わたしの回復魔法が間に合い、どうにか戦場から離脱することができたようだ。「ありがと」と、声だけかけてもらう。

まごまごしてるとわたしも集中砲火を食らうだろう。一気にアミノ式の近くまで走った。当然のごとく矢が飛んで来る。ただ、他の人達も突撃、撤退、回復で出入りを繰り返しているため、幾分か攻撃も分散している。わたしもなんとかリザレクションを唱えることができた。わたしの後ろではみづほさんとarameさんが火炎の魔法を連射している。

急いでアミノ式を回復させる。

「おおきに。一旦外出る・・・あ」

同時に今度はわたしが力尽きた。

「アミノは逃げて!」

「わかった」

ここに踏みとどまっても勝ち目はないと判断したアミノ式は素直に撤退する。

「うっはー、きっつー」

「こりゃたまらん」

後ろではウィザードの二人も相次いで倒れる。さすがの二人も手も足も出ない感じだ。そこへ先程のエルフさんが撃たれながらも近付いて来た。

「あなた、クレリックよね?先、起こすわよ」

「はい」

リザレクションをかけてもらって回復する。同時にエルフさんが倒れる。

「はい交替。回復したら戻って私を起こして」

「わかりました」

言いながらも駆け足で門の外へ。リザレクションが使える人が交替で起こし合いながら、余力でどうにかウィザードさんや剣士さんを起こして回り、少しずつ、門へ、門の外へと移動して行く。

そうしてようやく、全軍撤退が完了した・・・・かに見えたのだが・・・・・

「助けてくれ〜〜」

どうやらまだ取り残されている人がいるようだった。

「どこに居んだよ」

助けを求める人の仲間とおぼしき剣士さんが問い返す。

「足元、足元。ヌルカに踏み付けられてる」

ヌルカの近衛兵

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よく見ると、ヌルカの周りを取り囲むマフムたちの足元に、腕の先が見えた。肌の色からしてダークエルフさんらしい。

「・・・そんなとこによく潜り込めたな」

「いやー、突撃してヌルカにたどり着いたのはよかったんだけど、近衛兵に取り囲まれちゃってさー。身動きできなくなった」

「まさに袋叩きだな」

「言ってないで早く助けろ」

「悪いが、あのバカ、救助してやってくれないか?」

剣士さんは、誰とはなく、周りに向かってそう言った。

「私たちだけじゃ無理ね。援護してもらわないと」

さきほどのエルフさんだった。

「だめだめ。下手に入ると倒れる人が増えるだけ。私達だけでリザリレーするしかないわ」

もう一人、ダークエルフの女性も会話に入る。リザリレーとは、さっきのようにリザレクションが使える人が交替で起こし合いしながら救出、撤退を繰り返すってことみたい。その場の流れでわたしもその部隊に入ることになった。

ダークエルフさんを踏み付けている当のヌルカは、わたしたちの言葉を介さないのか、そんなやりとりには無関心のようだった。おそらく、自分のアジトを守っているにすぎず、侵略者を排除しようとしているだけで、近寄らない限りは手出ししてこないようだ。

結局、ヌルカの足元に沈没していたダークエルフさんを助け出すまでに結構な時間がかかってしまった。起こしても起こしてもすぐまた攻撃されて撤退するまでに何度倒れたか。

ようやく、全員が広場に集まったところで、一息。

「あれだな、適当に突っ込むだけじゃやっぱり駄目だな」

誰かが言った。

「作戦、って言うか、協力してやらないと」

「うんうん」

周りの人も、わたしたちも同感だった。わたしとアミノ式、arameさん、みづほさんのグループのように、いくつかのグループがこの場に集まっている。直接話したりしたことはないけど、村でよく見かける人などもいたりもするが、基本的には面識の無い人の方が多い。しかし、短時間とはいえ、同じ場所で同じ敵と戦った事で連帯感のようなものはあった。「皆で一緒に」との流れは必然的だったと言えるだろう。

「オレにいい考えがある」

話し始めたのはさきほど最後までヌルカの足元で倒れていたダークエルフさんだった。

つづく・・・・

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